Disruption This Week—–17/3/2023

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2023年3月13日から2023年3月17日まで。

Mother Jones CEO on how reader donations became big business for investigative title
先鋭的な調査報道で知られる米「Mother Jones」。CEOのMonika Bauerlein氏は、その収益の4分の3が読者からの支援によるものとし、年間約5万人が寄付を行い、50人のジャーナリストからなる編集部を維持し、オンラインおよび印刷メディアを運営すると、実情を詳細に説明する。
重要な点は、金持ちしか読めない(購読制)メディアでは、公益的な報道を広く必要とする人々に提供できないと力説していること。
At SXSW, Artificial Intelligence Fills Crypto Void
【有料購読者向け記事】:
エンターテインメントとテックの総合イベント「SXSW」が開催。今年の同イベントは昨年まで賑やかだったWeb3、仮想通貨(やNFT)関連の出展に代わり(消えてなくなったわけではない)、AI関連の出展が目につくというリポート。トレンドの変遷が顕著だという。ちなみに、サムネール画像に映るポルシェのブースでは、ブロックチェーン技術を用いたオーナー向けパーソナライズをデモしているもの。
Twitter API、法人向け新料金は月額560万円から? 最大で月額2800万円のプランも 米Wiredなどが報道
「米Twitterが2月初旬に発表した『Twitter API』の有償化を巡り、一部のAPI利用者が新料金体系について案内を受けていると、米Wiredなどの海外紙が報じた。法人向けAPIの新料金は月額4万2000ドル(約565万720円)から21万ドル(約2825万4290円)になるという」。

——これが「月額」! Twitter APIを利用するエコシステムは広範だと思うが、これでほぼ壊滅となるだろう。Twitterのソーシャルグラフの研究利用も困難になりそうだ。このような事態を見据えて、各社、Twitterの代替サービスの企画やその利用を検討しているのだろうが。

YouTube Shorts ad payouts to creators highlights deeper monetization woes
YouTubeが“Shorts”上の広告収益をクリエイターとシェアするプログラムを発表して約6週間。クリエイターからは、力を注いだ投稿作品で得られる収入があまりに少ない(か、皆無か)ことに不満が高まる。プログラムは、クリエイターの収益問題にむしろ火を点けてしまったようだ。
Why Spotify wants to look like TikTok, with co-president Gustav Söderström
Spotifyが社員数30名時代からの古参CTO、現共同社長であるGustav Söderström氏へのインタビュー。先日のSpotifyがTikTok風にUIを刷新した発表は、AIレコメンデーションによる効果を最大化する、創業以来最大の変化と語る。自身を“プロダクトガイ”と呼ぶ人物の踏み込んだ議論。アプリビジネスに携わる人には読むべき記事。
英IPA(広告実務者協会)の調査によると、英国の消費者の商業メディア利用は減少を続けており、7年間で15%の減少に相当することがわかった。重要なポイントは、失われたメディア利用の大部分が、16〜34歳の人々の行動の変化に起因していることだという。
Four tips to optimise paywall conversion
「ペイウォール・コンバージョンを最適化するための4つのヒント」。
1) 各ステップを分解する、2) プレミアムコンテンツの視認性を確認する、3) オーディエンスをセグメント化して行動を把握する、4) コンバージョンポイントでの摩擦を軽減する、などを解説する記事。

——「Poool」という150媒体社をクライアントとするサービス、コンサルティングが発表したリポートからの抜粋記事。

How Bellingcat gets 15,000 people on Discord to talk about investigative journalism
OSINT(オープンソース情報による調査)で知られる調査報道集団Bellingcat。Bellingcatはデータの入手、分析などを世界に広がるネットワークでこなす。その中心的な役割を果たすのがDiscordだ。1万5,000人が集うサーバをモデレートする人物に取材した興味深い記事。
Briefing: Disney’s Iger on Hulu, Streaming: “Not Everybody Is Going to Win”
米DisneyのCEO、Bob Iger氏は、登壇したカンファレンスで、「資金力があり、積極的に競争するストリーミング事業者が6、7社がある」とし、「だれもが勝者となれるわけではない」と発言。同社傘下のHuluについてコンテンツの差別化に欠けていると微妙な発言を行った。
ソウル、10代の半数「インターネット新聞も読書のうち」と認識
「ソウル市民の28.9%はインターネット新聞を読むことを読書だと認識した。この他に読書の範疇としてオーディオブックを聞く(37.8%)、ウェブ小説を読む(49.4%)、ウェブトゥーンを見る(22.8%)、インターネットブログ・カフェを読む(16.5%)、ユーチューブなど映像を見る(10.5%)という回答だった」。

——ソウル技術研究院がソウル市民1037人を対象に実施したアンケート調査結果によるものと記事は説明する。「特に若い年齢層を中心にインターネットから得た情報を読書と考える割合が高かった」とする。

ネット世論操作とデジタル影響工作 - 原書房
【ご紹介】:
出版した『ネット世論操作とデジタル影響工作』、内容見本ができました。よろしければご確認下さい。
書肆ページ⇒ http://www.harashobo.co.jp/book/b622142.html
内容見本(PDF)⇒ http://www.harashobo.co.jp/files/7265sample.pdf

Disruption This Week—–10/3/2023

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2023年3月6日から2023年3月10日まで。

RadioGPT brings AI to the airwaves
放送メディア向け技術開発と製品を提供するFururi Media、AI搭載のラジオプラットフォームである「RadioGPT」を発表。AIがパーソナリティを務め、地域(ローカル)の情報を集め、それを原稿として読み上げ放送するまでを提供する。放送業界を変革するかもしれない動きだ。
Spotify is revamping its podcaster tools, including Anchor, and is partnering with Patreon
Spotify、SpotifyアプリのUX刷新の発表と同時に、プライベートイベントを開催。ポッドキャスター向け管理ツールの刷新を発表すると同時に、クリエイター支援のPatreonとの事業提携も発表。依然としてポッドキャスト市場に邁進の様子。
Gen Z and Millennials who pay for or donate to email or video content from independent news creators
16歳から40歳までのアメリカ人は、年齢層を問わず、デジタル新聞や紙媒体の新聞よりも、独立したクリエイターによるニュースコンテンツにお金を払ったり寄付をしたりする傾向が強い。年齢層によって均等に分布しているという。AMI(アメリカメディア協会)による調査から。
News Corp encourages staff to try ChatGPT, forms AI taskforce
【有料購読者向け記事】:
Rupert Murdoch氏率いるNews Corp。そのお膝元News Corpオーストラリアでは、最高責任者Michael Miller氏が、社員宛てメールで「各部門のスタッフはChatGPTを試用すべき」と奨励。「人工知能が我々の業界を変える」と述べる。同社は人員削減中だ。
News Revenue Hub offers free donation software for newsrooms worldwide | What’s New in Publishing | Digital Publishing News
米国のローカルニュースを技術基盤やコンサルティング提供で支援する非営利団体News Revenue Hub。さまざまなニュースメディア、コミュニティが、自社サイトに組み込んで読者ら支援者から寄付金を募ることができる寄付金管理プラットフォーム「RevEngine」を無償で提供開始。
Senator's TikTok whistleblower alleges data abuses
TikTok排除の動きが加速する米議会で、同社にさらに不利な内部証言が飛び出した。元ByteDance社員が上院議員に、同社が米国ユーザデータを容易に操作でき、バックドアリスクのある独自のソフトウェアを操作していると証言。Janet Yellen米財務長官に書類が提出されたという。
How does a news organization succeed in 2023? One word: Retention. - Poynter
「2023年、報道機関はどう成功するか? 一言で言えばリテンションだ」。獲得した新規の購読者数より、継続購読を選択した購読者数の維持(リテンション)が価値があるというロジックを解説。それは“パーソナライズし、価値を高める”との考え方に帰着するものと指摘する。
Retail, search and Amazon’s $40bn ‘advertising’ business — Benedict Evans
「Amazonは2022年、400億ドル近い広告を販売。それはAmazon Primeより大きく、世界の新聞業界全体よりも大きい。だが、これは本当に広告なのだろうか、家賃なのだろうか、それとも別の何かだろうか?そして、それはGoogleにとって何を意味するのだろうか?」。

——Amazonの事業ポートフォリオ上「その他」に属していた「広告」が数年前から急増していた。PrimeやAWS以上の収益力を生み出す部門が急速に立ち上がった。その現象の意味に着目した投資家Benedict Evans氏の論考。

Tech platforms struggle to verify their users' age
特に米国で、大手SNSとその未成年ユーザに関する懸念が高まっている。InstagramやTikTokの濫用が十代のウェルビーイングを損ねているとの声が日に日に増す。一方で、ユーザ情報の取得には制約があるなか、ユーザ年齢をどう厳格に確認するのかという技術課題に注目が集まる。
Spilled ink: How to prevent AI from vacuuming your business model
「ニュースメディア、特にそのトレーニングや運用における大規模言語モデルの役割から、生成型AIに対する同様のレベルの関心、知性、インパクトが生まれ、それに答えることになることを疑う人はいないはずだ。
では、もしニュースルームやライター、アーティスト、メディア企業のアウトプットがスクレイピングできなくなったら、2023年に注目される生成型AIの質はどうなるのだろうか」。
AIにメディアのビジネスモデル(の源泉)を吸引されてしまわないようにするには? 業界団体が論説した。
German publisher Axel Springer says journalists could be replaced by AI
「Bild」や「Die Welt」などを傘下にもつ独メディア企業Axel SpringerのCEO、Mathias Doepfner氏は社員宛てメールで「ジャーナリズムの仕事はAIに取って代わられる可能性が高い」「人員削減が待ち構えている」と警告。「最高のオリジナルコンテンツを作ること」が重要とも述べる。
子供たちがアルゴリズムを“批判する力”を養う米国の「AIリテラシー教育」の現場を訪ねて | MIT研究者も推奨
【有料購読者向け記事】:
「(女子校でコンピュータサイエンスを教える教師の)シューマンが生徒に呼びかける。
『今日は、ChatGPTをみんなで評価しましょう! ChatGPTが準備した授業が有益かそうでないか、それを判断するのが今日の目標です』」。

——オリジナル記事は米New York Times。メディアリテラシー教育の現場に近いが、ChatGPTなどAIが生成するロジックをどう批判的に吟味できるかを教える。興味深い試みだ。

マイクロソフト、ChatGPT本格活用(写真=ロイター) - 日本経済新聞
【ご紹介】:
日経MJ紙への連載が、日経電子版に掲載されました。よろしければご一読を。➡ マイクロソフト、ChatGPT本格活用

Disruption This Week—–3/3/2023

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2023年2月27日から2023年3月3日まで。

Digital Information World
海外ではジャーナリストや著名メディアら、OpenAIがChatGPTの学習用にかれらのコンテンツをライセンスや権利対価の支払いをせずに利用しているのを非難する動きに出ている。すでに昨年には、Microsoftが生成型AIでプログラミングを生成する「Copilot」でGitHub上のコードを利用しているとされる係争が生じている。
WSJスクープ | アップル、チャットGPT搭載アプリの承認拒否
【有料購読者向け記事】:
「米アップルは人工知能(AI)を組み込んだ電子メールアプリについて、子供にとって不適切なコンテンツを生成する可能性への懸念から更新(アップデート)の承認を見送った。同社とアプリ開発会社のやりとりで明らかになった。開発会社は異議を唱えている。
アップルの判断は、チャットボット(自動応答システム)『チャットGPT”のような言語生成AIツールの一般利用について、懸念が広がっていることを浮き彫りにした」。

——これは思わぬところで、ChatGPTをはじめとする生成型AI技術普及には躓きの石。記事の文脈では、AIが公序良俗に反する表現を行う懸念が課題だが、他方で著作権問題もいずれ俎上に上るだろう。

インスタ創業者2人によるAIニュースフィードアプリ「Artifact」
「『あらゆるイデオロギーの媒体を広めるのが当社のゴール』『配信が認められるのは、高いクオリティ水準をクリアした記事だけです』(シストロムCEO)」。

——Instagramの共同創業者らがリリースした新たなニュースアプリ「Aritfact」。自分もぼちぼち使い始めている。利用とストレスの少ないフィード表示が“TikTokライク”なUXを求めていると理解するが、同時に高品質なコンテンツ表示をどう担保しようとしているのか。その一端が見えるレビュー記事。

国内のポッドキャストユーザーは1,680万人に。Z世代は約3割が毎月利用。「ポッドキャスト国内利用実態調査」を発表
「ポッドキャストユーザーは前年から増加、日本国内の利用率は15.7%に。特に15~29歳のZ世代は28.1%が利用。国内ユーザー総数は推計1,680万人」。

——近年、朝日新聞がオトナルと組んで実施しているポッドキャスト関連国内調査。賑々しく伝わる音声市場だが、この調査、単純に昨年と比較すると、「月1回利用する」ユーザの割合は14.4%から15.7%に、ということで、大幅増とはいえないことがわかる。

Flipboard is leaning into Mastodon — and away from Twitter | Engadget
米ニュースアプリ「Flipboard」が(Twitterを代替する)Mastodonサポートを発表。分散プロトコルのActivityPubのサポートで、FlipboardユーザがコンテンツをMastodonへ投稿でき、MastodonユーザがFlipboardコンテンツをフォローできるようにする動きだ。Twitterの外部向けAPIなどのサービスの存続が懸念されるなか、当然の動きとも見える。
ジャック・ドーシー氏肝いりの「Bluesky Social」アプリ、App Storeに登場
「ジャック・ドーシー氏が2019年に立ち上げた分散型オープンプロトコル開発プロジェクト『Bluesky』のソーシャルアプリ『Bluesky Social』のプライベートβ版が米AppleのApp Storeに登場した」。

——ドーシー氏がまだTwitterのCEOであった当時に立ち上げた秘密プロジェクト「Bluesky」がようやく公開。SNSとしてのコンセプトが必ずしも奇異なものではないが、それを実現する分散プロトコル(言い換えれば、単一のプラットフォームに依拠しない)によるサービスという点が目新しい。後ほど言及するMastodonなどに近いもの。Twitterを根本から作り直そうとして果たせなかった意味がわかる。

出版状況クロニクル178(2023年2月1日~2月28日) - 出版・読書メモランダム
「(22年の電子出版市場は)電子コミックの成長は21年と比較し、半減し、緩やかになってきているが、占有率は89.3%に及び、23年は90%を超えるであろう。
それに対し、電子書籍は500億円に達するかと思われたが、マイナスに転じ、成長は止まったと考えられる」。

——この数年好調を維持してきた電子出版。だが、その成長は停滞期に。また、その成長の原動力もコミック頼み、かつ、ヒットタイトル依存となると、なかなか良い材料を見いだしにくい。

2022年出版市場(紙+電子)はコミックが書籍を逆転、占有率はコミック41.52%:書籍40.97%:雑誌17.51%に ~ 出版科学研究所調査より | HON.jp News Blog
「出版科学研究所が1月25日の時点で紙の『雑誌』として公表している数字には、かなりの割合でコミック(『雑誌扱いコミックス』と『コミック誌』)が含まれている。そこで、コミック市場の内訳が発表された時点で、『書籍(コミックを除く)』や『雑誌(コミックを除く)』の実態を明らかにするのがこの記事の目的だ」。

——複雑な流通関連統計を統合した鷹野凌氏の労作。「コミック6770億円に対し、書籍が6680億円、雑誌が2855億円となり、ついにコミックが書籍を逆転した」がわかった。

焦点:生成AI、検索サービスへの導入は巨額コスト必至
「オープンAIのサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)はツイッターへの投稿で、チャットGPTでの会話1回当たりのコストは数セント以上と『目玉が飛び出るほどだ』と明かしている。
アルファベットのジョン・ヘネシー会長はインタビューで、生成AIでやり取りするコストは標準的なキーワード検索の10倍以上に達する可能性が高いが、少し手を加えればすぐにコストを抑制できると述べた」。

——ジェネレーティブAI全般に言えることだが、その電力消費やサーバ負荷などが驚くほど高いことは何度も指摘してきた。そもそもそのようなコストをリクープできるようなビジネスモデルが発明されていないことがポイントなのだろうが。

2022年 日本の広告費 - News(ニュース) - 電通ウェブサイト
「下半期は、ウクライナ情勢や欧米の金融政策の転換による経済環境の大きな変化、新型コロナの再拡大などの影響を受けたものの、社会・経済活動の緩やかな回復に伴い『外食・各種サービス』『交通・レジャー』を中心に広告需要が高まった」。

——これは“デジタル広告”ではなく、総広告費における概要。海外、特に米国での現状とは見え方が異なるのが興味深い。

「戦争とテック企業 ロシアによるウクライナ全面侵攻とテック企業の対応」川口 貴久 - スマートニュース メディア研究所 SmartNews Media Research Institute
【ご紹介】:
私が参加する研究会の中心メンバー川口貴久氏が、スマートニュース メディア研究所に寄稿。大手テック企業の果たす役割について、多面的な評価を行う貴重な論。ぜひ一読を。

Disruption This Week—–10/2/2023

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2023年2月7日から2023年2月10日まで。

AI is eating itself: Bing's AI quotes COVID disinfo sourced from ChatGPT
誤ったAI生成情報をAIベースの検索エンジンが紹介、拡散するという恐れられていた負のフィードバックループが早くも現実味。米TechCrunchが報道。メディアの偽情報検証を行うNewsGuradが実験意図でAI生成させた陰謀論的コンテンツをBingが検索結果としてピックアップした。
アップルとグーグルは「寡占状態」 公取委がアプリ市場の規制提言:朝日新聞デジタル
【有料購読者向け記事】:
「公正取引委員会は9日、スマートフォンの基本ソフト(OS)やスマホ向けアプリ配信市場の実態を調べた報告書を発表した。市場は米IT大手のアップルとグーグルによる寡占状態になっており、『十分な競争が働いていない』と指摘。競合の参入を促すため、新たな法整備を政府に提言した」。

——先日のApple CEOの来日などは、この件のロビーイング活動も含まれていたものと見える。公取、提言までしたが、このあとは、自主規制を待つということだろうか。

The Times Reports 11% Increase in Revenue as Digital Subscriptions Climb
【有料購読者向け記事】:
米New York Times、2022年通期および同第4四半期の業績を開示。通期では、買収したThe Athleticの会員を別にして、有料購読者100万人超獲得、計960万人とした。デジタル購読者数は880万。売上では、前年比11%増を果たした。利益は微増に止まる。
Google Search's guidance about AI-generated content  |  Google Search Central Blog  |  Google Developers
Google、同社の検索エンジン運用ガイドラインで、AI生成によるコンテンツの取り扱いについて同社の方針を解説。同社の過去からの取り組みを振り返りながら、自動生成コンテンツは必ずしもスパムでないと明言。引き続きコンテンツの有用性と品質に注目していくと述べる。
睡眠時間をいくら削っても報われない…全国紙の元政治部記者がユーチューバーに転身した理由 「いい記事を書けばカネになる」は過去の話
「ネット社会は魅力ある個人がインフルエンサーとなってファンに支えられるような場となっているのだ。その中で新聞社が情報を売るためには、個人の発信を重視してファンを作っていく必要があるのではないか……」。

——今度、毎日新聞を辞め“ユーチューバー”業に専念するらしい宮原健太氏の説得力あるオピニオン。情報源を築き、記事を生み出す新聞社記者の価値は減じていないと思うが、それを以下に伝えるかという点では、組織も個人もネット時代の変化に適合すべきという趣旨。

Google now wants to answer your questions without links and with AI. Where does that leave publishers?
MicrosoftがChatGPT搭載の検索エンジンBingを発表したが、プレビューの範囲では既存検索UIとChatGPT版の“両論併記”に見える。一方のGoogleもBard版をプレビューし対抗。事件は、検索からのリンクをライフラインとしてきたメディア業界に累が及ぶことになると指摘する記事。
Googleが築いてきた検索連動型広告は、同社にとり今にいたる巨大な収益源だが、それと同程度にメディアに“検索流入”をもたらしてきた。これらが音を立てて崩れる可能性も見え隠れしてきた。
Microsoft launches the new Bing, with ChatGPT built in
昨日予告したとおり、米MicrosoftがChatGPT搭載の新Bingをプレビュー。CEOのSatya Nadella氏がアナウンスした。一般に提供しているChatGPTの新バージョン、ChatGPT-4という。日本版Bingでも「順番待ち」に登録するとChatGPT版が使えるようになるようだ。
サブスクはもう古い?…世界的な不況が従量課金への移行を促す
「従量課金モデルは、名称通り顧客が使用した量に応じて金額を請求するというものだ。アマゾンウェブサービス(AWS)などのクラウドプラットフォームは、ホスティングサーバーの使用料を分単位で請求している」。

——買い切りのモデルからサブスクモデルへ。そして、今後は従量制、すなわち“使った分だけ”支払うモデルが普及するという。固定両料金のサブスクが高価に感じられるようなタイミングで。さて、普及するのかどうか。

Google details Bard, its ChatGPT rival
Google、大規模言語モデルLaMDAをベースにしたチャットボット「Bard」を限定的ながら外部テストに提供すると発表。もちろん、ChatGPT対抗。Googleは3つのAI関連プロジェクトを社内で推進中だったが、取り巻く状況の急進展で急きょその3つを公表することになったようだとする記事。
ChatGPTを越えてその先へ:企業におけるジェネレーティブAIの未来 | ガートナー
「マーケティングとメディアでは既に、ジェネレーティブAIの影響が及んでいます。ガートナーの予測は次のとおりです。
– 2025年までに、大企業から送信されるマーケティング・メッセージの30%は、合成的に生成されたものになる(2022年の2%未満から増加)。
– 2030年までに、AI生成コンテンツ(テキストから映像ま) が90%を占める大ヒット映画が公開される(2022年の大ヒット映画では0%)」。

——生成型AIが今後生み出す各種産業へのインパクトをガートナーが整理、予測。もちろん並行して消費者への直接的な影響も大きい。

動画配信、ゲーム市場に熱視線(写真=ロイター)
【ご紹介】:
日経MJ紙での連載が日経電子版に掲載されました。よろしければお読み下さい。
2022年、編集部員がハマったコンテンツを振り返る - Media × Tech
【ご紹介】:
Media×Techから新着記事です。やや遅めの振り返り。私もコメントで参加しています。よろしければどうぞ。➡ 2022年、編集部員がハマったコンテンツを振り返る

Disruption This Week—–3/2/2023

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2023年1月30日から2023年2月3日まで。

'Inaudible' watermark could identify AI-generated voices
AI生成型音声コンテンツ技術に取り組むResemble AI、同社が生成した人工合成音声の悪用を回避するため、音声版“電子透かし処理”技術「PerTh」を開発。記事は同技術を概説、堅牢なものであると解説する。
バイデン政権、AppleとGoogleのアプリストア開放を議会に要請
「米商務省電気通信情報局(NTIA)は2月1日(現地時間)、『モバイルアプリエコシステムにおける競争』と題する報告書を発表し、米Appleと米Googleが運営する現在のモバイルアプリストアモデルは『消費者と開発者にとって有害であり、修正するためのポリシー変更が必要』と主張した」。

——記事中に、「NTIAは電気通信およびインターネットポリシーに関する大統領の主要顧問であり、この主張はバイデン政権の主張ということになる」と補足がある。強硬派の共和党などの動きに押された格好か。

米で党派メディア台頭 地方紙装う「ピンクスライム」
【有料購読者向け記事】:
「これらのサイトの記事には記者の署名がなかったり、自治体や団体の発表資料を貼り付けたりしたものが多く、記事の転用も目立つ。会社概要を見ると『小さな政府の提唱団体から一部資金提供を受けています』『本紙は非営利団体のプロジェクトです』などの小さなただし書きがある。
こうしたサイトは『ピンクスライムジャーナリズム』と呼ばれる。ひき肉などの増量に使われ批判を浴びた加工肉『ピンクスライム』になぞらえ、本物のような見かけだが『出所が不明な点が似ている』と、フリージャーナリストのライアン・ジグラフ氏が命名した」。

——これらマイクロサイトを束にしている運営している元締めとなる企業も存在している。現代の“メディア・エコシステム”のありようを象徴するような事例だ。

Leaked Messages Show How CNET's Parent Company Really Sees AI-Generated Content
誤謬だらけのAI生成コンテンツを掲載していたRed Ventures傘下のCNET(や金融商品関連サイトBankrate)。露見で同社らが本当に恐れたのは、彼らの取り組みがAI生成コンテンツによる新たなコンテンツファーム・スキームであり、Google検索からバンされることだったとする報道。Red Venturesが傘下に収めた数々の専門サイトは、SEOの徹底で稼ぐアーキテクチャだった。AI生成コンテンツはこれを安価に実現するアプローチということ。
アングル:社長交代も「トヨタイムズ」、直接発信にこだわる訳
「上場会社の社長交代は記者会見の形を取るのが一般的だが、1月26日に約14年ぶりの社長交代を発表したトヨタ自動車は違った。オウンド(自社)メディア『トヨタイムズ』上でニュース番組として緊急生放送し、豊田章男社長は『ステークホルダー(利害関係者)の皆さまにできるだけ早く正しくお伝えするため、急遽このような場を設定した』と述べた」。

——トヨタがオウンドメディアに力を入れている。社長交代という重要な公式発表の場も、自社“メディア”で。その背景をトヨタが嫌うメディアが解説。ポイントは、「ステークホルダー」に直接伝えるという意思がメディア忌避を生んでいるということ。

Instagram’s co-founders are back with Artifact, a kind of TikTok for text
Instagramの共同創業者Kevin Systrom氏とMike Krieger氏が新たなソーシャルメディア・アプリ「Artifact」を公開! New York Timesなどの大手メディアからニッチな小規模なブログまで、厳選されたコンテンツが並ぶ記事フィードが表示。テキストのためのTikTokのようなものだとする記事。ユーザの閲覧から“For You”コンテンツが生成される、まさにTikTok的アルゴリズムか。
Teachers rejoice! ChatGPT creators have released a tool to help detect AI-generated writing
ChatGPTが広く使われるようになり懸念視されているのが、学生による濫用。学生の論文を評価しなければならない教師は頭を抱えている。記事は、ChatGPTの開発元OpenAIがAI生成による文章かどうかを判定するツール「AI Text Classifier」を開発したとする話題。
出版状況クロニクル177(2023年1月1日~1月31日) - 出版・読書メモランダム
「電子書籍のほうは5013億円、前年比7.5%増だが、紙と合わせても、1兆6305億円、同2.6%マイナスになっている」。

——電子書籍の成長は継続しているが、全収入の減収を補えない。会社経営で言えば、成長分野に賭け、低迷分野は縮小で良いのだが。

BuzzFeed CEO Says AI-Powered Content Creation Will Become ‘Part of Our Core Business’ in 2023
米BuzzFeed CEOのJonah Peretti氏が社員にメモ。“インターネットの過去15年間が、コンテンツをキュレーションするアルゴリズムフィードにより定義されたとすれば、次の15年間は、AIとデータがコンテンツ自体の制作、パーソナライズ、動画化を支援することで定義される”とする。
出版業界事情:本の未来を問うハイブリッド型文学全集『小学館世界J文学館』登場 永江朗 | 週刊エコノミスト Online
「この1冊の本(全268ページ)の内容は125冊分の本の解説。色鮮やかな各ページは、小学館お得意の子供向け図鑑を思わせる。作品の登場人物や時代背景、作者について図解し、さらには参考文献も掲載されている。そして、ページの隅にQRコード。これをスマホやタブレットで読み取ると、各作品の本文があらわれるというしくみだ」。

——面白い。納得感のある発想。実際、ページをランダムにめくりながら、期待もしていなかったような情報に出会い深みへ、という発見は、印刷物から出てきやすいと思う。その入り口になる可能性がある。