それはパートナー? それとも競合者か/Flipboard の新展開

モバイルアプリの筆頭 Flipboard が新たな展開を見せる。
さまざまな Web コンテンツを、ユーザーが雑誌風メディアへとまとめる機能を提供し、
次にそれをアプリだけでなく、Web へと拡張した。
Flipboard の新しい動きに、メディアやクリエイターはどう向き合うのかを考える。

2010年にiPad専用アプリとしてデビューした Flipboard は、モバイルを通じたメディア閲覧に魅力と可能性を感じていた筆者に絶大なインパクトを与えました。

Flipboard のスタートラインは、“ソーシャルマガジン”でした。
それは、ユーザーの Twitter、そして Facebook のタイムラインやニュースフィード上で引用される Web コンテンツを、iPad の特徴を駆使して美しく操作性に優れた“マガジン風”に表示させるというものでした。
その Flipboard が、2013年に入って、改めてその歩みをソーシャルな方向へと強化していきます。
それが、Flipboard のユーザーが自分でマガジンを生成し公開できる機能強化です(参照 → たとえば、この記事)。
ユーザーが自身のセンスや専門知識を活かした情報まとめ(マガジン)を、他の Flipboard アプリユーザーに向けて簡単に出版できるものです。
Flipboard にコンテンツを提供し、ユーザーによる情報まとめを認めるパートナーメディアは、そのメリットとして Flipboard アプリ圏域(最近では、8,500万ユーザーと公言されています → この記事)で新たな読者を得たり、広告を掲出できる機会を得ます。

ここまでは、パートナーメディアにとりメリットが計算できていたはずです。しかし、その先に“第2章”があったのです。
Flipboard が、アプリユーザーの間で情報まとめを公開 ー 閲覧できる仕組みを拡張し、Web へ公開できるように踏み切ったのです(参照 → たとえば、この記事)。
従来ならば、アプリユーザー間に止まっていたマガジンの閲覧を Web へと広げれば、Flipboard アプリユーザー以上の人々に閲覧機会を提供できます。その中からアプリユーザーとなって情報まとめマガジンを生成しようとする人々の動きを誘引することにもなるでしょう。

けれど、ここで別の視点から微妙なテーマが持ち上がります。それはコンテンツクリエーター、すなわち Flipboard にコンテンツを提供するメディアパートナーにとってです。
GigaOM 掲載「Is Flipboard a partner or a competitor for publishers and content creators? Yes(Flipboardは、メディア、コンテンツクリエーターにとり、パートナーなのか、競合なのか)」は、このFlipboard の最新戦略に対する“微妙な”部分について触れた、ジャーナリスト Mathew Ingram 氏の論です。
同氏は記事で、Flipboard が誕生以来、雑誌や新聞などのコンテンツクリエイターから警戒視されてきた経緯に触れると同時に、Google や Yahoo! ニュースなどと同様、クリエイターが本来接触できていなかったような範囲の読者との接点を生み出す魅力について述べています。その上で、同氏はユーザーによるキュレーション(情報まとめマガジンの生成)と、Web への公開機能が、改めて“微妙な”関係に変化をもたらすと指摘します。以下に要点を紹介しましょう。

Flipboard Web -- The New York Times

Flipboard Web — The New York Times

ユーザーが、Flipboard 上で情報まとめマガジンを出版できるようになることは、ユーザーによるキュレーション(情報まとめ)が従来型メディアに対して破壊的であるということではなく、広告主らが出版人になれるということ、自らのために“マガジン”を出版できるということ。それが外部メディアに対して広告を掲出してきたことを(費用)削減できる、という点で破壊的なのだ。

そして、今、既存メディアが提供するコンテンツをすべて Web ブラウザ経由で利用できるようにする、Flipboard が実行する施策は、コンテンツクリエイターらに対する、巨大なエンドーラン(=アメリカンフットボールでいう、ライン外周を迂回するランニングプレー)なのである。
コンテンツクリエイターらが渇望していたのは、iPadというモバイルに限定したプラットフォームに対する展開であり、そこで新規ユーザーに接することだったのだが。いまや、Flipboard は Google や Yahoo! に似た Web メディア出版社なのだ。

もうポイントはおわかりでしょう。
既存出版社らコンテンツクリエイターは、1) (Flipboard アプリという)モバイルユーザー間でのリーチ拡大、2) コンテンツパートナーとしてのコントロール権、の2点を重視していたはずです。
しかし、Flipboard がその圏域を Web 上でのキュレーション行為へと拡張したことで、自らコントロールしてきたはずの Web 上の至近距離に、自らのコンテンツをユーザーが自由にキュレーションできる場が生み出されてしまいました。

けれど、パートナーメディアは一様に失望しているだけではありません。
最後に、Flipboard の新機軸を、逆に自らの戦略的アプローチとして活用する例を確認します。New York TimesNYT)の試みです(画像 参照)。
この最大のポイントは、Flipboard Web 上に公開された NYT コンテンツの情報まとめ(キュレーション)を行っているのが、NYT 自身だということです。
NYT は自らのコンテンツに対するユーザーキュレーションを認める(ユーザーは、自らの意匠によって生成する情報まとめマガジンに、NYT 記事を断片的に引用できる)と同時に、自ら NYT コンテンツに特化したキュレーションを行い、新たにユーザーを魅了しようと試みているのです。

他社が提供するプラットフォームに向けて、自らのコンテンツを自らの意匠によるキュレーションを行う NYT
このアプローチは、Flipboard らアグリゲーターが生み出す付加価値を、自らのコンテンツの付加価値へと融合していく果敢な試みとして注目すべきものです。

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