“ポストPC時代”を遠望する—[スマホを持つとパソコンの使い方はどう変わる?]

日経ITProが、「アンケートで知る、スマートフォンユーザーの動向」とのテーマの調査結果を報じています。「スマホを持つとパソコンの使い方はどう変わる?」です。

スマートフォン市場の急拡大がもたらすインパクトを、「ポストPC(PCの“後”)時代の到来」とする意見を見かけるようになりました。
あるいは、PCを駆逐するスマートフォン……こんな過激なイメージまで飛び出してきました。
中には、故人で、まさにスマートフォン時代の幕開けを演出したSteve Jobs氏がそう呼んだという説まであるようです(Steve Jobs proclaims the post-PC era has arrived)。

それはともかく、ではスマートフォンの急増はユーザーの行動をどう変えるのか? そして、それはPC時代とどう違うのか、については正確な情報はなく推測の域を出ないままでした。
今回ご紹介する記事「スマホを持つと…」は、その問いに答えるべく数々のデータを提示しているのです。

その中からひとつだけ、データを取り上げてみましょう。zu06

図 PCの所有形態別にみたスマートフォンを持って変わったこと

記事での解説を見てみましょう。

(上記の)図は所有PC別に「スマートフォンを持って変わったこと」を聞いたものである。いずれの場合も、最も多かったのは「ネットの利用頻度/時間が増えた」こと。次いで「PCの利用頻度/時間が減った」「自分の情報感度が高まった」が同程度で続く。スマートフォンを持つことによるネット利用時間の増加は、ネットを介した様々なサービス市場の広がりを期待させる。

実際、自由回答からは「得られる情報が増えて仕事の効率が上がった」「電子書籍の購読やゲームをするようになった」など、スマートフォン利用による”新たな価値”について触れた回答者も目立った。

どうでしょうか? これまで感覚的に理解していたことが、具体的に確かめられたと言えそうです。

具体的に、スマートフォンの登場によってどんな事態が起きているのかポイントを整理してみます。「PCの利用頻度/時間が減った」を除くと、下記のようなことです。

  • インターネットの利用頻度や利用時間が増える
  • 情報感度が高まる(ネットの各種情報への接点が広がる、利用法が深まるなどでしょうか?)
  • 「スマートフォンならではの機能」が便利に使える(ソーシャルやマップなど多彩なアプリを活用できるということでしょうか?)

いずれも納得感のあるポイントです。
スマートフォンの登場を契機に、私たちユーザーの行動は変わりつつあります。上記のポイントの向こう側に私たちの近未来図を垣間見た気持ちです。
(藤村)

Web系ニュースサイトの行き詰まりを検証する—[Proof by Mask]

メディアをめぐるテクノロジーやビジネスモデルをテーマにすえるオピニオンブログMonday Noteが、昨今のWeb上のニュースメディアについて痛烈な記事を掲載しています。「Proof by Mask」がそれです。
スマートフォンやタブレット系のデバイスの躍進は著しく、それらプラットフォーム上でのニュースメディアは、アプリケーションとして新たなデザインに取り組んでいます。
その一方で、従来から存在するWeb版ニュースメディアではどうかと言えば、停滞、もしくは悪くなる方向にあると、筆者は指摘します。
その例示が、「マスクによる検証」です。

各国の著名なWebニュースメディアの総合トップページで広告が表示されている領域を赤く“マスク”すると、コンテンツ領域と広告領域の表示面積がほぼ拮抗、もしくは逆転してしまっている事態が浮き彫りになります。下図はThe Gurdianサイトの例です。
記事はこのような現象は、この数年間、景気との相関による買い手市場へのシフト、大量に供給される安価な広告との熾烈な競争の結果としています。
では、このようなWeb系ニュースメディアのデザインの傾向が、結果として何をもたらすでしょうか。
それは、読者の失望、オリジナルの情報源である各ニュースサイトから“まとめサイト”などへの読者流失といったことでしょう。
また、記事は、今後さらに普及するモバイル機器のディスプレイでは、このような際限のない広告表示領域の拡大は困難とも述べています。
デジタルな(ニュース系)メディアは、この悪循環を脱し読者に良好なコンテンツ消費体験を提供できるようニュースサイトの再構築に着手しなければならないはずですが、それは可能でしょうか。
(藤村)

メディア企業がめざすべき新たな戦略を予感—[CCC BD購入者に映像配信 同タイトルを無料で]

出版社ら、書籍・雑誌など印刷媒体を事業の中心に据えてきたメディア企業は、遅かれ早かれメディアのデジタル化戦略の策定を迫られています。
ここで多くを述べませんが、その場合、選択肢はいくつかに限られてくることでしょう。

本業(印刷媒体の販売)を守りながら、少しずつデジタル化を試みる。あるいは、本業を食ってしまう可能性があったとしても、印刷媒体とデジタル媒体を競わせる。もしくは、本業と完全に切れた分野で、新たにデジタル専業的な事業を立ち上げ、本業の衰退に備える……。
いずれも、印刷媒体事業とデジタル媒体事業との間で、境界線をどうひくかに腐心している構図です。

しかし、興味深い融合的アプローチが近接領域では生まれているようです。
2011.11.04付「日経MJ」紙の記事「CCC BD購入者に映像配信  同タイトルを無料で」がそれを伝えています。
同紙は記事をWeb等に公開していませんので、引用で紹介することとしましょう。

カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)は『TSUTAYA』で映画のブルーレイ・ディスクを買った客に同じ映画を無料でインターネット配信するサービスを始めた。いったん映像ソフトを買えば、機器やメディアによらず視聴できる環境を提供する。BD購入者の囲い込みと映像配信サービスの利用拡大を狙う。

TSUTAYAはインターネット経由での映像配信サービスも運営していますが、まだまだリアルな媒体を購入する消費者が多いということでしょう。顧客は購入したタイトルを自宅の再生専用機やPC等で再生、鑑賞するわけですが、媒体を持ち歩くでもしない限り、どこででも自由にタイトルの続きを再生できるというわけではありません。それに対してインターネット配信ならば、どのデバイスかなど関係なく自由な視聴が楽しめます。
すなわち、TSUTAYAは「光学媒体か、デジタル媒体か?」ではなく、「光学媒体を買えば、リアルもデジタルもひとまとめに提供」して、より自由なタイトルの鑑賞を魅力として打ち出しているのです。

こうすることで、まだまだなくならない光学媒体への需要を手放さず(さらに言えば、より営業強化して)、デジタル媒体の利便性も伝達できるかもしれません。デジタルを食わず嫌いする消費者に、その利便性を味わってもらう絶好のマーケティング 機会になりそうです。

この融合的アプローチの唯一の難題は、 光学媒体とデジタル媒体両方で、売り上げられるわけではないことです。
TSUTAYAは、2つの商品から得られたかもしれない売上の一方を手放してでも、顧客の背中をデジタル配信へと押したかったということでしょう。

「ブルーレイ・ディスク」を印刷媒体と置き直して見れば、書籍や雑誌のデジタル化戦略のヒントにもなるのではないでしょうか。
(藤村)


電子書籍市場は新ステージへ—[電子書籍アプリは制作した後がたいへん、売上げUPには施策が必須]

電子書籍の世界標準を目指す規格EPUBに、日本語出版の要望を大きく取り入れた最新版EPUB3が可決されました
他方、電子書籍市場をこれまでもリードしてきたAmazonは新型カラータブレットKindle Fireを発表。さらに年内にも日本語版電子書籍の流通を開始するとの報道も現われました。
このように、表層を見れば、海の向こうのトレンドという段階から、いよいよわが国にも“電書”の波が本格的に到来かという気配にもなってきました。
さて、果してこれが奔流となっていくのでしょうか?
そんな折りに、わが国市場への浸透に欠かせない悩みや課題をまっこうから取り上げた記事があります。
JAGAT社団法人日本印刷技術協会サイトの「電子書籍アプリは制作した後がたいへん、売上げUPには施策が必須」がそれです。

電子書籍アプリは制作した後がたいへん、売上げUPには施策が必須 – JAGAT via kwout

記事では、「コンテンツの質やクオリティはもちろん」だが、問題はいかにしてそれを需要に結びつけるか? という点をあからさまに論じています。
こんな風にです。

iPhoneアプリは42万本以上もあり、ダウンロード数は150億を超える(2011年7月時点)という激戦地区。そのなかでアプリを販売するというのはハンパなく大変で、たとえば売り上げトップ10のランキングに入るためには有料版で1日5,000DL(ダウンロード)は必要なんだとか(電子書籍ジャンルでは1,300~1,500DLくらい)。

これまで、良くも悪くも流通上の仕組みが多くの版元の参入を許していた状況から、自らノウハウを築き上げることによって競争上の差別性を創り出す時機にさしかかっているのでしょうか。

世間での賑々しい話題とは別の場所で、このような地味な、しかし真摯な取組みが浸透をしていることに、新たなステージの到来を感じるのですが、どうでしょうか。
(藤村)

電子書籍市場、見えない壁を越えるには?—[「ジョブズ伝」電子書籍でも登場 紙とほぼ同じ価格で ]

先ごろ亡くなった、Apple元CEOのSteve Jobs氏の伝記が発売になりました。
モバイル分野で、音楽プレーヤーの分野で、そしてもちろんパーソナルコンピュータ分野で頂点を極めつつある同社。
その“奇跡”とも言われる復活と絶頂期を導いたJobs氏の伝記です。
大方を悲しませた同氏の“遺言(?)”という要素もあって、その売れ行きは推して知るべきでしょう。

さて、この伝記をめぐり日経新聞電子版が興味深い記事を掲載しています。「『ジョブズ伝』電子書籍でも登場 紙とほぼ同じ価格でです。
なにが興味深いかと言えば、記事はこのベストセラー化必至の同書が、単行本と同時に電子書籍でも刊行されること。そして、これが電子書籍ブームの試金石となると述べているところです。

講談社は新刊とともに、電子版もヒットを期待する。これまで同社の最大のヒット作は、2010年5月に発売した京極夏彦氏のミステリー小説「死ねばいいのに」。ダウンロード数は「数万」(書籍販売局次長の藤崎氏)だった。ジョブズ氏に関心を持つ読者層は電子版を好む可能性も高いため、伝記は「過去にない数字を目標にしている」(同氏)という。

さらに興味深いのは、やはり記事が、わが国だけの電子書籍出版事情でなく、それを世界の事情と比較している点です。
下記の表(記事より引用)を参照下さい。

日本の電子書籍市場がなかなか立ち上がらない理由のひとつに、よくその値付けが挙げられます。書籍(印刷物)と変わらない、もしくは高く設定していては……という指摘です。
しかし、上記比較表を見ると、わが国“電書”市場に流れる電・紙共通定価ポリシー”が、それだけで必ずしも世界の趨勢に逆行するわけでないことがわかります。

もちろん、国内での書籍(印刷)の定価が高くないか? という点が目に付きますが、これは別の議論として触れないこととしましょう。
英国やドイツではものの見事に書籍(印刷)に対して電書の定価が同じ、もしくは高く設定されているのです。とても興味深い状況です。

さて、問題は、電書の定価を共通、もしくはより高く設定している欧州などでは、わが国市場に比べて電書の普及度がどうなのかということです。そこに焦点が向かいます。
聞けば欧州(フランス)などでは電書市場が鳴かず飛ばずということのようです。実はこの種の価格政策によってなかなか読者が電書へと向かうインセンティブが生じない、故に市場が不活性ということはあるのかもしれません。
いずれ世界の市場規模などが確認できた際に、もう少し詳細に仮説を検証したいと思います。
(藤村)