分散メディア革命/NowThis News が示す Webサイト消滅への道

「分散型 BuzzFeed」構想のリアリティが増してきた。
BuzzFeed をしのぐ急展開を示す動画ニュース NowThis News は、
自社サイトを閉鎖し、「ホームページ」の死滅を宣言、メディアビジネスの新段階に入る。
分散メディア革命の先端を紹介する。

“バイラル”の次にくるもの/「分散型 BuzzFeed」構想の衝撃」 で、米 BuzzFeed がめざすのは、コンテンツの実質の閲覧者と閲覧数の獲得が重要であり、それは自社サイト上における閲覧数の獲得に優先する、と論じたのは2014年8月のことでした。
記事の“さわり”を、過去においては検索エンジンに、最近では Facebook その他ソーシャルメディアへと露出する(分散)、それをテコに自社サイトへの集客手段する(集中)という、メディア業界人に広く知られたコンテンツマーケティングの定石を超えた発想が、萌芽としてそこにありました。

しかし、実験的に見えたその思考は、いまでは BuzzFeed にとり戦略的な中心テーマにせり上がっているようです。同社 CEO の Jonah Peretti 氏は「ソーシャルメディアには、情報へのリンクではなくコンテンツそのものを流すべきなのです」と明言します(Josh Constine「BuzzFeed CEO 曰く『リンクのシェアは時代遅れ。コンテンツを流せばチャンスが広がる』」)。
つまり、ソーシャルメディア上に拡散させたコンテンツから同社サイトへと遷移する数字よりも、ソーシャルメディア内で閲覧され完結する数字のほうがはるかに大きく、これを自社サイトの“拡張”と位置付づけるべきだというわけです。

Peretti の言葉を借りるなら、リンク情報を流して集客を期待するのは「すでに時代遅れ」のものであるとのこと。「リファラルによるトラフィックは、コンテンツ閲覧者に比べると非常に小さな数字となっています」と言っている。確かに、インプレッション数を見ると Twitter 上で8億4700万、Pinterest で60億、そしてさらに Facebook では113億という数字になっているのだ。(同上記事より)

では、自社サイトへの誘導を経由せずに広告収益を拡大する手法があるのか? と問えば、現時点で答えはひとつです。それはネイティブ広告となります。記事は以下のように述べています。

BuzzFeed は通常記事と同じ体裁を採った「ネイティブ広告」を収益源としている。であるからこそ、その記事を配信することがそのまま利益に繋がるわけだ。自らのサイトに集客し、ページビューを稼ぐ必要もないわけだ。人々の好みの情報を探し出し、そしてそれに基づいたスポンサード・コンテンツを作り出す。そしてそれをできるだけ多くの人に見てもらえば良いわけだ。(同上記事より)

一つひとつの記事(コンテンツ)と、収益メカニズムが分かちがたく統合さえされていれば、記事の単なる出口のひとつである自社運営 Web サイトは、そのパフォーマンスによっては軽視してもいいことになります。より大きな閲覧や関心を生み出せる場所(現時点では Facebook をもって嚆矢とする)に対して、記者・編集者はそのプロモーションページへ直接コンテンツを投稿すれば良く、さらにいえば自社サイト運営上のコストも低減できる理屈です。

しかし、では BuzzFeed はそのようにして、サイトの分散化からサイトの消滅へ突き進んでいるかといえば、“ノー”です。現在もなお、BuzzFeed.com は活気のある展開を行っているのが実情です。
BuzzFeed ほどの Web サイト“大手”ともなれば、実験的手法のほうへと現業のすべてを振り切るわけにはいかないのかもしれません。

そこで検証したいのが、この思考実験を現実化すべく突き進む新興メディアです。
NowThis News をご存じでしょうか? 数十秒から1分程度の短い尺で見せる“ニュース”動画を揃えたメディアであり、2014年に急速に成長したメディアとしても有名です。14年の夏に月間100万回程度の動画視聴であったものが、年末にはなんと4000万視聴にまで成長を遂げといわれています(参照 → Anthony Ha「NowThis Media Raises Another $6M To Deliver Video News Stories In Less Than A MinuteNowThis News、新たに600万ドルを調達し、1分に満たない動画ニュースを供給へ)」) 。
そのNowThis Newsが、この2月に BuzzFeed の先手を打って(?)自社サイトの運用を止めてしまったのです(参照 → Jeremy Barr「NowThis scraps its website, goes all-in on social(NowThis、Web サイトを廃棄し、すべてをソーシャルメディア上へ移行)」)。

現在の同社 Web サイト(下図右下)は、アプリダウンロードページや、分散した“移転先”である各種ソーシャルメディアへのリンクを示すのみです。試みに過去のWebサイトをさかのぼって再現するツールを使い、昨年のある時期の同サイトを再現したのが下図左上です。従来は自社サイトに内製コンテンツを複数掲げ、通常のメディアサイトとしての集客を図るビジネスを行っていたことが分かります。NowThis Newsサイトの過去(左上)と現在

NowThis News は動画ニュースに特化した事業です。FacebookTwitter など、昨今動画コンテンツに注力し始めたソーシャルメディアのタイムラインに動画コンテンツを供給する一方、VineInstagram のような、そもそも動画(もしくは静止画)をネイティブコンテンツとするソーシャルメディアへの親和性も高く、コンテンツの、そしてコンテンツによる収益化の出口は多様といえます。
各種ソーシャルメディアが、メディアからの広告コンテンツの供給を容認する限りにおいては、メディアは自社サイトの運用は行わず、代わりに強力な集客力を有する複数のソーシャルメディアへ、ネイティブフォーマットでコンテンツを供給していく。それが今後の優れたメディアビジネスの営み方である、そんな時代が一歩近づいています。少なくとも BuzzFeed に先行するメディアづくりのアプローチといえるかもしれません。

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分散メディア革命/NowThis News が示す Webサイト消滅への道」への4件のフィードバック

  1. ピンバック: フェイスブックの「コンテンツ抱え込み」はメディアにとって悪魔の誘いか | 新聞紙学的

  2. ピンバック: フェイスブックの「コンテンツ抱え込み」はメディアにとって悪魔の誘いか - VOICENEWS :: JAPANESE

  3. ピンバック: 日本メディアの「分散型BuzzFeed化(=メディアの未来)」はどれくらい進行してるのか | Media Hack

  4. ピンバック: 書評「月刊footballista(フットボリスタ) 2016年8月号」-新世代メディアとサッカー- | nishi19 breaking news

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