Axios:広告とサブスクリプション、融合は可能か?[前]

彗星のように誕生した、新コンセプトのプロ向けメディア Axios
開設初期からサブスクリプション志向ながら、広告でも絶好調
その融合の可能性を、創業者らが語る。

米国では、収益化を広告に、そして成長(グロース)戦略を Facebook に依存してきたメディアの周辺に暗雲が立ちこめています。
早々に身売りを決めざるを得なかった Mic を筆頭に、BuzzFeedVox Media、そして、Yahoo! HuffPostTechCrunchらを傘下に置く Verizon Media など、人員削減や事業の見直しに入ったオンラインメディアには、枚挙の暇もありません。

だからこそ、というべきか。今、事業モデルとして、サブスクリプション(購読制)に邁進する老舗の New York Times、新興の The Information が注目を集めます。さらに、“マス”は狙わず、収益性の高い専門分野にこだわり、広告とサブスクリプションの両面で収益化に自信を深めるメディア、Politico と 新興 Axios があります。
これらも、継続的なビジネスを可能とするメディアを模索する向きには、目をそらすことができない存在です。

Axios Webサイト

そこで、今回は2016年のサイト開設から短期間で目ざましい躍進を果たしてきた Axios に焦点を当てて論じることにしたいと思います。

Axios は、こちらもメディアの生き方として注目株の Politico の共同創業者、幹部らが、古巣を飛び出して組成した、新たなコンセプトを盛り込んだオンラインメディア事業です。米国の政治に関わる人ならその名を知らない者はないといわれるぐらいの“地獄耳記者” Mike Allen 氏を中核に、なによりも政治畑に強く、さらに経済、国際、そしてテクノロジーといった分野を、それぞれのプロフェッショナルがカバーします。
Axios とはどのようなものか、その華々しい成果については、津山恵子氏「無名メディアがトランプスクープ連発、超新興メディア Axios の実力」に依るのがいいでしょう。

本稿では、Axios 共同創業者の2人、Roy Schwartz(共同創業者プレジデント)氏および Jim VandeHei(共同創業者 CEO)氏の発言(Joe Pompeo「“We’re Trying To Grab People By The Collar Every Day”: Axios, The Fast-Twitch Media Darling, Is Celebrating Its Second Anniversary—and Virtual Profitability」)をもとに、同メディアのビジネスとしての現状や事業戦略についてを、次回では、対読者、対プラットフォーム戦略などについて、同メディアで読者グロースを担当するディレクターの説明を見ていくことにします。

Axios:3つの特性

まず、Axios のメディアとしての、そして事業としての中核的なコンセプトを、3つに絞って説明すると、次のようなものと整理できます。

  1. メディアとしてのアプローチ:専門家(プロ)向けメディアとして、そのニーズに応える。記事は短く、要点を箇条書きにして伝える。政治はもとよりスポーツにいたるまで、それぞれの分野で著名な記者や編集者が担当
  2. 読者へのアプローチ:上述の専門分野(政治分野で午前と午後のメルマガに始まり、「自動運転」、「中国」、「サイバーセキュリティ」「トレンド」など19もの専門バーティカル系メルマガを取り揃え、読者の関心分野をセグメント化し、強く習慣化された読書体験を提供する
  3. 収益化のアプローチ:Web サイトおよびメルマガに、ネイティブ型広告を設置。既存のネットワーク広告を始めとするディスプレイ型広告は扱わない。テーマごとのメルマガを一定期間スポンサードする商材は非常に高額。だが広告主には高い評価

「1.」のメディアとしてのアプローチを端的に示す「簡潔さ」について、Axios は「Smart Brevity(賢い簡潔性)」とユニークなアプローチとしています。
対象読者は趣味で情報をむさぼる人々と異なり、プロ(もしくはプロ志向)の人々であり、なぜ重要なのか、なにが要点なのを伝えることに徹する必要を創業者は語ります。

同時に、「2.」が示すように、読者がどの分野のプロ(プロ志向)なのか、読者自身はもちろん、広告主らにも明示できるカテゴリーを提示し、これを定期発行メルマガサービスとして購読者を募ります。
共同創業者 Schwartz 氏によれば、現在、同社サイトは、月間ユニークユーザーが700万〜1,000万人を誇る一方、メルマガのユニークな購読者は約50万人。彼らは平均して3つのメルマガを購読するため、読者が150万人いることになり、これが潤沢な広告収入源を生み出している。
インタビューワが「Mike Allen 氏の Axios AM (朝一番に届く専門政治ニュースメルマガ)には、広告主は75,000ドル/週を払うと聞くが」と水を向けると、Schwartz 氏は「その倍さ」とこともなげに応えるほどです。

重要なのは、メルマガ購読は読者には無償ながら、高価な広告収入を生み出す事業の源泉となっていることです。広告主にとっては、Axios のようなプロ向け専門メディアの情報を習慣的に購読するような読者の広告価値が高いという認識を反映しています。
一方、Web サイトも、メルマガも収益モデルは広告依存ではありながら、強固な購読者に支えられることで、事業構造をサブスクリプション志向へと融合していくことも可能のように見えます。

広告主導からサブスクリプションへ?

共同創業の2人は、2018年の事業収益が2,500万ドルに届き、もう少しで黒字化するところまで肉薄したことを認め、2019年は当然ながら黒字化を見込むと述べた後、次のような興味深い発言をします。

——有料化のステータスはどうなっている?
Schwartz 氏:昨年からベータ版をテストしている。詳細は言えないが、高額なものになる。多くの人々が考えるものとは違うもので、2019年(中の発売)が焦点だ。
Jim VandeHei 氏:言えることは、それは安価なサブスクリプション製品ではないことだ。広い消費者向けではない。それはわれわれがすることではない。
それに、広告について言えば、期待していた以上にうまくいっている。実際、今後も何年も機能するだろう。これは、他の消費者向け(広告ビジネス)が見ているトレンドとは異なるものだ。成長の可能性として、有料ビジネスと無料ビジネスを見ると、無料側はこれまでの想像以上に大きいと見ている。

一方、「想像以上に」好調な広告について、さらに述べている箇所があります。

——(2017年から2018年で)収益が倍増した原動力は?
Schwartz 氏:われわれのようなタイプの広告ビジネスには素晴らしい時期だ。CSR(企業の社会的責任)分野の広告が急激に伸びている。Axios は単にクリックを求めるようなバナー広告やロングフォームのブランドコンテンツは提供せず、「ショートフォーム・ネイティブ広告」と呼ぶものを提供しており、広告主は強い効果を感じとっている。契約更新率はかつてないくらい高く、(2018年に2,500万ドルだった収入に対し、1月早々に)すでに1,600万ドルの予約が入っているんだ。

融合モデルとは?

重要なので繰り返すと、Axios がターゲットとするプロ(プロ志向)読者層を、専門分野単位のメルマガ購読によってセグメント化し維持していくことで、当然ながら広告価値が高まる一方、サブスクリプション型の事業モデルとも、(高価格戦略をテコにするなど)適切な融合の可能性が見えてくるというわけです。
たとえば、Axios と血縁関係のある、先行する政治関連専門メディア Politico の経営者らにインタビューした記事(“I Think You Could Double The Size Of This Company, Honestly”: Politico’s Robert Allbritton On Trump, A Record Year, Expansion, and Axios)で、同メディアの収益構造、すなわち、広告とサブスクリプションの構成について、広告収入が全収益の半分弱。いい換えれば、半分以上をサブスクリプションに依っていると明らかにしています。
これは、1万ドル超から50万ドルまでのオプションを持つ、Politico Pro と呼ばれる B2B 型高額商材が果たす増収施策を指しています。まさに、Axios 創業者らが示唆した、一般消費者向けでない高額サブスクリプション製品と重なり合うことが見えてきます。

高単価な広告ビジネスと、広告価値の高い有望な読者を購読者とする、2つの骨格を事業の基盤へと融合するメディアビジネス像が浮かび上がってくるのです。

以上

参照資料:

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