ページビューを死滅させる指標とは何か?

Financial Times が、CPM から消費時間へと広告モデルの転換を宣言した。 同時に、ページビューは終えんしない、との応酬も生じている。 メディアの新たな広告指標は誕生するのだろうか? 最新の動きを探る

Web メディアとその広告指標をめぐる興味深い論争が起きています。 それは、“ページビュー(PV)は死んだ”とする、この業界における何度目かの議論の高まりであり、そして、“いや、死んではいない”とする動き、さらには、それらを超えた新たな計測指標を創り出そうとする論戦でもあります。 ことの発端は英国の新聞社 Financial Times です。同社 Web サイト FT.com が、広告の販売方法を、従来の CPM モデルからページ上での消費時間へと移行することを宣言したことです。 同社の広告セールス幹部がその意図を、「The Financial Times on Why They Ditched CPMs For a New Ad Currency: Time SpentFT が、CMP を投げ捨て、新たな広告通貨を時間とした理由)」で述べています。

まだ、実験的段階ですが、私たちはより長く広告を表示できる記事は、読者に対してより高い存在意義があるという、仮説を証明したいのです。…… 広告表示における1秒と5秒に違いはないか? 広告を表示する時間総量の価値を測るべきなのです。…… 私たちは“FT は、CEO らによるコンテンツの消費総時間を3万時間持っているのですが、御社(の広告)は CEO とのコミュニケーションするために、それをどれくらい買いますか?”と言えるのです。

つまり、ハイクラスの読者が FT.com を視聴する総時間を、広告枠に切り分けて売りたいというロジックです。シンプルにいえば、総 PVを CPM に切り分けて販売してきた過去のモデルを、時間単位に転換する試みです。 同幹部氏によれば、FT.com では同種ビジネス系メディアに比較して6倍もの消費時間を稼ぐというのですから、CPM から消費時間に転換するだけで、同サイトの経済価値は6倍に跳ね上がるというわけです。 これに痛烈な反論をするのが BuzzFeed です。同メディア編集者による「The Page View Just Won’t Die(PV は、単純に死ぬわけではない)」がそれです。 BuzzFeed はよく知られるように、“バイラル系”と分類される、クチコミ力に最適化して巨大な PV を短期間で稼ぐにいたったメディアです。PV を擁護するのはわかります。 しかし、この記事は単に PV 擁護だけでなく、的確に Web メディア界の課題を整理していて一読に値します。

BuzzFeed: The Page View Just Won't Die

BuzzFeed: The Page View Just Won’t Die

同記事は FT.com の“宣言”を紹介し、さらに、Medium が“ペイ・パー・クリック”ではなく、“ペイ・パー・ビュータイム”的指標を推進していること、また、Upworty では、読者が記事に集中している時間(アテンション時間)を指標化しようとしていることなどを挙げて、PV に取って代わる広告の価値尺度創造への取り組みをまとめています。 その上で、同記事は過去に何度か起きた PV に代わる指標づくりの試みが、そのつど頓挫してきた経緯をふまえながら、時間消費を価値軸に据えることに対する懐疑論を紹介していきます。

Gawker の編集幹部は、時間消費に焦点を当てようとする計画は、いまはないとし、“読者満足”こそさらに重要な指標だと語る。いずれ読者満足が、読者とのエンゲージメントの指標となるだろう。ページ消費時間はその一部をなすかもしれないが、そうでないかもしれないとする。…… (Vox Media の読者開発担当者は、)SB Nation では、読者が TV 番組欄に5分費やしたところで、それは問題ではないとする。タイプの異なるコンテンツにはタイプの異なる目的に従属する。時間はすべてに適合するものではないとする。

BuzzFeed 編集者のまとめには、傾聴すべきものがあるのは確かです。それぞれのメディアごとに読者とのエンゲージメントのスタイルがあってしかるべきです。PV が万能な指標でないように、新たな指標がすべてをうまく説明できそうにないことが見えてきます。 記事はさらに避けなければならない事態を予言します。それは読者の消費時間が主要な指標になった場合、メディア運営者がどのような“最適化”に乗り出すのか、という問題です。

新たなメディア計測指標が引き起こす懸念。時間など読者の注目度に焦点を当てたメディアとはどんなものになるのか? ということだ。どんなコンテンツが生み出されるか? それが読者にとってどんな意味をもたらすか? 従来の計測指標の下、無節操なメディアが SEO でどんなことをなしたか。消費時間中心の世界で、どんな最適化がなされるか恐ろしい。

PV が主要な指標の下で、記事のタイトル至上主義、検索エンジン対策としてキーワード多用、そして、ムダなページ分割……などが積み重なって、読者の閲読体験が毀損してきたことは否めません。 消費時間が主要な指標へと転換したとしても、無節操なメディアが決して少なくないこの時代、起きることは別の弊害に過ぎないのかもしれません。 その点、Upworthy が、記事上のシンプルな時間消費ではなく、記事に注目している時間(“アテンション時間”=ページの各エレメントの表示や、ユーザーによる操作などに要している時間を省いた滞在時間)に、広告価値を求める論法を主張していること。 また、メディア計測サービスの Chartbeat は、新たな複合的指標(“アテンション Web”=滞在時間にとどまらず、スクロールによる精読度判定など各種の要素を総合するもの)など、過去にはやりたくても技術的にできなかった指標計測が、現在では現実性を持ってきたと認めてもよいでしょう。 このような新たな動きは、PV 至上主義からの脱却が進まずにきたメディアの広告ビジネスを、改めて活性化する可能性を見せ始めているといえます。

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ページビューを死滅させる指標とは何か?」への3件のフィードバック

  1. ピンバック: 今週のウェブ解析関連記事まとめ 6/21〜6/27 2014 | k0567.net

  2. ピンバック: メディアの広告指標として滞在時間は適切か? | Kobayashi Blog

  3. ピンバック: メディアの影響力をどう指標化する? | Kobayashi Blog

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