Disruption This Week—–26/5/2023

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2023年5月23日から2023年5月26日まで。

博報堂DYMP「メディア定点調査2023」、メディア接触時間の「携帯電話/スマートフォン」シェア初めて全体の1/3超え | AdverTimes.(アドタイ) by 宣伝会議
「メディア別では、『携帯電話/スマートフォン』(151.6分 昨年から4.7分増)は、昨年初めて「テレビ」(135.4分 同8.2分減)を上回ったが、今年はその差を12.9分に広げた。…メディア総接触時間における『携帯電話/スマートフォン』 のシェア(34.2%)は初めて全体の1/3を超え、モバイルシフトは依然として、継続している」。

——新型コロナ禍の下で、急増したメディア消費時間は概ね天井感を維持している。だが、その内訳ではスマホでの消費時間のみ明瞭な伸びを維持している。TVにはCTV(コネクティッドTV)はどうカウントされているのか、要確認。

「戦争から利益を得ることはしたくない」Oryx創設者が語るウクライナでの“OSINT最前線”《世界初インタビュー》 | 文春オンライン
「撃破された兵器の写真や動画をカウントし、ロシア・ウクライナ両軍の損耗兵器をリスト化しているオランダの軍事情報サイトOryxに世界的な注目が集まっている。Oryxが作成した損耗リストは、ロシア軍の多大な損害を物証付きで明らかにしており、CNN、BBC、NHKといった世界中のメディア、さらにはイギリス国防省でも信用できる情報源として引用されている」。

——Bellingcatと並んで重要なOSINT情報源として名前が知られるネットワーク「Oryx」。その代表への顔を隠したインタビュー記事。興味深い。

Trust low, perception of spin and misreporting high, and attention spans dip: News habits survey
ニューステクノロジー企業の英Tickarooと調査会社Opiniumが英成人2,000人を対象に行った調査で、回答者の60%が読む記事の一部に懐疑的で、66%がニセニュースに懸念を抱いていることがわかった。最大の理由に「記者が誤認を生む」が挙げられる。
News execs fear 'end of our business model' from AI unless publishers 'get control' of their IP
「報道(ニュース)メディアのビジネスモデルは終焉の危機に瀕している」。最近行われたカンファレンスに英The Guardian、英Financial Times、仏Le Mondeそして英Telegraph Media Groupらトップが登壇。AI登場により「緊急事態」が生じていると口々に述べる。
Seeing stories of kindness may counteract the negative effects of consuming bad news
人の親切、英雄的行為、慈善などのニュースを読んだ人は、衝撃的な事件、悲劇的なニュースを読んだだけの人よりも他人への信頼を多く維持できる。辛いニュースの中にも健全な感情を喚起するニュースを含めていくべきことを英Essex大の心理学者が研究成果として公表した。
英語記事を「GPT-4」で3行の日本語に Gunosyが新ニュースサイト
「米メディアが発信する英語ニュース記事を3行程度の日本語に要約し、概要を伝える。1日に20~30程度の記事を紹介する。
βサービスとして始めたが、ニーズが高いと判断した場合は継続的に提供する」。

——メディアやITの分野に限れば、自分が毎朝青息吐息でやっているようなことをAIベースのアプリがやってくれるらしい。そろそろ潮時かもしれない(苦笑

Trust in Media 2023: What news outlets do Americans trust most for information? | YouGov
英調査会社YouGovが例年発表する消費者によるメディア「純粋信頼度」(信頼から非信頼を除いた値)を今年も公開。米成人消費者にとって最も信頼度の高いメディアは「The Weather Channel」。続いて、「PBS」「BBC」など公共系が上位に連なる。
Majority of U.S. Twitter users say they’ve taken a break from the platform in the past year
過去12ヶ月間にTwitterを利用したことがあるアメリカ人の10人に6人が、そのスパンで数週間以上の期間、Twitterを休んだことがあると答えた。また、4分の1が1年後も利用する可能性はないとも答えた。米Pew Research Centerが今年3月に調査した結果だ。
Verified Twitter Accounts Spread AI-Generated Hoax of Pentagon Explosion
米国防総省(ペンタゴン)の敷地内で爆発との偽情報。その映像について、調査報道集団Bellingcatのメンバーは、AI生成画像である特徴を指摘。近隣の消防署も否定。他方、この偽情報をTwitter Blue認証された数十のアカウントが拡散させたという問題点も生じた。
How investigations drive subscriptions at FT, Guardian, Tortoise and New York Times
「入念な調査報道は、メディアの購読者を増やし、長期的な繁栄を生む」。米New York Times、英Financial Times、英BBCなどの編集長経験者らが語る。Financial TimesのRoula Khalaf氏は、著名な調査報道記事で大規模な購読者増が生じたと述べる。

Disruption This Week—–12/5/2023

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2023年5月1日から2023年5月12日まで。

Google is changing up search. What does that mean for news publishers?
Googleが発表したAIベースの新たな検索エンジンのプロトタイプ「SGE(Search Generative Experience)」。一般消費者にとっては複雑なクエリを受け止めると同時に、リンクを経由する送客は激減する可能性を示す。メディアやアフィリエイトには打撃か?
The Athletic’s live audio rooms bring sports talk radio into this century
現在はNew York Times傘下のスポーツ専門メディアThe Athletic。同メディアが提供する競技終了後の音声ライブ企画である「ライブルーム」が実施1,000回を超えた。試合後、通常のジャーナリズムは記事執筆などに忙しいが、ファンは競技の興奮を分かち合う空間を求めている。そこにファンとブロガー(ポッドキャスター)が交流するニーズを見いだした企画。
ソフトバンク、LINEと和製GPT立ち上げへ 「やらなければ今後の参加権がなくなる」
「グループ内からAI開発人材として1000人を選抜し、異動または兼務を検討している。『1000人から5000人規模の“GPT祭り”をやらなければ、日本の中でのGPTの立ち上がりはない』(宮川氏)」。

——国内勢からも動き。数百億円でゲームに参加できるとの議論もあるし、すでにLINEではLLMに取り組んできた背景もある。“日本語(情報)に強い”LLMが創造されるのかが興味。

The Times Added 190,000 Subscribers Last Quarter
【有料購読者向け記事】:
米New York Times、第1四半期業績を開示。デジタル購読者19万人を新規獲得。スポーツサイトAthleticをデジタル購読製品にバンドルした効果が寄与。デジタル購読者総数は900万人に達した。これもあってトップラインは成長する一方で、デジタル広告収入は8.5%減。第2四半期も減を見込む。
Google's AI search is over | Semafor
“GoogleによるAI検索の(始まりと)終わり”。米Semarforが25ものAI新サービス(機能)を発表したGoogle I/Oを論評。「Googleは、何年も前にこれらの製品のいくつかはリリースすることができたはず」。本業の革新へと進めなかったジレンマを指摘。
Publishers using ChatGPT to improve headlines and suggest feature ideas
メディア業界に属しているのなら、ChatGPTがSEOにどうインパクトをもたらすか関心があるだろう。英メディア3社の担当者が議論。各社は自社の記事に「見出しの改善、検索に最適化したキーワードの示唆、記事の適切な要約」などの点で、AIが生産性を高める支援ができると述べた。

2023 Pulitzer Prizes

2023年のピューリッツア賞受賞者およびメディアが15部門で発表。今年はWeb専業の新興系メディアが目につかない。残念なトレンドでもある。

景気後退局面で、こういうトレンドに陥るのは、良質なジャーナリズムには資金や組織的体力が必須だということでもあるのか。

The Unified Content Business Model

Stratechery by Ben Thompson

The Unified Content Business Model
個人サイト「Stratechery」運営の著名ブロガーBen Thompson氏、BuzzFeed Newsの閉鎖やNew York Timesに買収されたThe Athleticに触れ、ニュースメディアのビジネスモデルは「購読+広告」であるべきと自説を改めて論じた。良質な購読モデルが良好な広告収益を可能にするとしている。
Can AI help local newsrooms streamline their newsletters? ARLnow tests the waters
米バージニア州のローカルメディア、人手がかかる作業の工数削減のため、AIや各種自動化ツールを駆使して無人によるニューズレター配信フローを完成、先月より実用運用(配信)を開始したとする報道。
SoundCloud debuts a fan engagement tool for artists
音楽ストリーミングプラットフォームのSoundCloudは、アーティストによるファンビジネス基盤の方向を強化中。アーティストがファンにDMを送ったり、ファンの行動でエンゲージメントを指数化して見たりできるコンソールである「Fans」をアーティストに提供を開始した。
Are news outlets using the wrong metrics to assess sites’ success?
米メディル・シュピーゲル・リサーチ・センター(SRC)の調査で、ニュースの収益化(マネタイズ)で最も重要な要素は有料購読と判明。だが、驚くべきことにページビューや滞在時間の増加は、実際には購読者や収益に悪影響を及ぼす可能性があるとし、“一気読み”を悪習と否定。
「購読者がニュースサイトを定期的に訪れる習慣が望ましい。長い記事をたまに読み、その間にかなりの期間離れてしまうことが望まれる」というのだ。
Nearly Half of YouTube’s U.S. Viewership Is Now on TVs, Helping Drive Ad Shift
【有料購読者向け記事】:
Nielsenらの年次調査によると、いまやYouTube視聴の45%がCTV(コネクティッドTV)上で行われている。TV(コンテンツ)の“王様”はYouTubeなのだ。かつて“汚い”コンテンツと広告主に嫌われた存在が、今では広告ビジネスの焦点となったとする記事。
“We Were Always Playing An Entirely Different Game”: The Ultimate Oral History Of BuzzFeed News
2012年、米BuzzFeedのニュース部門を設立されたBuzzFeed News。5月5日の閉鎖まで、多くの刺激的な報道、ファクトチェックを公開。ピューリッツァ賞受賞など輝かしい成果の一方、さまざまな議論も巻き起こした。スタッフらが証言を集めたオーラルヒストリーを最後に公開。
A startup let users talk to ChatGPT through a female avatar. It went awry. | Semafor
ChatGPTのユーザインタフェイスとして、金髪白人女性アバターを用いるサービスを試行した米スタートアップBubbles、ユーザが不適切な性的表現をアバターに求めたことから、アバター生成プラットフォームのSynthesiaにサービスを停止させられた。米Semaforがリポート。これからこのような事案が急増しそうな予感。
『「2030年日本」のストーリー』刊行記念 オーサー&ゲスト超異分野トーク | イベント | 東アジア藝文書院 | 東京大学
【ご紹介】:
来る16日(火)に東大で行われる『「2030年日本」のストーリー』刊行記念に登壇いたします。おもに、気鋭の社会学者・西田亮介さんとやり取りさせていただきます。参加無料ですので、ぜひご参加下さい。オフライン・オンライン聴講いずれも可能です。

Disruption This Week—–7/4/2023

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2023年4月3日から2023年4月7日まで。

ChatGPT、何が問題か 元グーグル社員「非常に無責任で無謀」:朝日新聞デジタル
【有料購読者向け記事】:
「規制が何もないのをいいことに、マイクロソフトのような企業はいま、世界の全人口を実験台として利用することが許されてしまっています。倫理や道徳という観点から考えれば、もっと民主的な統制があってしかるべきでしょう」。

——元グーグル社員でAIが社会に与える影響を研究し、警鐘を鳴らしてきた人物による警告。

出版状況クロニクル179(2023年3月1日~3月31日) - 出版・読書メモランダム
「講談社の決算は売上高1694億8100万円、前年比0.8%減、営業利益は191億円、同11.9%減、当期純利益は149億6900万円、同3.8%減。
その内訳は紙媒体の『製品』が573億5500万円、同13.5%減、デジタル、版権関連の『事業収入』は1001億7200万円、同10.0%増。そのうちの『デジタル関連』収入は778億円、同10.9%増、『国内版権収入』は98億円、同13.6%減、『海外版権収入』は124億円、同35.2%増」。

——上記の引用箇所だけでも、メディア事業をめぐる存立構造、あるいはその発展方向を想像させる刺激に満ちている。「事業収入」が「製品収入」の倍近くもあるのだ。しかもその事業収入の8割がデジタル由来だという。講談社だけの現象には止まらないだろう。もちろん、とはいえ、現時点ではそのような事業構造を持てるのは国内で数社だろうが。

米Protocolの編集長のTom Krazit氏は、同メディアの閉鎖にともない、その2万人以上だった購読者メールリストを買い取って独立。広告付きのメールメディア「Runtime」として再スタートを切ったとする話題。良い話題でもあるが、読者リストを売買対象とするのには抵抗も感じてしまうのだが…。
Substack's new short-form 'Notes' feed looks a lot like Twitter
ニューズレター配信の米Substackは、ユーザーが投稿、引用、コメント、画像、リンク、アイデアを共有できる新たな「Notes」機能の追加を発表。Substack上で共有されたNotesは、Twitterによく似た専用の短文フィードで表示されるという。別に論じたが、Twitter後継争いが激化している。
MidJourney V4 VS Leonardo AI — Same Prompt, Different Results
ジェネレーティブAIについては、ついついChatGPTを話題にしてしまうが、先行し話題となった画像生成系サービスでも、改善や新興サービスの台頭が進んでいる。記事は、同じプロンプトでサービス(MidJournyとLeonardo AI)によりどうアウトプット(画像)が異なるかを具体的に比較した有益な資料。
「プロンプトエンジニアリング」の“教科書”、日本語版が登場 無償でAIの上手な使い方を解説
「プロンプトに関する基礎知識から使用アイデア、注意点などを記載。プロンプトエンジニアリングに関するテクニックの他、GPT-4など特定のAIモデルの特徴などについても言及している」。

——ジェネレーティブAIが技術分野を席巻するにつれ、AIから的確な回答(アウトプット)を得るための的確な指示(プロンプト)が重要になることは、何度か話題にしてきた。このプロンプトエンジニアリングをめぐるガイドブックの紹介。日本語化されたものだ。

Post, a publisher-focused Twitter alternative, launches to public
“読んだだけ払う”。従量型課金システムがこれから広がると見ているが、Twitter的手軽さと従量型課金制を提携メディアに提供する、米「Post News」の話題。利用者は事前に一定額支払い(バウチャー)、利用に応じてそれを消費するモデルのようだ。
新聞社の衰退はネットやスマホの普及が原因ではない グンゼという会社から考える本質:朝日新聞GLOBE+
「…断言できるが、新聞各社の売上が減少し続けているのは決して、インターネットやスマホが普及したからではない。
単に経営陣が世間ずれし、今もなお間違っているからである。
なぜそんなことを、断言できるのか」。

——「新聞社の本質的な強みとは本来、『知性ある記者・編集者』が『取材やエビデンス』に基づき、『信用できる情報』を届けてくれることにあったはずだ」と凡事を徹底すべきことを指摘するオピニオン記事。

カナダ政府が法制化をめざすプラットフォーマによるメディアへ支払いの義務化について、行われた調査研究「Meta and News」によると、Facebook(フィード)上の報道関連トラフィックは3%未満で、年々減少中であり、そのトラフィックもメディア自身による投稿が9割を占めており、ユーザによる投稿(シェア)は少ない。故にFBから恩恵を受けているのはメディア機関だと指摘。
米ツイッター、表示順決めるアルゴリズム公開 マスク氏「公約」、安全面懸念も:朝日新聞デジタル
【有料購読者向け記事】:
「同社は仕組みをブログで説明。(1)利用者の関心が高そうな人やテーマの投稿から約1500件を選ぶ(2)利用者が「いいね」やリツイートなどの反応をする確率をAIで予測し、点数をつける(3)同じアカウントの投稿が続かないように調整するなどした上で点数の高い順に流す、という主に三つの段階があるとした」。

——あまり大きな話題を呼んでいないようだが。ここで説明されているのは、Twitterの一人ひとりのユーザに対し、どのようなツイートを表示するかというパーソナライズについてだろう。自分のタイムラインを見ても思い当たるところだが、上記では説明できない要素もあるようなので、もう少し勉強したいところ。

ファクトチェックアワード2023

FIJ|ファクトチェック・イニシアティブ

ファクトチェックアワード2023
【ご紹介】:
多くの人々を誤解させるおそれのある社会的影響の大きな言説・情報を検証し、正確な事実を共有することに貢献したファクトチェック作品のうち、特に優れていて社会的意義が高いと認められたものを表彰します。締め切りは20日です。
「オリジネーター・プロファイル(OP)」の挑戦——ネットニュースの信頼性をどう担保するのか? - Media × Tech
【ご紹介】:
Media×Techに新着記事です。メディア業界で注目されるプロジェクト「OP(オリジネーター・プロファイル」技術研究組合について、事務局を主導するクロサカ氏に取材しました。

Disruption This Week—–17/3/2023

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2023年3月13日から2023年3月17日まで。

Mother Jones CEO on how reader donations became big business for investigative title
先鋭的な調査報道で知られる米「Mother Jones」。CEOのMonika Bauerlein氏は、その収益の4分の3が読者からの支援によるものとし、年間約5万人が寄付を行い、50人のジャーナリストからなる編集部を維持し、オンラインおよび印刷メディアを運営すると、実情を詳細に説明する。
重要な点は、金持ちしか読めない(購読制)メディアでは、公益的な報道を広く必要とする人々に提供できないと力説していること。
At SXSW, Artificial Intelligence Fills Crypto Void
【有料購読者向け記事】:
エンターテインメントとテックの総合イベント「SXSW」が開催。今年の同イベントは昨年まで賑やかだったWeb3、仮想通貨(やNFT)関連の出展に代わり(消えてなくなったわけではない)、AI関連の出展が目につくというリポート。トレンドの変遷が顕著だという。ちなみに、サムネール画像に映るポルシェのブースでは、ブロックチェーン技術を用いたオーナー向けパーソナライズをデモしているもの。
Twitter API、法人向け新料金は月額560万円から? 最大で月額2800万円のプランも 米Wiredなどが報道
「米Twitterが2月初旬に発表した『Twitter API』の有償化を巡り、一部のAPI利用者が新料金体系について案内を受けていると、米Wiredなどの海外紙が報じた。法人向けAPIの新料金は月額4万2000ドル(約565万720円)から21万ドル(約2825万4290円)になるという」。

——これが「月額」! Twitter APIを利用するエコシステムは広範だと思うが、これでほぼ壊滅となるだろう。Twitterのソーシャルグラフの研究利用も困難になりそうだ。このような事態を見据えて、各社、Twitterの代替サービスの企画やその利用を検討しているのだろうが。

YouTube Shorts ad payouts to creators highlights deeper monetization woes
YouTubeが“Shorts”上の広告収益をクリエイターとシェアするプログラムを発表して約6週間。クリエイターからは、力を注いだ投稿作品で得られる収入があまりに少ない(か、皆無か)ことに不満が高まる。プログラムは、クリエイターの収益問題にむしろ火を点けてしまったようだ。
Why Spotify wants to look like TikTok, with co-president Gustav Söderström
Spotifyが社員数30名時代からの古参CTO、現共同社長であるGustav Söderström氏へのインタビュー。先日のSpotifyがTikTok風にUIを刷新した発表は、AIレコメンデーションによる効果を最大化する、創業以来最大の変化と語る。自身を“プロダクトガイ”と呼ぶ人物の踏み込んだ議論。アプリビジネスに携わる人には読むべき記事。
英IPA(広告実務者協会)の調査によると、英国の消費者の商業メディア利用は減少を続けており、7年間で15%の減少に相当することがわかった。重要なポイントは、失われたメディア利用の大部分が、16〜34歳の人々の行動の変化に起因していることだという。
Four tips to optimise paywall conversion
「ペイウォール・コンバージョンを最適化するための4つのヒント」。
1) 各ステップを分解する、2) プレミアムコンテンツの視認性を確認する、3) オーディエンスをセグメント化して行動を把握する、4) コンバージョンポイントでの摩擦を軽減する、などを解説する記事。

——「Poool」という150媒体社をクライアントとするサービス、コンサルティングが発表したリポートからの抜粋記事。

How Bellingcat gets 15,000 people on Discord to talk about investigative journalism
OSINT(オープンソース情報による調査)で知られる調査報道集団Bellingcat。Bellingcatはデータの入手、分析などを世界に広がるネットワークでこなす。その中心的な役割を果たすのがDiscordだ。1万5,000人が集うサーバをモデレートする人物に取材した興味深い記事。
Briefing: Disney’s Iger on Hulu, Streaming: “Not Everybody Is Going to Win”
米DisneyのCEO、Bob Iger氏は、登壇したカンファレンスで、「資金力があり、積極的に競争するストリーミング事業者が6、7社がある」とし、「だれもが勝者となれるわけではない」と発言。同社傘下のHuluについてコンテンツの差別化に欠けていると微妙な発言を行った。
ソウル、10代の半数「インターネット新聞も読書のうち」と認識
「ソウル市民の28.9%はインターネット新聞を読むことを読書だと認識した。この他に読書の範疇としてオーディオブックを聞く(37.8%)、ウェブ小説を読む(49.4%)、ウェブトゥーンを見る(22.8%)、インターネットブログ・カフェを読む(16.5%)、ユーチューブなど映像を見る(10.5%)という回答だった」。

——ソウル技術研究院がソウル市民1037人を対象に実施したアンケート調査結果によるものと記事は説明する。「特に若い年齢層を中心にインターネットから得た情報を読書と考える割合が高かった」とする。

ネット世論操作とデジタル影響工作 - 原書房
【ご紹介】:
出版した『ネット世論操作とデジタル影響工作』、内容見本ができました。よろしければご確認下さい。
書肆ページ⇒ http://www.harashobo.co.jp/book/b622142.html
内容見本(PDF)⇒ http://www.harashobo.co.jp/files/7265sample.pdf

Disruption This Week—–10/3/2023

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2023年3月6日から2023年3月10日まで。

RadioGPT brings AI to the airwaves
放送メディア向け技術開発と製品を提供するFururi Media、AI搭載のラジオプラットフォームである「RadioGPT」を発表。AIがパーソナリティを務め、地域(ローカル)の情報を集め、それを原稿として読み上げ放送するまでを提供する。放送業界を変革するかもしれない動きだ。
Spotify is revamping its podcaster tools, including Anchor, and is partnering with Patreon
Spotify、SpotifyアプリのUX刷新の発表と同時に、プライベートイベントを開催。ポッドキャスター向け管理ツールの刷新を発表すると同時に、クリエイター支援のPatreonとの事業提携も発表。依然としてポッドキャスト市場に邁進の様子。
Gen Z and Millennials who pay for or donate to email or video content from independent news creators
16歳から40歳までのアメリカ人は、年齢層を問わず、デジタル新聞や紙媒体の新聞よりも、独立したクリエイターによるニュースコンテンツにお金を払ったり寄付をしたりする傾向が強い。年齢層によって均等に分布しているという。AMI(アメリカメディア協会)による調査から。
News Corp encourages staff to try ChatGPT, forms AI taskforce
【有料購読者向け記事】:
Rupert Murdoch氏率いるNews Corp。そのお膝元News Corpオーストラリアでは、最高責任者Michael Miller氏が、社員宛てメールで「各部門のスタッフはChatGPTを試用すべき」と奨励。「人工知能が我々の業界を変える」と述べる。同社は人員削減中だ。
News Revenue Hub offers free donation software for newsrooms worldwide | What’s New in Publishing | Digital Publishing News
米国のローカルニュースを技術基盤やコンサルティング提供で支援する非営利団体News Revenue Hub。さまざまなニュースメディア、コミュニティが、自社サイトに組み込んで読者ら支援者から寄付金を募ることができる寄付金管理プラットフォーム「RevEngine」を無償で提供開始。
Senator's TikTok whistleblower alleges data abuses
TikTok排除の動きが加速する米議会で、同社にさらに不利な内部証言が飛び出した。元ByteDance社員が上院議員に、同社が米国ユーザデータを容易に操作でき、バックドアリスクのある独自のソフトウェアを操作していると証言。Janet Yellen米財務長官に書類が提出されたという。
How does a news organization succeed in 2023? One word: Retention. - Poynter
「2023年、報道機関はどう成功するか? 一言で言えばリテンションだ」。獲得した新規の購読者数より、継続購読を選択した購読者数の維持(リテンション)が価値があるというロジックを解説。それは“パーソナライズし、価値を高める”との考え方に帰着するものと指摘する。
Retail, search and Amazon’s $40bn ‘advertising’ business — Benedict Evans
「Amazonは2022年、400億ドル近い広告を販売。それはAmazon Primeより大きく、世界の新聞業界全体よりも大きい。だが、これは本当に広告なのだろうか、家賃なのだろうか、それとも別の何かだろうか?そして、それはGoogleにとって何を意味するのだろうか?」。

——Amazonの事業ポートフォリオ上「その他」に属していた「広告」が数年前から急増していた。PrimeやAWS以上の収益力を生み出す部門が急速に立ち上がった。その現象の意味に着目した投資家Benedict Evans氏の論考。

Tech platforms struggle to verify their users' age
特に米国で、大手SNSとその未成年ユーザに関する懸念が高まっている。InstagramやTikTokの濫用が十代のウェルビーイングを損ねているとの声が日に日に増す。一方で、ユーザ情報の取得には制約があるなか、ユーザ年齢をどう厳格に確認するのかという技術課題に注目が集まる。
Spilled ink: How to prevent AI from vacuuming your business model
「ニュースメディア、特にそのトレーニングや運用における大規模言語モデルの役割から、生成型AIに対する同様のレベルの関心、知性、インパクトが生まれ、それに答えることになることを疑う人はいないはずだ。
では、もしニュースルームやライター、アーティスト、メディア企業のアウトプットがスクレイピングできなくなったら、2023年に注目される生成型AIの質はどうなるのだろうか」。
AIにメディアのビジネスモデル(の源泉)を吸引されてしまわないようにするには? 業界団体が論説した。
German publisher Axel Springer says journalists could be replaced by AI
「Bild」や「Die Welt」などを傘下にもつ独メディア企業Axel SpringerのCEO、Mathias Doepfner氏は社員宛てメールで「ジャーナリズムの仕事はAIに取って代わられる可能性が高い」「人員削減が待ち構えている」と警告。「最高のオリジナルコンテンツを作ること」が重要とも述べる。
子供たちがアルゴリズムを“批判する力”を養う米国の「AIリテラシー教育」の現場を訪ねて | MIT研究者も推奨
【有料購読者向け記事】:
「(女子校でコンピュータサイエンスを教える教師の)シューマンが生徒に呼びかける。
『今日は、ChatGPTをみんなで評価しましょう! ChatGPTが準備した授業が有益かそうでないか、それを判断するのが今日の目標です』」。

——オリジナル記事は米New York Times。メディアリテラシー教育の現場に近いが、ChatGPTなどAIが生成するロジックをどう批判的に吟味できるかを教える。興味深い試みだ。

マイクロソフト、ChatGPT本格活用(写真=ロイター) - 日本経済新聞
【ご紹介】:
日経MJ紙への連載が、日経電子版に掲載されました。よろしければご一読を。➡ マイクロソフト、ChatGPT本格活用