ビジュアルなブログプラットフォーム(と、とりあえず呼んでみますが)Tumblr が米国では大人気です。いまやブームと言えそうな勢いです。
また、さらに最近では、Pinterest という、これもビジュアルに徹したソーシャルなピンナップボードサービスが人気急上昇中です(これらの人気ぶりについては「TumblrとPinterest,さらに勢いが加速化」を参照)。
この新たなソーシャル(メディア)サービスには共通点がありそうです。その共通点、それがどうして人気を博しているのかを解説する興味深いブログ記事を見があります。
今回はそれをご紹介したいと思います。Elad Blog に掲載された How Pinterest Will Transform the Web in 2012: Social Content Curation As The Next Big Thing です。
記事を紹介する前に、大急ぎでTumblr、Pinterestはどんなサービスか説明しておきます。
上記「TumblrとPinterest、さらに……」でこう紹介しています。
(Tumblr、Pinterestは)どちらも画像をベースにしたソーシャルサービスである。ユーザーがネット上のお気に入り画像を拝借して貼り付ける場合が多い。Tumblrはその画像を貼った簡易ブログであり、一方のPinterestは画像を貼り付けたピンナップボード(共有ボードと個人ボードがある)サービスである。サービス内の画像(他人が貼った画像)を断りなしで再利用できるので、人気のある画像は一気に拡散するのも売りとなっている。また共に非常に手軽にコンテンツを作成できるのが特徴であるが、画像がゆえに訴求力を発揮しやすい。このため、本来個人ユーザーの画像ブックマーク的なサービスであるが、最近は企業がマーケティングツールとして利用し始めている。
Tumblrは述べたようにブログプラットフォーム(CMS)ですが、特徴は簡単に商業メディアや他人のブログなどを取り込み(引用)、情報発信できるようになっていることです。
同サイトに掲載されている多くのメディアを見ると、いずれも写真の扱いや、文章も引用部分が大きく、ブロガー自らが払う労力は少ないという傾向があります。その分、ビジュアルの選択眼、トピックを発見する“センス”が重要な要素です。
Pinterestになると、それはさらに顕著です。ECサイトなどで見かけた好みのグッズや、観光地の写真、ひいてはアート作品のビジュアルを簡単にボタンクリックで取り込み、自分のビジュアルカタログ(“コルクボード”)に取り込んでピン留めします。
文章を書くとしても、ビジュアルが主役のためそれに付すキャプション程度。情報発信の労力はほとんどありません。
では、How Pinterest Will Transform……の論を紹介しましょう。
記事は、TwitterやTumblr、そしてPinterestなどのソーシャルメディアを“ソーシャルキュレーション”サービスと呼びます。
“キュレーション”については、ここでは深く論じることは避けます(→ こちらを参照ください)。
ポイントは、自ら論をなす(あるいは芸術作品を創造する)のではなく、 世に存在する良い話題、論、作品を自らの選択眼でピックアップし、他に紹介する行為と考えましょう。
Twitter、Tumblr、そしてPinterestらは、広大なWeb世界で見つけた良いものを紹介するという側面を備えているという意味で共通しているのです。

Elad Blog: How Pinterest Will Transform the Web in 2012: Social Content Curation As The Next Big Thing via kwout
同時に、異なる要素も記事では挙げています。
上図をご覧下さい。例えば、2000年前後から盛んとなったブログ、そして2005年ぐらいから現在に至り一気に隆盛を得たFacebook、Twitter。
この2群を比較すると、ブログは記事が長文形式。情報発信のためには労力と熱意と才能が不可欠でした。結果的には熱心なブロガーでも1日1ポスト(投稿)といったところでした。
しかし、FacebookやTwitterなどは、短文形式により労力が一気に軽減されます。また、“いま何している?”というステータスメッセージング型スタイルのおかげで、1日何度でも情報発信することが多くの人に当たり前になりました。
後者でさらに特徴的なのは、“いま何している”という情報が時間軸に沿っていることです。言い換えれば情報は流れ去って消えることが当たり前となりました。
もうひとつ、「RT」や「いいね!」など、簡単に情報発信できる仕組みを備えたことで、見つけた情報を気軽に他人へとシェアする習慣が定着しました。これが現在のキュレーションブームの背景ともなっていると言えます。
総じて、ブログでは情報発信の手間から、ブロガーは情報発信へのなみなみならぬモチベーションと力量で作品を創造、発信していくのに対し、ソーシャルキュレーションの流れは、自ら情報発信する手間はかけないものの、気に入った情報を多頻度に情報発信していくスタイルを形成しました。
さて、Pinterestの話題です。これまでのソーシャルキュレーションと、このPinterestなどの新鋭を比較すると、ワンボタンクリックで情報発信ができるような労力を求めない特徴は、先行するFacebookやTwitter、Tumblrなどと共通しつつも、異なる側面があると記事では指摘します。それはPinterestでは、関心テーマごとに選択した情報コレクションが“構造化”されているということです。
FacebookやTwitterなど“ステータスメッセージング”型スタイルでは、情報はフロー、すなわち流れ去っていきます。分類もできません。対してPinterestは情報の新旧は問題ではありません。テーマ(カテゴリー)ごとにコルクボードにピン留めされたコレクションは、そこにあり続け、あるいは整理され発信情報を豊富化していくのです。わが国で支持を得ているNAVERまとめなどと似通った要素があります(NAVERまとめは、“まとめ”作業にそれなりの負荷がかかるため、ブログに近い要素があると見ますが)。
ソーシャルメディアは、情報発信に力量を求める時代から、テーマがなくとも発信を続けられる簡易なスタイルを生み出しました。
そしていま、一人ひとりが自らの関心、センスを、事物の選択眼という価値として情報発信していく可能性を開いたというわけです。
微細なテーマ、カテゴリーごとにセレクトされた自分のお気に入り情報カタログは、それがまさにカタログであるがゆえに、コマースなどとの結びつきが期待される領域でもあります。
(藤村)