Disruption This Week—–18/10/2024

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2024年10月15日から2024年10月18日まで。

The key decisions that saved the Boston Globe
米都市Bostonの著名ローカル新聞社Boston Globe、どうやって経営戦略を立て直せたのか。同社はいま、従業員数1000名弱、デジタル版購読者数26万名、印刷版購読者数は7万5000名を擁するが、2009年には廃業を迫られていた。買収などの戦略変更をめぐる経緯を伝える記事。
デジタル時代、新しい報道の地平開く 本紙に新聞協会賞 秋の新聞週間 - 日本経済新聞
「日経は編集者や記者、デザイナー、エンジニアで構成する職種横断のチームをつくっている。異なる経験やスキルを持つ人材が机を並べ、文字通りに協働する。どういう表現に落とし込むか早い段階から同じ目線で考えるために、デザイナーやエンジニアが記者の取材に同行するようなケースも増えた」。

——日経新聞が新聞協会賞受賞に当たり、取り組んでいるデジタル報道を支える組織体制について、「エンジニアら 記者と協働」との項目を立て、引用箇所のような組織変革の意義を述べている。これで十分なのかどうかは別として、昨今のイマーシブな報道コンテンツづくりでは、エンジニアやデザイナーとの深い協調組織が重要だ。

富士通、偽情報対策システム開発で連携 NECなど8者と - 日本経済新聞
【有料購読者向け記事】:
「慶應義塾大学SFC研究所、東京科学大学、東京大学、会津大学、名古屋工業大学、大阪大学も参加する。災害時の情報のファクトチェックや記事作成などの用途で公的機関や企業に試用してもらいながら、研究開発を進める」。

ーー何とも形容しにくい巨艦フォーメーション。「オールジャパンで」とのコメントにも当惑が伴うのだが。

How Israel’s bulky pager fooled Hezbollah
「ポケベルを直接知るレバノンの情報筋によれば、ポケベルを作った工作員は、小さいが強力なプラスチック爆弾と、X線では見えない斬新な起爆装置を隠すバッテリーを設計した」。
——そのポケベル“兵器”の内部構造を詳細に伝える画期的な調査報道。
主要生成AIモデル、欧州AI法違反の恐れ 評価テストで低スコア
「オープンAIのチャットGPTなど代表的な生成AI(人工知能)大規模言語モデル(LLM)が、欧州での評価テストで欧州連合(EU)が策定した世界初の包括的なAI規制『AI法』の重要な項目の基準を下回っていることが分かった。ロイターが閲覧したデータによると、サイバーセキュリティーに関する耐性や、差別や偏見を排した回答といったEUが重視する項目で低評価がついた」。

——“厳しい”EU法制下では、AI各社のサービスが現状のままでは(営業が)許可されない可能性も出てきた。自主的にEUでのサービス実施を見送るケースも出てくるだろう。

Pitchfork Alumni Launch New Music Publication, Hearing Things
【有料購読者向け記事】:
90年から10年代半ばまで独立系音楽批評メディアとして人気だった米Pitchfork。大手のCondé Nastに買収されて以後、創業者の退職などで衰退。そのPitchforkから5人のジャーナリストが退社、「Hearing Things」を創業。2階建ての定期購読制を敷く。ちょっとワクワクさせる話題。
Exclusive | New York Times to Bezos-Backed AI Startup: Stop Using Our Stuff
【有料購読者向け記事】:
OpenAIによるコンテンツの学習をめぐって係争中の米New York Times。今度はAIによるコンテンツ要約機能を持った検索システムのPerplexityにも、自社のコンテンツの利用の「停止と中止」を求める文書を送ったと、米Wall Street Journalが報道。
TikTok executives know about app’s effect on teens, lawsuit documents allege
米各州が、TikTokは青少年に害悪を与えていると提訴している裁判において、同社内でのコミュミニケーションを記した非公表文書が、誤って一部開示。それによると、同社内では問題を認識しながら対処を行ってこなかったことが明らかに。米NPR(公共ラジオ放送)が報道した。
X投稿の収益、有料契約者の反応で インプレゾンビ対策 - 日本経済新聞
【有料購読者向け記事】:
「Xは収益分配の仕組みの変更について、『皆さん(有料契約者)のフォロワーがXプレミアムに登録して投稿にエンゲージメントすることで、皆さんへの直接の支持につながる』としている」。

——Xによる、今回のクリエイター収益化方法の変更は、要するに収益化は、「利用者の投稿に対して、有料の『Xプレミアム』を契約している別の利用者が閲覧したり『いいね』などの反応をしたりすることで、支払いが行われる」というわけで、有料(プレミアム)ユーザーを増やすことが必須になる。うまい考えではあるが、X社が狙う購読料収入増につながるのか興味のあるところだ。

ネットメディアから放送局に転職した私 怪しい情報の「ファクトチェック」をしていて感じる深刻な危機とは|NHK広報局
「例えばさきほどの『トランプ氏が銃撃事件の前にゴルフに行っていた』という動画は、どのように検証して、なぜ誤りだと判断したのかを説明する。
それによって、もしNHKや私のことを信用できないという人でも、その動画が誤りだということは、自ら再検証して判断できます」。

——BuzzFeed Japanで数多くのファクトチェック記事を公開、現在はNHKで同様の業務に就く籏智広太氏。ファクトチェックを行う人々を代表して、その内側を述べる良い記事。

日本の分断はどこにあるのか 池田 謙一編著 前田 幸男編著 山脇 岳志編著
【ご紹介】:
スマートニュースメディア研究所が昨年実施した大規模な世論調査を基に各種分析を行った論文集『日本の分断はどこにあるのか』が出版されました。藤村も「SMPP調査が捉えたメディア接触の諸相――伝統メディア、そしてインターネットメディアをめぐる読者の選択」を担当しました。よろしければどうぞ。

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