Disruption This Week—–1/11/2024

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2024年10月28日から2024年11月1日まで。

オープンAI、ChatGPTに検索機能を追加-グーグルへの対抗強化
「オープンAIの『4o』モデルを利用した新たな検索機能はまず、有料サービス『ChatGPT Plus』と『Team』の加入者向けに31日からモバイルとウェブで提供される。無料ユーザーは今後数カ月内にアクセスできるようになる。同社の発表を受けて、アルファベットの株価は一時1.9%下落」。

——ChatGPTの有料バージョンに、「AI検索」機能が追加。わかりづらいが、要するに、従来のChatGPTでは(ニュースなど)最新情報は対象外だったが、それが最新情報にまで拡張されるというのがポイント。驚きは、これを受けてGoogleの株価が下落したこと。やはりAIが従来の検索ビジネスの脅威だと、市場も認識しているということだ。

Exploiting Meta’s Weaknesses, Deceptive Political Ads Thrived on Facebook and Instagram in Run-Up to Election
米メディアProPublica、米国内で8つの偽広告ネットワークが、340以上のFacebookページに16万以上の選挙広告とディープフェイクを用いた政治・社会問題広告を掲載と報道。広告をクリックして毎月のクレジットカード請求にサインアップさせられたりとの被害も生じているという。
How The New York Times is using generative AI as a reporting tool
米New York Timesは、AIを報道にどう用いているか——共和党・Trump陣営の選挙活動を批判するため、同メディアは共和党の活動家らの数年にわたる会議の動画記録(およそ400時間)を入手。単純な文字起こしに始まり、その概要把握にLLMを活用し、調査報道に結びつけたとする記事。
アメリカ大統領選挙、マスコミ信頼度が過去最低 主戦場はSNSに - 日本経済新聞
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「最終盤を迎えた米大統領選で、共和党のトランプ前大統領、民主党のハリス副大統領の両候補はマスメディア以外での情報発信に力を入れている。ポッドキャストや動画共有サイト『ユーチューブ』などSNS上で人気のある人物との連携が、有権者に接近する近道となっているためだ」。

——度々紹介しているが、米大統領選では、SNSなどのプラットフォーム上で人気を得ているクリエイターの役割が大きな注目を集めている。背景には、従来メディアへの不信が、計量的にも示されている。

オープンAI、収入全体の75%は消費者の有料サービス利用-CFO
「(OpenAIの)フライヤーCFOは28日、ブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、オープンAIの収入全体の約75%が消費者のサブスクリプション(定額課金)によるものだと説明。同社の対話型AI『ChatGPT(チャットGPT)』の消費者向け有料プランは現在、月額20ドル(約3060円)からとなっている」。

——では法人向け事業はどのような状態なのか? といえば、「同社は9月、ChatGPTの法人向けバージョンで有料ユーザー数が100万を突破したと発表した」と記事にある。いずれもOpenAIの直販事業を指していると思うが、一方で、大株主のMicrosoftは法人向けビジネスに強いはずだが。OpenAIの収入基盤は強固だ。

バイデン政権、AIに関する国家安全保障覚書を発表
「AI NSM(=国家安全保障覚書)は、安全で信頼できるAI開発における米国のリーダーシップ確保、国家安全保障目標達成のための強力なAIの活用、世界的に有益な国際的なAIガバナンス枠組みの促進という3つの柱に基づいて、具体的な行動を指示するものだ」。

——すでに紹介したが、米国は(特に中国を念頭に)AI開発による安保上の優位性を保つ一方、AIが持つリスクを抑え込むための統治を強化しなければならないという、両極の課題を自覚。その課題に明文的に対処を始めた。

Disney Poised to Announce Major AI Initiative | Exclusive
米Disney、制作者向けの大規模なAIイニシアティブの発表を準備中と、米メディアThe Warpがスクープ。この構想は、クリエイティブワーク(特にポストプロダクションと視覚効果)を一変させるような大規模なもので、同社従業員数百名が携わっているものだという。
「AIゴーストライター」が侵食する創作市場 編集委員 瀬川奈都子 - 日本経済新聞
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「『本当に人が作った曲ですか』。音楽著作権管理のNexTone(ネクストーン)の担当者は、都内の音楽出版社に出向き確認した。生成AIが国内で普及し始めたこの1〜2年、この出版社は毎月のように数千曲もの作品登録申請を続けている」。

——登録申請を求める楽曲の、そのオリジナリティを審査する仕組み自体にも、AIの能力が必要なのではないか。近未来的に見える世界が、すでに現実になっている。

Joe Rogan Takes Center Stage in an Election Season Dominated by Podcasts
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2024年の米大統領選では、マスメディア以上にクリエイターの役割、とりわけポッドキャスターの存在が大きく注目された。SpotifyやYouTubeなどで1,500万人ものリスナーを集めるNo.1ポッドキャスターJoe Rogan氏の番組に、Trump氏が出演した。Rogan氏は、Harris氏にも出演を求めているが、難航しているという。
バイデン政権、安保強化でAI活用へ-軍事・スパイ対策で官民協力
「バイデン米政権は24日公表した国家安全保障に関する新たな覚書で、軍事および情報収集目的での人工知能(AI)の採用を加速させる必要があると指摘し、各政府機関に強力なシステムを安全な方法で速やかに展開するよう指示した」。

——昨今、テクノロジーの話題は、そのまま安全保障の話題として登場する。テクノロジーが安保課題となるまでのサイクルが超短縮されているのだ。AIがその例。いまやAIは米国にとって、対立国への戦略優位性の源泉だが、同時にいかに統制していくかの悩ましい課題でもある。

「人工知能と人間のよりよい共生のために」久木田水生 - スマートニュース メディア研究所 SmartNews Media Research Institute
【ご紹介】:
スマートニュースメディア研究所が開催している「AIと人間のあいだ」研究会からの、新たな論考です。名古屋大学の久木田水生氏「人工知能と人間のよりよい共生のために」。
是非ご一読を。