Disruption This Week—–21/10/2022

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2022年10月17日から2022年10月21日まで。

How publishers became addicted to the traffic hit from push alerts
モバイルアプリを運営するメディアは、プッシュ通知中毒(?)英Press Gazetteが、特定期間中(17日間)にメディアがユーザに送信したプッシュ通知集計。最も多く送信したのはWashington Post(147件)、次いでThe Telegraph(140件)、Reach傘下のMyLondon(125件)だった。
多数のプッシュ通知を送信すれば、その度にアクセス(トラフィック)を生むのは間違いないが、それがユーザ体験を蝕み、ついには“うるさい”アプリ離れに至ることも分かっていながら、の振る舞いだ。
アドビ、テキストベースで動画編集できる「Project Blink」発表--AIが感情まで認識
「Adobeが米国時間10月19日、人工知能(AI)を利用し、動画内の言葉や人、物体、さらには感情までも認識し、編集のスピードアップを図る動画編集技術『Project Blink』を発表した。このAI分析は、一言で言えば、動画編集に言語処理のインターフェースを与えるものだ」。

——次々にこの種のAIを用いた言語(テキスト)によるクリエイティブ作品の制作サービスが誕生する。本ケースは、厳密にいうとテキストを用いて動画を「編集」できるインターフェイスを提供するもの。記事が紹介する事例は、動画中で笑っている人物を見つけ出し、その動画部分に手を加えるなどができるというようなもの。そもそも長い動画があったとして、これに対してテキストである特定部分を見つけ出すようなことができれば、それだけでも大きな価値をもたらすだろう。

The Logic of a Microsoft-Netflix Deal Is Growing
【有料購読者向け記事】:
Netflixが広告表示付きの廉価版を投入したことが話題になっている。同社がその広告ビジネス立ち上げのために提携したのがMicrosoft。記事は、両社がゲーミング分野への意欲でも共通し、将来の両社の統合という“陰謀論”的筋書きを述べている。
有料購読者数は2年で5倍──Metaは撤退も、ニュースレターサービス「Substack」が成長し続ける理由 | DIAMOND SIGNAL
「マッケンジー氏によると、Substack上の有料購読者数は現在約150万人で、2年前の約30万人から5倍にも拡大。この2年間で、年間100万ドル(約1億4900万円)以上の収益をSubstackを通じて得るメディアの数は2つから10以上に増え、トップ10位のメディアの年間収益の合計額は2年前の800万ドル(約12億円)から2500万ドル(約37億円)規模にまで拡大したという」。

——ニューズレター“ブーム”が終熄? Substackの躍進を追って似たようなサービスを開始したTwitter、Facebookが次々と撤退するなか、Substackが事業を成長させていると評価する記事。国内での情勢などについても言及している。

Omneky uses AI to generate social media ads
OpenAIのDALLE-2やGPT-3を用いてクリエイティブを人工的に生成するアプローチ。実験段階から実用用途を探る段階に入ってきたようだ。スタートアップのOmnekyは、これをSNS掲出用の広告の自動生成を核に、広告出稿の全プロセスのSaaS化をめざすという。刺激的なアプローチだ。
An Interview With Meta CEO Mark Zuckerberg and Microsoft CEO Satya Nadella About Partnering in the Metaverse
本日のもう一つのインパクト。個人ブログ「Stratechery」のBen Thompson氏がMicrosoft CEOのSatya Nadella氏とMeta CEOのMark Zuckerberg氏の2人にインタビューをしている(両社はメタバースで提携)。過去にはNYTimesのCEOと本格的に取材を実現していることは紹介した。個人メディアの極北ともいえる。メディア界の秩序は、動いている。
Inside the Identity Crisis at the New York Times | Semafor
本日最大のインパクト。準備期間中からメディア界の関心を集めていた、2人のSmith氏のメディアプロジェクト「Semafor」がローンチ。巻頭はBen Smith氏の「New York Times、アイデンティティ危機の内幕」。Axiosフォーマットを意識したスタイルをめざしているようだ。
More Than 50% of Nonprofessional U.S. Creators Now Monetize Their Content, Adobe Study Finds
米Adobe社、クリエイターエコノミー関連調査の結果を発表。非プロフェッショナル(フルタイムでない)なクリエイターの50%以上が、自身のコンテンツで収入を得ており、その収益力が増していることがわかった。その比率は、ブラジル(59%)、米国(53%)、ドイツ(51%)、英国(51%)、韓国(51%)と続く。
19% of U.S. consumers subscribe to digital publications
【有料購読者向け記事】:
米国では、消費者の約4%という比較的少数だが非常に熱心な「パワー購読者」のグループが、デジタル出版物の購読者数の大部分を支えていると、National Research Groupらの調査でわかった。購読者の48%は、購読数が2〜5、21%は5つ以上だというのだ。
記事は、現在購読していない米国の消費者の73%を取り込むことができれば、 購読者を大幅に増やす余地があるとも指摘する。
Netflixの広告つき料金プランの開始で、ストリーミングの「終わりの始まり」がやってくる
「ネットフリックスの最高経営責任者(CEO)のリード・ヘイスティングスは22年7月、『今後5年から10年の間に旧来のテレビ(リニアTV)は終わる』と予測した。彼が言わなかったことは、ネットフリックスやほかの配信事業者がその代わりに現れるだけ、ということなのだ」。

——広告表示付きの廉価版(もしくは無料版)の映像配信サービスへの拡張(もしくは移行)が大手サービスで進んでいる。記事は、このもたらすものが映像コンテンツ自体の核心やオリジナル性が変化しなければ、従来の(リニア型)TVが姿を少々変えたものと変わらない、つまり50年以前にTVがもたらしたものと変化がないものになると述べる。

「シンセティック・メディア」の時代に報道は何ができるか——デジタル報道の最前線「ONA2022」現地レポート - Media × Tech
【ご紹介】:
Media×Techに新着記事です。先ごろ米LAで開催されたONA22を取材したリポートです。メディアとテクノロジーがクロスするホットな領域を荻原和樹氏が解説しました。

Disruption This Week—–14/10/2022

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2022年10月11日から2022年10月14日まで。

WSJスクープ | TikTok運営のバイトダンス、音楽配信事業を拡大へ
【有料購読者向け記事】:
「人気動画投稿アプリ『TikTok(ティックトック)』を運営する中国の北京字節跳動科技(バイトダンス)が、音楽配信サービスの世界展開に向けて音楽レーベル各社と交渉を開始した。スウェーデンのスポティファイ・テクノロジーなど業界大手としのぎを削ることになる」。

——ByteDance傘下にはもともと音楽配信サービス「Resso(レッソ)」があったわけだが、人気絶好調のTikTokとこれを組み合わせて、音楽配信分野でも事業拡大を狙うようだ。TikTokは先に、米国内で物流事業の準備を進めていることが報道されている。コマースと音楽、TikTokの事業拡張戦略が見えてきた。

Apple is quietly pushing a TV ad product with media agencies
【有料購読者向け記事】:
Netflixが広告表示付きの廉価サービスを11月3日からスタートすると発表したが、Apple TVもまた、秘密裡に広告付きバージョンを広告エージェンシーとともに検討中であるとDigidayが報道。検索広告に似たモデルで広告とのマッチングを検討中だという。
Meta’s VR social network Horizon is too buggy and employees are barely using it
Metaが力を入れるメタバース事業のフラグシップであるソフトウェア「Horizon Worlds」。だが深刻なバグを無数に抱え、同社スタッフでも利用を控える状況だと、社内文書を入手したThe Vergeが報道。メタバース担当VPのVishal Shah氏が書いたとするメモから。
「ロシア発の最大で最も複雑な工作」偽装メディアがフェイクを拡散する「ドッペルゲンガー」とは?
「シュピーゲルの公式のアドレスは『spiegel.de』だ。だが偽装サイトは、ページデザインやロゴはそのままコピーした上で、『spiegel.xxx』『spiegelr.xxxx』といった本物と間違えやすいものを使用していたという。
英シンクタンク『戦略対話研究所(ISD)』の調査では、EUでの配信が全面禁止されているロシア国営メディア『RT』が、アドレスを微妙に変更しながら、規制回避を繰り返している実態も明らかになっている」。

——平和博さんの論考。(上記引用箇所で「xxx」とした箇所は、Facebookがすでに偽アドレスとして投稿を禁止しているため記述を回避)
組織的、技術的に積み上げられた情報工作への対抗力(抵抗力)をどう構築するか。国家が主導するのか(当然な動きだが)、あるいは国家を超えた超権力たるプラットフォームが担うのか。はたまた、記事にあるようにNGO、NPOであるべきなのか。それが課題として浮上している。

Meta's Quest Pro is a powerful VR headset, but for whom?
20万円を大きく超えるメタバース用ヘッドセット「Meta Quest Pro」を発表したMeta。記事は、CEOのMark Zuckerberg氏やCTOのAndrew Bosworth氏のコメントを弾きながら、このハイエンド商品の投入に当たって、同社幹部の間でも「この高価な新しいヘッドセットのターゲット市場が誰であるかについて、必ずしも同意されていない」と論評。
NYT のサブスク拡大、鍵を握るのはゲーミングプロダクト:「今後も我々のマーケティングミックスにおいて大きな役割を果たす」 | DIGIDAY[日本版]
【有料購読者向け記事】:
「ここ数週間、これは数字としてはっきりと現れているのだが、サブスクリプションをゲームのみにするのか、あるいは全エディトリアルコンテンツにするのか、2つの選択肢を提示すると、多くは後者を選んでくれる」。

——少し前に紹介したものだが、邦訳が出たので改めて。米New York Timesでゲーム製品が購読をけん引するパワーだとはよく知られているが、当然ながらニュース製品との相乗効果が求められる。その点で、同社が力を入れるのがサブスクのパッケージ(同梱)だ。これが有効に作用している記事。(実際の数字を示して述べているのでないことは要考慮)

Bloomberg Media Is Removing Its Open-Market Programmatic Ads
米Bloomberg Media、同社メディアでの広告表示に他社(サードパーティ)製プログラマティック広告、そしてTaboolaなどのレコメンデーション製品の利用を取り止めると発表。ユーザ体験の毀損を招いており、これら除去が長期的にプラスと、社内テストの結果で判断したとする。
How Tortoise podcasts became the most profitable part
「スローニュース」を謳い文句に2019年にスタートした英新興報道メディアのTortoise Media。購読者の要望が“聴くこと”にあることを発見。ポッドキャスト「Slow Newscast」を開設。12名の従業員を擁するオーディオ部門が年間黒字に転じたという話題。同社は現在5万人の有料購読者を持つ。
BeReal tops 53M installs, but only 9% open the app daily, estimates claim
“盛らない”SNSと話題の「BeReal」。Sensor Towe調べで全世界でのダウロードは5300万を突破、MAUは2022年1月から2254%も急増。だが、今年第3四半期のMAUで見ると、Androidのアクティブインストール者のわずか9%であるとしている。好奇心でインストールはしたものの…ということか。
Paywalls are closing off the internet. Crypto can fix that
ペイウォールの乱立は、Webの最も良質な特徴であるオープンアクセスを閉ざし、結果として良質なコンテンツに出会う機会を失わせる。記事はNFTとスマートコントラクトを使って出版社と連携する新たなマイクロペイメントの仕組み「Unlock」や「The Block」などの潮流を紹介する。
「サブスクはチームスポーツ」 克服すべき障害とは? Piano社ベンチマークレポート2022 - Media × Tech
【ご紹介】:
Media×Techから新着記事です。サブスクをはじめとしたメディアの課金トレンドをめぐり、Piano Japan代表に世界および日本のメディアについて尋ねました。ご一読を。
スマートニュース メディア研究所、初となるメディアリテラシー教育の長期授業プログラムをクラーク記念国際高等学校と共同で実施
【ご紹介】:
私も参加しているスマートニュース メディア研究所が、広域通信制高校のクラーク記念国際高等学校と共同で長期授業プログラムを実施することを発表しました。