コンテンツ アンバンドル時代 CMS刷新が生み出す新たな事業機会とは

この10年間、Web メディア企業は CMS を活用してきた。
しかし、スクリーンやデバイスの多様化、
そして、メディア形式とコンテンツが分離しやすい環境下で、
収益を重畳化していく際の重要な武器として、改めて CMS がハイライトを浴びる。

完全にデジタル化されたメディア運用環境では、コンテンツはメディア(という形式)に対しアンバンドル化される(分離可能になる)趨勢にあると、本ブログではたびたび述べてきました(「メディアのデジタル化が開く根本的な変化」「“アンバンドル化”の先にあるもの」参照)。
アンバンドル化の潮流のただ中にあっては、メディア事業者がビジネスモデル(たとえば、広告表示)を“バンドル”して送り出したメディア形式から、ユーザー(読者)はコンテンツを容易にアンバンドル(分離)して体験できます。メディア事業者からすればなんとも切ない状況でしょう。

しかし、冷静に考えてみるとアンバンドル化の潮流は必然であり、それは機会(チャンス)でもあることがわかります。
読者はスマートフォンを持って戸外に出ても、先ほどまでデスクトップ PC の大スクリーンで眺めていたメディアに、小さなスクリーンを通してアクセスすることができます。
スクリーンはさらに多様に分散し、かつ、ひとりがそれら複数を機会に応じて使いこなすようになることも自明です。
このような多様なスクリーン・利用環境を通じてメディアにアクセスする時代に、スクリーンサイズや利用環境に対して固定的にメディアを作り込むスタイルは、読者の限定、コストの増大といったメディアの衰退要因を抱え込むことになってしまいます。
メディア提供者(事業者)もまたアンバンドル化をテコに多様化の波に乗らなければならないゆえんです。

さらに補足をすると、メディア形式を多様化しなければならないのは、なにもモバイル化が急だから、ということにとどまりません。読者にとり、コンテンツの味わい方そのものがそもそも可能性として多様なのです。
美しく印刷され紙の触感を楽しみながら味わう仕方から、Web サイトをクリックしながら、あるいは、モバイル機器を文字通り指先の操作で利用することまで、ひとつのコンテンツを消費するスタイルには、デジタルな時代では自由であり多様であるという“機会”が備わっています。
メディア事業者にとって、このような多様性=アンバンドル化潮流を積極的に事業機会として取り入れなければ損だとさえ言えるでしょう。

さて本題です。そのためアンバンドル化潮流に効果的に適合していく“仕組み”が必要となります。複数のスクリーンサイズを意識していちいちコンテンツを制作するのは合理的ではありません。ひとつのコンテンツから、可能な限り労力を抑制しつつ多彩な機会(チャンス)を生むのでなければなりません。
これを実現する技術基盤のひとつに CMS(コンテンツ管理システム)があります。
本稿では、コンテンツアンバンドル化の潮流にあって、メディア事業者が効率的で新たな事業機会を創造する武器としての CMS ついて考えてみたいと思います(CMS の概要についてはこちらを参照)。

officercomCygnus Digital Mediaが運営する警察官向け専門メディア、Officer.com

材料とするのは、メディア事業者(パブリッシャー)向けメディア eMedia Vitals 掲載「Building the ‘perfect’ CMS」(“完璧な”CMS を構築する)です。記事は、多くの印刷雑誌に加えて30以上もの Web サイトを運営する米メディア企業 Cygnus Digital Media が取り組む CMS の変更をテコとする大きなメディア再構築プロジェクトを紹介しています。

2010年の4つの関連サイト再構築以降、Cygnus は読者と広告主のために鋭意サイトの改善に取り組んでいる。昨年には15ものサイト開設やリニューアルを果たし、今後の数か月の間にも7つの新サイト・リニューアルが計画されている。
Cygnus 幹部によれば、これらプロジェクトの範囲からした同社の CMS 投資は、他社製品を購入することに比べれば極めて小さいとのことだ。しかも、投資はすでに元が取れているようだ。
CTR(広告のクリックスルー率)から見て、広告効果は新システムとなり3倍にもなった。
デザインリニューアル後のサイトでは、PV と来訪者数で10〜20%増を果たしたと別の幹部が証言する。
また、読者とのエンゲージメント(結びつき)も同様に改善した。警察官向け専門 Web サイト Officer.com では、新しいコメントシステム採用でコメント数が200%増を示した。また、多くのサイトでは、目立つ場所に設置したことで Facebook の「いいね!」が50〜100%増えた。これについて、同幹部は「ソーシャルからの来訪者数が、われわれのサイトにとって重要なトラフィック源となり始めた」と述べる。

実際のところこれらの効果を、“CMS の変更”だけで実現できるわけではないでしょう。記事は詳しく述べていませんが、広告効果を上げる、サイト内の他記事への回遊誘導、ソーシャル系ナビゲーション機能など、デザインをはじめとする総合的なリニューアルの効果があっただろうことは想像に難くありません。
これらは素晴しい成果ですが、力点を置き紹介したいのはその背景、見えない要素についてです。

Cygnus は同社が持つ Web サイトの製品効果を向上させる手法として、(同社内で)共通 CMS を採用するという戦略的な決定を行った。
同社技術陣は、それまでの(CMS の)Drupal から、PHP と HTML5 を開発言語とする社内開発の CMS へと移行を進めた。
「もし、Web サイトのみの開発を行うだけなら以前のままで良かったかもしれない。しかし、われわれは印刷、Web サイト、そしてモバイルへとコンテンツを再利用していくことに競争優位性を見ており、このフローを創り出すために(開発言語の) PHP 等を活用することが重要だった」と前掲幹部は述べる。
プロジェクトのゴールは、創り出したコンテンツを幾度となく何らか他のメディアで活用できるようにしておくことだった。
そのために技術陣は、“完璧な CMS”を構想し、優れたコンテンツワークフローシステムを目指して印刷媒体の編集者らと緊密に協業を行った。

2000年代初頭、コンテンツを数多く制作しなければならないメディア事業者にあって、CMS に求められたものは、制作と配信を効率化する仕組みであり、また以後のコンテンツ管理(データベース化)など、“生産システム効率化”の方向性が色濃いものでした。しかし、それ以降、CMS には SEO(検索エンジン最適化)や読者の閲覧や広告表示やクリックスルーのようなマーケティング効果の最適化などが新たなニーズとして次々に積み重なっています(「マーケティング実践のための CMS 」についてはこちらを参照)。
CMS_picture

一般的な CMS 関連概念図(Web 担当者 ForumCMS 導入&活用ガイド」より)

それぞれのWebサイトでは見てくれは異なるものの、全体として共通のデザインのフレームワークを共有し、重要な2つのメリットを手に入れることができた。
ひとつは、全サイト共通で目玉となるような機能を追加するのが迅速化された。「共通フレームワーク抜きでは、これだけのサイトに短時間で機能を実装する方法はない」。
ふたつめは、広告営業チームが Cygnus が擁するサイト群の広告枠を横断的に販売できるようになった。「標準的な広告枠が実装されており、サイト横断的にそれを販売することが容易になった」のだという。

そして最新の CMS への要望は、新たな収益機会を生み出すために多様なメディア形式への対応に至っています。モバイルへの対応はその最たるニーズです。

新サイト構築が新たな営業機会を広げる中、Cygnus はデジタル版での収入多様化の模索を続けている。
「自分たちだけでなくすべてのメディア企業が、バナー広告に過度な期待をしてきた。(いま)われわれは多様な収入系統を通じて、より良いバランスを探し求めている」。
代替策は e コマースであり、モバイルへのますますのアプローチだ。

そのために、Cygnus の新 CMS ではHTML5 のサポートを果たしました。これは Web サイトを各モバイル機器へと最適化することを意味します。しかし、Cygnus はそれに止まらずアプリ開発にもチャレンジします。アプリ化したメディアで読者、広告主にとっての価値をいま体験しているところだとします。

新 CMS でモバイル向けに社内開発を継続している。これは迅速なリターンを得るための投資である。
「タブレット用アプリについて言えば、もっとやることがある。しかし、Web メディアについては今年劇的な改善を成し遂げた。新しい自家製 CMS の効能はとても大きい。開発陣が実現したことは本当に見事だ」。

このように Cygnus 幹部は述べます。多数の Web メディアを迅速かつモダンなシステムへとリニューアルすること、そして、繰り返し述べてきたようなメディア形式の多様化に適合するダイナミックな動きは、注目に値するものと言えます。
印刷媒体(雑誌)・Web サイト・モバイル用アプリケーション……。多様なメディア形式、そして多彩な表示機器。このような複雑な環境で、事業機会は多様化させながらもコンテンツ制作の労力は軽減するという取り組みに CMS 活用の現在のテーマが現われています。
(藤村)

* 本稿が紹介する記事中に製品等への言及がありますが、本稿では製品の論評を意図するものでないことを了承下さい。
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