“最強ニュースサイト”実現の方程式——Huffington Postをめぐって

現在、もっともスタンダードなデジタルメディアの実現方法はWebサイトを通じたメディア(事業の)運営です。
このWebメディアを成功させるための方程式を、自分自身の経験を踏まえて整理してみたいと思っていました。

今回、その材料に格好の記事が目に止まりました。Newsweek日本版掲載「ハフィントン流最強ニュースサイトの作り方」です。
記事の掲載は2010年夏と、このドッグイヤーの時代では“はるか以前”なのですが、盛られているポイントに古びた要素はありません。メディアに携わる方々には必読記事です。全4ページもありなかなか盛りだくさんなのですが、“最強ニュースサイトを実現する”、そのポイントに絞って整理をしてみましょう。

最初にThe Huffington Post(記事にしたがい、以後「ハフィントン」と呼びます)について、ごく簡単な紹介を(概要紹介は→こちら)。
2005年にオンライン専業メディアとしてアリアナ・ハフィントン女史らが開設。10年には年商3000万ドルに達し、翌11年には大手メディア企業AOLから約3億ドルで買収されました。買収発表時に同社の年商は約4000万ドル。また、オンラインでの読者リーチという点でも、The New York Times、Mail Online、そしてハフィントンが肉薄しており、創業以来約5年で“最強サイト”へと成長したことになります。

それでは、ポイントを順番に確認していきましょう(引用記事中の数字は、基本的に記事掲載当時のものです)。

「制作費を究極まで下げる」

(主要な新聞や雑誌の記事を要約して配信するアグリゲーターサイト、ニューサー=藤村注)のサイトのCPM(広告掲載1000回当たりの広告料金)は、過去2年間で10ドルから8ドルへと20%下落した。ネット専門調査会社コムスコアによれば、ネット全体の平均CPMはわずか2ドル43セントだ。そして、これがいずれ上がると期待する人は誰もいない。

それでも、ハフィントンなどのネットメディアにとっては、コンテンツの製作費を安く上げることが至上命題。無駄は徹底的に省く。ハフィントンの編集スタッフは88人で、大手新聞などの数分の1だ。

広告単価の下落傾向は、記事が書かれた当時もいまも同じでしょう。広告掲載枠(いわば、看板の数)は、商業メディアの乱立、そしてソーシャルメディアの強烈な成長で増える一方です。供給過多が止まらない状況であれば、広告価格が下落するのは、ある意味で理解できます。
この傾向に対するもっとも的確な施策はコスト削減の継続実施なのです。コストのもっとも大きな要素は、一般的には人件費、外注費(社外へ発注する原稿料)、その他固定費でしょう。
ハフィントンは、編集スタッフの総数をぐっと抑えていることと、「6000人の無給ブロガー」を擁しているとあります。むろんこの抑制が過ぎれば、メディア品質が毀損し広告単価下落の悪循環に陥るリスクがあるのですが……。
そこで重要になるのはシステム化の徹底です。

「最先端の配信システム」

大手サイトが稼ぐための切り札は、記事がどう配信されるかを決めるソフトウエア「コンテンツ管理システム(CMS)」。ハフィントンには最先端のシステムがあり、しかも常に進化している。30人の技術者はアメリカのほかウクライナ、インド、チリ、フィリピン、ベトナムなどに散らばっている。「1日24時間週7日、開発を続けるためだ」と、CEOのヒッポーは言う。

このシステムのおかげでハフィントンの編集者はニュースの出し方にさまざまな工夫ができる。リンクや動画、写真やコメントを組み合わせ、ほかの情報源からの情報も加え、それにハフィントンのライターたちがもっともらしい意味付けを与える。そうする間にもリアルタイムでアクセス状況をチェックし、ウケたものとウケなかったものを取捨選択する。

編集者はグーグルの人気検索キーワードを常に確認している。腕の見せ所は、人気の検索語の検索結果の上位にハフィントンの記事が表示されるよう記事を作ること。

柔軟なCMS、ログ解析、そしてSEOを活用する。こちらも10年当時と現在とで事情に変わりはありません。
以後に加速した要素は、商業メディアにとり、ソーシャルメディアの情報伝播力が大きな影響を及ぼすようになったことです。これらの諸要素に対して労力は軽く、しかし高度な対処ができるシステムを用いることは、計り知れないメリットがあります。
ごく少数の人間が大きなサイトを機敏に運営できれば、上記の「制作費を究極まで下げる」に直接影響するからです。もちろん、コスト以外にも各種のメリットが生じます。
しかし、注意すべきは、将来やってくるシステムの陳腐化、開発およびシステム維持コストという別の重荷を生む可能性もあることです。高度なシステムへの欲求と、その開発および運用コストの低減、将来の陳腐化などをいかに両立させるかの判断が肝要なのです。

「読者の衝動を理解する」

最も驚異的なのは、読者からのコメントの数だろう。ハフィントンでは1つの記事に5000件以上のコメントが集まることも珍しくない。最近では、前大統領の弟で前フロリダ州知事ジェブ・ブッシュが12年の大統領選に出馬するかもしれないという記事に8000件以上のコメントが殺到した。6月のコメント件数は、サイト全体で3100万件に上った。

アリアーナは、早い時期からコメントをチェックし、ネットでありがちな誹謗中傷合戦ではなく、より文明的な議論の場を守ろうとした。手間のかかる仕事だ。20人の専従スタッフが、悪意あるコメントの削除に当たっている。

読者自身の意思表明が、商業メディアの運営、さらに収益をも左右しかねない大きな要素へと成長しました。
記事にあるように、コメント自体も記事のページビュー(表示回数)を加速し広告収入上のメリットを生むはずです。
それ以上に、読者が熱気をもって記事に“参加”することは、その記事、メディア自体の影響力に反映し、それが薄い他のメディアに対して差別化要因として働きます。読者の参加意欲を最大限に喚起する必要があるのです。

以上、駆け足で記事に盛られたポイントを見てきました。Newsweekの記事にはサブタイトルとして「ウェブメディアの女王が切り開くオンライン・ジャーナリズムと商売のきれいごとじゃない未来」とあります。
実際、ハフィントンに対しては、その影響力が高まれば高まるほど、「他社のコンテンツを題材にして稼いでいる」「ブロガーに無償で記事を執筆させている」等の批判や圧力も高まっています。「きれいごとじゃない」(?)同社の事業ですが、その徹底ぶりから逆に現代のデジタルメディアの経営指針を読み取ることもできます。同社からはもっと学べる要素がありそうです。
(藤村)

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