米国のビジネス系オンラインメディア Business Insider が、モバイルアプリ開発に当たって、“ネイティブアプリケーション”を選ぶのか、それとも“HTML5アプリケーション”を選ぶのか、その考えどころを8ページに及ぶ長大な記事で解説しています。
その名も HTML5 Will Replace Native Apps–But It Will Take Longer Than You Think (「HTML5はネイティブアプリを置き換える——ただし、それはあなたが考える以上に時間がかかる」)です。記事は長くとも技術に偏らない平易な解説をしているので、ビジネス面で関心がある方には英文ながらお薦めします。
最近では、スマートフォンやタブレットなど、モバイル系デバイスとそこで動作するアプリケーションの話題を見かけない日はありません。
ところが、ここで事業者には基本的な悩みがあります。
「ネイティブアプリで行くか、それともHTML5アプリか」というテーマです。
ここでネイティブアプリとは、それぞれのプラットフォームごとに用意されたOSやそのAPI、開発ツール等に沿って開発された専用アプリを指します。
一方、HTML5アプリは、個々のプラットフォーム専用ではなく、Webブラウザを対象にしてHTMLによって開発された汎用的Webアプリを指します。
特に最新のHTML5は、従来のようにコンテンツを静的・動的に表示するのに止まらず、豊富な機能を備えたプログラムをWebブラウザ上で動作させるような仕組みにまで進化を遂げています。
HTML5をサポートするWebブラウザがあれば、プラットフォームは異なっても、アプリケーションの開発は一回で済ませられるという期待がそこに生じます。
では、記事のポイントを紹介していきます。記事は各種の視点を扱っていますが、今回は、端的に両者の長所、短所を比較したセクションを概観しましょう。
- コストという視点:勝者 HTML5……もし、複数プラットフォームごとにアプリを投入しなければならないのであれば、一回の開発ですむHTML5アプリを選択するのが開発コスト的に良い
- ユーザー体験という視点:勝者 ネイティブ……「最も美しいアプリケーションは、ネイティブだ」との意見がある。HTML5はいまなお未完成であり、ネイティブなら専用のコードを書いていくことでその先を行くことができる
- 特徴的な機能という視点:勝者 ネイティブ……これはHTML5アプリにおける今のところ最大の弱点だ。例を挙げるとGPS機能をHTML5では扱えない
- 流通させるという視点:勝者 HTML5……判断が微妙になるが、HTML5アプリに軍配を挙げる。人によってはネイティブをサポートするアップストアなどの仕組みを、アプリ流通のためには歓迎するだろう。だが、最終的にはWebでのオープンな流通を通じて多くの人がアプリを使うことになる。また、Appleのように強力な権限を持つ存在の力を弱める効果もある
- 換金化(マネタイズ)の視点:勝者 ネイティブ……Appleのアップストアを例に挙げれば、それはあなたのクレジットカード情報をあらかじめ持ったiTunesと連携する。ネイティブはこのような仕組みでアプリケーションの配布をマネタイズするという点で、仕組みを持たないHTML5に比べてずい分容易である
このように、総合的にはネイティブアプリに現在では軍配が挙がることを、記事では認めています。
ただし、論者が述べたいのは、時間をかけながら、現在のHTML5アプリが不利であるような点は徐々に克服されていくだろうということです。
その道のりや考察については、長くなるためここでは省きます。
ご紹介した5つのポイントだけでも、これからモバイル系アプリを企画、開発する際に踏まえておかなければならない点がいくぶんでもクリアになったはずです。参考にして下さい。
(藤村)