Disruption This Week—–14/1/2022

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2022年1月1日から2022年1月14日まで。

NFTでニュースを売る、ブームの背後にある教訓とは?
「『シビル』はAPのほかにも、ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポスト、ウォールストリート・ジャーナルを発行するダウ・ジョーンズなどの大手メディアに次々と提携を持ちかけたが、いずれも実現しなかったという」。

——平和博氏の論説。今般のメディア×NFTブームが、2016年同時にブームになったブロックチェーンを基盤としてメディアを運営、さらに資金調達(ICO)を図るというブームに類似すると論評。その際にも、各社が発行するトークンが、事業の実態と無関係に、高騰するという欲望の力学を前提にしていた。これに頼ったモデルなら、今度も潰えるだろう。

米ワシントンを拠点として、1,000万ドルを調達したメディアスタートアップ「Grid」が誕生した。Buzzfeed、Politico、CNN、ABC出身者ら50名を集め、「裕福でエリートな専門家」をターゲットに、分析や調査法道を提供するという。ここでも高学歴・富裕層向けメディア企画だ。

Journalism, media, and technology trends and predictions 2022

Reuters Institute for the Study of Journalism

Journalism, media, and technology trends and predictions 2022
恒例のReuters Instituteらによる「Digital News Project」が公開。「Journalism, media, and technology trends and predictions 2022」とのタイトルで広範で詳細な報告書に。ニュース退潮の現況を念頭に「ニュースから遠ざかっている人々を再び引きつけること、そして、より多くのニュース消費者とより深い関係を築く」を主題に置くものになっている。
Over 80 fact-checking organizations sign letter urging YouTube to address misinformation on its platform - Poynter
世界60か国、80超のファクトチェック団体が、YouTubeは“悪しき意図による他人を操作、組織、資金獲得のための行為”に利用されることを許していると、YouTube CEO宛ての公開書簡を提出。なすべき対策も提起。YouTube側は、Google(News Initiative)からファクトチェック団体らに対してすでに多額の資金援助とコメント(笑)
The Associated Press is starting its own NFT marketplace for photojournalism
AP通信社、写真家が作品をNFT化して販売できる市場の設立(今月末に第1陣をリリース)をアナウンス。NFTには、写真がいつ、どこで、どのように撮影されたかを示すオリジナルのメタデータが含まれるとしている。Gettyなどから同種プロジェクトが乱立しそうではある。
クリエイターの収益化を支援するPatreon、「2022年に規模倍増」と同社CPOは語る | TechCrunch Japan
「Patreonにとってもう1つの大きな問いは、同社が暗号資産技術をプラットフォームに持ち込むかどうかである。2021年の秋、ガットマン氏は創業者でCEOのJackConte(ジャック・コンテ)氏とともに、クリエイターたちが収益を上げる方法としてPatreonが暗号資産を検討していることを明らかにした」。

——前段で、同社チーフプロダクトオフィサーであるJulian Gutman(ジュリアン・ガットマン)氏が、同社の収益化手法の各種拡張や改善を行っていることを述べている。同社はこの1、2年で誕生したクリエイターエコノミー企業とはその歴史が違う。その会社もまた、「暗号資産」(NFT?)を検討しているという。

The New York Times needs subscribers. The Athletic doesn’t make money. Now they’ve both got a deal.
米VoxのPeter Kafka氏が、New York TimesによるThe Athletic買収の意味を解説。両者にとってのプラスはすでに私も紹介してきたが、同氏が指摘するポイントは「もしNYTがオーガニックな成長にもっと自信を持っていたら、Athleticに購読者1人あたり約500ドルも払わなかったかもしれない」ということだ。
「Web3」は本物か 巨大ITの支配脱却へ期待先行
【有料購読者向け記事】:
「要はコンテンツ産業におけるクリエーターへの収益分配を従来よりも適正に厚くする変革を起こす可能性をNFTは秘めている。そうなれば、Web3技術は実体経済社会の一部であるコンテンツ産業の変革の基盤になったということができるだろう」。

——日経新聞の論説だが、よくまとまったもので、ちょっと感心。網羅的な論だが、自分には、引用箇所のようなメディア(コンテンツ)分野への応用が最も興味深い。そのためにも、クリエイターが依拠できる仕組みが広がらなければならない。そこに巨大な資本力がものを言うでは、「2」の世界と異ならないことに。

昨年も180万部減、全然止まらぬ「新聞」衰退の末路 | メディア業界
「日本新聞協会の2021年10月のデータを全国12の地区別でみると、対前年比の減少率は大阪(8.0%減)、東京(7.3%減)、近畿(6.5%減)の順に大きい。新聞メディアの崩壊はもう避けられないが、日本の場合、ニュース砂漠の影響は大都市圏から現れる――いや、実際にすでに現れているのかもしれない」。

——結語の部分からの引用で申し訳ないが、新聞発行状況や、それが何をもたらすかという点で米国での現状に比して、引用箇所のような重要な指摘を引き出した論。そもそも日本でローカルな情報源が自律し得るか否かという議論とは別に、都市部から崩壊している現状をどう見るべきか。

NYT To Buy The Athletic for $550 Million
【有料購読者向け記事】:
米The Informationが、独占スクープとして、New York Timesがスポーツ専門メディアのThe Athleticを現金5億5,000万ドルで買収すると報道。InformationはかつてAthleticが7億5,000万ドルの評価を望んで交渉と報道していた。すでに、紹介しているように、Athleticは購読者120万人を擁しており、1,000万購読者をめざし760万まできているNYTにとっては重要(かつ、お得?)な取引となる。
WSJスクープ | ブルームバーグ・メディアCEOが辞任の意向、新メディア会社設立へ
【有料購読者向け記事】:
「ジャスティン・スミス氏は電子メールで4日、『ニュース業界は、ソーシャルメディアのゆがんだ影響や社会的な分断および偏狭さの高まりにより、消費者からの信頼や信用をめぐる危機に直面している』とした上で、『世界の視聴者に偏りのないジャーナリズムを届け、世界最高のジャーナリストに高品質のプラットホームを提供するプレミアムニュース事業を始める予定だ』と語った」。

——昨日紹介した話題。機能はNYTの初報を紹介したので、WSJからも。

2022年 、 ファーストパーティデータ がより重要になる:パブリッシャーの広告受注戦略 | DIGIDAY[日本版]
【有料購読者向け記事】:
「デジタルトレンズ・メディアグループ(Digital Trends Media Group:以下DTMG)は2020年、ファーストパーティデータの活用について広告主と話を進めていた時点で、データ追加が可能な、ハッシュ化されたeメールアドレスを約500万保有していた。メールアドレス数は2021年に入って5500万を超え、結果として広告主が推進するデータ関連プロジェクトへの参加が容易になったと、DTMGの戦略/データ/パートナーシップ部門でシニアバイスプレジデントをつとめるジョナソン・シェヴィッツ氏はいう」。

——メディア各社は自社サイトの読者データ(ファーストパーティデータ)を、たとえばメールアドレスなどの形で積み上げているが、これを従来の大規模なサードパーティクッキーに代わるターゲティング基盤としてどう活用できるか、そのソリューションを持つ事業者との連携が22年の業界をめぐる潜在的に大きな動きになる。

課題解決の精度高まる データから社会を読む(写真=AP)
【有料購読者向け記事】:
「反ワクチン派の返信(リプライ)を使った『口撃』行動を調べたところ、反ワクチン派はニュースメディアに対して最もアクティブに、かつ、最も毒性が高い言語的内容を返信していたことが定量的に明らかになった。これらはソーシャルデータから社会的相互作用の全体像を可視化・測定することで初めて明確化され、反ワクチン派の口撃を封じるプラットフォームレベルの対策を講じるためのヒントとなる」。

——ソーシャルメディア(ここではTwitter)から、全量を大賞として分析した笹原和俊氏の研究。投稿内容の分析からは、「反ワクチン派、ワクチン賛成派、政治的な左派と右派、そしてニュースメディアの5つのコミュニティーが存在する」と分かった。メディアに対して激烈に反応しているケースが顕在化されたのは、改めてメディアに関わる人間が深く考えるべきポイントだ。

【コラム】クリエイターエコノミーとクリエイターテックが実現する大きなビジネス | TechCrunch Japan
「クリエイターテックは、クリエイターのパトロネージュ(支援者)としての役割を受け入れ、革新し続けなければならない。すでに特定のクリエイターのニーズに対応して、場合によってはブランドとクリエイターを結びつけて収益性の高いパートナーシップを実現する、競争の激しいパトロンサービスの市場を作り出そうとしているクリエイターテックも存在する」。

——現在は、本格的な“クリエイターエコノミー”の時代への過渡期にあると見ている。そこにはすでに、「支援者」と自称する勢力が存在するが、いずれ、上前をはねるだけのビジネスか、本当の支援者なのか、弁別されていくことになる。

「情報的健康」目指す仕組みを データから社会を読む (写真=ロイター)
【有料購読者向け記事】:
「人間の思考にはシステム1、システム2という2つのシステムが存在する。システム1は暗黙的システムとも呼ばれ、無意識かつ自動的に判断を行うシステムを指す。システム1が動いているときは、直感的な好き嫌いで情報を判断するなど、非合理的な判断を動物的に行うことがある」。

——鳥海教授のオピニオン。「情報的健康(インフォメーション・ヘルス)」を目指すデジタルダイエット」という提言、さらに、「情報に偏りがないかを評価する人間ドックのようなシステムの導入」というビジョンに言及する。

クラウド社会の盲点 個人が自衛策考える必要も(写真=ロイター)
【ご紹介】:
日経MJ紙への寄稿が日経電子版に掲載されました。よろしければどうぞ。➡ クラウド社会の盲点 個人が自衛策考える必要も|

Disruption This Week—–24/12/2021

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2021年12月20日から2021年12月24日まで。

Biggest media industry stories 2021: The media's year in charts
英国のPress Gazetteがまとめたデジタルメディアの2021年(2020年との対比)。各種分野でのチャートがわかりやすい。目に見えるチャートでも、購読者数の推移でNew York Timesが群を抜いて成長、かつ絶対数としてもダントツ1位だった。
メタが明らかにした民間監視会社の実態、5万人が狙われていた
「メタ・プラットフォームズ(旧フェイスブック)が新たに公表した調査結果から、『傭兵スタイル』の民間の監視・ハッキンググループが、フェイスブックやインスタグラムを使って100カ国以上で5万人を監視していたことが判明した」。

——すでにメタは、イスラエルのスパイ企業NSO Groupと係争関係にあるが、12月に発表された今回のリポートでは、NSO以外の多くの企業名が公表されている(イスラエル発の企業が多い)。具体的な手法は示されていないが、要はFacebookを通じて収集できるプロファイリングや、ターゲティング広告などを利用しているのだろう。

A Chart of Twitter’s Creator Economy Deals; Instagram’s Mosseri Explores NFTs
【有料購読者向け記事】:
Twitterは驚いたことに、この1年間を通じて10社もの買収を手がけた。「Breaker」(音声SNS)、「Revue」(ニューズレター)、「Threader」(まとめ)などで、いずれも“クリエイターエコノミー”に関連するものだと指摘する記事。
2021年、欧州のメディア企業を対象に、Google News Initiative(GNI)やFT Strategiesらが8か月かけて取り組んだ実験と実践の報告を要約した記事。リポートはデジタル購読者の獲得をめぐるもの。その成果は大きいが、成功組と失敗組の乖離も大きかった。成功要因を整理する。
ツイッター前CEOが抱くネット革命の野望
【有料購読者向け記事】:
「インターネットをウェブ3に作り変える長年の試みの多くは依然、初期段階にとどまっており、いずれ何らかの実を結ぶかどうかは判断できない。ドーシー氏は、暗号資産への執着が現在のような崇拝に達する前の2019年、ツイッターによって『オープンで分散化されたソーシャルメディアの基準を開発する』プロジェクト『ブルースカイ』を発表した」。

——現在のWeb3.0への熱狂を、可能性と懐疑の視点で詳解する記事。このトレンドへ熱中する最大の主人公は、Twitterを離れた創業者のジャック・ドーシー氏だ。

ネットで拡散止まぬ誤報、
背景にFBとグーグルの資金
【有料購読者向け記事】:
「世界中のクリックベイト・ファーム(製造所)は、プラットフォームのこの(Facebookインスタントアーティクルの)欠陥に飛びつき、現在も戦略的に利用している。
ミャンマーでは一夜にして、多くのクリックベイト・アクターが誕生した」。

——Facebook、そしてGoogleが放置している欠陥によって、広告収入で荒稼ぎしている勢力が世界中に拡散している。

ニールセンが2021年日本のインターネットサービス利用者数/利用時間ランキングを発表
「新型コロナウイルスの感染拡大による巣ごもりが長期化する中、在宅時間を楽しむ主なエンターテインメントとして、インターネット動画の視聴が習慣化している。実際、利用者数以外の指標であるGRPと利用時間シェアに着目すると、リーチでは4位だったYouTubeがGRPと利用時間シェアともに1位となった」。

——興味深いデータが並ぶ。シニア世代へのネット利用が浸透しており、消費時間が伸びていくことは、これからのマーケティング(投資)を見直すポイントになりそう。

Information wants to be free, but digital property won’t be
米アトランタのローカル紙がNFTを売り出したの題材に、2022年のメディアとWeb3を展望する記事。数年後には、現在のWebサイトやブログ同様、これからは誰でも(花屋や理容師が)がNFTベースのデジタル資産を売り出すようになると予測する。
Media 3.0: The news creator economy arrives
「メディア3.0:新たなクリエイター経済の到来」。米Boston Globeの読者担当責任者が、個人としてのジャーナリストが 利用可能なツールやサービスが22年には更に増え、20世紀的メディアの硬直的な制約から解き放たれるだろうと論説。
WSJ News Exclusive | Washington Post Grasps for New Direction as Trump-Era Boom Fades
【有料購読者向け記事】:
米Wall Street Journalが同Washington Postの内情をスクープ。WaPoはトランプ政権以降、読者の政治ネタ離れによる購読者の停滞と非購読者の減少(2年間で35%減と記事は指摘)に悩まされ、トップレベルによる対策会議を最近開催したという。焦点は政治外のコンテンツの充実だ。
メディアリテラシー - 時事通信出版局
【ご紹介】:
私も執筆陣に加わった『メディアリテラシー 吟味思考 (クリティカルシンキング) を育む』が発売になりました。大冊で読みごたえのある書物に仕上がりました。ぜひ書店などで手に取ってみて下さい。私の担当は、「第1章 激変するメディア 」です!
スマートニュース、メディアリテラシーの授業実践例を新たに5本公開・・・小中高・大学向けに合計10本を無償ダウンロード提供 | Media Innovation
【ご紹介】:
先ほどの『メディアリテラシー』も含み、スマートニュースメディア研究所による活動が、複数公開されています。教育分野での社会貢献の動きです。
インターネットメディア協会が「Internet Media Awards 2022」 心と社会を動かした信頼おけるコンテンツを募集 | Media Innovation
【ご紹介】:
私が理事をつとめるインターネットメディア協会(JIMA)では、2021年の優れた、かつ、信頼できるコンテンツや取り組みを顕彰する「Internet Media Awards 2022」を実施しています。締め切りが近づいています。ぜひ応募をお急ぎ下さい。
[実践]ノーコードでふるさと納税データを地図に可視化する - Media × Tech
【ご紹介】:
私も編集に携わっている「Media×Tech」から新着。東洋経済オンライン「新型コロナウイルス国内感染の状況」に携わり、現在はスマートニュースメディア研究所の荻原和樹さんがデータビジュアリゼーションを平易に解説しました。メディア実務家必見です!

Disruption This Week—–10/12/2021

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2021年12月7日から2021年12月10日まで。

50 ways to make media pay: Subscriptions | What’s New in Publishing | Digital Publishing News
メディア企業が採用できる“購読”プログラム、12の例示。一般的な購読プログラムの提示から、学生や各種グループ別の優待、限定トライアル、法人向けプラン、他者との協業提案、プレミアムコンテンツの提案など各種手法を整理した記事。同業他社と組んでの提案は面白そうだ。
Newsrooms stop mocking the creator economy and start learning from it
メディア(報道機関)は、“クリエイターエコノミー”に学ぼう。少なくとも、これまでのように、オーディエンスと彼らが夢中になっているクリエイターやインフルエンサーとの関係を見下しているわけにはいかないとする論説。
Instagramで時系列表示オプションを来年提供するとモッセリ氏が公聴会で発言
「アダム・モッセリ氏は12月8日(現地時間)、米上院消費者保護、製品の安全性、およびデータセキュリティに関する小委員会が開催した『オンラインで子供を保護する:Instagramと若いユーザーのための改革』と題した公聴会で、来年1~3月期にInstagramで時系列フィードを選べるようにすると語った」。

——“Facebook文書”問題の中核、Instagramの事業トップが公聴会に出席。議員らからの追及に対して「時系列表示も選べるようにする」と発言。アルゴリズムによる表示をしない選択もできるようにするというが、「青少年」の利用法に対する対策としては安直だろう。

Global advertising industry expected to hit $1 trillion by 2025
2021年、世界の広告市場の成長率は過去最高レベルに。大手広告代理店Magnaは、21年の広告業界の成長率を22%とし、20年の12.5%を大きく上回る「史上最高」と発表。記事は、理由の一つとして、パンデミック後、中小企業がECなどでオンライン広告活用に乗り出したことと述べる。
Discord is letting creators monetize their communities with subscription-based memberships
大人気のライブチャットサービスであるDiscordが、本格的に“クリエイターエコノミー”をサポート? テスト段階だが、Discord内のコミュニティである各「サーバ」の運営者に、プレミアム機能へ課金を設定する権限を提供開始。
The end of the Silicon Valley insider–critic
シリコンバレーに抱き抱えれられてきた記者らの論評が終焉する時代。テクノロジー・サイエンス分野をカバーするライターによる論説。十数年前にはテック企業に批判的な記事を見かけるのは稀だった。現在はテック企業らから利益誘導を受けたことのない信頼できるライターが多く存在すると述べる。
Axios のライセンスビジネス、8カ月で100万ドルの収益 | DIGIDAY[日本版]
「Axios HQのゼネラルマネージャーであるジョーダン・ザスラフ氏によると、年間契約が1万ドル(約110万円)からスタートするHQのライセンス収益はわずか8カ月で100万ドル(1億1000万円)を超え、年末には150万ドル(約1億6500万円)に達する見込み」。

——AxiosがどのようなSaaS提供者になったのかは、記事を読んで欲しい。自社内製システムに投資できるメディア企業は、等しくソフトウェアビジネスの実践者となるべきだということを、最近のいくつかの事例は示している。

コンピュータサイエンス誌「bit」、1969年の創刊号から全386巻が電子復刻版としてAmazon Kindleで販売開始。1冊わずか198円
「同プロジェクトの『デジタルで絶版をなくし、誰もの手に届く所に置き、後世に伝える』趣旨に沿い、税込み198円と非常に安価。目次リンクも入っているため内容を確認してすぐに目的の記事へジャンプできます」。

——私のような文系でも、「bit」全盛期を思い出すな。書物に限らずこのような雑誌でも、できれば電子化してアクセシビリティを高めてもらえるとありがたい。同時に、検索可能性をどう高めていくのかも重要な課題。

中国の偽情報対策 連携 米とEU…国際機関選挙 協調も : 国際 : ニュース
【有料購読者向け記事】:
「会合には、米国のウェンディー・シャーマン国務副長官と、欧州対外活動庁のステファノ・サンニーノ事務総長が出席した。米国務省によると、両氏は偽情報対策として『米EU間の情報共有を深める用意』を表明した」。

——従前、米露関係ではロシアの情報工作について多くの情報が提示されてきたが、中国の高度な政治的意図による欺瞞工作についてはそれほどではなかったと思う。読みとばしてしまいがちなニュースだが、単に米中関係に止まっていない、中国の期満工作についても、広範囲の脅威として見なす時期に入っている。

How TikTok Reads Your Mind
「TikTokはどうあなたの心を読んでいるか?」
米New York TimesコラムニストのBen Smith氏、TikTok自らが従業員(非エンジニア)に同アプリのアルゴリズムを解説した内部文書を入手。そのエッセンスを解説する論。もちろん、アルゴリズムの究極目標は「DAUを増やす」だ。そのための要因を整理している。TikTokの熱心なユーザなら心当たりがあるはずだ。
また、他の重要な発見として、TikTokとその中国版であるDouyinは、依然として強い関係を有しており、同一の人物らによって開発されているという事実を紹介している。これは米政府の同アプリ排除の理由に挙げていた事象だ。
月間6億PV「まだ天井ではない」 文春オンライン、飛躍の裏に隠された施策とは - Media × Tech
【ご紹介】:
昨日ご紹介したように、2021年のSmartNews Awardsが発表。「文春オンライン」が2回目の大賞を受賞。改めて、その中心メンバーにMedia×Techがインタビューしました。おめでとうございます!

Disruption This Week—–22/10/2021

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2021年10月18日から2021年10月22日まで。

Google Launches 'Google for Creators' Platform to Provide Guidance on Digital Content Strategies
Google、“クリエイターエコノミー”のための総合支援サイト「Google for Creators」を公開。クリエイターが自らの存在感を高め、それを収入に換えるためのコンテンツ戦略、ヒント、技術的Tipsなどを整理して提供するものだ。
この8月に米Politicoを買収することを明らかにした独Axel Springer。そのCEO、Mathias Döpfner氏の舌禍事件(WSJが同氏発言を報道したことはすでに紹介した)が、Politicoスタッフから大きな反感を招いている。Döpfner氏はPoliticoスタッフへの弁明集会を開催するはめに。
ポイントは、Politicoの記事有料化(ドイツ人でありながらペイウォール=壁という語を用いた)を勝手に宣言したこと、PoliticoはEUにおけるAxel Springerの方針に従うべきことなどをぶち上げたことに加えて、(これが大きいと思えるが)Politico買収交渉の過程で並行してAxiosとの交渉も進めていたことが明らかになってきた。Axios創業者は、Politicoの創業メンバーであり喧嘩別れのようにして飛び出た人物だったのにもかかわらずだ。
70ドル以下で手に入る攻撃ツール、Microsoftがサイバーセキュリティレポートを発表
【全文閲読には要購読】:
「・サイバー犯罪のサプライチェーンは(個人ではなく)犯罪組織によって構築される場合が多く、成熟化が進んでおり、誰もがサイバー犯罪のための道具を購入できるようになっている
主なサイバー犯罪サービスの平均販売価格は次の通りだ。最も安価なランサムウェアキットであれば、66ドルから入手できることが分かる」。

——年次リポート「2021 Microsoft Digital Defense Report」から。一言で言えば、サイバー犯罪は、産業化が進展して非常に安価、手に入りやすくなっている。

Facebook is planning to rebrand the company with a new name
Facebookは、早ければ来週にも会社名を変更、FacebookやInstagram、WhatsApp、そしてOculusなどを子会社に持つ親会社という構造へ変わろうとしていると、the Vergeが関係者からの情報として報じた。CEOのMark Zuckerberg氏が夏に行った発言「メタバース企業への変身」への道のりが具体的に始まった。
「misinformation」と「disinformation」、ネットに氾濫するディスり情報
「misinformationが発信者の意図を問わない客観的な表現なのに対し、disinformationは一般的に、悪意を伴う(と受け止める側がみなした)偽情報を指す。『dis』は反対や否定を意味する接頭語。英語で『disrespect』と言えば、敬意の反対、つまり相手をばかにしたり侮辱したりする意味になる」。

——私も理事として参画しているFIJ(ファクトチェック・イニシアティブ)でも、「ミスインフォ」と「ディスインフォ」を使い分けるようにしている。さらに「フェイクニュース」という用語は他者の言論を否定する際に多用されることを念頭に、原則として使わないようにしている。

How A/B testing can (and can’t) improve your headline writing
米Northwestern大の研究者、サイト分析のChartbeatの協力の下、293メディア・14万件超の記事タイトルのA/Bテストデータを分析。機械学習を試みたが、どんな記事タイトル作成法が優位か成功法則は得られなかったと解説。読者が何をクリックするかジャーナリストの手には負えないとのことだ。
Facebook to Hire 10,000 Workers in EU to Build Up ‘Metaverse’
【有料購読者向け記事】:
Facebook、公式ブログで、今後の5か年かけて“メタバース”関連技術に従事するエンジニアらを1万人をEU域内で採用すると発表。野心的な計画だが、この発表はEU域内における同社をめぐる厳しい論調を意識したものとも見られるとも、記事は解説。
米議会では超大手プラットフォームの振る舞いを制限しようと「通信品位法230条」の免責を制限をめざす「悪意あるアルゴリズムに対する正義」法案が、学者やテック企業の支援を背景とする団体などからの猛反対に直面している。記事はこの攻防を解説するもの。
How TikTok Is Changing YouTube
【有料購読者向け記事】:
TikTokに脅かされるYouTube、1年前に開始したTikTok似タテ表示短尺動画「Shorts」に注力中との記事。プロにShortsの制作を募ったり、優先表示などの取り組みによってShorts視聴割合が急増しているとデータも示す。他方、長尺動画の先行きは不明に。
朝日新聞ポッドキャスト 累計1000万ダウンロードを突破・・・サービス開始から1年2か月での達成 | Media Innovation
「現在では、新たに『就活ポッドキャスト 朝日新聞 ニュースの使い方』、『朝日新聞アルキキ』、『朝日新聞AJW英語ニュース』、『犬猫だらけの夜 -sippo channel-』と『好書好日 本好きの昼休み』を新たに開始させ、計8番組の構成となっています」。

——記事によれば、「(月間ダウンロード数が)現在では150万DLを超える」という。まだ、大きな数字ではないにせよ、いつの間にかポッドキャストは無視できないメディアへと成長中。

クリエイターエコノミー:直接収入の可能性を探る - Media × Tech
【ご紹介】:
Media×Techに寄稿しました。(これが腰に良くなかったのか?)よろしければどうぞ。➡ クリエイターエコノミー:直接収入の可能性を探る

Disruption This Week—–15/10/2021

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2021年10月11日から2021年10月15日まで。

New York Times Audio Could Spur a Realignment of the Podcasting Landscape
米New York Timesが意欲的な試み。同社の数々の番組やBuzzFeedなど他社のコンテンツを提供する、ポッドキャスト専用アプリ「New York Times Audio」のテストを開始した。昨年買収した人間が読み上げ・朗読を担当するAudmが制作する。Spotifyなど外部プラットフォームに頼らないという挑戦だ。
How Newspaper Closures Open the Door to Corporate Crime
「上場企業の何千もの施設を調査、地元の新聞社が閉鎖された町では、その後、地域の上場企業の違反行為が1.1%増加し、規制当局からの罰則が15%増加したことがわかった。また、新聞社のない町では、多くの違反行為の内容がより悪いものであることも判明した」。

——Marvin Bower ハーバード・ビジネス・スクール准教授であるJonas Heese氏の調査研究から。

アルゴリズムvs.中国、世界が見つめる激闘の行方
【有料購読者向け記事】:
「8月に発表されたルール案によると、企業は中毒や過剰支出につながるアルゴリズムの使用が禁じられる。また、ユーザーには、使用しないという選択肢が与えられるべきとしている」。

——すでに紹介した話題だが、改めて。非常にインパクトのあるテーマだと思う。いまやネット上の情報はあふれかえっており、なんらかの“自動的な選択”(アルゴリズム)による中間処理なしでは、最小の労力で最適な情報にたどり着けない。もちろん、そこにさまざまな作為が入り込む余地があることから、隠された大問題が生じているわけだ。

架空TikTokスターのネットワークを構築するFourFrontがシード資金調達 | TechCrunch Japan
「FourFrontの共同創業者Ilan Benjamin(イラン・ベンジャミン)氏によると、キャラクターのネットワークが本物の人間と誤解されないようにしており、彼らのプロフィールでストーリーのフィクション性を強調し、それぞれの動画には#fictional(フィクション)のタグがつけてある」。

——リアリティのある人間(キャラクター)を複数用意し、さまざまなショートムービーを配信していく試み。シナリオ次第で大量にストーリーを生み出すことができる。これからはバーチャル空間を舞台にしたクリエイティブビジネスが次々に誕生するのだろう。

ウェザーニュースの急成長を支える、Growth Hackチームの取り組みに迫る
「――現在はどのような体制でGrowth Hackチームを運営しているのでしょうか。
石橋(知博氏):開発を担うエンジニア、サービス運営を行うオペレーション、そしてマーケティングが三位一体となってサービスの改善に取り組んでいます」。

——ウェザーニュースという特性のあるサービス(コンテンツ)をどう、成長させるか。同社の「Growth Hackチーム」の取り組みを詳しく解説する記事。メディア系事業でもGrowth Hackのあり方は参考になるはず。

The creator economy is failing to spread the wealth
“クリエイターエコノミー”は、組織に属さない個人クリエイターでも相応の収入を得られるというトレンド。しかし、先ほど紹介したTwitchのデータ流出でもわかるように、著名な最上位のクリエイターがクリエイター収入の多くを占めてしまうという“現実”が少しずつ明らかになってきている。
中国、メディアの民間資本禁止を提案-企業統制を一段と強化へ
「発改委(=国家発展改革委員会)のウェブサイトに掲載された提案によれば、民間資本はニュースの収集・取材と配信が禁じられる。通信社や新聞社、放送局などの報道機関の設立・運営に民間資金が投じられることも禁止され、外国メディアのニュースコンテンツを再配信することも認められなくなる」。

——もはや、強権的だとか言論の自由がといったステレオタイプな報道ではなく、中国国内で何が進行しており、その着地点はどのようなものなのかを詳しく解説して欲しい。

Facebook is willing to open algorithms to regulators, Clegg says
“Facebook文書”問題でCNNの番組に出演したFacebookの広報責任者(と記事にある)Nick Clegg氏は、同社のアルゴリズムが、ユーザに言っていることと起きている実際が一致するよう、場合によって規制に基づく説明責任を果たす必要があると語った。
The Atlantic wants to hire newsletter writers — and it wants their subscribers, too
Substackを代表格にニューズレター配信プラットフォームは、既存メディアの書き手をニューズレターメディアの運営者として独立させようとしている。老舗メディアThe Atlanticはこの逆張りを狙う。これら運営者とニューズレターを、金銭保証した上で丸ごと傘下に治めようというのだ。面白いのは、購読者が独立したニューズレターにこれまで支払っていた金額で、Atlantic全体とニューズレターを購読できる点だ。Atlanticは傘下に入れる各種ニューズレターの購読者を、丸ごと獲得できるというわけだ。
かくして〈インターネット例外主義〉の時代の幕は開けた:『ネット企業はなぜ免責されるのか』池田純一書評
「1996年に米国で成立した通信品位法230条は、起草段階では、匿名掲示板の主に性的な品位を欠いた投稿に対して、プロバイダー企業、プラットフォーム企業による自主規制を促すための法律だった。しかし、1997年にケネス・ゼラン対アメリカ・オンライン訴訟の判決が出ると、風向きが変わる」。

——「パブリッシャーか?ディストリビューターか?」という問題の源泉から始まる豊かな書評。

衆院選にまつわる真偽不明な情報の検証を 総選挙ファクトチェックが始まる
【ご紹介】:
非営利法人FIJ(ファクトチェック・イニシアティブ)は、衆院選にまつわる真偽不明な情報の検証する「総選挙ファクトチェックプロジェクト」を立ち上げました。本記事を執筆したBuzzFeed Japanを含めた複数のパートナーメディアと取り組みます。