先ごろ亡くなった、Apple元CEOのSteve Jobs氏の伝記が発売になりました。
モバイル分野で、音楽プレーヤーの分野で、そしてもちろんパーソナルコンピュータ分野で頂点を極めつつある同社。
その“奇跡”とも言われる復活と絶頂期を導いたJobs氏の伝記です。
大方を悲しませた同氏の“遺言(?)”という要素もあって、その売れ行きは推して知るべきでしょう。
さて、この伝記をめぐり日経新聞電子版が興味深い記事を掲載しています。「『ジョブズ伝』電子書籍でも登場 紙とほぼ同じ価格で」です。
なにが興味深いかと言えば、記事はこのベストセラー化必至の同書が、単行本と同時に電子書籍でも刊行されること。そして、これが電子書籍ブームの試金石となると述べているところです。
講談社は新刊とともに、電子版もヒットを期待する。これまで同社の最大のヒット作は、2010年5月に発売した京極夏彦氏のミステリー小説「死ねばいいのに」。ダウンロード数は「数万」(書籍販売局次長の藤崎氏)だった。ジョブズ氏に関心を持つ読者層は電子版を好む可能性も高いため、伝記は「過去にない数字を目標にしている」(同氏)という。
さらに興味深いのは、やはり記事が、わが国だけの電子書籍出版事情でなく、それを世界の事情と比較している点です。
下記の表(記事より引用)を参照下さい。
日本の電子書籍市場がなかなか立ち上がらない理由のひとつに、よくその値付けが挙げられます。書籍(印刷物)と変わらない、もしくは高く設定していては……という指摘です。
しかし、上記比較表を見ると、わが国“電書”市場に流れる電・紙共通定価ポリシー”が、それだけで必ずしも世界の趨勢に逆行するわけでないことがわかります。
もちろん、国内での書籍(印刷)の定価が高くないか? という点が目に付きますが、これは別の議論として触れないこととしましょう。
英国やドイツではものの見事に書籍(印刷)に対して電書の定価が同じ、もしくは高く設定されているのです。とても興味深い状況です。
さて、問題は、電書の定価を共通、もしくはより高く設定している欧州などでは、わが国市場に比べて電書の普及度がどうなのかということです。そこに焦点が向かいます。
聞けば欧州(フランス)などでは電書市場が鳴かず飛ばずということのようです。実はこの種の価格政策によってなかなか読者が電書へと向かうインセンティブが生じない、故に市場が不活性ということはあるのかもしれません。
いずれ世界の市場規模などが確認できた際に、もう少し詳細に仮説を検証したいと思います。
(藤村)
ドイツは電子書籍のほうが安く見えますが・・・。
Amazon.{de,fr,co.uk}をみると、イギリスだけ電子書籍が高く、大陸だと紙版が高いようです。
島国とかユーロ加盟国とかいろいろ理由は付けられそうですが、まぁよくわからないですね。出版業界の体質が影響してるのかもしれません。
ご指摘ありがとうございます。誤りを訂正・表示させていただきました。