メディア消費の断片化を超える/ステートフルなメディア小論

スマートデバイスの誕生と普及は、消費の現場の“断片化”を加速させる。
特定の話題やメディアへ収束しない消費のあり方は、
メディア運営者にとり機会であり、危機でもある。
本稿は、この機会と危機を超えるメディアの方向性を考える。

メディア(コンテンツ)消費の現場は、“断片化の危機”に瀕しています。
そこでは、ひとつの関心に収束したり落ち着くことのないまま、数限りなく興味をひきそうな話題、目を引く刺激が次から次へと繰り出されます。
メディアの消費の現場に、まとまった秩序は存在せず、ただそこにはとりとめもない多幸感だけが充満しているかのようです。

この消費の現場の一端を示す調査を、メディアおよび広告関連エージェンシーである OGM が公表しています(People swap devices 21 times an hour, says OMD)。

(英国人)消費者200人が、夜間の1時間でどのデバイスを使ったかという定性調査を実施した。
(それによれば、)消費者らは、その1時間で平均して21回、スマートフォン、タブレット、ノート PC を取り替えながら利用した。かれらの95%はその時間中、テレビをつけていたにもかかわらずだ。
……
(OGM の調査分析担当責任者のコメントでは)この調査は、くつろぐ在宅時においては、消費者はつねに気が散る一歩手前にあるということを強調しており、広告主は、(TVCMに切り替わった時間帯に、他のデバイスへスイッチされることを避けるためにも)既存の30秒ものの広告フォーマットに代わって、もっと短いものを検討すべきとする。

一般に“マルチデバイス”“マルチスクリーン”と呼ばれるこの現象は、実は単に広告フォーマットをめぐる議論ではありません。
広告以上に、コンテンツそのものが“気が散る寸前”の消費者の選択眼にさらされているに違いないからです。

では、エージェンシーが言うように、コンテンツの尺や粒度を小さくしていくことが、とるべき選択肢なのでしょうか?
そう結論づけてしまう前に、メディア運営者に残されている選択肢を列挙してみます。

  1. 強力なコンテンツの創造:消費者の関心を圧倒的に引き寄せるようなコンテンツを創造すること
  2. 競争優位の働きかけ:他へと向けられている消費者の関心を、(隙あらば)自らの方へと奪い取るよう、競争優位を磨くこと
  3. 不断のコンテンツ提供:他への関心を持てないほど隙間なく、滑らかに関心をひき続けるようコンテンツを提供し続けること
  4. 排他的な環境の構築:他のコンテンツが介入しにくいような、排他的な環境を築くこと
  5. 新市場の創造:現在はコンテンツ消費市場ではないような、新たな時間・空間を市場へと変身させること

ここで、消費者が“つねに気が散る一歩手前”にあるという前提は、重要な戦略的視点です。
もし、他のコンテンツに顔を向けている消費者に対し働きかけようとする際、この視点がなければ、消費者の注意をこちらへと向けさせるためには、圧倒的なコンテンツ自体の競争優位(1.に相当)以外の選択肢を欠くことになります。

他方、たまたま自らのコンテンツに関心を寄せている(サイトに立ち寄ってくれたような)消費者に対して、再び他へと顔を向けさせないためには何をすべきでしょうか?
たぶん、関心を引き続ける、接点が切れないようにする、すなわち消費者のコンテキストが消失、転換するようなポイントを排除しなければなりません。
たとえば、それは居間から、自室へ、あるいは自宅から通勤電車での移動、プライベートな時間から執務中の時間へ……。
消費の現場には数限りないコンテキストの消失、転換点が待ち受けているのです。
それを乗り越え、消費者のコンテキスト転換にメディアが追随しなければなりません。

こう考えると、“圧倒的な(競争優位を有する)コンテンツ力”だけがメディア消費の現場を支配する法則ではないことに気づきます。
言い過ぎを恐れずに語れば、圧倒的なコンテンツ力と同程度に、消費者の文脈変化に追随する利便性もまた力を発揮する可能性がああります。

コンテンツの尺や粒度を小さくしていくこととは、たとえば、3.に相当するアプローチでしょう。
4.のように、いったんこちらに顔を向けてくれた消費者に、他から働きかける力が及ばないようにするためにも、5.他が市場と考えていない消費市場を定義するアプローチも重要です。
小さな閃きではありますが、筆者は、このような視点について、メディアが最近流行するカジュアルなメッセージング(コミュニケーション)に近い、“ステートフル”なつながりを創りだす方向性に可能性を見ます。

ここで“ステートフル”とは、以下のような状態を含意します(e-Wordsステートフル」)。

例えば、対話型のシステムで直前のやり取りの内容を覚えておき、最終的な処理結果にその内容が反映されるような方式をステートフルであるという。これに対し、内部に状態を保持せずに、入力値のみから出力を決定する方式をステートレス(stateless)という。

それはまるで、親しい友人との間のメッセージのやり取りのように、ニュースやトピックスが届けられ、つねに継続していく方向です。始まりも終わりものないようなメッセージのやり取りとしてそれが続きます。
そのようなものであれば、消費者にとってコンテキストの消失、転換が起きにくいからです。

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