Disruption This Week—–28/5/2021

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2021年5月24日から2021年5月28日まで。

「これらの活動は、オンラインの公共の場を多様化させ、『Me Too』や『Black Lives Matter』といった重要な議論に活力を与えたデジタルツールと同じものを悪用し、市民組織の信用を損ない、開かれた議論を腐敗させようとしている」。

——ロシア由来の組織的偽情報工作が多数を占めるというのは、もはや常識のレベルだが、この引用箇所にあるように、多くのリベラル系の人々とって喜ばしく受け止められている市民活動のスタイルや手法が、欺瞞工作に用いられており、これが国内の言論の対立激化を促しているという分析は、深く理解しておく必要がありそうだ。

【有料購読者向け記事】:
「重要なのは、メディア事業を、広告や購読料でマネタイズしようとは考えていないことです。読者のごく一部を、利益率の高いソフトウェアのサブスクリプションでマネタイズするのです。
これは素晴らしいモデルです。そうすれば、メディアとして(サブスクや広告に頼らずとも)素晴らしいコンテンツを無料で提供できてしまうのですから」。

——「インバウンド・マーケティング」を標榜するHubSpot社がニューズレター企業The Hustleを買収したことから論じる、新しい段階に入ったオウンドメディア戦略を語るインタビュー記事。実際、ビジネス系のメディアであれば、適切なスポンサーを得ることで安定的に情報発信を続けられるだろう。ただし、どこまで独立性が維持できるのかという古くて新しいテーマがそこにあるのだが。

根強い購読者層を擁する英The Economist、新たなビジネス基盤として中堅ビジネスパーソン向けのオンラインコースを開発。6週間コースで20万円を超えるが、同社編集者らがゼロベースで開発し、著名経済人らが講師となる。最初の講座は、米中対立を軸に世界の政治・経済・テクノロジーの新秩序を学ぶ。
米Axios、米国内各州の州都レベルのニュースを報じるニューズレター「Axios Local」を強化中。昨年末6都市からスタートし、現在は8都市をカバー。年末には14都市にまで広げる。現在すでに購読者が35万人で開封率35%を誇る。今年は400〜500万ドルを目指しており順調だという。
世界的広告大手のPublics Group、同社が提供するプログラマティック広告売買システムと、コンテンツ品質や真偽性からサイトをランキング評価するNewsGuardと提携したと発表。売買リストから評価の低いメディアの枠をプログラマティックに除外する仕組みだという。
「自然言語をPower Fxに変換するAIには、OpenAIが開発した自然言語モデルの『GPT-3』が採用されています。GPT-3は与えられたキーワードによる文章の生成や、英語の指示により適切なHTMLによる画面生成などのデモンストレーションが公開され、大きな話題になりました」。

——開催中のMicrosoftの開発者向けイベントBuildでの発表。同社がGPT-3の開発元OpenAIと独占的な契約を持ったことから、想像された動き。自然言語で指示するとプログラムが生成されるというのは、長年の夢だった。

数週間前、New York TimesとThe AthleticがSPAC手法での合併交渉が報じられた。交渉は立ち消えと見られたが、今度は、NYTがAthleticを買収する可能性をAxiosが報道。Athleticは購読制のスポーツ専門メディア。NYTのハードニュース外のポートフォリオ強化という文脈だ。
2018年、Salesforce CEOであるMarc Benioff氏が買収して以降、TIME Inc. の変身が続く。パンデミックはバネになったようだ。今回、編集部門の重要職を大がかりに再編。現在200万人の有料購読者を30年までに1,000万人とすべく、DXの加速と商品改革を進めるとすると宣言。
「メディア総接触時間は昨年から39.2分伸びて450.9分(1日あたり/週平均)と過去最高。メディア定点調査開始以来、最大の伸びとなった。『携帯電話/スマートフォン』 (昨年から18.0分増)を始めとして、『タブレット端末』(同9.7分増)、『パソコン』(同8.4分増)の接触時間が伸びた」。

——例年、年初に行われる調査。したがって、新型コロナウイルスから生じた影響が、強くは出にくい(とはいえ、影響を及ぼしているのは当然だが)タイミングなので、結果的に良い調査になっていると思う。15年前には全メディア接触の半分強を占めていたTVは、いまでは3割強に縮減した。

「平日に『見た』人は、10~15歳56%(前回2015年は78%、22ポイント減)▽16~19歳47%(同71%、24ポイント減)▽20代51%(同69%、18ポイント減)。いずれも5年で20ポイント前後減った」。

——NHK放送文化研究所が5年おきに行っている「国民生活時間調査」から。メディア接触だけでない生活全般の変化を浮き彫りにして興味深いが、やはりTVの凋落が目につく。ちなみに、TV以外の「マスメディア」は、特に十代にとって無に等しい状態。「誰でも接触するメディアがマスコミ」というような概念は、消失している。

【ご紹介】:
私が編集に携わっている「Media×Tech」から新着記事です。長いので上下に分割しましたが、ご存知古田大輔氏が、デジタルジャーナリズム時代のキャリア・スキル形成について持論を語ってくれました。
【ご紹介】:
昨日もご紹介した古田大輔氏へインタビュー記事。後編を掲載しました。ぜひ一読下さい。