Disruption This Week—–19/4/2024

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2024年4月15日から2024年4月19日まで。

メディア業界を揺るがす、Forbesによる MFA サイト運営問題。プレミアムパブリッシャーに向けられる懐疑の目 | DIGIDAY[日本版]
「クライアントの広告が何年ものあいだ、効果測定企業、DSP、SSP、さらにはエージェンシー自体によっても検出されずにこのサブドメインに表示していたという事実こそ最大の脅威であり、ドメインなりすましを検出するための機能とレポート結果に大きなギャップが存在することを明らかにしている」。

——先日紹介した米Forbesの広告用インプ稼ぎに用いられていたらしいサブドメイン問題。“広告テクノロジー”というようなハイテク手法でもないが、機械による計測に任せているだけでは、広告主側にはなにが起きているかも分からない。また、何が起きていても、さして問題でもなかったのかもしれない。エージェントが介在していただろうが、広告をめぐるモラルハザードをあらわすエピソードだろう。

Newsweek is making generative AI a fixture in its newsroom
約90年の歴史をもつ米NEWSWEEK。同メディア編集部はAI利用について非常に積極的。記事には「方針と基準」へのリンクが設けられ、AI利用についても開示。人が関与するのを前提に、編集部が「執筆、調査、編集、その他のジャーナリズムの中核的機能」でAIを使用する許可与える。
続々と課金制を施行するメディアが増えるなか、そのコンバージョン率を上げることが最初の課題となる。その点で、固定的なペイウォールをダイナミックモデルにするのが有望視されるが、その6つのアプローチを事例で解説する記事。
AI Index Report 2024 – Artificial Intelligence Index
米Stanford大のAI研究所、「AI Index Report 2024」(第7回)を公開。10のポイントを呈示。「1. AIは一部のタスクでは人間に勝るが、すべてのタスクで勝てるわけではない」「7. データあり:AIは労働者の生産性を高め、より質の高い仕事をもたらす」など。興味深い論点を網羅。
Two new books are essential reading for anyone considering a news startup - Poynter
ニュースメディアで起業を検討する人々に必読の2冊の新刊書。ひとつは、起業家たちの物語。もうひとつは、進化するメディアの状況におけるツール、テクニック、トレンドに焦点を当てたもの。米メディアPoynter.が紹介する。
Meta、著名人になりすました詐欺広告に対する取り組みを説明
「Metaは人による広告の審査と、自動検知を組み合わせて運用中。審査チームには、日本語や日本の文化的背景、ニュアンスを理解する人員も含まれているという。『最新の傾向を把握することで新たな脅威に備えることができるよう、今後も取り組みを続けてまいります』」。

——話題になっている“有名人(を騙る)詐欺広告”問題への対処策。「日本語がわかるスタッフも(多少は)含まれている」辺りから取り組み強化が必要そうだ。まだAIにはそこまでの実務能力はないということか。

アングル:メタのニュース配信停止、政治分野で高まる情報操作リスク
「調査の一つに関わったマギル大学メディアセンターのディレクター、テイラー・オーウェン氏は『政治グループで話題になるニュースが、ミームに取って代わられつつある。われわれのフィードではかつて、ジャーナリズムや真実の情報が常に流れ、信頼感の印となっていたが、それが消えてしまった』と話した」。

——Facebookが(報道メディアのへの支払を嫌って)報道メディアの記事リンクの投稿抑止する動きの結果、政治的、党派的な偏りのある投稿が減るどころか、もっと怪しい言説が増えてしまったという調査結果が報じられている。

Oh look at that! Now Google is using AI to answer search queries.
Googleは、通常の検索結果にAIが生成した回答をひそかにテスト中だ。これは「AI Overviews」と命名されており、米英両国で約1か月前に始まった。同社は、回答が複雑(だが回答可能)と思われる通常の検索クエリに対して、自己生成のOverviewsをテストしているのだという。自らの牙城を崩すかもしれない試行に、同社は大変に慎重な扱いをしているようだ。
最長で禁固20年「フェイクニュース法」がニュースを脅かす、その本当の理由とは?
「世界31カ国32件の『フェイクニュース法』を調査したところ、対策の効果よりも、政府による濫用のリスクが際立ったという。
大きな原因は、そもそも『フェイクニュース』とは何かが、はっきりしないことだ」。

——32件の法律・法案の分析から見えた特徴の1つは、大半が規制対象としている「フェイクニュース」について、明確な定義をしていないという。各国が大きな選挙を控えて、偽・誤情報対策に乗り出しているが、法制化には、国家権力による恣意的な運用を行いやすい下地づくりという側面がついて回る。

Google blocking links to California news outlets from search results
米カリフォルニア州で、「カリフォルニア・ジャーナリズム保護法案(CJPA)」が制定へ向かう。可決されれば、同州在住者がGoogle検索などを利用した際に表示される記事リンクに応じた利用料が求められる。Googleは法案牽制のため、一時的にリンク表示のブロックに踏み切った。

Disruption This Week—–12/4/2024

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2024年4月9日から2024年4月12日まで。

米The Weather Company(旧IBMの一部門)、さまざまな地域や企業、個人向けにカスタマイズできる気象予報システム「ReelSphere」を発表。カスタマイズされた気象予報動画とAI生成の音声を合成して表示する。同社は、システムは気象予報士の仕事を支援するものと説明する。
アドビ、1分3ドルで動画コンテンツ買い取り-AIモデル構築で
「ブルームバーグが確認した文書によると、アドビは、写真家やアーティストが参加する自社のネットワークに120(約1万8000円)ドルを提示し、歩行など日常的な動作の他、喜びや怒りといった感情を表現する人々の動画投稿を依頼している。AI学習のための素材収集が目的という」。

——記事が確認するように、動画を学習することでテキストなどのプロンプトから簡単に動画を生成できる、Google「SORA」などの台頭に対抗するための動きだ。Adobeの本業はプロ向けのクリエイティブ制作ツールやサービスの提供だったが、大きな業態変更を果敢に進める段階のようだ。

Axios Sees A.I. Coming, and Shifts Its Strategy
【有料購読者向け記事】:
米メディアAxiosの創業者Jim VandeHei氏は、ジェネレーティブAI時代にメディア企業が生き残る唯一の方法は、ジャーナリスティックな専門知識、信頼できるコンテンツ、人と人とのつながりを提供することに集中することだと語る。
Axiosにとって、それはライブイベントの増加、スター・ジャーナリストを中心としたメンバーシップ・プログラム、高級購読ニューズレターの拡大などだという。同氏はまた、このAI時代のメディアの転換は、印刷からデジタルへの転換以上に困難だとも述べる。
フィルターバブルも感覚的に回避し、情報の海を軽やかに泳ぐ。10代のメディア利用実態とインサイト
「―10代と他の世代で違う部分・変わらない部分はどのようなところだとお考えですか?
野田(絵美氏):SNSの利用状況には10代と20代の大きな違いはありませんが、利用スキルや情報リテラシーについては10代のほうが非常に高いです。これは学校教育の成果だと捉えています」。

——「たとえば、『情報が偏る』というSNSのリスクを理解している割合は20代だと3人に1人程度です。対して、10代では過半数と、他の世代を圧倒していました」と野田研究員は語る。アルゴリズムについても同様の知識があるという。

高校生では1割強が経験済み…子供達における配信実情(最新) : ガベージニュース
「興味深いことに、男女別ではすべての学校種類において女子の方が高い値を示している。特に高校生では男子が7.9%なのに対し、女子は7割ほど増しの13.4%もの値。男子よりも女子の方が、配信に対する意欲は高いのだろう」。

——若年層によるネット配信の経験を尋ねた調査。多くは動画と想定するが、ショート動画やゲーム実況など、YouTubeに収れんしない多様性が生じ、それがまた配信体験の底上げをしていると理解。引用箇所は、その男女比で女子が高いとの指摘。にわかに仮説を用意できないが、覚えておきたい事象だ。

Google、Workplaceに含む動画制作アプリ「Google Vids」の計画を公表。「我々のモットーは、スライドを作ることができれば、Vidsでビデオを作ることができるということだ。動画制作のスキルは不要だ」と担当分野の幹部は述べた。
AI is already reshaping newsrooms, AP study finds - Poynter
「ジェネレーティブAIはすでに報道を変えている」。
AP通信が12月に行った調査で、主に欧米の報道メディアに関わるスタッフ(292名)の70%近くが、SNSへの投稿、ニューズレター、見出し作成、インタビューの翻訳や書き起こし、記事の下書きなどにジェネレーティブAIを使用と回答したという。記事内リンクから調査リポートが得られる。
Spotify、プロンプトで操作できる「AIプレイリスト」を英豪でβリリース
「モバイルアプリのライブラリタブでテキストプロンプトを入力することでAIがリクエストに沿ったプレイリストを生成する。例えば『アレルギーの季節に元気をくれるリラックスできる音楽』や『自分が主人公になったような気分にさせてくれるプレイリスト』などと指示すればいい」。

——すぐに飽きてしまいそうではあるが、それにしても、自分専用のプレイリストが生成されるというのには惹かれる。凝ったプロンプトを考えてみたくなる。

OpenAI、新API公開でファインチューニング機能強化——企業がAIモデルをカスタマイズしやすく

BRIDGE(ブリッジ)|「起業家と投資家を繋ぐ」テクノロジー&スタートアップ関連の話題をお届けするブログメディア

OpenAI、新API公開でファインチューニング機能強化——企業がAIモデルをカスタマイズしやすく
「よりパーソナライズされた AI に向けた重要な動きとして、OpenAI はカスタムモデルプログラムの拡張と同時に、ファインチューニング API の大幅な強化を発表した。これらのアップデートにより、開発者は AI モデルのファインチューニングをかつてないほどコントロールできるようになり…」。

——いわゆる“ハルシネーション”対策はもちろん、専門的領域をめぐる応答で、大外しな会話が飛び出したりするジェネレーティブAIの弱点をどう改善するか、どう精度を上げていくか。現時点で最大の壁を越そうとする動きに見える。もちろん、その成果は今後の評価待ちではあるが。

AIで量産のメディア偽装サイト「ピンクスライム」の数が、本物のニュースサイトと同規模に
「ニュースガードは、全国で運営されている1,162件のピンクスライムサイトを確認した。これは、実在する日刊ローカル紙が運営する本物のニュースサイト約1,200件とほぼ同数だ」。

——「ピンクスライム」とは、元来、本来の肉類の増量を図るために用いられる偽造肉(ピンク色をしている)に模して、過去は安価な労働力で、今ではジェネレーティブAIなどを用いて生成された信頼性のないニュース記事などのことを意味する。数年前に私自身が指摘したように、本物のニュースサイトと同規模どころか、より爆発的にこの種のでっち上げ記事が生成されることになるだろう。

ファクトチェックアワード2024

FIJ|ファクトチェック・イニシアティブ

ファクトチェックアワード2024
【ご紹介】:
今年(2024年)もファクトチェックアワード、やります! 僭越ながら今回も選考委員を務めます。
「ご応募は自薦・他薦を問いません。「ファクトチェック」と明示されたものに限らず、情報の真偽を検証することを主眼としたコンテンツであれば対象となります」

Disruption This Week—–29/3/2024

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2024年3月25日から2024年3月29日まで。

八代亜紀さん『お別れの会』“最期”のあいさつにファン感涙「八代亜紀は幸せでしたよ」 生前の肉声をもとにAI生成【コメント全文】(オリコン) - Yahoo!ニュース
「お別れ会では八代さんが生前残した音声をもとに、AI音声合成技術を用いて新たに生成された八代さんの“肉声”メッセージが冒頭から届けられた。八代さんは『自身の声を残したい』という思いから、2020年に『声辞書』を作成。約400の文章を読み上げ、それらを音源データとして保存していたという」。

——日本でも、故美空ひばり氏の生前の録音を使った取り組みがあったと思う。ジェネレーティブAIがリーズナブルなコストでそれを容易にしつつある。今後広がるだろう。

One year in, revenue sharing on Shorts shows how your passion on YouTube pays off
「Shortsの参加資格を満たしてYPPに参加したクリエイターの80%以上が、YouTubeの他のYPP収益化機能を通じて収入を得ている」「昨年『Shorts』にレベニューシェアを導入して以来、 YPPの25%以上のチャンネルがこの収益源から収入を得ている」。

——米YouTubeが発表。TikTokを追って考案された「ショート」がいよいよ影響力を高めつつある。

長尺トレンド、CTVの収益性の高さ。米人気 YouTuber が語るYouTubeクリエイターの現在地 | DIGIDAY[日本版]
「現在、我々が目を向け、最適化に取り組んでいるのは、長尺動画とCTVだ。昨年の我々のチャンネル視聴者数の30%がCTVによるものだった。2023年に関していうと、超長尺コンテンツによって1700万時間の視聴時間と1億200万回の視聴回数がもたらされた」。

——YouTubeで稼ぐ米国の著名クリエイターが、現在の収入をどう分析し、今後どうしようとしているかをつまびらかに述べた出色のインタビュー記事。

Apple出身者ら設計の最新端末「Ai Pin」、日本発売へ - 日本経済新聞
「現在は米国内のみの販売で、英語入力にのみ対応している。同社によると韓国の通信大手、SKテレコムと日本のソフトバンクの2社と独占契約及び戦略提携を結んでおり、日本と韓国での製品展開を予定しているという。ボンジョルノ氏によると、同デバイスは日韓での正式発売時には、日本語と韓国語に対応する予定という」。

——以前何度か紹介した、胸辺りに大きめのバッジのように装着するジェネレーティブAI駆動のデバイス「AI Pin」。日本でも発売の動きが出てきた。スマホをリプレイスするのか、補完するのか。あるいは、単なるキワモノなのか。日本語エディションが出れば試してみたい。

Avoiding the news isn’t the same as not consuming it
選択的ニュース回避層は、実はニュースを多く消費している。この層は、年齢が若くニュースに否定的なイメージを持ち、(意外にも)政治的効力感が高い。一方で、ニュース消費が単に少ない、メディアや政治への信頼が低く、低所得な人たちとは弁別されるべきとの研究議論。
焦点:巨大ITが直面する米欧の独禁法問題、業界初の解体命令も
「巨大IT企業は、過去数十年間で最大の逆風にさらされている。米国と欧州の独占禁止当局が、これらの企業の反競争的とされる慣行の取り締まりに乗り出し、アップルやアルファベット子会社グーグルが、業界として初めての分割解体命令を下される恐れまで出てきたからだ」。

——記事が結論づけているように“解体”(分割)に至る道は相当に険しい。そんな議論を続けている間に、新たなAI巨大プラットフォームが誕生しかねない。ただし、この種の緊張感を巨大プラットフォームに与えることは総合的に有益だと思う。

「生成AIでニュースにタダ乗り」相次ぐメディア訴訟と罰金410億円、その適正な対価とは?
「訴状は、AI生成コンテンツの検知サービスを提供する「コピーリークス」が2月22日に発表したチャットGPTの大規模言語モデル(LLM)、GPT-3.5に関する調査結果を引用している。
調査ではGPT-3.5に物理学から経済学、スポーツまでの26分野、1,045件のテキストの出力を指示したところ、59.7%で盗用を含むテキストが含まれ、45.7%で同一のテキストがあった、と指摘」。

——他の同様の調査結果も示されている。これだけ大規模な模倣では、フェアユースとは言いがたいと思うが、OpenAIらはどう抗弁するのか興味を持つ。

英Financial Times、購読者からの自然言語文による質問に答える「Ask FT」と呼ぶ新しいジェネレーティブAIチャットボットを導入。記事はそれを実際に使い、その精度を論じている。下地となった記事などを明示する機能など媒体運営者が求める要素が含まれる。その一方で、生成された解説には一部矛盾や古さなどがあったとも指摘。
生成AIの弱点が相次ぎ発覚 ChatGPTやGeminiがサイバー攻撃の標的に 情報流出や不正操作の恐れも
「イスラエルのベングリオン大学の研究チームは、生成AIとユーザーの間に割り込んでデータパケットを傍受し、AIの回答内容を高い精度で復元する攻撃に成功したと発表した。この攻撃は、生成AIがユーザーの質問に回答する際のデータ処理に存在する脆弱性を突いている」。

——ChatGPTのみならずGeminiにおいても、同様の脆弱性発見されているという。他人がどのようなプロンプトを発し、AIがどうそれに応えたかを再現できるらしい。

BBC in talks to sell archive to tech companies as AI training data
英公共放送BBC、同社のコンテンツをジェネレーティブAI事業者へのライセンス販売を協議中と、英メディアFinancial Timesが報道。協議には(Gen AI事業者として)Amazonが含まれているとも。すでにBBC幹部が発言していることから交渉は公知のようだ。

Disruption This Week—–15/3/2024

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2024年3月11日から2024年3月15日まで。

MusicWatch Reports Results of 2023 Annual Music Study: Record Numbers of Music Streamers and Paid Subscribers | MusicWatch Inc.
米メディアMusicWatch、2023年版「US Annual Music Study」で米音楽市場の調査結果を公表。米市場は引き続き健全。有料会員数は過去最高し、レコード音楽(CD、レコード、ダウンロード、音楽ストリーミングの有料購読)への支出も増加しているとする。
オープンAI、仏紙ル・モンドとスペインのプリザとライセンス契約
「ChatGPTのユーザーは今後数カ月かけて、一部の回答でル・モンド紙とプリザの要約された記事を読むことができるようになる。回答には記事の出所が明記され、元記事につながる『強化リンク』が設けられ、ユーザーはそれぞれのニュースサイトにアクセスして追加情報や関連記事に接することができるという」。

——OpenAIとニュース(報道)メディアとの提携が、じわじわと進んでいる。「強化リンク」という出典元明示の仕組みも提供されるという。

Sprouts of Hope in a Gloomy Media Landscape
【有料購読者向け記事】:
「『Puck』、『Punchbowl News』、『The Ankler』、『Semafor』などが代表的な新興ニュース企業は、支出を抑え、慎重に雇用している。いずれも、特定のニッチ分野を幅広くカバーするニュースレターが中心である。一流のジャーナリストを企業の中心に据えることで、時には企業のオーナーとして、彼らを惹きつけてきた」。

——米New York Times、先行き厳しいメディア経営環境を念頭に新たなメディア運営法をめぐり取材、論じている。

AI news that's fit to print
米メディアQuartzの創業者で、最近、New York TimesでAI活用イニシアティブの責任者に任用された
Zach Seward氏が、メディア(ジャーナリズム)がAIを活用しようとして失敗した例、成功した例、そしてLLMの可能性を事例を豊富に使い解説したSXSWでの講演記録。必読!
AI規制法案、EU議会で可決-世界に先駆け包括的な内容
「欧州議会は13日、人工知能(AI)法案を可決した。これにより欧州連合(EU)では、急発展するAIを最も包括的に規制する法律が導入される。
米国ではこれに相当する法規制はなく、EUの法案に盛り込まれた一連の規制が欧米諸国におけるAI管理を方向づける可能性がある」。

——EUが最も厳格。米は緩やか。日本はその中間、というのが通り相場だが、日本でも厳格の側に傾く動きもあるようだ。政府も躊躇しているのだろう。G7で主導権を発揮した日本の立ち位置も揺らぐ。

OpenMeter makes it easier for companies to track usage-based billing | TechCrunch
サブスク(購読)型課金モデルが、利用者にとって割高と感じられることが多くなるに従い、従量型課金(Usage-Based Pricing)モデルが広がり始めた。記事は、その基盤をSaaSで提供するOpenMeterの話題。エンタープライズ分野で注目されるが、C向けにも適用できるのでは?
Tortoise boasts growing podcast audience of up to 3m downloads per month
“スローニュース”を謳う英Tortoise Media。2019年の創業時のコンセプトは少ない数の長文記事をじっくり読ませることだったが、22年にはポッドキャストにピボット。現在は、月間300万ダウンロードを誇るという。女性視聴者が6割、40代以下の比率が8割だという。

インターネット広告費は過去最高を更新 ビデオ広告が二桁成長―電通・日本の広告費詳細 | AdverTimes.(アドタイ) by 宣伝会議

AdverTimes(アドタイ)宣伝会議が運営する、広告界のニュース&情報プラットフォーム

インターネット広告費は過去最高を更新 ビデオ広告が二桁成長―電通・日本の広告費詳細 | AdverTimes.(アドタイ) by 宣伝会議
「インターネット広告媒体費を取引手法別で見ると、運用型広告は前年比110.9%の2兆3,490億円で、インターネット広告媒体費に占める構成比は87.4%となった。予約型広告は前年比100.0%(2022年:2,647億円、2023年:2,648億円)とほぼ横ばい」。

——発表された「2023年 日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析」から。上記運用型広告のいまさらながらの浸透ぶりに加えて、動画広告が高い成長を示したことが、昨年のハイライトだろう。

How DMA gatekeepers are responding to the EU's new competition rules -- in their own words | TechCrunch
EUで施行されたDMA(デジタル市場法)の下で、ゲートキーパーと指定されたAlphabet/Google、Amazon、Apple、ByteDance/TikTok、Meta、Microsoftの6社が、それぞれ、最初のコンプライアンス・リポートを発表し始めている。今後EU監視下でこのような検証公表が求められることになる。
地方紙のサイトが“生成コンテンツ”を大量発信、AIを用いた「クリックベイト工場」の秘密
「人工知能(AI)が生成する『クリックベイト(釣り記事)』で溢れるウェブサイトのネットワークは、既存のメディアやブランドの評判をずる賢く利用して構築されている。これらのサイトは、かつて高い信頼を得ていた組織のURLのドメインを不法占拠(サイバースクワッティング)し、閲覧者や広告主を混乱させ、誤解を引き起こすことでうまい汁を吸う」。

——Metaで働いたことのある人物が、このジェネレーティブAIが生成するコンテンツを、元々定評があったローカル紙のドメインを活用して、悪質なコンテンツを振りまくモデルを発見したという記事。記事が指摘するように、この事案は広告による資金稼ぎが狙いだが、容易にプロパガンダ意図に応用できるだろう。

Disruption This Week—–8/3/2024

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2024年3月4日から2024年3月8日まで。

アップルは「マフィアの手口」 EUの新ルール、アプリ業者が猛反発:朝日新聞デジタル
【有料購読者向け記事】:
「ファウ氏(=ドイツの暗号化メールアプリ『トゥータ』のマティアス・ファウCEO)は『現状の規約にとどまるか、ビジネスを壊すリスクを取って新規約に移るか。アップルの手法は、身代金を要求するマフィアのようだ』という」。

——AppleがDMA施行に対処するため(と想定できる)、新アップストア利用規約が非常に評判が悪い。個人的に見ても、よくもこれだけワル知恵を働かせたものだと感心。特に外部決済に誘導されようとする一般ユーザーに対し、「(外部で決裁すると)アップルはプライバシーやセキュリティーに責任を負いません」と大書きで警告する手法は、圧倒的な影響力があるだろう。

プロンプト不要、生成AIで誰でも物語からマンガが作れる
「テキスト-画像生成AIは物語性のある複数の画像を生成するのが苦手だ。複数の画像で、設定に一貫性を持たせるのが難しいからだ。だが最近、物語を一度入力すると、それに合った一連の画像を生成するサービスが登場した」。

——画像生成については、DALL-EやStable Diffusionなどを利用するようだが、それ以前のストーリー、プロットなどを解釈してうまい画像を生成させるプロンプトを人間代わりにやってくれるジェネレーティブAI「ロア・マシーン(Lore Machine)」が試行運用中。記事に含まれる見本が面白く読める。

“Don’t expect help from the disruptors”: The FT’s chief executive on AI, “loyalist” readers, and its U.S. expansion
英Financial Times(FT)のCEO、John Ridding氏がインタビューに応じ、好調なデジタル購読者獲得とメディア業界の現状について語る。同社の購読者は140万人を超え、うちデジタル購読者は100万人超。約20%が米国在住だという。日経による買収以降、グループ収益は倍増だとも。
同社が力を入れてきたエンゲージメント戦略の詳細な現状も語られ、読み応えのある内容。
生成AIのグラウンディング(Grounding)とは?
「用語『グラウンディング』について説明。特定の知識や情報源(ナレッジベースなど)に基づいて言語モデルの生成内容を裏付けるプロセスのことで、チャットAIに独自の情報源を付与するRAG(検索拡張生成)という仕組みがその代表例。チャットAIがもっともらしいウソを答える問題(=ハルシネーション)を減らせるといったメリットがある」。

——LLMからいかにして信頼性の高い情報を意図して出力させられるか。また、その信頼性を証す典拠などを明示させられるかといったテーマは、現在、自ら培ってきた信頼性の高いコンテンツを資産として維持する出版社、メディアにとっての死活問題。課題だったこの問題への一つのアプローチが「グラウンディング」だ。

Newsguard debuts new automation tools for tracking election-related misinformation
情報の信ぴょう性などの検証からメディアをレーティングする調査企業の米NewsGuard、選挙イヤーの2024年用に、「Election Misinformation Tracking Center(選挙関連誤報追跡センター)」をサービスイン。従来の追跡システムに加え機械化をさらに促進したという。
10代にとって「メディア」とは? 気になる「界隈」って? イノベーターティーンのメディア生活 番外編 @メ環研の部屋 | メディア環境研究所|博報堂DYメディアパートナーズ
「10代はこの(=フィルターバブルのような)『情報が偏るリスク』をよく理解しているようです。調査では10代の6割が『多様な人や意見・情報にあたるようにしている』と回答。その対策として、X、新聞、ネットニュースなど複数のメディアを使い、確からしさを得ようとしているという声が聞かれています」。

——ティーンがバランス良く情報を摂取すべきことを知っているとの結果。これが全体に適用できるのかどうかもう少し深めてほしいが、自分の日ごろの感覚とも整合する。

BBC News marks content 'verified' to counter disinformation
英BBC、記事中に引用などされた第三者による映像情報に、「検証済み」マークを表示するようにした。検証された動画や画像には、作者、撮影日、撮影場所、カメラの詳細、その後の編集や変更などのメタデータが埋め込まれ、読者はそれを確認できる”How we verified this”ボタンを設置する。
How Max Tani Became the Go-To Guy for Horrible News About Media Layoffs
人気の新興メディア米Semaforでメディア関連情報を担当するMaxwell Tani氏へのインタビュー。同氏は、いくつものメディアを渡り歩き、Semaforにたどり着いたが、いつの間にか、“メディアの訃報(レイオフ、媒体閉鎖)”を報道する専門家のようになってしまったと嘆く。
These Companies Have a Plan to Kill Apps
スマホアプリが消滅へ? すでに軽く紹介したが、MWC2024にドイツテレコムがLLMを利用したヒューマンインターフェイスを搭載したスマートフォンのコンセプトモデルを展示。人間が“複数のアプリを操作してタスクを完了”モデルから、AIに指示し、AIがタスクを完了する新トレンドが動き出している。
インターネットの利用環境、70代のスマホでの利用が3年間で31pt増加【LINEヤフー調査】
「60代以上のシニア層を見ても2021年4月と比較して『スマホ』でのインターネット利用者の増加傾向は顕著で、60代は86%(+6pt)、70代は65%(+31pt)の利用率となった」。

——当然の帰趨と言えばそうだが、シニア層でスマホ利用が急速に進む。となると、ネットメディアやサービスの利用についても、この層で進むことになるだろう。メディア受容における世代対立も変化する可能性がある。