Disruption This Week—–10/2/2023

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2023年2月7日から2023年2月10日まで。

AI is eating itself: Bing's AI quotes COVID disinfo sourced from ChatGPT
誤ったAI生成情報をAIベースの検索エンジンが紹介、拡散するという恐れられていた負のフィードバックループが早くも現実味。米TechCrunchが報道。メディアの偽情報検証を行うNewsGuradが実験意図でAI生成させた陰謀論的コンテンツをBingが検索結果としてピックアップした。
アップルとグーグルは「寡占状態」 公取委がアプリ市場の規制提言:朝日新聞デジタル
【有料購読者向け記事】:
「公正取引委員会は9日、スマートフォンの基本ソフト(OS)やスマホ向けアプリ配信市場の実態を調べた報告書を発表した。市場は米IT大手のアップルとグーグルによる寡占状態になっており、『十分な競争が働いていない』と指摘。競合の参入を促すため、新たな法整備を政府に提言した」。

——先日のApple CEOの来日などは、この件のロビーイング活動も含まれていたものと見える。公取、提言までしたが、このあとは、自主規制を待つということだろうか。

The Times Reports 11% Increase in Revenue as Digital Subscriptions Climb
【有料購読者向け記事】:
米New York Times、2022年通期および同第4四半期の業績を開示。通期では、買収したThe Athleticの会員を別にして、有料購読者100万人超獲得、計960万人とした。デジタル購読者数は880万。売上では、前年比11%増を果たした。利益は微増に止まる。
Google Search's guidance about AI-generated content  |  Google Search Central Blog  |  Google Developers
Google、同社の検索エンジン運用ガイドラインで、AI生成によるコンテンツの取り扱いについて同社の方針を解説。同社の過去からの取り組みを振り返りながら、自動生成コンテンツは必ずしもスパムでないと明言。引き続きコンテンツの有用性と品質に注目していくと述べる。
睡眠時間をいくら削っても報われない…全国紙の元政治部記者がユーチューバーに転身した理由 「いい記事を書けばカネになる」は過去の話
「ネット社会は魅力ある個人がインフルエンサーとなってファンに支えられるような場となっているのだ。その中で新聞社が情報を売るためには、個人の発信を重視してファンを作っていく必要があるのではないか……」。

——今度、毎日新聞を辞め“ユーチューバー”業に専念するらしい宮原健太氏の説得力あるオピニオン。情報源を築き、記事を生み出す新聞社記者の価値は減じていないと思うが、それを以下に伝えるかという点では、組織も個人もネット時代の変化に適合すべきという趣旨。

Google now wants to answer your questions without links and with AI. Where does that leave publishers?
MicrosoftがChatGPT搭載の検索エンジンBingを発表したが、プレビューの範囲では既存検索UIとChatGPT版の“両論併記”に見える。一方のGoogleもBard版をプレビューし対抗。事件は、検索からのリンクをライフラインとしてきたメディア業界に累が及ぶことになると指摘する記事。
Googleが築いてきた検索連動型広告は、同社にとり今にいたる巨大な収益源だが、それと同程度にメディアに“検索流入”をもたらしてきた。これらが音を立てて崩れる可能性も見え隠れしてきた。
Microsoft launches the new Bing, with ChatGPT built in
昨日予告したとおり、米MicrosoftがChatGPT搭載の新Bingをプレビュー。CEOのSatya Nadella氏がアナウンスした。一般に提供しているChatGPTの新バージョン、ChatGPT-4という。日本版Bingでも「順番待ち」に登録するとChatGPT版が使えるようになるようだ。
サブスクはもう古い?…世界的な不況が従量課金への移行を促す
「従量課金モデルは、名称通り顧客が使用した量に応じて金額を請求するというものだ。アマゾンウェブサービス(AWS)などのクラウドプラットフォームは、ホスティングサーバーの使用料を分単位で請求している」。

——買い切りのモデルからサブスクモデルへ。そして、今後は従量制、すなわち“使った分だけ”支払うモデルが普及するという。固定両料金のサブスクが高価に感じられるようなタイミングで。さて、普及するのかどうか。

Google details Bard, its ChatGPT rival
Google、大規模言語モデルLaMDAをベースにしたチャットボット「Bard」を限定的ながら外部テストに提供すると発表。もちろん、ChatGPT対抗。Googleは3つのAI関連プロジェクトを社内で推進中だったが、取り巻く状況の急進展で急きょその3つを公表することになったようだとする記事。
ChatGPTを越えてその先へ:企業におけるジェネレーティブAIの未来 | ガートナー
「マーケティングとメディアでは既に、ジェネレーティブAIの影響が及んでいます。ガートナーの予測は次のとおりです。
– 2025年までに、大企業から送信されるマーケティング・メッセージの30%は、合成的に生成されたものになる(2022年の2%未満から増加)。
– 2030年までに、AI生成コンテンツ(テキストから映像ま) が90%を占める大ヒット映画が公開される(2022年の大ヒット映画では0%)」。

——生成型AIが今後生み出す各種産業へのインパクトをガートナーが整理、予測。もちろん並行して消費者への直接的な影響も大きい。

動画配信、ゲーム市場に熱視線(写真=ロイター)
【ご紹介】:
日経MJ紙での連載が日経電子版に掲載されました。よろしければお読み下さい。
2022年、編集部員がハマったコンテンツを振り返る - Media × Tech
【ご紹介】:
Media×Techから新着記事です。やや遅めの振り返り。私もコメントで参加しています。よろしければどうぞ。➡ 2022年、編集部員がハマったコンテンツを振り返る

Disruption This Week—–30/12/2022

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2022年12月26日から2022年12月30日まで。

後藤達也の特別授業at東工大 個人ジャーナリズム・クリエイターのあり方とは
私個人的には、お歳暮もしくはお年玉的価値のあるレクチャー。
Gaming takes over everything
“ゲームこそストリーミングの最大の競合”との認識は新しいものではない。今度は、ハリウッドやストリーミングがゲームを題材に次々と大作。23年には「The Super Mario Bros. Movie」、そしてPlayStation題材の作品などが控えている。もちろん、ゲーム開発をめぐってはサウジアラビアが動き出すなど、ゲームはますますエンタメの中心、カネの集まる場へと向かっているとする記事。
Creator Financing Is Going Mainstream
【有料購読者向け記事】:
大手プラットフォームでは、“クリエイターエコノミー”トレンドに絡んで設立した“基金”から撤退する動きが目立つが、クリエイター向けファイナンススキームづくりに初期から関与してきた投資家が、着実に前進しつつある現況と進む方向を詳細に解説した記事。
The AI spammers are coming
「よくできていて、説得力があり、そしてまったく間違っている」コンテンツスパムが、ChatGPTのようなテクノロジーで大量に算出される。それはSEOのあり方を変える。10年続いたプラットフォームがメディアへ与えた影響力に匹敵する地殻変動が来年以降やってくるとの論説。
「イノベーション促進へ内製化によるデータビジネスの推進を」:毎日新聞社 高添博之 氏 | DIGIDAY[日本版]
「『re:Invent』に弊社からエンジニアを派遣しました。今回は「データビジネス」関連の新サービス・新機能が多く発表されています。AWSが言うように『データアクセスの民主化が企業のイノベーション促進』することを実現するため内製化を進めていきたいと考えています」。

——読者についても、コンテンツについても、老舗メディアの強みはその膨大な“資産”だ。だが、その資産をデータとして活用できなければ、つねに“フロー”としてのビジネスであり続けることを強いられる。資産の活用が手がけられれば、展望が見えてくるはずだ。

The rise of misinformation and how governments are combatting it
「エコーチェンバーからの脱出:各国政府はどう偽情報と闘っているか」。欧州の各国政府関係者向けメディア「Global Government Forum」が政府広報担当者のパネルディスカッションを開催。欧州各国の「偽情報」への対処を議論。基本は、政府と市民間のコミュニケーションをどう増やしていくかが課題ということに。
米サウスカロライナ州Furman大の教授は、ある学生がChatGPTを用いて課題論文を提出したのを発見。課題は“恐怖のパラドクス”を論じることだが、論文は哲学者ヒュームに結びつけ自信満々に誤った引用をしていた。教授はこれがChatGPTの特徴をなすと指摘する。
Googleは敵か味方か 米メディアに「現実主義」の兆し
【有料購読者向け記事】:
「多くの新聞社にとってテック企業は『宿敵』というのが定説だが、ドクター氏(=メディア評論家で、自らも地方メディア「ルックアウト・サンタクルーズ」を立ち上げたケン・ドクター氏)は『グーグルやフェイスブックと競うつもりはない』と言い切る。きめ細かい需要開拓の結果、『地域の潜在顧客とつながる新たな方法のニーズがある』と分かってきたことが大きい」。

——糧道を食われ、窮地の老舗メディア群が法案に支えられてプラットフォームと戦う、もしくは支払交渉に持ち込む……という見慣れた図式から、プラットフォームとの協業関係を引きだす動き。当然ながら望ましい構図だが、プラットフォームの動きが単なるポーズで止まらないようにするためにも、注視を続ける必要がある。

The Atlantic introduces dynamic paywall with varying prices as it hopes to attract 1 million subscribers
米Atlantic、1月より読者の行動から購読料金を変化させる“ダイナミック・ペイウォール”制を開始する。従来は電子および印刷版の組み合わせ、プレミアム版など3種の価格があったが、読者1人当たり収入の増加を目指して動的に価格が変化する新システムを稼働させる。
A New Chat Bot Is a ‘Code Red’ for Google’s Search Business
【有料購読者向け記事】:
新しい種類のチャットボット技術が従来の検索エンジンを再発明、あるいは代替する態勢を整えたことで、Googleは同社の主要な検索ビジネスに対する初めての深刻な脅威に直面している可能性がある。ある幹部は、これが同社の将来を左右すると評する。
検索生み出す収益は同社全体のそれの8割に及ぶという(記事)。そのような強力なビジネスモデルを持てば、この刷新に向かうことは難しくなると、New York Timesの記事は結論として述べている。
AI創造作品、「人工合成メディア」への懸念
【ご紹介】:
日経MJ紙への寄稿が日経電子版に掲載されました。よろしければご覧下さい。➡ AI創造作品、「人工合成メディア」への懸念

NHK、BBCなどと偽情報対策で連携へ【ファクトチェック通信】

FIJ|ファクトチェック・イニシアティブ

NHK、BBCなどと偽情報対策で連携へ【ファクトチェック通信】
【ご紹介】:
FIJ(ファクトチェック・イニシアティブ)が時々のファクトチェックに関連する話題を配信するニューズレター「ファクトチェック通信」にWeb版ができました。ぜひご活用下さい。

Disruption This Week—–16/12/2022

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2022年12月12日から2022年12月16日まで。

An Alternate Reality: How Russia’s State TV Spins the Ukraine War
【有料購読者向け記事】:
米New York Times、ロシア最大の国営メディア企業「全ロシア国立テレビ・ラジオ会社(通称VGTRK)」から流出した膨大なデータからメール通信部分を分析。ウクライナ侵攻開始後のやり取りから、数々の情報工作(キャンペーン)の実態を明らかにした。
ユーチューバー、映像権売却で大金獲得
【有料購読者向け記事】:
「同氏(=ジャスティン・ワトキンス氏)はあるスタートアップ企業からの売り込みに驚いた。それは、同氏が制作した何千もの古い動画から得られる広告収入と引き換えに200万ドル(2億7000万円)以上を受け取らないかというものだった」。

——過去の投稿記事をめぐる権利を売却するような取引がYouTuberにも生じている。もちろん、このトレンドは音楽業界で起きており、ビッグネームが次々と過去の楽曲をめぐる権利を手放している。個人的にはこのスキームをより小型にして汎用化できないものかと考える。もちろん、それもまた今起きているトレンドだ。

Synthetic media forces us to understand how media gets made
「実在の人物がしてもいないことをしているリアルなシーンや、性的な女性の画像、あるいは戦争犯罪の偽画像の氾濫を簡単に偽造できるようにすることは、決して笑えない事態だ」。
“ジェネレーティブAI”が生み出す人工合成メディアの時代に備え、取り組む動きを紹介・論説する記事。
Twitterの「シャドウバン」の実態を暴露するイーロン・マスクお墨付き社内文書「Twitterファイル」第2弾が公開される
「Twitter Japanの公式アカウントが2020年に『Twitterがシャドウバンを行っていると指摘されますが、現在も過去にも行ったこともありません』と述べるなど、Twitterはシャドウバンの実施を否定しています。
そんなシャドウバンの実態を明かす『Twitterファイル』第2弾が、2022年12月9日に公開されました」。

——昨日から紹介しているTwitter社内で行われてきた恣意的な投稿検閲(党派的な偏りから投稿を排除するなどの行為)、“シャドーバン”について、第2弾の報道が米国で行われている。記事はそれを紹介したもの。興味深い事例が含まれている。

Will your paywall kill your website traffic (and ad revenue)? | What’s New in Publishing | Digital Publishing News
従量型ペイウォール(たとえば、月々一定数の記事は無料とし、それ以上を有料とするような運用)を推進する筆者が、設計によってペイウォール化しても読者流入、広告収入などを激減させることはなく、むしろ向上させるケースがあるのだと論説する記事。
Bari Weiss reveals business plan for buzzy new media startup
Elon Musk氏がSubstack買収に関心を持つようになった背景? New York Timesコラムニストを辞め、Substackニューズレターで独立メディアを立ち上げたBari Weiss氏の話題。Musk氏提供の資料でTwitter内部における“影の検閲”体制を暴いたことから知名度急上昇だ。
Who will win digital advertising’s ‘Game of Thrones’?
米Insider Intelligenceアナリストらによる、2023年のデジタル広告市場予測。15年にはGoogleとMetaで8割近くを占めるという複占状況が相当程度崩れる。市場伸長のわずか15.8%を両社が占めるのみに。では成長株は…? チャートを見れば一目瞭然だ。
The traditional story structure gets deconstructed
「ニュースのテクノロジーは大きく変化しているが、今日の記事の基本構成は、例えば1932年のものと大きくは変わっていない」と指摘し、新興メディアのAxiosやSemaforなどについて触れ、今後のChatGPTなどとのインタラクションに可能性を見る論説。短いが刺激的だ。
How ChatGPT could disrupt the business of search
米Axiosが「ChatGPTがどう検索ビジネスをディスラプトするか」との論説。簡単な質問を文書で入力すると、ひとつのまとまった文章で回答を返してくれるChatGPT。あふれかえる候補群とリンクの束がかえってくるのとどちらが消費者にとって魅力的に見えるか? 答えは見えている。
BBC preparing to go online-only over next decade, says director general
英BBC会長Tim Davie氏、今後の10年間で放送を終了し、BBCがオンライン専業となるビジョンを呈示。
「やがて、リニア放送は減少し、よりカスタマイズされたオンラインサービスが提供されることになるだろう」「BBCを1つの提供物(アプリ)にまとめる」とも述べた。
実践ノウハウ公開!ニュースレターとポッドキャストで「個人メディア」 - Media × Tech
【ご紹介】:
Media×Techから新着です。個人メディアの運営にまつわるノウハウ、実践記をお届けします。ぜひご参考に。

Disruption This Week—–9/12/2022

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2022年12月5日から2022年12月9日まで。

Instagram Cuts Incentives to Some Reels Creators
【有料購読者向け記事】:
YouTubeerに代表されるような、プラットフォームが得る収入から、投稿者(クリエイター)も成果主義的に収入を得る、“クリエイター経済”のスキームが終えんに直面。記事はInstagramで投稿者が得る収入が激減していることなどを紹介している。ほんの1年ほど前には、大手プラットフォームはクリエイター向けのインセンティブ制度を競っていたが、最近ではインスタに限らずPinterestやSnapchatなどが次々と廃止かトーンダウンへ。
WaPo to discontinue ad tech arm Zeus as a standalone business
昨日紹介したように、米Washington Postは新聞(メディア)業界内では珍しく本格的なテクノロジー基盤開発を自らの手で進めてきた。だが、出版・配信基盤のarcXPについては部門売却の検討を開始する一方、広告配信基盤のZeusは、他社へのライセンス(これにより広範なプレミアムアドネットワーク構築)を諦め、自社利用に止める選択に向かう。
WSJスクープ | 米紙ワシントン・ポスト、テク事業の売却検討
【有料購読者向け記事】:
「同紙はベゾス氏の指揮の下、デジタル化に注力し、広告テクノロジー事業を立ち上げ、新しいアプリや分析ツールを開発してきた。中でもArc XPは間違いなく最も野心的な技術プロジェクトで、世界中に約250人の専任スタッフを擁している」。

——Washington Postが育ててきたソフトウェア基盤「arcXP」は、CMSに始まり広告配信(アドサーバ)、各種分析など、大手メディアが備えたいシステムをまとめて提供できるもの。外販しているが、まだ黒字化していない。レガシーメディアとしては、この部門に集中的な資源投下をできないという判断に至ったようだ。

全米のローカル紙が次々と閉鎖されるなか、いわゆる「ピンク・スライム」サイト(地方紙を装った党派的な団体が資金源とするWebサイト)が、その穴を埋めようと殺到している。2022年11月現在、メディアの品質確認を行う事業NewsGuardは全米で1,202の「ピンクスライム」サイトを確認したとリポート。
これは最近のPew Researchもリポートした「オルタナティブ・メディア」の伸長現象と符合する。
Facebook、選挙スタッフに対する殺害予告の広告をすんなり承認してしまう
「グローバル・ウィットネス社とニューヨーク大学が行なった調査で、MetaことFacebookが、選挙スタッフに対する殺人予告を含んだ広告20個のうち15個をそのまま承認していたことがわかりました。一方、TikTokとYouTubeは殺人予告広告を即座に削除、申請したアカウントを凍結するという結果でした」。

——調査会社と大学の研究者が、調査の手法を解説もしている。また、他のプラットフォームでは機械的にせよ実施している掲載の即時排除も行われていないとは…。研究者らはこの研究結果の公表後にFacebookに措置変更を行うかどうかも事後的に検証するという。

チャットAI「ChatGPT」のコンテンツフィルターを解除して「銃の作り方」などを回答させる方法が発見される
「『ChatGPT』は、日本語や英語で質問文を入力すると違和感の少ない言葉で回答してくれます。そんなChatGPTには不適切な質問をブロックするコンテンツフィルターが設定されているのですが、フィルターを解除する方法が発見されたので、実際に試してみました」。

——これだけ面倒な段取りを誰かがよく発見したもの。もはやその道も塞がれているだろうとは想像するが。ChatGPTは、ネットに散在する意味のある情報(とそれに近接する情報を結びつけ)を収集、分析したものを用いるのだろうから、ネットにこのような情報があること自体が問題なのだが。
こう考えると、ChatGPTは、高度な情報を見いだしてくれる対話型検索エンジンなのだとも理解していいのだろう。

Exclusive: Adobe will sell AI-made stock images
米Adobe、同社のフォトストック(写真などイメージの販売)事業でジェネレーティブAI、つまり、Stable DeffusionやDall-EなどAI技術で生成された「作品」を受け入れ販売していくことを表明。Gettyなどはこの種の作品の排除を決めるなど、対応が種々分かれるという状況だ。
Bloomberg Media revenue up 20 percent, ad revenue up 25 percent - Talking Biz News
米Bloomberg MediaのCEO、M.Scott Havens氏が全社員宛てにメール。今年(第3四半期まで)は広告収入が前年同期比25%増となり、購読者数が22%増の45万人超となったと説明。動画部門も好調だという。

Big Tech’s Big Lie

The Information

Big Tech's Big Lie
【有料購読者向け記事】:
「ビッグテックの大嘘」。検索体験におけるGoogle、そしてAmazonの劣化に批判的な記事をそれぞれ紹介した。両ビッグテックは、過去、顧客満足の最高値を叩き出していたのだが。共通する“悪の源流”として検索と広告の癒着を指摘する記事。Appleもまた、いまや検索に連動する広告の開発に余念がないが、その行く末が見通せそうだ。
赤字アベマに賭けたサイバーA藤田社長も勝者、W杯で視聴数最高に
「2016年4月の開局以降、サイバーAのメディア事業は赤字を継続している。22年9月期には124億円の営業損失を計上する中、ジェフリーズ証券の佐藤博子アナリストの推計によると、同社はW杯放映権の獲得に150億円から200億円を支出」。

——藤田氏の賭けっぷりはすごい。かつ勝負師としての腕前を、これまでも見せつけられてきたが、今回のW杯獲得は、さらにその上を行くものだ。

熱狂の桜ヶ丘|スマートニュースとカルチャーデザイン|Kenji Tomita / Runtrip|note
【ご紹介】:
スマートニュースの元同僚、冨田憲二氏が執筆した、サービスイン10年目を迎えたスマニューの草創期を論じたポスト。当時の社内のありさまを論じた「カルチャー観点からの私的記録」。

Disruption This Week—–21/10/2022

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2022年10月17日から2022年10月21日まで。

How publishers became addicted to the traffic hit from push alerts
モバイルアプリを運営するメディアは、プッシュ通知中毒(?)英Press Gazetteが、特定期間中(17日間)にメディアがユーザに送信したプッシュ通知集計。最も多く送信したのはWashington Post(147件)、次いでThe Telegraph(140件)、Reach傘下のMyLondon(125件)だった。
多数のプッシュ通知を送信すれば、その度にアクセス(トラフィック)を生むのは間違いないが、それがユーザ体験を蝕み、ついには“うるさい”アプリ離れに至ることも分かっていながら、の振る舞いだ。
アドビ、テキストベースで動画編集できる「Project Blink」発表--AIが感情まで認識
「Adobeが米国時間10月19日、人工知能(AI)を利用し、動画内の言葉や人、物体、さらには感情までも認識し、編集のスピードアップを図る動画編集技術『Project Blink』を発表した。このAI分析は、一言で言えば、動画編集に言語処理のインターフェースを与えるものだ」。

——次々にこの種のAIを用いた言語(テキスト)によるクリエイティブ作品の制作サービスが誕生する。本ケースは、厳密にいうとテキストを用いて動画を「編集」できるインターフェイスを提供するもの。記事が紹介する事例は、動画中で笑っている人物を見つけ出し、その動画部分に手を加えるなどができるというようなもの。そもそも長い動画があったとして、これに対してテキストである特定部分を見つけ出すようなことができれば、それだけでも大きな価値をもたらすだろう。

The Logic of a Microsoft-Netflix Deal Is Growing
【有料購読者向け記事】:
Netflixが広告表示付きの廉価版を投入したことが話題になっている。同社がその広告ビジネス立ち上げのために提携したのがMicrosoft。記事は、両社がゲーミング分野への意欲でも共通し、将来の両社の統合という“陰謀論”的筋書きを述べている。
有料購読者数は2年で5倍──Metaは撤退も、ニュースレターサービス「Substack」が成長し続ける理由 | DIAMOND SIGNAL
「マッケンジー氏によると、Substack上の有料購読者数は現在約150万人で、2年前の約30万人から5倍にも拡大。この2年間で、年間100万ドル(約1億4900万円)以上の収益をSubstackを通じて得るメディアの数は2つから10以上に増え、トップ10位のメディアの年間収益の合計額は2年前の800万ドル(約12億円)から2500万ドル(約37億円)規模にまで拡大したという」。

——ニューズレター“ブーム”が終熄? Substackの躍進を追って似たようなサービスを開始したTwitter、Facebookが次々と撤退するなか、Substackが事業を成長させていると評価する記事。国内での情勢などについても言及している。

Omneky uses AI to generate social media ads
OpenAIのDALLE-2やGPT-3を用いてクリエイティブを人工的に生成するアプローチ。実験段階から実用用途を探る段階に入ってきたようだ。スタートアップのOmnekyは、これをSNS掲出用の広告の自動生成を核に、広告出稿の全プロセスのSaaS化をめざすという。刺激的なアプローチだ。
An Interview With Meta CEO Mark Zuckerberg and Microsoft CEO Satya Nadella About Partnering in the Metaverse
本日のもう一つのインパクト。個人ブログ「Stratechery」のBen Thompson氏がMicrosoft CEOのSatya Nadella氏とMeta CEOのMark Zuckerberg氏の2人にインタビューをしている(両社はメタバースで提携)。過去にはNYTimesのCEOと本格的に取材を実現していることは紹介した。個人メディアの極北ともいえる。メディア界の秩序は、動いている。
Inside the Identity Crisis at the New York Times | Semafor
本日最大のインパクト。準備期間中からメディア界の関心を集めていた、2人のSmith氏のメディアプロジェクト「Semafor」がローンチ。巻頭はBen Smith氏の「New York Times、アイデンティティ危機の内幕」。Axiosフォーマットを意識したスタイルをめざしているようだ。
More Than 50% of Nonprofessional U.S. Creators Now Monetize Their Content, Adobe Study Finds
米Adobe社、クリエイターエコノミー関連調査の結果を発表。非プロフェッショナル(フルタイムでない)なクリエイターの50%以上が、自身のコンテンツで収入を得ており、その収益力が増していることがわかった。その比率は、ブラジル(59%)、米国(53%)、ドイツ(51%)、英国(51%)、韓国(51%)と続く。
19% of U.S. consumers subscribe to digital publications
【有料購読者向け記事】:
米国では、消費者の約4%という比較的少数だが非常に熱心な「パワー購読者」のグループが、デジタル出版物の購読者数の大部分を支えていると、National Research Groupらの調査でわかった。購読者の48%は、購読数が2〜5、21%は5つ以上だというのだ。
記事は、現在購読していない米国の消費者の73%を取り込むことができれば、 購読者を大幅に増やす余地があるとも指摘する。
Netflixの広告つき料金プランの開始で、ストリーミングの「終わりの始まり」がやってくる
「ネットフリックスの最高経営責任者(CEO)のリード・ヘイスティングスは22年7月、『今後5年から10年の間に旧来のテレビ(リニアTV)は終わる』と予測した。彼が言わなかったことは、ネットフリックスやほかの配信事業者がその代わりに現れるだけ、ということなのだ」。

——広告表示付きの廉価版(もしくは無料版)の映像配信サービスへの拡張(もしくは移行)が大手サービスで進んでいる。記事は、このもたらすものが映像コンテンツ自体の核心やオリジナル性が変化しなければ、従来の(リニア型)TVが姿を少々変えたものと変わらない、つまり50年以前にTVがもたらしたものと変化がないものになると述べる。

「シンセティック・メディア」の時代に報道は何ができるか——デジタル報道の最前線「ONA2022」現地レポート - Media × Tech
【ご紹介】:
Media×Techに新着記事です。先ごろ米LAで開催されたONA22を取材したリポートです。メディアとテクノロジーがクロスするホットな領域を荻原和樹氏が解説しました。