メディア戦略 これからの20年を展望する

つねに“いま”を走り続けなければならないビジネス環境。
しかし、縛り付けられている“いま”を離れ将来を展望できるとすれば?
これからのメディアに求められる価値観について、
長期にわたり指針とすべきオピニオンを紹介しよう。

このブログでは、デジタルメディアの最前線に伴走し、時には過去を振り返り、そして時に未来を展望しようとします。
ブロガー Ben Elowitz 氏は、継続的な起業家で、現在はメディアを起点に発する口コミを集約するプラットフォームビジネスを手がけます。
それとは並行してメディアビジネスに関するオピニオンを発信しており、紹介する「The 20 Year Strategy for Media(メディアの20年戦略)」 も、そのエントリのひとつです。

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“今年の業績は?”“来期の事業計画策定は?”“今後5ヵ年の戦略ロードマップは?”
このような日々継続する事項から離れ自由になれるときは、めったにない。
一瞬でも、現在目の前にしている火急の意思決定事項から自由になれたとしたら、代わって“メディアビジネスが成功するために、これからの20年をどのように戦略的に動けば良いか”を考えられるのだが——。

このように語る同氏は、だからこそ20年といった普段考えもしない時間枠でビジネスの将来を考えるべきと示唆します。

本稿は、同氏がこのように日々の活動をいったん休止して導いた「メディア(ビジネス)これからの20年戦略」のポイントに触れるものです。

Elowitz 氏がこれからの20年に視る基本的な枠組みは、シンプルです。

デジタル(メディア)は継続する。他方、非デジタル(メディア)はその消滅へのカーブをさらに突き進んでいく。
ただし、現在もてはやされているさまざまなデジタル(メディア)戦略のいずれが長く生き続けるのかは依然として不明だ。

同氏がそのような視点から挙げるのが、次の12の戦略ポイントです。個々に足を踏み入れる前にまず概観しておきましょう。

  • 希少価値を発揮するコンテンツ
  • 体験的価値がもたらすインパクト
  • ブランドを通じ読者との関係性を築く
  • 複製不可能な人間の才能を重視する
  • ライブイベントがもたらす絶頂感
  • コンテンツと流通を融合する
  • 最重要なのはイノベーション
  • 広告価値の減少は継続する
  • 消費者に支払わせる能力を築く
  • パーソナリティほどユニークなものはない
  • 適合力が必要
  • それらすべて……

残念ながら、これらすべてを紹介するわけにはいきません。筆者(藤村)が、なかでもポイントと見るものに絞り検討していきたいと思います。

希少価値を発揮するコンテンツづくりへ

グーテンベルグの印刷技術の発明以降、メディアの世界では、ただひとつ明瞭で押しとどめようのない方向性が存在する。
それは“希少性から潤沢性へ”の法則だ。(コンテンツは、限られていて数少ないもの、という状態から、同じようなものが溢れかえっている状態へと向かう)
その流れは過去10年でますます勢いを増している。記事、写真、そして動画でさえ、その変化のただ中にある。過去、これらが(希少であるとの)価値を示したものが、いまや小銭を稼ぐことしかできない。

このように述べる Elowitz 氏が強く訴えるのは、低品質で大量生産されるコンテンツからの差別化です。

コスト抑制を旨とするメディア企業が、低コストでありきたりなコンテンツを作ったとして、トラフィックは稼げるだろう。だが、価値あるものを産出しているとは認識されない。
長期的観点から、メディア企業の最大の脅威とすべきは、この“潤沢性”である。永続性をめざすメディア企業は、希少性の高いコンテンツを生み出さなければならないのである。

“体験的価値”に焦点を当てる

次に同氏が掲げるのが、“体験”が生み出す価値の重要性です。これまた、“希少性”に根ざす価値のひとつでしょう。目の肥えた読者らに、感動の体験を提供することは容易なことではありません。

今日では、読者を喜ばせるには、言葉や写真だけに止まるわけにはいかない。動画や音声、その他さまざまな情動的な関係に訴えかけるものすべてだ。
コンテンツは、この“情動的な関係”の一部をなすだけでなく、場の雰囲気やセッティングをも媒介する。

Elowitz 氏が述べる“情動的な関係に訴え、場の雰囲気やセッティング”全体が読者体験を形成するということです。

なにかの途上でスマートフォンをチェックするかもしれない。カウチにくつろいでタブレットを観るかもしれない。あるいは、仕事中ほんの一瞬、情報を観ているのかもしれない。
無際限にあふれるコンテンツの中で、このようなシーンごとに最高の体験を提供してくれるメディア(ブランド)に、読者は再訪しようとするのだ。
リチャード・ブランソン氏率いるバージン航空では、他社が当たり前のこととして見過ごしているさまざまな体験をつねに再定義しようとする。
機中の照明や装飾、音楽、そして安全のためのビデオを変えてみる。
それは決して“革命的”には見えない。だが、日常の中の体験的価値として考えれば、それが非常に大きな顧客の忠誠心、情動的な関係を生み出すのだ。

コンテンツと流通、それぞれの力を融合する

“コンテンツ魂”を強く意識するメディアが、その希少なコンテンツを、高い体験的価値、ビジネス的価値へと磨き上げることに意外なほど無自覚であることがあります。
コンテンツをターゲットとする読者に的確に届ける、また、読者が喜ぶ仕方で届ける仕組み、そしてそこから的確に回収する手法は、過去においても、そしてこれからもメディアのビジネスにとり大きな課題です。

コンテンツ企業は、(すぐれた)流通企業でなければならない——。
この考えは決して目新しいものではない。Timeや(「Better Home」誌や「Gardens」などを擁する)Meredithは、ダイレクトマーケティングの仕組みを何年にもわたり築いてきた。しかし、多くのメディア企業の精神的支柱は、依然として“コンテンツ魂”のほうに止まっている。
(コンテンツの)流通は、過去20年の間に大規模な変化を遂げている。そして、その変化の勢いは、消費者の時間消費がモバイルとソーシャルによりますます変化を加速する。
メディア企業には、流通のマイスターとなる以外の選択はない。

コンテンツ課金、“壁”ではなくビロードのロープに

広告支出が減退するなか、メディア企業にとり、読者課金の仕組みは、今後の最も重要な収入源になるだろう。
これからの20年間、消費者の期待値は、“コンテンツはどこにでも、いつでもそこにある”ものであり、そして、それは“ほんの些細な値段で存在すべきもの”なのだ。この点で、消費者にとって支払いにともなう抵抗感が減少すれば、その支払いの頻度はぐっと増すこと請け合いだ。

個人に対するコンテンツ課金の有望性について、Elowitz 氏はこう述べます。
氏の課金についての考え方は明瞭で、

  • 支払いの面倒臭さを減じる
  • 消費者が求める利便性に応える
  • 体験的価値と希少価値を提供する

が、個人課金のためのドライバだとします。
これらの施策は、“壁”(ペイウォール)を設けるのではなく、ベルベットのロープを消費者に手渡しプレミアムコンテンツの世界へ引き上げるという点で重要だというのです。

これからの長い間、メディアビジネスを遂行する上で重要な多くのポイントが示唆されています。
これらは時間をかけて徐々にその意義を証明していくことになるはずです。

ところで、Elowitz 氏が、このエントリでただひとつ、それら多くのポイントを先取り的に体現しているメディア企業(団体)を挙げています。
それは米国 NFL(the National Football League)です。
ニュース、データ、ゲームの要素がそのサイトには詰め込まれており、ファンはそこで多くの時間を費やそうとします。
テキスト・写真・動画が、Web・モバイル・ソーシャルにまたがって融合されているさまは、確かに今後のメディアビジネスの歩むべき道のりを考える際に重要な道しるべとなるはずです。
(藤村)

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