コンテキストデザイン/メディアの未来へのアプローチ

「コンテキスト」は、モバイル時代の重要キーワードとなってくる。
ユーザーを取り巻くさまざまな条件を考慮して、次の行動を予測する。
ユーザーとデバイスとのインタラクションをゼロ化しようとするアプローチは、メディアの未来形にも大きな影響を及ぼすはずだ。

ユーザーのコンテキストを察知し、そのつど最適な情報を提示しようとするモバイルアプリに EverythingMe があります(アプリの公式サイトは → こちら)。ユーザーのスマートフォンの利用履歴を分析し、現在の時間や場所など各種要素から利用されそうなアプリを予測し、それをホームスクリーンに提示します。また、天気やスケジュール、そしてニュースといった情報をワンタップで表示します(EverythingMe のレビュー記事は → こちら)。

同様のアプリには、米 Yahoo! が最近買収した Aviate(アプリの公式サイトは → こちら)があります。こちらも EverythingMe 同様、スマートフォンで、ユーザーが最も目にするだろうホームスクリーンを、「インテリジェントに」パーソナライズするという触れ込みです(Aviate の解説記事は → こちら)。

これらのアプリのめざすところは明瞭です。
新参のモバイルアプリにとって、日々利用されるアプリとなるには険しい道のりがまちかまえています。ユーザーの利用するツールがいくつものアプリに機能分化していく一方で、通常のユーザーがアクセス可能なアプリの範囲は、事実上、ホームスクリーン(最初の1ページ目)に限定されてしまっているからです。
Web ブラウザが情報アクセスのためのユニバーサルな窓であり、検索エンジンを介して無数のサービスへ一様にアクセスが可能だった時代と異なり、定番モバイルアプリとなるには、驚くほど狭き門を越えなければなりません。
紹介したこれらのアプリは、うまくするとその“狭き門”を支配する座を獲得できるかもしれないのです。Web の世界でポータルサイトのポジションを実現したYahoo!のような企業が、そこに可能性を見いだすのは当然です。

context

ところで、紹介した EverythingMe の共同創業者 Ami Ben David 氏が、「Context design: How to anticipate users’ needs before they’re needed
コンテキストデザイン:ユーザーに必要とされる前にそのニーズをどう予測するか)」なる論を、The Next Web に寄稿しています。
論は、モバイル向けプロダクトのデザインについて“コンテキスト”という視点から光を当てます。なぜなら、「コンテキストは、モバイルプロダクトをデザインする際の革命的なやり方」のひとつだというのです。

コンテキストを中心に置くと、モバイルプロダクトのデザインはどう変化するというのでしょう?
まずは氏の述べる結論から紹介しましょう。

私は、コンテキストデザインによる成功を、つねに“重要な結果をどれくらい小さなインターフェイスによってもたらせるか”で測る。
最高の成功とは、スクリーンの上に表示させたいものを“ゼロ・インターフェイス”で導き出すことだ。

述べようとすることは明白です。コンテキスト視点でプロダクトを考えるなら、ユーザーをいかに煩わさずに求める最適な結果へと導けるかが重要です。
求める結果を得るのに、プロダクトを操作するてまがゼロであれば成功です。次なる成功は、「たったひとつのタップ、もしくは1文字の入力」のヒントで、結果が得られることです。

氏はこうも述べています。

われわれは、ユーザーインターフェイスというものを、ユーザー主導による相互交流であるという考えに慣れている。それはユーザーがまず具体的なリクエストをすることから始まる。コンピュータはそのリクエストに対して(結果を)届けるという考えだ。
コンテキストの視点では、コンピュータに指示をするという考え方を大きく転換することになる。それは、コンピュータがすでに理解していることをユーザーは指示する必要がなくなるということだ。

抽象論に陥る前に、氏が提示する3つの具体的“シナリオ”のひとつを紹介しておきましょう。

ユーザーが置かれたある局面:ユーザーがミーティングへの出席に遅れて、ミーティングが開催されているはずの大きなオフィスビルに到着した。“だが、ミーティングはどこで行われている?”“ミーティング相手の名前はだれだっけ?”
従来のインターフェイスであれば:スマートフォンをスワイプ → パスワードを入力 → カレンダーアプリを探す → カレンダーアプリを開く → 「ミーティング」を開く → 情報を探す……“くそ! 見つからない。メールを検索だ”
コンテキスト指向のインターフェイスであれば:スマートフォンを一瞥 → 「ミーティング」(情報の)カードがすでにスクリーン上に表示されている……

念のためにいえば、ここに例示された“ユーザーの置かれた局面”で、ふたつインターフェイスからユーザーの得る答えは一意です。
ふたつの間の根本的な差異は、いかに労せずして、速やかにその答えを得られるかにかかっています。
けれど、コンテキスト指向デザインをメディアの実装に応用しようと考えたとするなら、一意の“答え”が存在しない局面に対応できなければなりません。
たとえば、“素敵なコンテンツ”を見いだすというようなケースです。
論では、1日の仕事を終えて疲れ切ったユーザーがソファにぐったりと座りこみ、居間の TV に向かうという局面も扱われています。長くなるので詳細は割愛しますが、コンテキスト指向のインターフェイスは、少ない相互交流(インタラクション)で、ユーザーにとり価値の高いコンテンツを見つけだすことが求められます。

このように、メディアのサービス的側面を構成する重要な要素にユーザーのコンテキスト理解が必要になってきます(こちらを参照 → サービスとしてのメディア/文脈的価値をめぐる断章)。
近未来のメディアはそのような価値を携えたものとしてやってくるはずです。

もう少し Ami Ben David 氏の論を紹介させてください。
論は、一意の答えを持たない価値を提供しなければならないメディアデザインとコンテキストデザインとを結びつけようとする際に示唆的なくだりを含んでいます。コンテキストを、「the User」「the environment」、そして「the world」という3つに分類して考えるというのです。

論に沿って要約してみます。

  1. ユーザー要因コンテキスト……ユーザー一人ひとりに異なる趣味嗜好などの背景、倦怠や空腹などのその時々の心理および身体的状況、あるいは立っている、移動中、走っているなどの要素
  2. 環境要因コンテキスト……ユーザーにとっての日時・場所などの物理的な状況に加えて、仕事や家庭、その他の状況やネットワークとの接続状況
  3. (社会や世界などの)外部要因コンテキスト……ユーザーとは無関係に生じる外部のコンテキスト。たとえば、スポーツイベント、事件、気象、交通機関の渋滞や遅延情報、そしてだれもが観ている TV 番組や Twitter 上に現われるトレンドなど

1.および2.の分野は、いまでは“パーソナライズ”という用語で広く語られているアプローチといえます。ユーザーの過去と現在について知ることで最適な情報を提供できるとするアプローチです。技術的にはモバイル技術の進展を受けて次々と実用的段階に入ってきているものばかりでしょう。
一方、3.の外部要因コンテキストへの視点は、当たり前のようでいて新鮮です。常識的にだれもが気にかけるような事象が「外部世界」に含まれるのは当然ですが、集合知というレンズを通すことでようやく見えてくるトレンドもまたそこに含まれてくるはずです。過去はメディアのつくり手や、介在するキュレーターのような役割が、外部要因コンテキストへの橋渡しを担ってきましたが、その場合は、1.2.との接点は欠いてきました。

一意の答えを提示するだけでなく、“セレンディピティ”(思いがけないものを発見してしまう能力)を喚起するような情報提供のために。
ユーザー要因、環境要因コンテキストの理解とともに、その対極にある外部要因コンテキストの理解を、モバイルプロダクトのデザインにいかにして融合するかという道筋が見えてきます。
また、それが大きな課題であるということになるはずです。

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