Disruption This Week—–29/3/2024

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2024年3月25日から2024年3月29日まで。

八代亜紀さん『お別れの会』“最期”のあいさつにファン感涙「八代亜紀は幸せでしたよ」 生前の肉声をもとにAI生成【コメント全文】(オリコン) - Yahoo!ニュース
「お別れ会では八代さんが生前残した音声をもとに、AI音声合成技術を用いて新たに生成された八代さんの“肉声”メッセージが冒頭から届けられた。八代さんは『自身の声を残したい』という思いから、2020年に『声辞書』を作成。約400の文章を読み上げ、それらを音源データとして保存していたという」。

——日本でも、故美空ひばり氏の生前の録音を使った取り組みがあったと思う。ジェネレーティブAIがリーズナブルなコストでそれを容易にしつつある。今後広がるだろう。

One year in, revenue sharing on Shorts shows how your passion on YouTube pays off
「Shortsの参加資格を満たしてYPPに参加したクリエイターの80%以上が、YouTubeの他のYPP収益化機能を通じて収入を得ている」「昨年『Shorts』にレベニューシェアを導入して以来、 YPPの25%以上のチャンネルがこの収益源から収入を得ている」。

——米YouTubeが発表。TikTokを追って考案された「ショート」がいよいよ影響力を高めつつある。

長尺トレンド、CTVの収益性の高さ。米人気 YouTuber が語るYouTubeクリエイターの現在地 | DIGIDAY[日本版]
「現在、我々が目を向け、最適化に取り組んでいるのは、長尺動画とCTVだ。昨年の我々のチャンネル視聴者数の30%がCTVによるものだった。2023年に関していうと、超長尺コンテンツによって1700万時間の視聴時間と1億200万回の視聴回数がもたらされた」。

——YouTubeで稼ぐ米国の著名クリエイターが、現在の収入をどう分析し、今後どうしようとしているかをつまびらかに述べた出色のインタビュー記事。

Apple出身者ら設計の最新端末「Ai Pin」、日本発売へ - 日本経済新聞
「現在は米国内のみの販売で、英語入力にのみ対応している。同社によると韓国の通信大手、SKテレコムと日本のソフトバンクの2社と独占契約及び戦略提携を結んでおり、日本と韓国での製品展開を予定しているという。ボンジョルノ氏によると、同デバイスは日韓での正式発売時には、日本語と韓国語に対応する予定という」。

——以前何度か紹介した、胸辺りに大きめのバッジのように装着するジェネレーティブAI駆動のデバイス「AI Pin」。日本でも発売の動きが出てきた。スマホをリプレイスするのか、補完するのか。あるいは、単なるキワモノなのか。日本語エディションが出れば試してみたい。

Avoiding the news isn’t the same as not consuming it
選択的ニュース回避層は、実はニュースを多く消費している。この層は、年齢が若くニュースに否定的なイメージを持ち、(意外にも)政治的効力感が高い。一方で、ニュース消費が単に少ない、メディアや政治への信頼が低く、低所得な人たちとは弁別されるべきとの研究議論。
焦点:巨大ITが直面する米欧の独禁法問題、業界初の解体命令も
「巨大IT企業は、過去数十年間で最大の逆風にさらされている。米国と欧州の独占禁止当局が、これらの企業の反競争的とされる慣行の取り締まりに乗り出し、アップルやアルファベット子会社グーグルが、業界として初めての分割解体命令を下される恐れまで出てきたからだ」。

——記事が結論づけているように“解体”(分割)に至る道は相当に険しい。そんな議論を続けている間に、新たなAI巨大プラットフォームが誕生しかねない。ただし、この種の緊張感を巨大プラットフォームに与えることは総合的に有益だと思う。

「生成AIでニュースにタダ乗り」相次ぐメディア訴訟と罰金410億円、その適正な対価とは?
「訴状は、AI生成コンテンツの検知サービスを提供する「コピーリークス」が2月22日に発表したチャットGPTの大規模言語モデル(LLM)、GPT-3.5に関する調査結果を引用している。
調査ではGPT-3.5に物理学から経済学、スポーツまでの26分野、1,045件のテキストの出力を指示したところ、59.7%で盗用を含むテキストが含まれ、45.7%で同一のテキストがあった、と指摘」。

——他の同様の調査結果も示されている。これだけ大規模な模倣では、フェアユースとは言いがたいと思うが、OpenAIらはどう抗弁するのか興味を持つ。

英Financial Times、購読者からの自然言語文による質問に答える「Ask FT」と呼ぶ新しいジェネレーティブAIチャットボットを導入。記事はそれを実際に使い、その精度を論じている。下地となった記事などを明示する機能など媒体運営者が求める要素が含まれる。その一方で、生成された解説には一部矛盾や古さなどがあったとも指摘。
生成AIの弱点が相次ぎ発覚 ChatGPTやGeminiがサイバー攻撃の標的に 情報流出や不正操作の恐れも
「イスラエルのベングリオン大学の研究チームは、生成AIとユーザーの間に割り込んでデータパケットを傍受し、AIの回答内容を高い精度で復元する攻撃に成功したと発表した。この攻撃は、生成AIがユーザーの質問に回答する際のデータ処理に存在する脆弱性を突いている」。

——ChatGPTのみならずGeminiにおいても、同様の脆弱性発見されているという。他人がどのようなプロンプトを発し、AIがどうそれに応えたかを再現できるらしい。

BBC in talks to sell archive to tech companies as AI training data
英公共放送BBC、同社のコンテンツをジェネレーティブAI事業者へのライセンス販売を協議中と、英メディアFinancial Timesが報道。協議には(Gen AI事業者として)Amazonが含まれているとも。すでにBBC幹部が発言していることから交渉は公知のようだ。

Disruption This Week—–22/3/2024

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2024年3月18日から2024年3月22日まで。

I Used ChatGPT as a Reporting Assistant. It Didn’t Go Well – The Markup
調査報道(データ)ジャーナリストのJon Keegan氏、ChatGPTが調査報道のアシスタントとなり得るかを時間をかけてテスト。いくつかの点で良い成果をあげた(要約能力など)が、概ね落第だとした。だが、最も使える機能は、プログラミング・コードの生成とデバッグ機能だと発見。
習近平氏の偽動画どう見抜いた? 台湾総統選、市民もLINEで検証:朝日新聞デジタル
【有料購読者向け記事】:
「市民団体『コファクツ』は、2400人以上のボランティアが市民から寄せられた情報の真偽を検証している。台湾でも普及するLINEを使い、利用者から投稿された真偽不明の情報を過去の検証結果を集めたデータベースと突き合わせて正しい内容かを瞬時に確認。データベースはボランティアが評価を重ね、回答の精度を高めている」。

——台湾総統選などを機に噴出した偽動画、偽画像。台湾では市民が参加するファクトチェックのスキームが歴史的に積み重ねられている。

ネット広告を良くしなければ社会が悪くなる、2024年度はその分岐点です。 | AdverTimes.(アドタイ) by 宣伝会議

AdverTimes(アドタイ)宣伝会議が運営する、広告界のニュース&情報プラットフォーム

ネット広告を良くしなければ社会が悪くなる、2024年度はその分岐点です。 | AdverTimes.(アドタイ) by 宣伝会議
「最近は比較的硬派なメディアでもどんどん広告表示がひどくなっています。新聞は比較的まともだと思っていましたが、先日はついに大手新聞のサイトでニュース記事を読んでいたら『通せんぼ広告』が表示されました。新聞がこれやっちゃダメでしょう。その新聞の記事はもう2度と開かないと決めました」。

——境 治氏の論説。「広告」の劣化は、メディアそれ自体の劣化と見なされるだろう。その逆もまた。広告もコンテンツ(メディア)も、どう“引き算”のアプローチを現実化していくべきか。

TikTok Revamps Creator Rewards Program to Incentivize Longer Uploads
TikTokがクリエイター向けの報酬プログラム「クリエイター・リワード・プログラム」を発表。1分以上の動画のみ参加対象とするなど、同社が「高品質で長いコンテンツのアップロード」を動機づけようとしているのが、改めて明瞭となった。

——TikTokが流行らせた“ショート動画”を自ら脱却しようとするのは、GoogleやMeta勢のショート動画との差別化、そして、広告の挿入しやすさなどマネタイズ面での課題があるからだろう。

How to abandon a paywall and thrive – a case study

Media Makers Meet | What’s new in media

How to abandon a paywall and thrive - a case study
ペイウォールを捨て成功するメディア:
「1. より多くの読者にリーチする必要性
2. 非営利の立場を受け入れる
3. 毎日配信されるメールマガジンの重要性を理解
4. 透明性を高め、利益を再投資…
5. イベントやエンゲージメントを通じて熱心なコミュニティを築く…」

——ある商業デジタルメディアが、購読課金制(ペイウォール)を諦め、非営利・寄付金型メディアへのモデルチェンジを図り、成功した事例を要約解説した記事。

長文コンテンツのための5つの書式テクニック
「(ユーザーは)要約や箇条書き、視覚情報、太字のテキストに注目して、探しているものをすばやく見つけ出そうとしている。そこで、テキストの壁を崩す書式テクニックを用いれば、流し読みのしやすさが向上するだけでなく、重要な情報に注意を引きつけることで、読者がコンテンツを効率的かつ効果的に読み進める手助けをすることができる」。

——「要約、箇条書き、コールアウト、太字、役立つ視覚情報などのテクニックを用いることで、1,000語を超えるコンテンツの理解度やエンゲージメントは向上する」との視点で整理された論。しかも、体験的な主張ではなくユーザーによるテストを基にした論であり、傾聴に値すると思う。個人的には冒頭の「要約」が重要と感じている。

「真のスマホネイティブ世代」のメディア利用「原体験」とは | ウェブ電通報
「今の子どもたちは『真のスマホネイティブ世代』にあたると冒頭で紹介しました。そこでスマホの利用状況を詳しく見ていきましょう。スマホの利用率は、0歳の22.5%を起点に伸長し、6~8歳での落ち込みを経て、12歳では58.5%に達します」。

——興味深い調査結果が示された記事。“真にスマホネイティブ”な層=子どもたちのメディア(コンテンツ)接触について、さまざまな視点が示された。引用箇所は、幼児期は寝かしつけのために親がスマホを与え、長じては親がスマホ視聴を取り上げ、そして学校教育ではタブレットと振り回される様が指摘される。

Hey YouTube creators, it’s time to start labeling AI-generated content in your videos | CNN Business
YouTube、クリエイターらにAI生成ラベルの付与を義務化。ビデオをアップロードすると、そのコンテンツが実在の人物の言動や、実在の場所や出来事の映像を改ざんしていないか、あるいは実際には起こっていないリアルなシーンを描写していないかを尋ねるチェックリストが表示される。
視聴者を混乱させる可能性のあるリアルなAI生成コンテンツにのみラベル付けが義務化されるという。
A company linked to a large “pink slime” network is being hired by big publishers like Gannett
「『ピンク・スライム』サイトの膨大なネットワークと数多くのつながりを持つAdvantage Informatics社が、Gannettのような米大手メディアチェーンと関係し、ローカルメディアを売買していることが、私の追跡取材で明らかになった」。

——“ピンク・スライム”とは、挽肉などに低品質な肉や人像肉などを混ぜ合わせる手法を言うが、メディアでも地方紙(もしくはそれを仮装するサイト)で広告記事や政治的主張記事を垂れ流すビジネスが指摘されている。消えゆく地方紙を買い取るなどして次々にこの種のビジネスに転換させる動きがあるのだ。全米レベルの大手新聞チェーンGannettが、結果としてこのような動きに関わってしまっているとの指摘。

アルゴリズム、消費者の敵 - 日本経済新聞
【有料購読者向け記事】:
「消費者はハンバーガーの価格や家賃の上昇には激怒するが、なぜか通勤時間帯で交通費が変動してもあまり気にしない。アプリで予約する場合はなおさらだ。だが、ネット上で当然視されてきたこれらの手法がリアルの店舗で展開されると問題は大きくなる」。

——英FT紙の論説記事。“ダイナミックプライシング”をのんきに新手法として評価する言説が多い。が、実際に自分に適用されれば、“消費者差別”と怒る向きも多いはず。さらに、それが実店舗で行われれば、なおさらだが、なぜかオンラインではその種の新商慣習がすでに横行しているとする論説。

Disruption This Week—–15/3/2024

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2024年3月11日から2024年3月15日まで。

MusicWatch Reports Results of 2023 Annual Music Study: Record Numbers of Music Streamers and Paid Subscribers | MusicWatch Inc.
米メディアMusicWatch、2023年版「US Annual Music Study」で米音楽市場の調査結果を公表。米市場は引き続き健全。有料会員数は過去最高し、レコード音楽(CD、レコード、ダウンロード、音楽ストリーミングの有料購読)への支出も増加しているとする。
オープンAI、仏紙ル・モンドとスペインのプリザとライセンス契約
「ChatGPTのユーザーは今後数カ月かけて、一部の回答でル・モンド紙とプリザの要約された記事を読むことができるようになる。回答には記事の出所が明記され、元記事につながる『強化リンク』が設けられ、ユーザーはそれぞれのニュースサイトにアクセスして追加情報や関連記事に接することができるという」。

——OpenAIとニュース(報道)メディアとの提携が、じわじわと進んでいる。「強化リンク」という出典元明示の仕組みも提供されるという。

Sprouts of Hope in a Gloomy Media Landscape
【有料購読者向け記事】:
「『Puck』、『Punchbowl News』、『The Ankler』、『Semafor』などが代表的な新興ニュース企業は、支出を抑え、慎重に雇用している。いずれも、特定のニッチ分野を幅広くカバーするニュースレターが中心である。一流のジャーナリストを企業の中心に据えることで、時には企業のオーナーとして、彼らを惹きつけてきた」。

——米New York Times、先行き厳しいメディア経営環境を念頭に新たなメディア運営法をめぐり取材、論じている。

AI news that's fit to print
米メディアQuartzの創業者で、最近、New York TimesでAI活用イニシアティブの責任者に任用された
Zach Seward氏が、メディア(ジャーナリズム)がAIを活用しようとして失敗した例、成功した例、そしてLLMの可能性を事例を豊富に使い解説したSXSWでの講演記録。必読!
AI規制法案、EU議会で可決-世界に先駆け包括的な内容
「欧州議会は13日、人工知能(AI)法案を可決した。これにより欧州連合(EU)では、急発展するAIを最も包括的に規制する法律が導入される。
米国ではこれに相当する法規制はなく、EUの法案に盛り込まれた一連の規制が欧米諸国におけるAI管理を方向づける可能性がある」。

——EUが最も厳格。米は緩やか。日本はその中間、というのが通り相場だが、日本でも厳格の側に傾く動きもあるようだ。政府も躊躇しているのだろう。G7で主導権を発揮した日本の立ち位置も揺らぐ。

OpenMeter makes it easier for companies to track usage-based billing | TechCrunch
サブスク(購読)型課金モデルが、利用者にとって割高と感じられることが多くなるに従い、従量型課金(Usage-Based Pricing)モデルが広がり始めた。記事は、その基盤をSaaSで提供するOpenMeterの話題。エンタープライズ分野で注目されるが、C向けにも適用できるのでは?
Tortoise boasts growing podcast audience of up to 3m downloads per month
“スローニュース”を謳う英Tortoise Media。2019年の創業時のコンセプトは少ない数の長文記事をじっくり読ませることだったが、22年にはポッドキャストにピボット。現在は、月間300万ダウンロードを誇るという。女性視聴者が6割、40代以下の比率が8割だという。

インターネット広告費は過去最高を更新 ビデオ広告が二桁成長―電通・日本の広告費詳細 | AdverTimes.(アドタイ) by 宣伝会議

AdverTimes(アドタイ)宣伝会議が運営する、広告界のニュース&情報プラットフォーム

インターネット広告費は過去最高を更新 ビデオ広告が二桁成長―電通・日本の広告費詳細 | AdverTimes.(アドタイ) by 宣伝会議
「インターネット広告媒体費を取引手法別で見ると、運用型広告は前年比110.9%の2兆3,490億円で、インターネット広告媒体費に占める構成比は87.4%となった。予約型広告は前年比100.0%(2022年:2,647億円、2023年:2,648億円)とほぼ横ばい」。

——発表された「2023年 日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析」から。上記運用型広告のいまさらながらの浸透ぶりに加えて、動画広告が高い成長を示したことが、昨年のハイライトだろう。

How DMA gatekeepers are responding to the EU's new competition rules -- in their own words | TechCrunch
EUで施行されたDMA(デジタル市場法)の下で、ゲートキーパーと指定されたAlphabet/Google、Amazon、Apple、ByteDance/TikTok、Meta、Microsoftの6社が、それぞれ、最初のコンプライアンス・リポートを発表し始めている。今後EU監視下でこのような検証公表が求められることになる。
地方紙のサイトが“生成コンテンツ”を大量発信、AIを用いた「クリックベイト工場」の秘密
「人工知能(AI)が生成する『クリックベイト(釣り記事)』で溢れるウェブサイトのネットワークは、既存のメディアやブランドの評判をずる賢く利用して構築されている。これらのサイトは、かつて高い信頼を得ていた組織のURLのドメインを不法占拠(サイバースクワッティング)し、閲覧者や広告主を混乱させ、誤解を引き起こすことでうまい汁を吸う」。

——Metaで働いたことのある人物が、このジェネレーティブAIが生成するコンテンツを、元々定評があったローカル紙のドメインを活用して、悪質なコンテンツを振りまくモデルを発見したという記事。記事が指摘するように、この事案は広告による資金稼ぎが狙いだが、容易にプロパガンダ意図に応用できるだろう。

Disruption This Week—–8/3/2024

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2024年3月4日から2024年3月8日まで。

アップルは「マフィアの手口」 EUの新ルール、アプリ業者が猛反発:朝日新聞デジタル
【有料購読者向け記事】:
「ファウ氏(=ドイツの暗号化メールアプリ『トゥータ』のマティアス・ファウCEO)は『現状の規約にとどまるか、ビジネスを壊すリスクを取って新規約に移るか。アップルの手法は、身代金を要求するマフィアのようだ』という」。

——AppleがDMA施行に対処するため(と想定できる)、新アップストア利用規約が非常に評判が悪い。個人的に見ても、よくもこれだけワル知恵を働かせたものだと感心。特に外部決済に誘導されようとする一般ユーザーに対し、「(外部で決裁すると)アップルはプライバシーやセキュリティーに責任を負いません」と大書きで警告する手法は、圧倒的な影響力があるだろう。

プロンプト不要、生成AIで誰でも物語からマンガが作れる
「テキスト-画像生成AIは物語性のある複数の画像を生成するのが苦手だ。複数の画像で、設定に一貫性を持たせるのが難しいからだ。だが最近、物語を一度入力すると、それに合った一連の画像を生成するサービスが登場した」。

——画像生成については、DALL-EやStable Diffusionなどを利用するようだが、それ以前のストーリー、プロットなどを解釈してうまい画像を生成させるプロンプトを人間代わりにやってくれるジェネレーティブAI「ロア・マシーン(Lore Machine)」が試行運用中。記事に含まれる見本が面白く読める。

“Don’t expect help from the disruptors”: The FT’s chief executive on AI, “loyalist” readers, and its U.S. expansion
英Financial Times(FT)のCEO、John Ridding氏がインタビューに応じ、好調なデジタル購読者獲得とメディア業界の現状について語る。同社の購読者は140万人を超え、うちデジタル購読者は100万人超。約20%が米国在住だという。日経による買収以降、グループ収益は倍増だとも。
同社が力を入れてきたエンゲージメント戦略の詳細な現状も語られ、読み応えのある内容。
生成AIのグラウンディング(Grounding)とは?
「用語『グラウンディング』について説明。特定の知識や情報源(ナレッジベースなど)に基づいて言語モデルの生成内容を裏付けるプロセスのことで、チャットAIに独自の情報源を付与するRAG(検索拡張生成)という仕組みがその代表例。チャットAIがもっともらしいウソを答える問題(=ハルシネーション)を減らせるといったメリットがある」。

——LLMからいかにして信頼性の高い情報を意図して出力させられるか。また、その信頼性を証す典拠などを明示させられるかといったテーマは、現在、自ら培ってきた信頼性の高いコンテンツを資産として維持する出版社、メディアにとっての死活問題。課題だったこの問題への一つのアプローチが「グラウンディング」だ。

Newsguard debuts new automation tools for tracking election-related misinformation
情報の信ぴょう性などの検証からメディアをレーティングする調査企業の米NewsGuard、選挙イヤーの2024年用に、「Election Misinformation Tracking Center(選挙関連誤報追跡センター)」をサービスイン。従来の追跡システムに加え機械化をさらに促進したという。
10代にとって「メディア」とは? 気になる「界隈」って? イノベーターティーンのメディア生活 番外編 @メ環研の部屋 | メディア環境研究所|博報堂DYメディアパートナーズ
「10代はこの(=フィルターバブルのような)『情報が偏るリスク』をよく理解しているようです。調査では10代の6割が『多様な人や意見・情報にあたるようにしている』と回答。その対策として、X、新聞、ネットニュースなど複数のメディアを使い、確からしさを得ようとしているという声が聞かれています」。

——ティーンがバランス良く情報を摂取すべきことを知っているとの結果。これが全体に適用できるのかどうかもう少し深めてほしいが、自分の日ごろの感覚とも整合する。

BBC News marks content 'verified' to counter disinformation
英BBC、記事中に引用などされた第三者による映像情報に、「検証済み」マークを表示するようにした。検証された動画や画像には、作者、撮影日、撮影場所、カメラの詳細、その後の編集や変更などのメタデータが埋め込まれ、読者はそれを確認できる”How we verified this”ボタンを設置する。
How Max Tani Became the Go-To Guy for Horrible News About Media Layoffs
人気の新興メディア米Semaforでメディア関連情報を担当するMaxwell Tani氏へのインタビュー。同氏は、いくつものメディアを渡り歩き、Semaforにたどり着いたが、いつの間にか、“メディアの訃報(レイオフ、媒体閉鎖)”を報道する専門家のようになってしまったと嘆く。
These Companies Have a Plan to Kill Apps
スマホアプリが消滅へ? すでに軽く紹介したが、MWC2024にドイツテレコムがLLMを利用したヒューマンインターフェイスを搭載したスマートフォンのコンセプトモデルを展示。人間が“複数のアプリを操作してタスクを完了”モデルから、AIに指示し、AIがタスクを完了する新トレンドが動き出している。
インターネットの利用環境、70代のスマホでの利用が3年間で31pt増加【LINEヤフー調査】
「60代以上のシニア層を見ても2021年4月と比較して『スマホ』でのインターネット利用者の増加傾向は顕著で、60代は86%(+6pt)、70代は65%(+31pt)の利用率となった」。

——当然の帰趨と言えばそうだが、シニア層でスマホ利用が急速に進む。となると、ネットメディアやサービスの利用についても、この層で進むことになるだろう。メディア受容における世代対立も変化する可能性がある。

Disruption This Week—–9/2/2024

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2024年2月5日から2024年2月9日まで。

携帯電話の出荷台数、スマホ登場以降で“最少”に 3000万台を下回る──MM総研調査
「ICT分野の市場調査やコンサルティングを手掛けるMM総研(東京都港区)は2月7日、2023年の携帯電話出荷台数は2801万3000台という調査結果を発表した。前年比16.9%の減少となり、日本でスマートフォンが登場した2007年以降では初めて3000万台を下回った」。

——AIを活用した新たなフォームファクタのデバイスが誕生するのか(しつつあるようだが)。あるいはスマートフォン自体がAIによって大きな進化を遂げるのか。いずれにしてもある種の踊り場にきているようだ。

AR glasses with multimodal AI nets funding from Pokémon GO creator | TechCrunch
シンガポールを拠点とするBrilliant Labs、マルチモーダルAIアシスタントの「Noa」を搭載した軽量なARグラス「Frame」を発表。NianticのCEO、John Hanke氏の投資を受けたという。搭載するAIエンジンには、複数の既存ジェネレーティブAIを連携させていると記事は解説している。
「トムソン・ロイターが8日発表した2023年第4・四半期決算は利益が市場予想を上回った。コスト削減が奏功したほか、人工知能(AI)活用する法務関連向けなどの製品に対する需要が追い風となった。
また、大規模なAI言語モデルの訓練の支援に向けたニュースコンテンツのライセンス契約を締結したと発表。締結先の企業名や金銭面の詳細は明らかにしていない」。

——メディア企業の業績において「AI製品の寄与」が報道される初のケースでは?

Subscription giants News Corp and New York Times buck the trend of revenue decline
世界最大級の多国籍メディア企業のNews Corp。CEOであるRobert Thomson氏が、同社の購読制事業やAIとの連携について語る。同社は複数メディアの総計で1,130万人超の購読者を擁し、New York Timesを凌駕。デジタルが収益の過半に。AI企業と近く金銭的に妥結との期待も示した。
ディズニー、「フォートナイト」のエピックの株式15億ドルを取得 新コンテンツ共同開発へ
「米Walt Disney Companyと米Epic Gamesは2月7日(現地時間)、米Epic Gamesの株式取得に15億ドルを投じると発表した。DisneyとEpicは、消費者が『ディズニー、ピクサー、マーベル、スター・ウォーズ、アバターなどのコンテンツやキャラクター、ストーリーをプレイし、視聴し、購入し、参加できる』新たなゲームとエンターテインメントの世界を共同で構築するという」。

——いまひとつさえのない決算を発表した米Walt Disney。だが、抜かりなく株価浮揚策(?)でもあるゲームへの大型投資を同時に発表。当記事にはないが、別の報道では株価は急騰したという。

OpenAI、DALL・E 3で生成した画像にCP2Aの電子透かし追加
「米OpenAIは2月5日(現地時間)、画像生成AIモデル『DALL・E3』を提供するAPIで生成された画像にC2PA(=Coalition for Content Provenance and Authenticity)メタデータを含ませるようにしたと発表した。12日までにすべてのモバイルユーザーにも展開される見込み」。

——最近になってMetaも同様の取り組みを喧伝しているが、OpenAIが先駆けて実装してきた。C2PAはオープンな仕様で広がる可能性があるが、これをどうコンテンツの真偽判定に生かすかという面での実装例が出てくることを待ちたい。

New York Times Co. Adds 300,000 Digital Subscribers in Quarter
米New York Times、2023年第4四半期に30万人の有料デジタル購読者を追加。デジタル購読の年間売上高が初めて10億ドル突破と発表。年末時点の同紙購読者数は1,036万人で、970万人がデジタル版のみの購読。同社は2027年末までに購読者数1,500万人を目標として掲げる。
HK's first deepfake video conference scam involving HK$200 million
香港現地メディアが報じた、“初の”オンライン会議を用いたディープフェイク詐欺。ある多国籍企業の従業員が、ロンドン本社の「最高財務責任者」を名乗る詐欺師から、4~6人のスタッフとのオンライン会議に招集され、送金の指示を受けたという2億香港ドルの詐欺事案報道。
Introducing Semafor Signals | Semafor
米新興メディアSemafor、MicrosoftおよびOpenAIと組み、ジェネレーティブAIを活用した新たなニュースフォーマットである「Semafor Signals」をスタート。Semaforが取り上げたトピックスに、AIが参照すべき多様な情報源を追加呈示する。同サイトですでにいくつも、表示されている。
The spectacular collapse of the Messenger is a lesson on how not to do journalism | Margaret Sullivan
先日紹介した、昨年大々的なスタートを切り、たちまち崩壊したメディア「The Messenger」。同メディアについて、「SNSと検索からトラフィックを集めることを目的とした広告サポートサイト」だったと指摘し、「うますぎる目論見を信じるべきでなかった」と厳しく指摘する記事。
被災地で求められる情報とは? ——能登半島地震から1ヶ月、東京との読まれ方の違いを分析 - Media × Tech
【ご紹介】:
私も創刊から長く編集に携わってきた「Media×Tech」。諸事情により休眠に入っていましたが、能登半地震をめぐるSmartNews上の読者動向を記事を公開しました。ぜひご一読を。期せずして100本目の記事となりました。