2013年 “ビジネスとしてのメディア” 方程式をどう解くか

デジタルメディアとメディアビジネス、そこに大きな潮流変化が見えてきた。
メディアとビジネス、そしてテクノロジーの地殻変動。
2013年に加速していく変化を、3つのキーワードから考える。

明けましておめでとうございます。
本年も、デジタルメディアとメディアビジネスについて、ささやかな考察をめぐらせてまいります。引き続きご愛読をお願いいたします。

さて、2012年に自身が書き連ねたものを振り返ると、

  • 換金手法(マネタイズ)のトレンド変化
  • 出版(パブリッシング)手法の変化
  • メディア体験(価値)上の変化

に焦点を当てることが多かったと、今さらながら気づきます。

これら3つは、多かれ少なかれメディアを生業とする人々に共通する視点でしょう。もちろん、それはまたメディアの消費者の視点としても共通に語ることができるはずです。
そして、3つはいずれも共通する大きな潮流変化を背景にしていることにも気づくのです。しかし、その大きな絵図については、最後に触れることにしましょう。

換金手法のトレンド変化

モバイルアプリ化のトレンドが、私たちメディア関係者に与えた大きな気づきは個人課金の可能性についてでした。
アプリから開発者が得る収入の多くが、単なる有料アプリからではなくアプリ内課金によるものだと言われます(参考 → こちら)。有料か無料かという二者択一の時代は早くも終わろうとしています。
アプリ内課金に限らず、メディア消費者にとって単なる経済合理性に止まらない、体験上の納得感を意図した課金アプローチがずい所で目につくようになりました(参考 → こちら)。
個人課金が受け入れられる背景には、Web メディアにおける過度な広告露出が、メディア消費者に許容できる範囲を逸脱しつつあるという価値観上の変化が関わっています。
これを広告手法の内部からイノベーションする方向(参考 → こちら)も、そして、非広告的手法によって克服する方向もありえます(参考 → こちら)。2013年はいずれの動きもさらに活発化するはずです。

出版(パブリッシング)手法の変化

Web(HTML)メディアでは CMS、電子・印刷出版では InDesign などの出版システム、アプリ開発では Objective-C/Xcode というような技術基盤は、それぞれの分野での出版(パブリッシング、開発)の専門分化と深化を形成してきました。それはメディアのプロにとっての基盤やノウハウ、エコシステムを形成する一方、プロらを守る“壁”としても作用してきました。
しかし、アプリが Web と、出版がアプリや電子書籍と、というように交錯する状況がいま現実となり、専門分化の壁は大きな揺らぎを経験しているのです。ケースによっては従来からの設備投資型の積み重ねが優位性から足かせへと変化しようとしています。
KDP(Kindle Direct Publishing)が出版システムを揺るがす可能性(参考 → こちら)があるように、Web に続きアプリ開発でも同様のことが起きておかしくありません。

メディア体験上の変化

筆者は、メディア消費者が受け取るメディア体験上の価値を、コンテンツの力そのものと、コンテンツがもたらす付加価値の総合であると解釈しています。
これは、印刷、モバイル、Web、電子書籍など多様なメディア形式が存在するとき、コンテンツが同じであれば、消費者にもたらす価値はどれでもつねに同じというわけではないという視点を導きます。
多様なメディア形式を通じて最適なコンテンツを——。
これが体験的価値の最大化に作用するという認識が、メディアビジネスにとっての次の大いなる課題なのです(参考 → こちら)。
この分野でも、やはりモバイル化がトレンドセッターです。昨年、新たに誕生を見たいくつものデジタルメディアが、モバイル化・アプリ化の影響を大なり小なり受けていることからも確認できます(参考 → こちら)。

筆者が注目しているデジタルメディアとメディアビジネスをめぐる3つのポイントに触れてきました。最後のメディア消費者にとっての「体験上の価値」で触れたように、モバイル化の大きなトレンドが、消費者に培われてきたメディアに関する価値観を大きく変化させてしまったことを意識せざるを得ません。
新聞、放送、音楽、出版……と、これまではそれぞれ独立的な産業として局所化してきたメディアのあり方が変わろうとしています。
“モバイル以降”では、リアルタイムの放送のようにコンテンツを読む、気になる記事を拾い読むように映像コンテンツを観る、聴き放題と同様に、読み放題のメディア課金が動き始める……というように、局所化されてきたメディア体験のあり方が、消費者の体験的な“快”の方向へと大きくコンバージェンス(融合)を始めているかのようです。これが冒頭に示唆したメディアにおける大きな絵図というわけです。

2013年、メディアビジネスをめぐる大きな動き・小さな変化を読み取る試みは、メディアプローブ主催セミナーでも随時継続していきます。どうぞご期待下さい。
(藤村)

【特別セミナー:1月24日開催】2013年“ビジネスとしてのメディア”  方程式をどう解くか?
——電子書籍、Webメディア、アプリ、そしてソーシャルメディア

登壇者:
角川アスキー総合研究所 遠藤 諭氏
Business Media誠 編集長 吉岡 綾乃氏
メディアプローブ株式会社 取締役 藤村厚夫(モデレーター)

【特別セミナー:1月24日開催】メディアビジネス研究会1月セミナー(1月24日開催) via kwout

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