デザインこそコンテンツの未来 転換点の到来

ある外国人ブロガーが指摘した“美しくない日本のWebデザイン”。
注目すべきは彼我の文化的差異ではなく、
アプリやWebにやってきているデザインの新段階である
それは、デザインが競争力や成長力に直結するというトレンドだ

少し前、ある掲示板に興味深いスレッドが生まれました。
スレッドは「日本のWEBデザインが2003年で止まっていると話題に」であり、発端は「Japanese Web Design: Why You So 2003?」(日本の Web デザインよ:なぜ君は2003年のまま?)とのブログポストです。
「Japanese Web Design……」は、日本の美しいデザインについて考えると、“Zen”庭園、寺社、まんが……等々を思いつくものがたくさんある。それなのに、その美が Web サイトには反映されていないと、いくつもの著名なサイトを取り上げ、日本のWebサイトの現状を指摘します。
悪い例をことさらに取り上げるのは少々気が引けます。それについてはぜひ出典の記事から当たってみてください。
同ポストでは、日本の Web に共通する悪しき点を挙げています。それだけをここでは紹介しておきましょう。

  • たくさんのテキストが詰め込まれている
  • 小さなグラフィクス
  • カラム形式(だいたいは3カラム)
  • ホワイトスペースの活用が貧弱・詰め込みすぎ
  • カラーリング(青色のリンク)
  • そして混沌……

これらをブログでは「まるでアメリカなら90年代のデザインだ」としています。

さて、本ブログでも Web メディアのデザインについては、及び腰ながら何度か言及してきました(たとえば、これなど)。“及び腰”と書くのは、“デザインセンス”という意味では、筆者(藤村)に自信があるわけではないからです。
しかしそう言い続けてもいられません。(Web)デザインをめぐって、いまやひとつの曲がり角が到来しているからです。
単なる好みの問題を離れた大きなテーマとして、デザインは切実な課題として浮上しているのです。

論点整理に格好の記事「Why Great Design Is the Future of Content Marketing」 (どうして、すごいデザインはコンテンツの<マーケティングにとり>未来であるのか?)があります。これを紹介しながら検討をしていきたいと思います。記事は Mashable に掲載されました。
「Why Great Design Is……」がデザインのトレンドについて述べるポイントは明瞭です。

まだ2012年の早い段階ではあるが、ビジュアルな情報伝達スタイルは明らかに今年勢いを得た重要なトレンドということができる。Facebook タイムライン、Pinterest、そして Instagram などは、ブランド(性のあるもの)をよりビジュアル化することを通じて(人々を)考えさせ、行動させる力を発揮している。モバイルブラウジングとこのビジュアル化のインパクトの組み合わせは、“見せるのだ、語るのではなく”というテーマに新たな意義を与えようとしている。

さて、「Why Great Design Is……」は、最近になり勢いを得たビジュアルな情報伝達トレンドについて、“ビューティフィケーション”という造語を与えています。過去のように“Webデザインを小綺麗に”といった小手先・個別的なテーマとしてではなく、Web を美的に見せる大きなトレンド(=ビューティフィケーション)がやってきたとするのです。
造語の是非はともかくとして、論点を追ってみましょう。
記事によれば、ポイントは5つです。

1. アプリがビューティフィケーションをリードしている

Flipboard のデザインは、コンテンツの消費についての考え方を変えてしまった。Path は、美しいアプリデザインがどうユーザー体験にインパクトをもたらすかを示した。Instagram のフィルター、タスク管理の Clear は(従来の)ナビゲーションがいかに時代遅れのものかを見せつけた。直感に訴えるデザインを戦略的に取り上げたことで、これらのアプリは人気と急速な成長を見せた。……

Three_apps

新しいトレンドを示す、スマートフォンアプリ(左から、Instagram、Clear、Flipboard)

2. 特殊効果が鍵を握っている

ユーザーは、PC における2000年代の古めかしい操作体系を捨て、いまやタブレットやスマートフォンを使う時間を一層増やしている。このシフトが生み出した素敵な Web デザインの成果は、手が込んでいてインタラクティブな、ビジュアルな効果から生まれた。これは HTML5 や CSS3 によるおかげだ。……

3. 多様なブラウジング体験への対応が新たな必須課題に

スマートフォン、タブレット、PC、そしてTV……と多様なデバイスで Web ブラウジングが可能になっている。この多様なデバイスによるブラウジング体験に対応することは必須である。
PC 用サイトに並行してモバイル用サイトを作ることができなければ、代わりに、レスポンシブデザインによってユーザーのスクリーンサイズ選択に対応することになるだろう。……

4.「少ないほど、豊かである」(筆者注=ミース・ファン・デル・ローエの言葉)

5000万以上のブログを擁するに至った Tumblr は、ミニマリズムデザインで知られる。その“少ないほど、豊か”アプローチによるデザインは Web の空間では図抜けたものだ。
オンラインバンキングの Simple は、ページ概念にとらわれないサイトだ。メインページでは重要な情報、サインアップ手続きだけを伝える。
Square のサイトは、同社のプロダクトの機能をイメージとわずかな文字列だけで伝えようとする。
Dropbox の仕組みは“Google 様式”のミニマリズムを踏襲している。……

5. ビューティフィケーションは未来そのもの

Web を美しく表現しようとする動向(ビューティフィケーション)は、スタートアップにとり良いニュースだ。旧い Web のデザインは、新聞や雑誌業界の旧き標準を基にしている。それに対し、今日、われわれはオンラインおよびモバイルを優先しようとするルネッサンスのただ中にある。
デバイス同士が接続する今後長く成長していく分野では、ユーザーはより密着的で直感的なインターフェースに興味や関心を払う。
見てきたように、デザインについて革新的であるような企業は成長という対価を得るだろう。Pinterest や Instagram といった企業は、デザインが競合からの差別性を生むことを示し、そしてユーザーの忠誠心という値段に表せない価値を創造しているのである。……

とても十分には紹介しきれませんが、上記に付したリンクをたどり新たなビジュアルトレンドを体現するアプリ、サービス、メディアを体験することを推奨します。
そには細かな意匠上の差異に止まらない大きく共通するトレンド(方向感)の存在することが実感できるはずです。

モバイル化のトレンドと同時並行的に勃興してきたこのビジュアルトレンドが、ユーザーがたったいま初めて味わいつつあるパラダイムなのだとすれば、従来からの Web メディア提供者である私たちもこれに取り組む時期を逃すわけにはいきません。2003年ではなくいまは2012年なのだから。
(藤村)

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デザインこそコンテンツの未来 転換点の到来」への5件のフィードバック

  1. 「ビューティフィケーション」同感です。
    Webデザインの自由度が極めて高いのに!
    これまではWebデザイナーが主体でしたが、グラフィックデザイナーが、その領域を浸食するようになると変わっていくかも知れません。紙媒体の仕事が激減して活躍の場がめっきり少なくなっているので彼らも必死です。

    • 佐々木さま、
      記事を執筆した藤村です。コメントありがとうございます。
      デザイナーの方々にも、取り組むべき新しい領域が生まれていると思います。
      さまざまな立場から“デザイン(この定義も流動化していると思いますが)”が活性化して欲しいものです。

  2. ピンバック: デザインのフチ » Blog Archive » 『日本のWebデザインは2003年のまま』というブログの記事をきっかけに、Webデザインの変遷を振り返ってみる。

  3. googleの検索力が弱まってきて、サイトの作り方もSEO的な観点から脱却しつつあると思います。興味によってつながるSNSが話題の中心になるからで、そういった中で、サイトにおけるデザインの重要性は増してきているように思います。プログラマーとデザイナーの定義が変わっていくかもしれませんね。

    • 斉藤さま、

      コメントありがとうございます。記事を書いた藤村です。
      > プログラマーとデザイナーの定義が変わっていくかもしれませんね。
      大いに賛成です。実際、「デザイナー」と呼ばれる方々の必須スキルにJavaScriptなどが含まれているケースが多くなっています。
      スキルもそうですが、考え方も変わっていくのだろうと思います。改めてその辺りは記事を書いてみたいと思います。

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