“消費”と“創造”——対称的関係が導くコンテンツ新時代

わが国では Togetter や NAVER などが、インターネット上にあるさまざまな話題のまとめに使われるようになってきました。
たとえばTwitter上で盛り上がっている話題は、ひとりのTwitter投稿者がひとつのテーマを掘り下げることからはなかなか生まれず、会話の広がり、言い換えれば情報のキャッチボールを通じて深まり豊かなものとなっていくことが多いようです。会話であるため複数の話者がある話題をめぐり情報を発します。ひとりのタイムラインを追いかけるだけでは見えづらい、隠されている豊かさがそこにはあるのです。
また、Twitterから離れてあるブログ記事を見たとしましょう。ここではツィート140字の制約もなく、ブロガーが思い切り自分のテーマを掘り下げればそこに豊かな世界が画然と創造されることは間違いはありません。が、やはりブロガー単独で築き上げる世界の背後にも、一人を超えた豊かな世界が広がっています。それは、ブロガーは時代の様々な情報と見えない会話を繰り広げながら記事を生み出してしているからなのだと言えます。もちろん、この事情は商業メディアの記事一つひとつにあてはめても同じでしょう。

このような、一人ひとりのTwitter投稿者、ブロガーの視点を超えた情報価値というものが浮き上がってきます。“話題のまとめ”とは、このように一人のTwitter投稿者や、あるいはひとつの記事に止まらない話題性やテーマの広がりを見いだし、それを読者ら第三者に見えやすく整理する行為なのだと定義できるでしょう。

文字通り“まとめ”ることで全体が見通せて有用性が高まるというケースはもちろん、「そんな発想があったか!」との切り口に沿った情報のコレクションによって、各コンテンツをばらばらに見ていただけでは想像もできなかった面白みが増すことなどが、まとめのかつてなかった醍醐味です。
ここで注意しておきたい特徴は、まとめを行う行為の中にあっては、まとめ編集者は、通常、自らは多く情報を発信せずすでに存在する情報の整理・加工に徹しているということでしょう。
インターネットを介して飛び交う情報量が膨大になるに従い、新たなアジェンダ(話題・議題)を設定できる人々、さまざま情報の中に豊かな価値を見いだし、それを可視化させる能力を持った層が求められており、そしていまそれが誕生しているように見えるのです。

さて、今回紹介してみたいのは米国で生まれたまとめツールのStorifyです。米国ではCuration(キュレーション)と呼ぶジャンルのサービス(製品)です。Storifyは昨年Web版として産声をあげ、最近になりiPadアプリが追加されました。この紹介を通じて私が感じる問題意識を述べてみたいと思います。

http://storify.com/
Storifyサイト via kwout

Storifyを簡単に紹介します。それには大きく二つの機能があります。
ひとつは、ストーリー(まとめトピック)を選んで読む機能。storify.comのトップページには、各種のストーリー(まとめ)が並んでいます。読者は、ここから、話題(たとえば、ホイットニー・ヒューストンなど)やカテゴリ(たとえば、ファッションなど)をたどり、読みたいコンテンツへと到達します。
Storifyのまとめの多くは、Twitter のツイートをテキストの中心にし YouTube、Instagram の写真などで目を引くように配置されています。
Storify のもうひとつの機能は「Create Story」。すなわち、まとめの作成です。Storify トップページから「Create…」ボタンをクリックし編集画面に移動します。ここでは、作成ページ(最初はブランクになっています)がメインに、そしてサイドバーに「Media」(利用する情報源)があり、Twitter、Facebook(現在は、Facebook の写真のみしか使えないようです)、Instagram、YouTube、Flickr、Google(検索から得られた Web コンテンツなどを利用する)等が用意されています。
Media から選択したコンテンツをページ面にドラッグ&ドロップし、必要なテキストを加えたり、上下の配置を調整しながらまとめを作成します。
情報源があらかじめ複数用意されており、Instagram、YouTube、Flickr など動画像系を使いやすくなっていること、検索結果から得られた各種コンテンツを取り込む、また、URLを直接入力して得られた結果を埋めこむなどの多様性が、Togetter や NAVER とのわずかながらの差異と言えそうです。これら一連の操作は簡単で、最後に[Publish]ボタンを押せば公開されます。公開対象は一般のみです。

次に、iPad 版 Storify にも簡単に触れましょう。
iPad 版の機能は基本的にひとつでまとめ作成機能のみです。そこに盛られた機能は上記した Web 版と異なるところはほぼありません。ユーザー体験上の差異は、iPad の特性に依るのでしょうが、タッチによる直感的な操作で完結するようになっており、プロモーションビデオにあるようにユーザーはくつろいだ状態で作業を進めることができそうです。

Storifyの編集画面

iPad版Storifyの編集画面。「Media」から筆者のツィートをドラッグ&ドロップしている

さて、このように Storify の Web 版、iPad 版の紹介をしたのは、筆者にひとつの問いがあるからです。それは「まとめ」を行う行為は専門性の高い行為になっていくのか否かということです。
Web 版 Storify は、わが国の Togetter や NAVER がそうであるように Web ブラウザを通じてコンテンツを楽しむのと並行するようにして、まとめ作成機能を登録ユーザーに提供しています。機能の多寡はともかくとすれば、[コンテンツを消費する(鑑賞する)]と[コンテンツを創造する]機能は軒を接して隣接している。言い換えれば対称性をなしているのです。もちろん、消費するユーザーの数は圧倒的なはずですが、それでも、消費するユーザーの中から、あるとき“その気になった”消費者が、新たなアジェンダ設定者となって現れてくることを期待して不思議ではないのです。

しかし、iPad 版 Storify ではなぜか、この消費と創造の間に対称性がありません。アプリは作成専用。消費は Safari(Web ブラウザ)でと関係が分離されています。今回、Web 版/iPad 版それぞれを操作していてもっとも気になったのがこの点でした。
対称性が失われるとどのようなことが起きるでしょうか? それは専門分化が進むということです。

専用のツールが与えられれば、専門的にそれを行おうとする人々のための道具となります。また、専門家らの道具となれば、専門家からの要望にさらされることも必然です。
たとえ、操作が複雑であったとしてもより高度な機能が求められることも多くなるでしょう。この高度化のプロセスは専門分化のプロセスであり、気づかぬうちに一般からは手の届かない、少数の専門家だけに喜ばれる製品へと自らも気づかぬままに変身を遂げてしまうことがあり得るのです。
例を挙げて考えましょう。Apple はさまざまな産業を“再発明”したと評されることがあります。印刷→ DTP、楽曲録音→ DTM、音楽販売→ iTunes Store、雑誌・書籍→ iBook Store……。
ここで DTP を例に挙げるならば、本の組版・製版・印刷の工程を従来の大型専門機器に頼っていた要素を根本的に覆したのが、Mac とそこで稼働するソフトウェア、そしてレーザープリンタ等の組み合わせでした。しかし、最終的に DTP に殺到したのは、従来から本や雑誌の出版に携わっていた専門職能群でした。残念なことに、いまとなっては、自費出版をしてみようと思いたっても DTP ソフトウェアなどは高価かつ複雑で、個人の選択肢からは外れてしまう結果となっています。

改めて筆者の感慨を整理すると、“まとめ”のような消費と紙一重(対称的)的行為は、道具もまた専門分化する方向に進化を遂げるのではなく、より一層消費に近い体験を通じて創造的行為が行えるように進化すべきではないかということです。
これは無茶な発想でしょうか? そうではありません。いまや私たちは Facebook や Twitter、そして各種の Web ブラウザの付加機能を通じて、価値あるコンテンツを読みながら(消費しながら)、それを知人に向けて付加価値を付けて発信したり、まとめを始めたりしているのです。この境界線があいまいな領域にこそ、本稿冒頭で述べた大きなうねりがいま生じていると見ます。
Appleが最近リリースした“電子教科書”制作ソフト iBooks Author の評価について、出版の専門家の側からの論評が厳しく聞こえるのも、同社が DTP の轍を踏まず専門分化の方向での発展の道を排除していることがその一因と見るのは、うがちすぎでしょうか。
(藤村)

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