NYタイムズ:読者開発、プラットフォーム戦略、そしてサブスクリプションを語る

スタート当初には、だれもが懐疑的だったネットメディアの購読制(サブスクリプション)。これを成功裡に推進する New York Times
その背後には、確かな優れたデジタル戦略とマーケティング(グロース)戦略が貫かれている。
読者グロースを外部プラットフォームとの協業によって推進するキーパーソンの仕事を紹介しよう。

愛読者を購読者へと転換する。その購読者の減少は極力食い止めつつ、新規獲得を増やす。読者からの収入を基盤を盤石となれば、デジタルメディアにおける収益構造において、読者からの直接収益比率を高め、不安定な広告依存度を下げることができる——。

2011年に現在の購読制を開始して以降、シンプルなこの戦略を徹底して実践してきたのが、米国 New York Times であることは、よく知られています。
その成果は、2018年11月にはデジタルのみの購読者が300万人を超えたことからも、見えてきます。同社は2020年までにデジタル分野での収入を8億ドルとする高い目標(2014年に4億ドル、2018年には7億ドル強だった)を掲げ、この旗の下、業界をリードするデジタル戦略、外部配信(プラットフォーム)戦略を推進していることも、よく知られています。
本稿は、デジタル購読者獲得というミッションを推進する同社で、「オーディエンスおよびプラットフォーム担当ディレクター」との肩書きを持つ Sam Felix 氏へのインタビュー記事  Lizzy Raben「Q&A: Sam Felix, Director of Audience + Platforms @ The New York Times」の要点を紹介するものです。
記事はブログサービスの Medium 上に開設されたデジタルメディアによるイノベーションをテーマとするメディア The Idea に掲載されました。

Q&A: Sam Felix, Director of Audience + Platforms @ The New York Times

上述したように、購読制を盤石なものとするとの戦略を軸に、モダンなメディア組織論や、外部プラットフォームとの協業を推進してのグロース活動の概要は、メディアビジネスに携わる多くの方々の参考になるはずです。

最初に、理解のために、同社の組織論に触れておきます。
同社では、購読者らを維持増大するミッションの「読者担当(Audience Development)」を編集部門内に持つ一方、Felix 氏が担当する「読者およびプラットフォーム担当」は、マーケティング部門に持つようです。
また、同社には「オフ・プラットフォーム エディタ(Off-Platform Editor)」といったポジションがあり、採用活動も行っています(参照)。これは、自社サイト(やアプリ)外へのコンテンツの配信や編成を担当するものです。逆に自社サイト(やアプリ)内での各種活動については「オン・プラットフォーム(On-Platform)」と総称したりします。
今回紹介する記事でも、「オフ・プラットフォーム」が頻出しますが、Facebook や Google などのテクノロジー系プラットフォームと紛らわしいので、別の表現に置き換えてお伝えします。

では、本題に入りましょう。まず、Felix 氏が自らの特色ある業務について語っています。

私は、全社的戦略である、主要なテクノロジー系パートナーとのパートナーシップに焦点を当てています。多くの時間を、Google、Apple、Facebook、Snapchat などに割いており、これらのプラットフォームのなにをどう拡大していくべきかを考えています。

私の業務は、どうすれば、(New YorkTimes のジャーナリズムが自社サイト外へと反映され、マネタイズできるかを深く考えることです。そして、直接的なマネタイズであれ、読者価値の獲得であれ、その外部プラットフォームに参加すべき明瞭な価値があるかを確かめることです。

われわれは、これら往々にして理解が難しい外部プラットフォームや、自社サイトではリーチが難しい外部の読者に Times が繋がれるようにするために、大小のプロジェクトに時間を費やしています。そして、(外部で繋がった)読者を自社サイトへ流入させる方法を探しているのです。

われわれが主導するプロジェクトは、具体的には「Google で購読」や「AMP(Amplified Mobile Pages:参照)」 、「Apple News(参照)」、「Snapchat Discover(参照)」などへの取組みです。

次に、Felix 氏は先に紹介したように、NY タイムズ社内において、自分たちと編集部との関係について説明します。

われわれの社内的なポジションは、とてもユニークです。ほとんどの部署を横断して、プラットフォーマーに対する一貫した戦略を展開する業務を行います。組織的にはマーケティング部門に属しますが、物理的には編集部内に座っているんです。
もちろん、編集部のジャーナリストに影響を与えないよう適切な分離を維持しています。しかし、編集部内の読者担当チームや戦略家と密接に連携して、外部プラットフォームに対して、われわれの総合的な戦略を通じて読者を獲得していくことが、われわれの業務の中心だというのは明瞭です。

では、NY タイムズの対プラットフォーム戦略とはどのようなものなのか。Felix 氏は説明します。

われわれが新たなプラットフォームについて検討する際は、戦略的に慎重です。この新たな機会に対して、様々な視点から検討するのです。
「このプラットフォームは、われわれの記事の豊かさを、他の方法ではリーチできないような新たな読者に見せつける手助けになるか?」「このプラットフォームから、読者を自社サイトへと引き込むことができるか?」というように。
われわれは、Times のジャーナリズムを体験する最良の仕方は、われわれ自身のサイトを訪れることだと確信しています。ですから、われわれのゴールは、獲得した読者を私たちのメディアに連れ帰り、そこで(Times の)ジャーナリズムに夢中になってもらうことです。そのために彼らとの習慣的な関係を築いていきます。……
繰り返しますが、われわれのメディア上ではできないような、とりわけ新たな読者の獲得について、このようなパートナーを活用して、「New York Times の記事」の魅力を伝える手助けをするのです。

基本的な プラットフォームに対するスタンスが説明されたわけですが、さらに、テクノロジー系二大プラットフォーム、Facebook と Google。これらに対する評価や具体的な取り組みの仕方について、説明を聞きましょう。

インタビューワの Lizzy Raben 氏は、2018年に、二大プラットフォームをめぐって起きた大きな変化で、New York Times が影響を被ったかどうかを尋ねます。

実際のところ、これらの変化はプラットフォーム最適化のための日々との業務には影響をもたらしましたが、Google や Facebook へアプローチする戦略を総合的に見て、劇的な変化をもたらしたとは言えません。Facebook は、この1年、あるいはもっとの期間で、アルゴリズムに大小の変更をしてきています。
われわれは変化を確実に追跡し、それが私たちの配信ミックスに与える影響を監視し、編成戦略によって対応しようとしています。しかし、われわれは Facebook のトラフィックに依存して読者を生成していません。したがって、これらの変化がわれわれのビジネスや読者にリーチする力に重大な打撃を与えてはいないのです。
一方で、われわれは確実に Google へ、そして検索へとシフトを行っています。いい換えれば、Google へと回帰しているのです。Google とは強いパートナーシップを持っています。単に「検索の復活」を活用するというだけではなく、「Google で購読」のようなものに関連しての密接な協業です。これは、読者がどんな場所で Times の記事に出会おうと、最適な購読体験を確実に提供しようというものです。

さて、配信対象であるプラットフォームへのスタンスはわかりましたが、分散型メディア時代の技術的産物である AMP は、NY タイムズの自社サイトへとユーザーを還流させるとの基本戦略に適合するのでしょうか?

AMP については、われわれはGoogleと初期からのパートナーでした。過去2年間、AMP のフォーマット、体験を理解し、記事ページを改善すべく、Google とともに注意深くアプローチをしてきたのです。
読者、そして広告についてのインパクトを、数多くテストしました。その間、Google とともに、業界がどうシフトし、結果としてAMP フォーマットが良いものとなるよう協業してきました。そして、最近になって、AMP がうまくサポートできない種類の記事は除いて、ほとんどの記事を AMP へ変換することを決めました。
今のところ、AMP はパフォーマンスの向上を続けており、Google エコシステム内部での読者へのインパクトはポジティブです。
単に多くのAMP ページを創ったアーリーアダプターというだけでない手間をかけました。というのも、読者に表示される AMP ページが、自分たちの Web サイト上のページと同じか、それに近い体験であることが重要だからです。
また、AMP と Web サイト、およびその他のさまざまな読者とのタッチポイントを通じて、ビジネスモデルを通貫できるのを確認したいと思っています。それが、「Google で購読」の優れているところなのです。

さらに AMP をめぐり Google との協業がどのような部分に及んだかまで述べていますが、それは記事に当たってください。

次に、Felix 氏、そして NY タイムズが Apple News や Flipboard などアグリゲーション型のニュースアプリをどう考えているかを尋ねます。

まあ、われわれは用心深く見ています。 これらのプラットフォームを、閲覧体験として、さらに言えば、多くのメディアのコンテンツを短い時間で閲覧したいと願っている読者にリーチする機会と考えています。
こういったプラットフォーム上に存在感を築くことで、われわれのジャーナリズムをこのような読者に伝えることができますし、彼らを私たちのメディアへと連れ帰り、記事にもっと深く取り込む機会を探し、発展させることができるのです。
たとえば、Apple News 上で、メルマガ登録を推進し大きな成功を得ました。つまり、読者が自分たちメディアの外に存在していたとしても、大きなリーチを稼ぐことができたのです。しかし、Google からの流入や自社メディアへの直接のアクセスのようには、ログ解析によって捕捉できません。このようなケースでは、トラフィックというものの理解が少し異なるわけです。

最後に、読者獲得とエンゲージメント向上施策としてこれまた最近ホットなテーマである「メルマガ」(ニューズレター)に、同氏は触れています。その箇所をご紹介しておきましょう。

創刊2年目の新興メディアながら、大きな地位を築きつつある Axios をめぐる議論です。

私はいまのところ、Axios の大ファンです。彼らがしていることすべてが大好きです。 彼らがメルマガを活用して読者をセグメント化していく読者戦略にいつも感銘を受けます。メルマガの各テーマごとに明確な、読者コミュニティを構築しているのです。
Axios は読者との直接的な関係を築いています。メール受信箱のなかで、読者とのもっとも親しい関係性を築いているのです。私は、Axios がスポーツ専門メルマガを立ち上げるために、Sports Internet を買収したことは大きな動きだと考えました。
彼らのこのような動きを見て、本当に興奮します。彼らは、これらの新たな垂直型メディアであるメルマガをもってして、読者とのエンゲージメントを継続的に、拡大していこうとしているのです。

[2019/02/07] 追加訂正:2018年業績をNYタイムズが発表したため、当該箇所を修正、リンクを追加しました。

以上

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