各デバイスの特性からスタートするメディア開発のポイント

本稿では、至極シンプルなテーマを考えてみたいと思います。
それは、メディアの表現形式を根本的に制約するかもしれない「デバイス」の特性についてです。

経験的な認識ですが、メディアビジネスに携わる多くの人々が、「メディアの本質はコンテンツ。コンテンツの価値は形式に左右されない普遍性がある」と信じ込んでいます。
今回は、ことの原理、本質の側に深入りせずに論を運びたいと思いますが、メディアの本質に、その表現形式は分かちがたく関与していると筆者は認識しています。
前回述べた(「コンテンツの戦略的再利用」)ように、“Write Once, Read Many”、すなわち1回書いた(制作した)コンテンツを多様に使いこなすべきという私のテーゼも、表現形式の特性上の差異というハードルを簡単には越えられない側面もありるのです。

それはさておき、今回題材として紹介したいのは、米国の「全米雑誌協会」と呼ぶべき業界団体 The Association of Magazine Media による充実した調査レポート「Personal Mobile Devices: Tablets, E-Readers and Smartphones-Implications for Publishers and Advertisers.」(「パーソナルモバイル機器:タブレット、eリーダー、そしてスマートフォンによる出版社・広告主への影響」)です。
30ページを超える詳細な文書で、PDFでダウンロードできます。大変に充実した資料です。英文ではありますが一読をお勧めします。

PersonalMobileDevices

Personal Mobile Devices: Tablets, E-Readers and Smartphones-Implications for Publishers and Advertisers

同資料は、タイトルにもあるように、従来の印刷雑誌に対して、PC、そして「パーソナルなモバイル機器」などそれぞれの特性を比較しつつ、会員出版社(メディア企業)らにデジタル分野、特に「パーソナルなモバイル機器」へのメディア開発の取り組みを促すものです。

この資料中に、これらデバイス(機器)の特性を整理した情報があります。シンプルですがポイントを押さえたものです。以下に和訳して引用しておきます。

印刷雑誌と比較した際の、各種デバイスの特性

Devices

注:アスタリスクは、Nook Color

先に、いくつか注釈をしておきます。
「eリーダー」とはAmazon Kindleに代表される書籍/雑誌閲覧専用デバイスを指します。「インタラクティブ性」「マルチメディア」に「有*」とあるのは、資料は注釈で「Nook Color」が該当するとしています。
しかし、調査の後に発売された「Amazon Kindle Fire」もここに加えるべきでしょう。典型的なeリーダーとタブレットデバイスとの溝を埋める種類の製品がいまや誕生しているのです。

「ロケーション検知」は、デバイスの所在場所が何らかやり取りできる、さらに言えば、所在によって発信する情報の選別などが可能となるなどを含意しています。
言うまでもなく、この機能があれば店舗や観光地などの情報に付加価値を加えられます。
「印刷雑誌」の特性が、この点で「低」とあるのは、雑誌(や新聞など)は、その販売地域によって掲載内容にある程度の差異を付けることができるからでしょう。

上記表に掲げられた各々の特性は、こうシンプルに整理すると目新しい発見などないようにも見えます。
しかし、よく考えれば、このように各種デバイスを横断的に比較する自体とても意義のあることだと分かります。

メディア企業は、自社手持ちのコンテンツやメディアの特性や方向性と、これら各デバイスの持つ特性を組み合わせることで、強いメディアの方向性を企画しやすくなります。
さらに言えば、上述したようにコンテンツの使い回しをするという方向であっても、それぞれのデバイス特性に合わせた“味付け”を施すことで、読者(ユーザー)体験の拡張が可能だと思います。
たとえば、レストランガイド(外食レビュー)メディアを考えた際、スマートフォン版メディアでは印刷雑誌に掲載されたコンテンツにロケーション機能を加わえることで、印刷雑誌では得られなかった利便性という体験を得られることは言うまでもないでしょう。

最後に、粗雑ですが、筆者が念頭に置いているそれぞれのデバイス特性にフィットしたメディアの方向性について整理しておきたいと思います。

  • PC/ノートPC……CPUパワーと比較的広い画面、積極的な操作が可能な特性で、検索などをしながらの情報閲覧、動画などを交えた総合ニュース的展開
  • タブレット……家庭でくつろぎながら、印刷雑誌よりリッチで動的な情報メディアの展開、また、少人数間での商談などに用いる動的なビジュアルカタログへの展開
  • eリーダー……すでにある印刷書籍、印刷雑誌を何冊も手軽に持ち歩き読ませる展開、電子化に付加価値を追求せずPDFに親和性のある出版の展開
  • スマートフォン……モバイル性を駆使して、ストレートな情報を許された時間に合わせて次々閲読するようなニュースメディア、地理情報との組み合わせで価値を生むようなガイドブックなどの展開

それぞれのデバイスの特性に即してメディアを開発するという視点は、まだ始まったばかりです。上の例はまだまだ的を射貫いていない気がします。
今後は、力のあるメディア企業は、これらのデバイス“すべて”を対象に適切なメディアを開発していくことになるでしょう。
また、中堅中小のメディア企業では、思い切って特定のデバイスに集中、その上でのメディア開発に経験やノウハウを積みニッチの強みに走ることになるはずです。

いずれの方向性を採用するにせよ、コンテンツを盛る形式であるメディア、デバイスの特性に無自覚ではおれない時代が始まっています。
そのようなノウハウも、引き続き本ブログで紹介していきたいと願っています。(藤村)

※2012.02.14 細かい文言を訂正しました。

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