ストリーム型メディアの勃興 Webメディアの転換点

Webページの生成を止めよとのラジカルな論が話題だ
ユーザーの便宜は、すでにストリーム(タイムライン)型メディアにある
との主張を基に、次のメディア形式をイメージしてみよう

Web メディアの表現形式をめぐって、ホットなトピックが出現しました。
Anil Dash という起業家兼ブロガーによる投稿「Stop Publishing Web Pages」がその発端です。
「ページ発行(パブリッシュ)を続ける Web メディアのスタイルに終止符を打とう」という刺激的なオピニオンです。

紹介するこのブログ記事を起点に、同氏「More On Streams vs. Pages」、Mathew Ingram 氏「What happens to advertising in a world of streams?」、John Battelle 氏「Musings On “Streams” And The Futre Of Magazines」、Richard Macmanus 氏「5 Reasons Why Web Publishing is Changing (Again)」と、短い期間に活発な議論が次から次へと現われています。
本稿では、起点となった「Stop Publishing Web Pages」からポイントを紹介します。

Dash 氏はこんな風に書いています。

多くのユーザーが、いまやアプリ内で多くの時間を費やす。Facebook、Twitter、Gmail、Tumblr……といった人気のアプリでだ。これら人気アプリは、基本的に、シンプルにひとつの“ストリーム”(流れ)に焦点を当てている。ひとつのストリームとすることで、ユーザーが“ニュースの流れ”を容易にスクロールし、ざっと目を通し、さらに深く知るためにクリックしたりできるようにしている。
(一方、)ほとんどの Web メディア企業は、“ページ”を発行するための道具であるCMSにコンテンツを投入することに時間を費やしている。ページの働きはWeb 創生期以来から基本的に変わりなく今も続いている。つまり、ページはひとつの記事、URL、そして山ほどのナビゲーション類(多くは広告なのだが)からなっている。
ユーザーは、ストリームが良いと決めているのだが、多くのメディア企業はページを次から次へと発行し続ける。Web を生成するシステムは、ページを作り続けるようにデザインされていて、(ユーザーのために)カスタマイズされたストリームを生成するようなものではない。

このブログ記事は“ストリーム”という汎用的な呼称を用いていますが、別の表現を用いれば、それは“タイムライン”です。
ユーザーにとって、Web からの多くの情報はいまやタイムラインを中心として流れ込むようになっており、それはページ型メディアを凌駕するものとなっているというのが論旨です。

左が“ページ型”、右が“ストリーム型”メディア形式
Stop Publishing Web Pages – Anil Dash via kwout

なぜ、ストリーム型メディアが、ページ型メディアに対して優位だというのでしょうか? ポイントを列挙してみましょう。

  • タイムライン型インターフェースは、ブログ形式から普及し、Twitter や Facebook に至って広く浸透した
  • 情報がほぼリアルタイムに次々と更新されるような状態では、情報を複雑な構造に配置するページ型より時系列を基準とするストリーム型の配信が、ユーザーにとって効率的な情報入手スタイルである
  • レイアウトが複雑なページ型は、スマートフォンのような小型スクリーンから、デスクトップ PC の大型スクリーンまでという汎用的な対応が難しい。構造がシンプルなタイムライン型は柔軟である
  • ページ型コンテンツはあまりに多くの広告やナビゲーション(操作系)を付随しており、ユーザーはこれを嫌っている
  • ストリーム型はシンプルな API を介して、アプリへ配信したりカスタマイズしたりするのが容易である

しかし、ストリーム型メディアへの移行を阻む要素も、もちろんあります。Dash 氏は大きく2つを挙げています。

  • ストリーム型メディアとしてコンテンツを配信するシステムやツールがまだ整っていない
  • Web 広告はページ型メディアとともに進化してきており、ストリーム型への対応は遅れている

前者について、ブログ CMS や Twitter、Facebook はあるものの、たとえば、メディア企業が本格的にストリーム型メディア基盤を用意しようとすると、試行錯誤を経た内製開発ということになりそうです。

後者は深刻な課題です。広告市場そのものが次なる成長源泉を追い求めており、Facebook、Twitter、Tumblr などが軌を一にして、“インライン広告”商材を投入してきているのはその現われでしょう。これが広告の常識をどのように変化させるかについては、別の論(「広告のコンテンツ化潮流は、メディア倫理を改めて浮上させる」)で述べました。

Dash 氏は、転換期のメディア表現形式を念頭に、次のように述べます。

ストリーム(型メディア)の生成を始めたまえ。メディア企業は、CMS を未来の方向に向かって移行を開始するのだ。
シンプルな API を用いてコンテンツを配信し、ブラウザでも専用モバイルアプリででも手軽に消費できるようにするのだ。
広告は、ストリーム内にコンテンツと同じフォーマットで挿入する。ユーザーは、ストリームを自由にスクロールし閲覧して回るはずだ。彼らがすでに日々Web でそうしているように。そして、ユーザーが欲しいコンテンツをストリームに取り入れる(あるいは、除外する)カスタマイズの機会を提供しよう。

筆者(藤村)が関心を寄せるデジタルメディアは、大きく2つの潮流を内在していると見ます。

ひとつは、印刷媒体の良さ、風合いをデジタルな形式へと引き継ごうとするものです。新聞電子版では紙面構成を子細に再現し、雑誌電子版ではページめくりの感覚やリッチな誌面レイアウトまで再現したいとするモチベーションです。
他方、これまでなかったメディア形式を“発明”しようとする流れも存在します。タイムライン形式を日常的なものとした Twitter などは、この代表格でしょう。

その両極のトレンドから見て、Web メディアの現在の立ち位置は、実は徐々にレガシーなものへと変色しているのではないでしょうか。
本稿で紹介した論者の鋭い視点から明らかになってきたと言えるかもしれません。

コンテンツソースを(RSS フィードのように)一元化し、その表示をスクリーンサイズや受信するユーザーのコンテキスト(ユーザーを取り巻く諸条件)に沿って多様化する仕組みが必要であることは、間違いありません。リッチなページ型メディア、他方でシンプルなストリーム型メディアとしてコンテンツを表示する、その両方を勘定に入れた、次なるメディア設計とビジネスモデルの開発が急を要しています。
(藤村)

ストリーム型メディアの勃興 Webメディアの転換点」への1件のフィードバック

  1. ピンバック: DESIGNERS UNION » メディアとしてのウェブサイトは「ページ型」から「タイムライン型」に移行していく

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