50億円もの資金調達を実施した米 BuzzFeed。
日本をはじめとする海外への展開を本格化するが、
その影で、メディアビジネスの将来を左右する構想がリークされた。
まだアイデアレベルながら重要なコンセプト「分散型 BuzzFeed」について、検討する。
米 Business Insider のテック分野担当記者 Alyson Shontell 氏の「The Next Big Media Company Might Have No Website Or App At All(きたるべきビッグなメディアは、Webサイトもアプリも、何も持たないかもしれない)」は、短い論ながら、これからのメディアビジネスを構想する際の重要な思考実験に触れたものです。
本稿では、このコンセプトに着目してみたいと思います。
併せて同記事が参照する、NYTimes.com 掲載の Mike Isaac 氏「50 Million New Reasons BuzzFeed Wants to Take Its Content Far Beyond Lists(箇条書き記事以上に、BuzzFeed が5000万ドルを必要とする新たな理由)」も見ていきます。
Shontell 氏は、つい最近、“バイラル系”メディアの代表格 BuzzFeed が 850 億円もの時価総額で、50億円の資金調達を実施したとの報道に触れて、2年前に当時 BuzzFeed 編集長として着任したばかりの Ben Smith 氏にインタビューしたことを想い出します。
同氏はその際、こんなことを述べたとします。
(BuzzFeed CEO の)Jonahと自分は、狂ったようなブレーンストーミングの日々の中で、あるとき“BuzzFeed はサイトを持たなくてもいいんじゃないか”と思いついたんだ。
もちろん、Shontell 氏は衝撃と疑問を持ちます。
はぁ!? どうやってメディア会社は、自分のコンテンツを自らのサイトで運用しないでカネを稼ぐのか。それも広告ビジネスに依存しているメディアが。
(それに対して)Smith 氏は、すべて のBuzzFeed のコンテンツは、他のプラットフォーム上で生きていけるだろうとした。
たとえば、Facebook。その当時でも BuzzFeed の主要なトラフィックはそこからきていることを示したのだった。
この思いっきり吹っ切れた発想こそ、“バイラル系メディア”の元祖たるゆえんでしょう。もともと BuzzFeed は、「BuzzFeed Lab」を名乗り、バイラル(伝染)の仕組みを追い求める、半分、実験的な試みを行う事業としてスタートしたことを想起すべきです。
もう少しこの、“サイト不要のメディアビジネス”の方向感を探っていきましょう。
Mike Isaac 氏「50 Million New Reasons……」がその具体的なヒントを示します。
未来の BuzzFeed は、BuzzFeed.com にはないかもしれない。同社のアイデアに、「分散型 BuzzFeed」がある。それは20人ほどのチームが、Tumblr や Instagram、そして SnapChat などの人気のある他のプラットフォームに完全に依存するコンテンツを産出しようというものだ。
CEO の Jonah Peretti 氏曰く、分散型 BuzzFeed は初期段階では直接的な収入とはならないだろうが、やがてページビューのような古典的な指標で測定する以上の大きなものをもたらすだろうとする。
「The Next Big Media Company……」に戻れば、先述の Smith 氏もこの CEO Jonah Peretti 氏の「分散型 BuzzFeed」に大きな可能性があると認めていることがわかります。つまり、分散型 BuzzFeed は、アイデアの段階からプロジェクトの段階にさしかかっていることになります。
さて、2000年代を振り返れば、そこで成立した唯一無二のメディアビジネスの成功法則は、検索エンジンへの最適化でした。
自社サイトを構え、そこに誘客するアプローチとして、最高の方程式は、検索エンジンから高い評価を得ることでした。
検索エンジン経由の流入促進は、“メディア全体”というパッケージを、記事単位にまで分解してしまう副作用を生みましたが、自社サイトへ誘客できれば広告ビジネスとしては、十分にワークするものだったのです。
2000年代の後半から現在にいたる間に、検索エンジンの至高の存在感は揺らぎ、それに伍するものとして、Facebook を始めとする各種ソーシャルメディアが台頭しました。
バイラルメディアは、検索エンジンの次、つまり、ソーシャルメディアを介して話題が伝播するモデルに、大きく拍車をかけるものだといえます。
いまやバイラルを意識しない Web メディアはないというぐらいに大きなトレンドに成長したといっても過言ではありません。
けれど、メディアビジネスの多くは、依然として代替的な誘客装置としてソーシャルメディアを見るばかりで、自社サイトに到達した読者に対して広告を見せる広告ビジネスの本質に変化は見えません。
課題は、ビジネスモデル上の転換はないのか? となります。
というのも、検索エンジンは、ひとつの道具であり、通過点として利用されるものであるのに対し、ソーシャルメディアは、まさに「メディア」として自立し、読者をそこにとどめようとします。終着点へと誘客できなければメディアの広告ビジネスは自ずと揺らぐのです。
あるいは、モバイルデバイスに最適化した居心地の良いアプリも、またそのような自社サイト中心主義に対して、分散型メディアへの道を拓こうとしているのかもしれません。
「分散型 BuzzFeed」の成否は、ではサイトへ集客して自身の広告を見せる以外の広告モデルを築けるのかという点にかかっています。
本稿で取り上げた記事では、その点で明瞭なビジョンは示されていません(Peretti 氏も Smith 氏もそれはさすがに言いたがらないでしょう)。
筆者(藤村)の発想は、編集コンテンツと同じく、広告もまた分散型(配信型)へと行きつきます。それも、ネイティブな、広告としてです。
すなわち、人気プラットフォームへコンテンツとともに、コンテンツの文脈を活かせる広告クリエイティブも配信することが、ひとつの解として浮上すると考えるのです。配信型のネイティブ広告には、そのような可能性があります。
2000年代にはすでに成熟化を遂げていたデジタルメディアのビジネスモデルが、いま動きだそうとしているのです。
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