次にメディア組織の中心に座る者/グロースハッカーがメディアを変える

バイラルメディア旋風の中心、BuzzFeed。
同メディアは発行人に、まったく新しい職能をすえた。
テクノロジーメディアの中心で、新たなタレントがハイライトを浴びる

大型資金調達とともに世界展開を推進中のバイラルメディア BuzzFeed。良きにつけつけ悪しきにつけ話題にこと欠かない同メディアが、またまた話題を提供しました。
同社にとっては新設のポジションである“発行人(Publisher)”に、2年前に参画したばかりの若干40歳、アジア系女性の Dao Nguyen 氏をすえると発表したたのです(参照 → この記事)。
一般に、伝統的なメディア企業においては、発行人とはメディア事業における最高責任者であり、社主がそれを兼ねるケースもあります。

もちろん、ここで“話題”とは、その年齢でも性差でもありません。そのバックグラウンドにあります。Nguyen 氏が発行人に就任するまでの同社でのポジションは“VP of growth”、つまり事業のグロース(成長)担当責任者だったのです。テクノロジー系ベンチャーなどで一般的になってきた重要な職能であるグロースハッカーが、同氏のバックグラウンドなのです。

Meet BuzzFeed's Secret Weapon

Meet BuzzFeed’s Secret Weapon

ここで簡単に“グロースハッカー”とはどのような職能なのか、概説しておきましょう。ライアン・ホリデイ『グロースハッカー』ではこう定義しています。

グロースハッカーは、伝統的なマーケティング戦略を放棄し、検証・追跡・測定が可能なものだけを用いる。彼らの武器は、CM や宣伝や資金ではなく、電子メール、PPC(ペイパークリック)、ブログ、プラットフォーム API だ。古い世代のマーケターが“ブランディング”や“マインドシェア”などの漠然としたものを追い回している間、グロースハッカーはひたすらユーザーと成長とを追跡する。そして、戦略が当たれば、ユーザーがユーザーを引き込む連鎖反応が生まれる。グロースハッカーとは、自立し、自己増殖する成長マシンの発明者であり、オペレーターであり、整備士だ。この成長マシンが新興企業を成功に導くのだ。

このようなグロースハッカーにとって、最大の武器はデータであり、データを解析する能力でしょう。Inc. に掲載された Nguyen 氏への取材記事「Meet BuzzFeed’s Secret WeaponBuzzFeed の秘密兵器に会う)」は、同氏の発行人就任のニュース以前のものですが、同氏のキャリア上の軌跡、そして BuzzFeed 内でどのような役割を担っているか具体的に伝えており貴重です。

記事によれば、Nguyen 氏は2000年代初頭のドットコムバブル期にベンチャーに参画、手痛い挫折を味わいます。その傷を癒やすため(?)パリ行きを決意。同地の老舗新聞 Le Monde 紙のデジタル部門でその躍進をリードします。しかし、“大きなメディア企業にはもう決して属さない。これからの人生をパリでは過ごさない”と決意して同氏は米国へ戻り、2012年に BuzzFeed に参画したのでした。

ここからは同氏のグロースハッカーとしての歩みです。少しだけ証言を紹介しておきます。

彼女が参画してから、われわれは前例のない、とてつもない成長を遂げた、と語るのは創業者で CEO の Jonah Peretti。

Nguyen がデータサイエンスチームを率いて、トラフィックは3倍に、ユニークビジターは2800万から1億5000万へと5倍以上になった。……彼女を雇い、君の仕事は成長だと言ったら、それ以上のことをやってのけたのだ。

同氏が実施したグロース施策のいくつかも紹介しておきます。

  • 週末にトラフィックが低調である状態を克服するため、分析によって得たトップ20コンテンツのソーシャルメディアによるプロモーションを強化し、週末のトラフィックを倍以上に上昇させた
  • BuzzFeed サイト内でどのコンテンツを目立つよう配置するかのアルゴリズムを創り出した
  • Pinterest 対策チームを組成し、同ソーシャルメディア単独で非常に大きなトラフィックを創り出した
  • 最大のトラフィックドライバーである Facebook に次いで、拡散(シェア)を引き起こしているのが、メールであることを突き止め、コンテンツから簡単にメールできる仕組みを強化した

このような業務は従来、伝統的なメディアにおいては付随的なものでしかありませんでした。それが2000年代になって“読者開発”の重要性が認識され、いまやデジタルメディアにとり、編集でも広告・営業でもない重要な職能が誕生してきたことは、すでに「“読者開発”とは何か/ジャーナリスト その新たな職能定義」で触れたとおりです。

今回、BuzzFeed が読者開発に次いで、重要な職責としてグロースハッカーを打ち出したことは、21世紀型のメディア運営にとりデータを駆使して読者を拡大する施策とそれを推進できる能力に大きな注目が集まってきていることを示す動きとして注目すべきです。

Nguyen 氏を発行人にすえるに際して、Peretti CEO が社内に向けて発信したメモ「エキサイティング・ニュース」でその意義を述べています。

われわれは、テクノロジーを核にした出版における発行人の役割を再定義しようとしているのだ。それは、たとえば New York Times のような古典的なファミリービジネスにおける地位と大きく異なる。そのようなポジションは、しばしば広告の販売や業務全体に対する責任を有するものだ。

Dao は発行人のニュータイプだ。彼女は新聞社における貴族の役割を受け継がない。広告の販売やニューススタンドでの販売に責任を持たない。代わって、彼女は、ソーシャルメディアに向けた、データサイエンス、CMS、モバイル、動画などの分野における発信をリードする。
Peter Kafka「BuzzFeed’s Growth Czar Is Now Its Publisher(BuzzFeed、成長の皇帝はいまやその発行人だ)」より

新しいメディアのアイコン Dao Nguyen 氏の全体像が垣間見えたのではないでしょうか。
同時に、テクノロジーを原動力とするメディアベンチャー BuzzFeed が、どのような成長戦略を重視しているかも理解できたはずです。

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次にメディア組織の中心に座る者/グロースハッカーがメディアを変える」への1件のフィードバック

  1. きっとその通りだとおもう!グロースハッカーxメディア編集者ってのがこれからのトレンドになるはず。

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