Disruption This Week—–5/7/2019

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2019年7月1日から2019年7月5日まで。

ニュースの未来は始まっている。北米地域では、目を凝らせばさまざまな“マイクロニュースメディア”が誕生している。20超に及ぶその例を示しながら、この10年間で失われたローカルメディアを上回る新形態のニュースメディアの誕生を予感する記事。
腕の立つ著名ジャーナリストが一人で立ち上げたメディアや、ソーシャルメディアを根城とする形態など、ニュースメディアへの既成概念を揺るがす事例集。
米Wall Street Journal、来るべき選挙の季節に備え、20名を超える偽情報対策に携わる委員会を組成。前線の記者らの問合せに応える態勢を構築。また、随時、研究者らを招いた勉強会を開催して、記者らを知識レベルを高める。
今年初に、米メディア界に起きた大規模レイオフの波、リーマンショック後の2009年以来の規模で継続中だと、調査会社のChallenger, Gray & Christmasがまとめた。時まさに市場最低レベル雇用水準ながら、ジャーナリズムはその対極に立たされたままだ。
英Economist、購読読者拡大の一翼を担うのが、スポーツ(データ分析)コラム記事。ビジネス・経済・政治に強い同誌だが、データ分析チームを率いる「データ編集者」Dan Rosenheck氏が、どこからでも手に入る公式データを深く解析、ハイレベルなゲーム分析をサッカー、ゴルフやクリケットなど、同誌の読者層に人気の競技に適用。
「Jumpshotが計測しているデータを分析した結果、2019年の第一四半期では、米国のGoogleで行われた検索のうち、48.96%がクリックされなかったという。この数字からは、2016年の第一四半期と比較し、12%も増加していることが読み取れる」。

——Google検索の実態がどのように変化(進化?)しているかが見て取れる。検索結果の半分が、クリックを生んでいないのは、Googleが最も重要な情報ニーズを、広告かナレッジパネルで満たしているからか。

米Business Insiderが、米「Gen Z」(10代から20代前半までの若者)層を対象に調べたところ、Z世代のニュース源トップは、TVを抑えてソーシャルメディアであり、そのなかでもInstagram、YouTube、そしてSnapchat。政治家は、この回路を避けるわけにはいかないというわけだ。
音楽ストリーミングのSpotify、昨年秋に提供開始したレーベルなどの支援を受けられないインディー系アーティストが、自らSpotifyへ楽曲データを直接アップロードするツールの提供を終了。開発資源をアーティストダッシュボードなどの開発へ集中すると発表。
Spotifyだけでなく、AmazonやApple Music、Pandora、Google Playなど複数の配信プラットフォームへとクロスアップロードできる「DistroKid」についてどうするのかが、次なる注目。
米Wall Street Journal内のデータサイエンティスト、購読ユーザー管理、プロダクトの責任者が横断して組成した「プロジェクト・習慣化」。読者が、継続的な購読者へと変身していく習慣をどう築くのか。プロジェクト当事者自らがそのメソッドとプロセスを解説した興味深い記事。
今年4月に発進した「スローニュース」を謳うメディアスタートアップのTortoise、メンバー制をベースにしたクラウドファンディングで、目標額を遙かに超える70万ドルを集めて、順調な滑り出し。8000人の現メンバーの4割が30歳以下!
「小学館の決算が出された。…売上高は970億5200万円、前年比2.6%増、2年連続の増収で、当期利益は35億1800万円、4年ぶりの黒字決算。
しかし内訳を見てみると、『出版売上』は544億円、同4.1%減に対し、『デジタル収入』205億円、同16.0%増となっている」。

——デジタル部門売上の9割は、漫画。ということは、漫画村消滅の揺り戻し効果ということになるのか。

【ご紹介】:SlowNewsがサポートした「選挙運動の『余剰金』を追う」シリーズ、完結を機に「データビジュアライズ」版が掲載されました。しかし、4割が余剰金がどうなっているか知らないってねぇ…。
【ご紹介】:
USスマートニュースで活動するプロダクトマネージャの西岡悠平をご紹介します。かつてUSスタッフが着手した「ポリティカルバランシングアルゴリズム」を、来るべき2020年に向け西岡がブラシュアップしています。
【ご紹介】:
日経MJ掲載のフラーAppApeLab編集長、日影耕造さんの記事が電子版で読めるようになりました。SmartNewsが生んだ「クーポン」効果が論じられています。
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Disruption This Week—–28/6/2019

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2019年6月24日から2019年6月28日まで。

「英国のデータ規制当局である情報コミッショナー事務局(ICO)は、これらの広く蔓延しているデータ駆動型オンライン広告が、英国および欧州連合(EU)の法律に抵触していると結論付けた。
ユーザーには、自身のデータの収集について同意するか、意思表示する機会が与えられていない」。——「英規制当局によると、違法の疑い」なので、推移を見守る。GDPR的文脈の延長線上にはこのようはスタンダードが姿を見せてくる。Appleらが進めるITP(ユーザートラッキングの抑止機能)などがもうすぐ広告業界の最大の課題になるだろう。

 

 

「カリフォルニア大学バークレー校と南カリフォルニア大学の研究チームが、Deepfakeを見破る方法として目をつけたのが、人間が無意識に行なう細かい動き。すでにある映像(本物)から、この細かい動きを探すというトレーニングをAIに行なったのです」。

——そのトレーニングの成果についても記事が触れている。興味深い研究。

 

 

英Financial Timesのデジタル配信チーム、デジタルベースでより対話性やインパクトのある記事を制作するためのテンプレート集をGitHubで公開。たとえば、登場人物ごとのストーリーを可視化する「Profile Cards」やグラフを中心にインパクトのある記事の「charticles」などだ。

 

 

「NBCはこの成功体験を基に、TikTokでも短い動画によるニュース配信に取り組んでいます。とはいえSnapchat版のStay Tunedはより『ニュース番組』風なつくりになっており、扱われるニュースも事件や事故、政治経済から娯楽系までさまざま」。

——次々現れるコンテンツ制作・流通サービス。それらに適したコンテンツ制作の手間を惜しまず、かけているニュースメディアの取り組みについて取りあげる記事。

 

 

「Trump Bump(トランプ景気)」から「Trump Fatigue(トランプ疲れ)」へ。米国のネットメディアからCATVまで、総じてTrump関連トピックスへの国民の関心が、2016年選挙戦時と比較して大きく低迷。メディア企業幹部らは頭を抱える。

 

 

米上院議員Mark Warner氏ら、GoogleやFacebookに、各ユーザー情報から得られる価値を、価格で定期的にユーザーに対し開示することを求める法案を提出。

 

 

Global Fact 6開催に際して、Full Factらファクトチェック団体が、“次世代ファクトチェック”のあり方を提唱。従来のファクトチェックが「ファクトチェックを公表し、祈る」というスタイルであったのに対し、第二世代は「ファクトチェックし、行動する」であるとする。
実際、「事実」や「偽情報の訂正」を後々から公表したところで、力になりにくい。しかし、積極的に行動することは、効果の高さと同時にリスクも生じそうだ。

 

 

読者からのリターンを最大化するために。ニューズレター配信、メンバー管理、課金、コマースなどの機能を盛り込んだ「読者CRM」をパッケージ提供する「Pico」の紹介記事。
世界最大手メッセンジャーアプリのWhatsApp、利用規約を厳格化。メッセンジャーを通じて、機械的に多数の送信先へとメッセージを送る行為を年末までに停止させる。メッセンジャーを介した偽情報の拡散に歯止め。だが、記事にあるように、独新聞社のように、これまでメルマガ配信に用いていたメディアが困る例も出てくる。

 

 

「シトロン氏はさらに、『ディープフェイクス』を放置することにより、リアルの動画に対する信頼性も揺らぐことになる、と述べる。その結果、リアルな動画を証拠として疑惑を指摘された人物が、『その動画はフェイクニュースだ』と否定することができてしまう『嘘つきの分け前』と呼ぶ状況が起きている」。

——公聴会が行われ、その下院議会サイトなどでもその内容が公表されている。Deep-Fakeは、次の大統領戦の驚異の目玉になろうとしている。

 

 

【ご紹介】:
米Nieman Labが、米国版SmartNewsが、各メディアにとり最も成長する流入源となっていることの解説記事を掲載してくれました。パートナーメディアフレンドリであると同時に、深刻なフィルタバブルに対抗するアルゴリズムで読者フレンドリな点にも言及しています。

 

 

【ご紹介】:
私が責任編集しているブログメディア「MediaTech」、市川裕康氏の寄稿「エンジニアが知っておきたい『ニュース消費』の現在——『Digital News Report 2019』が示す3つの転換点」を公開しました。

 

 

【ご紹介】:
正直いって、ご紹介するのをためらう記事なんですが…汗 NHKが運営する就活向けサイト「就活応援ニュースゼミ」の取材を受けました。

Disruption This Week—–21/6/2019

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2019年6月17日から2019年6月21日まで。

動画や音声をAIを駆使して合成し、ありもしない発言や行動をあたかも真実のように見せかける“ディープフェイク”。その脅威の高まりを受けて、米下院議会の専門部会でこの集中討議やヒアリングを実施。議会は2020年大統領選の大きな脅威と見なす段階に入った。
「ドレッジ氏は、ユーザーのスポティファイ(Spotify)の使い方をユーザーの音楽の聴き方が変わっていることの例としてあげた。つまりユーザーは、特定の音楽を必要に応じて選ぶよりも、行動や気分に合わせたプレイリストをますます聴くようになっているとドレッジ氏は述べた」。

——自分を振り返って実際にそのような消費になりつつあることは実感する。そして、考えてみれば、多くのメディア接触にもまた、そのような要素が広がっていることに気づいて、愕然とすることになる。

米国市場で隆盛が指摘されるポッドキャスト。では、音声コンテンツであるオーディオブック市場はどうか?
Edison Researchらによる調査では、少なくとも2018および19年の間には、聴取数の同様のジャンプが見えている。書籍市場の変容もおぼろげながら見えてくる議論。
【ご紹介】:
私が“責任編集”しているメディアから。重要なデータ分析です。➡️ スマホを意識した記事タイトルとは?——読者の期待をコントロールする – Media x Tech
米New York Times、Wall Street Journalなどでも用いられるようになってきたTikTok、ついにWashington Post、NBC NewsやThe Dallas Morning Newsといった米国の老舗メディアで利用されるようになってきたとのリポート。
Facebook肝いりの仮想通貨プロジェクト「Libra」が発表。これまでとりざたされてきた以上の情報は多くないが、2020年にサービスイン。それまでに100程度のパートナー企業を持つ。発行機関はFacebookが統治しない。傘下サービス内に自前のウォレット「Calibra」を構築し、そこで付加価値を目指すということがポイントか。Facebookの担当者は「当分の間、これが(同社にとって)カネを生むことはない」と述べる。
仏カンヌで行われている広告関連イベントで、Facebookマーケター担当幹部が登壇。マーケターはFacebook上でマイクロターゲティングを目指すより、巨大リーチを活用すべきと、従来の同社広告製品の提案を転換。各国の規制当局の締め付けを意識し、「まだプライバシー上の課題はある」とした。
音声広告の未来は明るい。米Adobeの調査によると、米国内消費者は音声デバイス(スマートスピーカなど)の広告に対し肯定的。セレブの声による呼びかけを好み、不快を感じない人々の比率が上昇。往々にして呼びかけに応え、「購入」するのも厭わない傾向にあるという。
【ご紹介】:
先ごろスマートニュースが立ち上げた「SlowNews」(調査報道支援プロジェクト)。最初の支援企画が東洋経済オンラインに掲載されました。「政治とカネ」をめぐる衝撃のテーマを扱います。➡ 国会議員267人の選挙「余剰金が行方不明」の謎
何回か紹介しているReuters Institute「Digital News Report 2019」、やはり目につくのはニュースメディアへの信頼性のダウン。2015年(米大統領選前)から19年の間に上位5か国で概ね二ケタ下落。「情報」に対して、まずは懐疑的に見る傾向も顕在化したと指摘する。

Disruption This Week—–14/6/2019

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2019年6月11日から2019年6月14日まで。

英国に新興ニュースアプリ「Mogul News」が誕生。サブスクリプションを推進する大手Financial Times、Bloombergとthe Economistを単一サブスクで提供する。編集部が人的作業でこれらメディアから記事を選択、編制する。単なる同梱でなくニュースアプリとしてのUXを目指す。
「中にはデジタル版の契約者数が増えているところもある。しかしトランプ氏の米大統領就任で2016年から17年にかけて購読者が増えた『トランプ・バンプ』現象を除けば、オンラインニュースの有料購読者の割合にほとんど変化は見られない」。

——厳しい現実。別の記事で見かけた言葉だが「勝者総取り」が、サブスクリプションのトレンドにも当てはまる。

音楽ストリーミングが提起できる新たなターゲティング広告商材。それは「ムード(感情)ターゲティング」だ。Spotifyは、2015年以降、広告商材をカテゴリーから各種のムード(感情状態)にシフトしている。オーディエンス自身がオプトインする仕組みや、プレイリストから判定する。
【ご紹介】:
月一連載の記事が日経電子版に転載されました。よろしければどうぞ。➡ フェイスブック、大胆な事業転換 金融ノウハウどこに
昨日は、Mary Meeker氏の大作レポート「Internet Trends 2019」を紹介したが、今日も、やはりPDFにして150ページを超える大作。恒例の「Digital News Report 2019」。参照ページでは、要約版や動画での紹介など見やすく整理している。
直前に改めて紹介した米NMAの“Googleによる大収奪”キャンペーンだが、その数値的論拠が極めて曖昧だとの批判が起きている。公開されたホワイトペーパーによれば、この「47億ドル」は、2008年にGoogle幹部が述べた「企業価値」を算定根拠としたにすぎないとの指摘だ。
「この調査は、Googleが提供する価値を無視している。GoogleニュースとGoogle検索は毎月、パブリッシャーのウェブサイトへとつながるクリックを100億回以上生み出し、サブスクリプションと大きな広告売上をもたらしている」。

——昨日紹介した、米NMA発表のGoogleが新聞社らニュースメディアの“得べかりし”収益を奪っているとの大々的な発表に対し、Googleもさすがに反論。記事にもあるように、事態は法律制定論など大がかりなロビーイングの文脈が背景にある。

毎年恒例、Mary Meeker氏がまとめるネットトレンド。「Internet Trends 2019」が発表。2018年、ついに全世界人口の半分以上がオンラインに。その他、目がくらむような300ページ以上の資料が公開されている。
今回から、自身が創ったVCブランドとなった。
「Googleの検索結果画面に表示される内容が変わってきていることにお気づきでしょうか? 最近はWebページのリストではなく直接答えを返すようなことも目立つようになってきています」。

——オーガニック検索のリスト上位が目標ではなく、適切な情報を検索結果に反映させることで、リスト上位より、自社の情報を求めるユーザによるCTRを高めるべきなど、現時点での検索(対策の)トレンドを整理。

「われわれは、6万人の購読者と数十万人の記事単位での購入者を持っているが、正直なところ、黒字化できていない」。オランダ発のコンテンツのマイクロペイメントのBlendle、プレミアム購読モデルへのピボットを模索中。同社はこれまでNew York Timesや日経、 Axel Springerらからの出資を受けてきた。

Disruption This Week—–7/6/2019

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2019年6月3日から2019年6月7日まで。

 

 

英老舗ジャーナリズム「The Economist」は堅いイメージの強いメディアだが、近年ソーシャルメディア、特にInstagramで若者に熱心にアピールしてすそ野を広げている。特に、週一の「Weekly Quiz」はストーリー化された動的コンテンツで興味を惹く面白い試みだ。

 

 

【ご紹介】:
私が“責任編集”している「Media×Technology」の新作記事です。大転換をめざすFacebook。その変化の先と、メディアはどう関係していくのかについて触れています。➡ 大転換を発表したFacebook メディアは「いいね!」を収益化できる?
年初から吹き荒れる米メディアのレイオフの猛威。そのあおりで、BuzzFeed、そしてHuffPostでの職を奪われることとなったベテランジャーナリストが手を組み、大手プラットフォームらによるジャーナリズム破壊の状況を報じオピニオンを発する「Save Journalism Project」を結成。

 

 

豪News Corp、数日内に編集部門の“余剰”55名の削減に踏み切ると発表。早期退職プログラムではなく、強制的な解雇。対象者はデジタルスキルに欠ける人々。スキルセットの分析を実施して決めるという。
計測・分析ツールのChartbeatが、ユーザー(読者)からの収入の現況を探るべく、米国内パブリッシャー内の編集・マーケ・読者開発・メンバー制担当者らに対し直接調査を実施。見えてきたのは、従来のデジタルメディアは、広告ビジネスにあまりにも特化してきたということだ。
政治的二極化による分断への対策としてSmartNewsが米国で取り組む新アルゴリズムが紹介されています。

 

 

As concern over deepfakes shifts to politics, detection software tries to keep up

Mashable

 

 

“ディープフェイク”という概念が知られるようになっている。2018年に誕生したとされる、高度な映像や音声の合成機能で、欺瞞を行うことができる。リベンジポルノなどへの応用から2020年の大統領選を揺るがす材料となることが懸念される段階へ。記事は、たとえばミュンヘン工科大学で研究されている検知技術など対策についても紹介する。

 

 

約30年、ABC、CBSなどで、紛争地を取材する特派員としてのキャリアを有するJeff Kofman氏。同氏はジャーナリストとしての仕事をAIを活用して自動化・省力化することに取り組む。創業したTrintは音声・動画ファイルをアップロードするだけで、速やかにテキストを自動的に書き起こし、検索・編集可能にする。AIが個人のレベルのジャーナリストの仕事にどう貢献できるかイメージさせる優れた試み。
「公共図書館は書店とは逆に(今世紀に入り)700館ほど増えている。19年は戦後初めての3300館を超えることになるだろうし、それがさらに書店数のマイナスへとリンクしていくのは自明だろう
しかし貸出数は2010年代に入り、7億冊を超えていたが、14年以後は下降気味で、18年は6億8000万冊と、この10年間で最低となっている」。——ブロガーは、この図書館における貸し出し数の減少にも、スマホの影を見ている。出版は、善し悪しはともかくとして、図書館を唯一拡大する市場と見なしてきた経緯があるが、それもまた曲がり角か。