Disruption This Week—–26/5/2023

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2023年5月23日から2023年5月26日まで。

博報堂DYMP「メディア定点調査2023」、メディア接触時間の「携帯電話/スマートフォン」シェア初めて全体の1/3超え | AdverTimes.(アドタイ) by 宣伝会議
「メディア別では、『携帯電話/スマートフォン』(151.6分 昨年から4.7分増)は、昨年初めて「テレビ」(135.4分 同8.2分減)を上回ったが、今年はその差を12.9分に広げた。…メディア総接触時間における『携帯電話/スマートフォン』 のシェア(34.2%)は初めて全体の1/3を超え、モバイルシフトは依然として、継続している」。

——新型コロナ禍の下で、急増したメディア消費時間は概ね天井感を維持している。だが、その内訳ではスマホでの消費時間のみ明瞭な伸びを維持している。TVにはCTV(コネクティッドTV)はどうカウントされているのか、要確認。

「戦争から利益を得ることはしたくない」Oryx創設者が語るウクライナでの“OSINT最前線”《世界初インタビュー》 | 文春オンライン
「撃破された兵器の写真や動画をカウントし、ロシア・ウクライナ両軍の損耗兵器をリスト化しているオランダの軍事情報サイトOryxに世界的な注目が集まっている。Oryxが作成した損耗リストは、ロシア軍の多大な損害を物証付きで明らかにしており、CNN、BBC、NHKといった世界中のメディア、さらにはイギリス国防省でも信用できる情報源として引用されている」。

——Bellingcatと並んで重要なOSINT情報源として名前が知られるネットワーク「Oryx」。その代表への顔を隠したインタビュー記事。興味深い。

Trust low, perception of spin and misreporting high, and attention spans dip: News habits survey
ニューステクノロジー企業の英Tickarooと調査会社Opiniumが英成人2,000人を対象に行った調査で、回答者の60%が読む記事の一部に懐疑的で、66%がニセニュースに懸念を抱いていることがわかった。最大の理由に「記者が誤認を生む」が挙げられる。
News execs fear 'end of our business model' from AI unless publishers 'get control' of their IP
「報道(ニュース)メディアのビジネスモデルは終焉の危機に瀕している」。最近行われたカンファレンスに英The Guardian、英Financial Times、仏Le Mondeそして英Telegraph Media Groupらトップが登壇。AI登場により「緊急事態」が生じていると口々に述べる。
Seeing stories of kindness may counteract the negative effects of consuming bad news
人の親切、英雄的行為、慈善などのニュースを読んだ人は、衝撃的な事件、悲劇的なニュースを読んだだけの人よりも他人への信頼を多く維持できる。辛いニュースの中にも健全な感情を喚起するニュースを含めていくべきことを英Essex大の心理学者が研究成果として公表した。
英語記事を「GPT-4」で3行の日本語に Gunosyが新ニュースサイト
「米メディアが発信する英語ニュース記事を3行程度の日本語に要約し、概要を伝える。1日に20~30程度の記事を紹介する。
βサービスとして始めたが、ニーズが高いと判断した場合は継続的に提供する」。

——メディアやITの分野に限れば、自分が毎朝青息吐息でやっているようなことをAIベースのアプリがやってくれるらしい。そろそろ潮時かもしれない(苦笑

Trust in Media 2023: What news outlets do Americans trust most for information? | YouGov
英調査会社YouGovが例年発表する消費者によるメディア「純粋信頼度」(信頼から非信頼を除いた値)を今年も公開。米成人消費者にとって最も信頼度の高いメディアは「The Weather Channel」。続いて、「PBS」「BBC」など公共系が上位に連なる。
Majority of U.S. Twitter users say they’ve taken a break from the platform in the past year
過去12ヶ月間にTwitterを利用したことがあるアメリカ人の10人に6人が、そのスパンで数週間以上の期間、Twitterを休んだことがあると答えた。また、4分の1が1年後も利用する可能性はないとも答えた。米Pew Research Centerが今年3月に調査した結果だ。
Verified Twitter Accounts Spread AI-Generated Hoax of Pentagon Explosion
米国防総省(ペンタゴン)の敷地内で爆発との偽情報。その映像について、調査報道集団Bellingcatのメンバーは、AI生成画像である特徴を指摘。近隣の消防署も否定。他方、この偽情報をTwitter Blue認証された数十のアカウントが拡散させたという問題点も生じた。
How investigations drive subscriptions at FT, Guardian, Tortoise and New York Times
「入念な調査報道は、メディアの購読者を増やし、長期的な繁栄を生む」。米New York Times、英Financial Times、英BBCなどの編集長経験者らが語る。Financial TimesのRoula Khalaf氏は、著名な調査報道記事で大規模な購読者増が生じたと述べる。

Disruption This Week—–19/5/2023

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2023年5月15日から2023年5月19日まで。

The New York Times enters the podcast app business at a 'weird time' - Poynter
米New York Times、成功裡に拡大してきた同社ポッドキャスト作品群を束ねた購読者専用ポッドキャストアプリ「The New York Times Audio」を発表。著名テック批評家Peter Kafka氏は、「NYTのポッドキャストが好きで他社のポッドキャストは聴かない」人のための製品と皮肉る。
Netflix Advertising Tier Now Has “Nearly Five Million” Monthly Active Users
米Netflix、広告表示版の公開から6か月で、500万MAUを突破と発表。正確な購読者数は明かさないものの、100万人程度と業界筋は推測。ユーザの年齢は中央値で34歳だという。
生成AI 新聞協会の見解(要旨)
「生成AIによる報道コンテンツ利用をめぐり、日本新聞協会が17日に発表した見解の要旨は次の通り。
…1. 言論空間の混乱と社会の動揺、2. 個人情報保護上の懸念、3. 現行著作権法や法改正に至る過程の問題点、4. 報道機関の著作物等をめぐる課題、5. 不透明な運用実態、権利者への不十分な情報開示」。

——骨格のみの引用。原資料も公開されているので玩味したい。

Google traffic worth less than £75m per year to UK publishers says NMA
英報道メディア協会(NMA)、委嘱した調査でGoogleが英メディアにもたらすトラフィックの収益価値を年間7,500万£以下と推定。それに対し英Googleが得た広告収入は100億£以上とギャップを強調する。
A startup is giving away 500,000 TVs — with one catch: There's a second screen for ads. Here's how to get one.
無料のストリーミングTVアプリを提供する米Pluto TV。同社がパンチの効いたユニークなキャンペーンを開始。50万台ものTV(それもスクリーン2つ装備!)を無償配布するのだという。もちろん視聴データを同社に提供する必要があるのだが。
米国ポッドキャスト広告市場、2022年は2400億円超の26%増--2025年には約5380億円へ
「(インターネット広告業界団体の)IABは米国のポッドキャスト広告市場に関する調査結果を発表した。2022年のポッドキャスト広告売上高は、18億ドル(約2422億円)で、前年に比べ26%増だった」。

——急増かつ巨大な広告市場とまでは言えないかもしれないが、依然として成長を続ける音声メディア。ジェネレーティブAIによる無人ポッドキャスト放送が拡大する予感もある。

音声5秒と写真1枚でできあがり 選挙も脅かす偽動画への対策最前線:朝日新聞デジタル
【有料購読者向け記事】:
「『チャットGPTが公開されてから数カ月で、世界を変えた。来年の選挙が無事乗り切れるか心配だ』。ハーバス氏(=元Meta選挙対策担当幹部)はそう話す。『2025年が始まる頃には、技術を取り巻く世界はまったく変わっているだろう』」。

——朝日新聞の「ビッグテック」連載のなかの記事。ジェネレーティブAIが生成する真偽の見分けがつかないような情報の技術を紹介する一方、IT大手が経営上の課題にぶつかって一様に人手を減らしていることに、セキュリティ上の脆弱性が生じると警鐘を鳴らす。

【全文閲覧には要登録】:
Quartz、The Washington Post、The Guardian、Business Insider、HuffPostなどいずれも過去チャットボットに取り組み失敗してきた。だが、今は違う。「ある種のチャットボットは、サブスクリプションビジネスに最適だ」と新たに取り組みの波が到来しているとする記事。
GPT-4採用のインフルエンサーbot「CarynAI」、1週間で収益7万ドル
「マージョリーさん(=キャリン・マージョリー氏)は自分のファンのためにTelegramに有料のグループを作り、ファンからのメッセージに極力返事をするようにしていたが、そのために1日に約5時間費やすようになり、チャットbotを立ち上げることにしたという」。

——AI生成による音声とアバター、そして会話内容は学習されたもので、本人と個人的に会話する気分にさせるとしたら、ファンは……。想像通りのビジネスが現実のものとなってきた。

文章生成AI、訓練データの対価どう払うべきか
【有料購読者向け記事】:
「レディット(=米大規模掲示板)の広報担当者は、データのアクセスを有料化することでどのくらいの収入が得られるかは分からないとしたが、同社が所有するような種類のデータが今日の大規模言語モデルの一部を向上させると確信していると述べた」。

——この種の大規模掲示板やWikipediaなどWeb上のフリーな情報源(もちろん、メディアのWebサイトも含む)に改めてアクセスが集まっている。生成AIの“学習”行為としてのクロールが行われている蓋然性があるわけだ。記事はこの経済的対価を俎上に載せるが、別の視点では、生成AIが今後提供する「知性」がこれら情報に依存することの種々の課題が、経済的対価だけでなく語られるべき時代に来ているとも言える。

「第2のツイッター」 創業者やメタ、新SNS…(写真=ロイター) - 日本経済新聞
【ご紹介】:
日経MJ紙への寄稿が日経電子版に掲載されました。よろしければご一読を。➡ 「第2のツイッター」 創業者やメタ、新SNS開発

Disruption This Week—–12/5/2023

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2023年5月1日から2023年5月12日まで。

Google is changing up search. What does that mean for news publishers?
Googleが発表したAIベースの新たな検索エンジンのプロトタイプ「SGE(Search Generative Experience)」。一般消費者にとっては複雑なクエリを受け止めると同時に、リンクを経由する送客は激減する可能性を示す。メディアやアフィリエイトには打撃か?
The Athletic’s live audio rooms bring sports talk radio into this century
現在はNew York Times傘下のスポーツ専門メディアThe Athletic。同メディアが提供する競技終了後の音声ライブ企画である「ライブルーム」が実施1,000回を超えた。試合後、通常のジャーナリズムは記事執筆などに忙しいが、ファンは競技の興奮を分かち合う空間を求めている。そこにファンとブロガー(ポッドキャスター)が交流するニーズを見いだした企画。
ソフトバンク、LINEと和製GPT立ち上げへ 「やらなければ今後の参加権がなくなる」
「グループ内からAI開発人材として1000人を選抜し、異動または兼務を検討している。『1000人から5000人規模の“GPT祭り”をやらなければ、日本の中でのGPTの立ち上がりはない』(宮川氏)」。

——国内勢からも動き。数百億円でゲームに参加できるとの議論もあるし、すでにLINEではLLMに取り組んできた背景もある。“日本語(情報)に強い”LLMが創造されるのかが興味。

The Times Added 190,000 Subscribers Last Quarter
【有料購読者向け記事】:
米New York Times、第1四半期業績を開示。デジタル購読者19万人を新規獲得。スポーツサイトAthleticをデジタル購読製品にバンドルした効果が寄与。デジタル購読者総数は900万人に達した。これもあってトップラインは成長する一方で、デジタル広告収入は8.5%減。第2四半期も減を見込む。
Google's AI search is over | Semafor
“GoogleによるAI検索の(始まりと)終わり”。米Semarforが25ものAI新サービス(機能)を発表したGoogle I/Oを論評。「Googleは、何年も前にこれらの製品のいくつかはリリースすることができたはず」。本業の革新へと進めなかったジレンマを指摘。
Publishers using ChatGPT to improve headlines and suggest feature ideas
メディア業界に属しているのなら、ChatGPTがSEOにどうインパクトをもたらすか関心があるだろう。英メディア3社の担当者が議論。各社は自社の記事に「見出しの改善、検索に最適化したキーワードの示唆、記事の適切な要約」などの点で、AIが生産性を高める支援ができると述べた。

2023 Pulitzer Prizes

2023年のピューリッツア賞受賞者およびメディアが15部門で発表。今年はWeb専業の新興系メディアが目につかない。残念なトレンドでもある。

景気後退局面で、こういうトレンドに陥るのは、良質なジャーナリズムには資金や組織的体力が必須だということでもあるのか。

The Unified Content Business Model

Stratechery by Ben Thompson

The Unified Content Business Model
個人サイト「Stratechery」運営の著名ブロガーBen Thompson氏、BuzzFeed Newsの閉鎖やNew York Timesに買収されたThe Athleticに触れ、ニュースメディアのビジネスモデルは「購読+広告」であるべきと自説を改めて論じた。良質な購読モデルが良好な広告収益を可能にするとしている。
Can AI help local newsrooms streamline their newsletters? ARLnow tests the waters
米バージニア州のローカルメディア、人手がかかる作業の工数削減のため、AIや各種自動化ツールを駆使して無人によるニューズレター配信フローを完成、先月より実用運用(配信)を開始したとする報道。
SoundCloud debuts a fan engagement tool for artists
音楽ストリーミングプラットフォームのSoundCloudは、アーティストによるファンビジネス基盤の方向を強化中。アーティストがファンにDMを送ったり、ファンの行動でエンゲージメントを指数化して見たりできるコンソールである「Fans」をアーティストに提供を開始した。
Are news outlets using the wrong metrics to assess sites’ success?
米メディル・シュピーゲル・リサーチ・センター(SRC)の調査で、ニュースの収益化(マネタイズ)で最も重要な要素は有料購読と判明。だが、驚くべきことにページビューや滞在時間の増加は、実際には購読者や収益に悪影響を及ぼす可能性があるとし、“一気読み”を悪習と否定。
「購読者がニュースサイトを定期的に訪れる習慣が望ましい。長い記事をたまに読み、その間にかなりの期間離れてしまうことが望まれる」というのだ。
Nearly Half of YouTube’s U.S. Viewership Is Now on TVs, Helping Drive Ad Shift
【有料購読者向け記事】:
Nielsenらの年次調査によると、いまやYouTube視聴の45%がCTV(コネクティッドTV)上で行われている。TV(コンテンツ)の“王様”はYouTubeなのだ。かつて“汚い”コンテンツと広告主に嫌われた存在が、今では広告ビジネスの焦点となったとする記事。
“We Were Always Playing An Entirely Different Game”: The Ultimate Oral History Of BuzzFeed News
2012年、米BuzzFeedのニュース部門を設立されたBuzzFeed News。5月5日の閉鎖まで、多くの刺激的な報道、ファクトチェックを公開。ピューリッツァ賞受賞など輝かしい成果の一方、さまざまな議論も巻き起こした。スタッフらが証言を集めたオーラルヒストリーを最後に公開。
A startup let users talk to ChatGPT through a female avatar. It went awry. | Semafor
ChatGPTのユーザインタフェイスとして、金髪白人女性アバターを用いるサービスを試行した米スタートアップBubbles、ユーザが不適切な性的表現をアバターに求めたことから、アバター生成プラットフォームのSynthesiaにサービスを停止させられた。米Semaforがリポート。これからこのような事案が急増しそうな予感。
『「2030年日本」のストーリー』刊行記念 オーサー&ゲスト超異分野トーク | イベント | 東アジア藝文書院 | 東京大学
【ご紹介】:
来る16日(火)に東大で行われる『「2030年日本」のストーリー』刊行記念に登壇いたします。おもに、気鋭の社会学者・西田亮介さんとやり取りさせていただきます。参加無料ですので、ぜひご参加下さい。オフライン・オンライン聴講いずれも可能です。