Disruption This Week—–13/10/2023

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2023年10月10日から2023年10月13日まで。

More Social Networks Are Charging for Ad-Free Apps
【有料購読者向け記事】:
かつて無料利用、広告収益が当たり前だったSNS。それが一時期の広告市況の悪化と、ターゲティング技術活用への規制などで有料化を試みるSNSが増えている。記事は9つの著名SNSで7つまでが有料化を試行中と一覧表で示す。
YouTube passes Netflix as top video source for teens
米投資銀Piper Sandlerの調査では、米国の十代青少年の動画視聴は、NetflixよりYouTubeを用いることが分かった。データは、動画配信ビジネスの競争激化と、特に若者の間で、無料プロバイダーとしてのYouTubeの強力なポジションを示すものとする記事。
1日3分で世界がわかる「Minutes by NIKKEI」11月創刊 - 日本経済新聞
「日経電子版を読む人からは『ニュースが多すぎて読み切れない』『これまでの経緯がわからなくて難しく感じる』といった声が寄せられます。そのお悩みに応えるために、新しいメディアをつくりました」。

——数分で読み切れるニュース解説。日経新聞が、新たに有料購読メディアを5つ立ち上げた。基本的には有料購読ニューズレターをベースにしたもので、この「Minutes by NIKKEI」以外はジャンルを絞ったもの。興味深いアプローチ。

ChatGPT誕生に遙かに先行して、AP通信は小規模メディア組織向けに「ローカルニュースAIイニシアティブ」を形成。200近い小規模編集部のニーズを分析。さまざまな応募から、テープ書き起こしや議事録自動生成など5つのAI搭載プロダクトを公開した。
Here’s What the Washington Post Job Cuts Will Look Like
昨日も紹介したように、米Washington Postは早期退職勧奨プログラムで240名もの人員削減に乗り出す。労組との険悪な説明会の席上、同社暫定CEOのPatty Stonesifer氏は「これは本当に良いビジネスなのだが、経費をオーバーしてしまった」と述べたとする報道。
AI自動吹き替えツール「AI Dubbing」登場--話し手の声を維持して音声を翻訳
「ElevenLabsは米国時間10月10日、『AI Dubbing』を発表した。元の話し手の声、話し方、感情、イントネーションはそのままで、発言内容を別の言語に変換できる。言語をわずか数分で変換することにより、世界中の人々がお気に入りのコンテンツを母国語で楽しめるようにすることが狙いだ」。

——カバーする20種類以上の言語には、日本語も含まれるという。気になる対価だが、従量制をとるということだ。

今次の大規模なガザ紛争でも、SNS上にニセのニュースや動画像が多く出現。投稿コンテンツに対する監視を弱めたX(旧Twitter)に対して、Threadsへの期待が高まるが、事業責任者Adam Mosseri氏は「反ニュースではないが、ニュースへの傾倒は避ける」と方針を改めて述べる。
米Michigan州をカバーするオンライン・ローカルニュースメディア「Bridge Michigan」、編集者1名・記者1名の同メディアが、わずか12年で購読者125,000人、9,000人超の個人寄付者に支えられ、最大級の市民向けニュース・プロバイダーに成長。きっかけはコミュニティイベントの開催からだという。
BBC Will Block ChatGPT AI From Scraping Its Content
英BBCも、同社サイトのコンテンツをジェネレーティブAI(このケースではOpenAI)企業がクロールすることをオプトアウト(拒否)したとする報道。記事は一方で、これらメディア企業は、そもそもコントロール不可能なものをコントロールしようとしているのだと論評。
AI によるコンテンツ収集を止める効果的な手段はない? 懐疑の目を向けるメディアたち | DIGIDAY[日本版]
「あるパブリッシャー幹部はDIGIDAYの取材に対し、合わせて8つのシンジケーションアプリ、ウェブサイトでコンテンツを配信していると述べている。コンテンツはすでに発見しやすくなっているため、オープンAIのウェブクローラーをブロックするという保護策は無駄な努力だったように感じられるとパブリッシャー幹部は口をそろえる」。

——何度か紹介しているように、OpenAIらはジェネレーティブAIの学習用にクローラ(ボット)を明示しており、そのオプトアウトオプションも公開している。これをもちいて各メディアは一斉にオプトアウトに走っているが、記事はそれがそもそも「無意味では?」と指摘する。

Disruption This Week—–29/9/2023

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2023年9月25日から2023年9月29日まで。

AI Startups Are Trying to Make Usage-Based Pricing Happen
【有料購読者向け記事】:
最近、気になっているのが“従量課金”モデル。個人向けでも企業向けでも重要な動きだ。米The Informationは「AIスタートアップが利用者ベースの価格設定を実現しようとしている」と紹介。ジェネレーティブAI系はコスト高。利用側が導入に慎重なのだという。
Paying for news: Price-conscious consumers look for value amid cost-of-living crisis
「誰がオンラインニュースにお金を払っているのか?」英Reuters Institute、日本を含む20か国を対象に、消費者がニュースに対価を支払う(支払いたがらない)状況を調査。「過去1年間にオンラインコンテンツに支払った」ことのある人の割合で、日本は英国と並び最下位(9%)だった。
メタのザッカーバーグCEO、セレブたちが演じるAIアシスタントを発表
「AIアシスタントの多くは、著名人のペルソナを持ち、その人物に似た会話や音声を発することさえできる。元NBAバスケットボール選手のドウェイン・ウェイド(Dwyane Wade)が演じるAIアシスタントのビクター(Victor)はワークアウトの計画を立てたり、フィットネスの目標達成に向けてユーザーのモチベーションを維持する手助けをしたりすることができる」。

——昨日ちょっと触れたが、Metaはキャラクターに個性を持たせたAIチャットボットを投入。それぞれ特性を持たせてユーザーを支援するという。大坂なおみ氏に酷似した(当然、ライセンス料を払うのだろう)キャラクターもいるらしい。

20代の70%以上が紙より電子書籍を好む/10代には「コミックシーモア」が人気【ナイル調査】
「電子書籍を『現在利用している』と回答した人に、よく読むジャンルを尋ねた。その結果『マンガ(70.66%)』が最多となり、『小説・文学』『雑誌』『趣味・実用』が続いた」。

——20代の7割以上が電子書籍を好む。そして、やはり7割がもっとも好むジャンルを「マンガ」としている。だが、利用中のサービスの1位はKindle(2位が楽天Kobo)という辺りにねじれを、自分としては感じている。その解きほぐしをしているところ。

ヤフー、ニュース配信元との契約見直しも 「優越的地位の可能性」指摘受け
「声明でヤフーは、配信元各社と良好なパートナー関係を維持するため、契約内容の丁寧な説明と実績に応じた見直し、実績などデータの充実と開示、問い合わせ窓口の充実、透明性の向上――などに取り組んでいくとしている」。

——先日の公取委の調査報告書に対し、ヤフーがまずは迅速な反応を示した。

アマゾンの「Alexa」は、会話型AIの技術で“人間らしい”アシスタントへと進化する
「アマゾンはバージニア州アーリントンにある第2本社で9月20日(米国時間)に開かれたイベントで、Alexaを刷新すると発表した。これまでよりずっと複雑な質問にも答えられるようになり、よりスムーズで自由な会話をこなせるようになるという。また、ユーザーがいちいち『Alexa』と呼びかける必要もなくなるという」。

——AIスピーカーが誕生した折から、このような“自然な会話”性の実現に期待をしていた。ジェネレーティブAIの力を借りてどうやらそれが前進を始めたようだ。別の投稿では、ChatGPTが音声と画像(口と目)を持ったとの話題を紹介した。人間とAIの会話が自然になってくると、「物知りな知人」がつねに傍らに居てくれるようになる。

ChatGPT、“目”と“耳”の実装を発表 写真の内容を認識、発話機能でおしゃべりも可能に
「米OpenAIは9月25日(現地時間)、同社のチャットAI『ChatGPT』に、画像認識、音声認識、発話機能が搭載されたと発表した。今後2週間かけて、PlusユーザーとEnterpriseユーザーに展開するという。画像機能はPCやスマートフォンなど全てのプラットフォームからアクセスでき、音声機能はiOS/Androidで利用可能」。

——人間同士の会話能力がそうであるように、画像と音声(入出力)を取り込めるとAIチャット機能は使いやすく、強力になる。求められている方向に正常進化している。

文章一行でAIがWebサイト構築、外部資金調達なしで5.4万ユーザを集めた豪Relume——NikeやDapper Labsも利用

BRIDGE(ブリッジ)|「起業家と投資家を繋ぐ」テクノロジー&スタートアップ関連の話題をお届けするブログメディア

文章一行でAIがWebサイト構築、外部資金調達なしで5.4万ユーザを集めた豪Relume——NikeやDapper Labsも利用
「デザインスタートアップ Relume は、AI が生成する Web サイトデザインプラットフォーム『Relume Ipsum』を開発した、数週間から1ヶ月程度かかっていた Web サイトを完成させるまでの作業負荷をわずか数分にまで軽減する」。

——興味深い。Webサイトの構成、デザインをジェネレーティブAIが独自のLLMを通じて行うというものらしい。これに収容されるコンテンツもAI生成……ということになるのだろうか。

In the AI Age, The New York Times Wants Reporters to Tell Readers Who They Are
米New York Times、記者が自身のプロファイル(経歴)を積極的に読者に開示するようにと社内向けメールで指示。米Vanity Fairが報道。メールは「メディアに対する不信感の多くは、ニュースルームがどのように運営されているかを知らないことに起因する」と指摘している。
AI生成コンテンツの時代に、“人間による”要素を顕在化していこうというわけだ。
「マンガ文化に貢献する画期的な取り組み」 集英社UGC拡散に本腰?ジャンプ+「切り抜き」機能公開 
「任意のシーンを切り抜いて、スタンプなどでデコレーションを施し、マンガへのリンク付きで公開できる。サービスに会員登録すると、自身の投稿を経由して読まれたマンガの閲覧数も分かる。この数はランキングでも紹介される」。

——同種の仕組みやアイデアは以前からあったように記憶する。要はそのような切り取り・拡散を媒体側自らが積極的に行おうとする意識変化が生じた点が重要なのだろう。

Disruption This Week—–15/9/2023

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2023年9月11日から2023年9月15日まで。

生成AIツール「Adobe Firefly」、一般提供開始--商用利用が可能に
「もう1つ注目すべきアプローチとして、同社は、Fireflyのトレーニングに画像を使用した場合に、『Adobe Stock』コントリビューターに対して報酬を支払う。Adobeは、『有意義な』ボーナスを年1回支払うと、(Adobeのプロダクト担当幹部)Subramaniam氏は述べた」。

——AIの学習に用いられる(したがって、そのままの形で最終アウトプットにはクレジットされない)作品への報酬問題に対し、一定のアプローチが示された。これが終着点ではないだろうが、興味深い動き。

米ハイテク企業トップら、AI規制巡り議論-上院の非公開会合
「午前中のセッションを通じて意見の対立が見られたという。メタのマーク・ザッカーバーグCEOやオープンAIのサム・アルトマンCEO、マイクロソフトのビル・ゲイツ共同創業者はオープンソースのAIを研究するリスクを巡り異なる意見を述べた」。

——米政界とAIの開発を進めるハイテク事業者が初の会合。他記事によれば、ハイテク事業者側のいずれのCEOも政府による介入を望むとの見解を示したとされる。

Want to boost local news subscriptions? Giving your readers a say in story ideas can help
読者(視聴者)に記事への意見を求め、それを実行に移すことが、購読者数の増、ローカルニュースへの関心を改善する効果があるとの調査結果が発表された。米Texas州立大の研究者らの論文。近年「エンゲージメント・ジャーナリズム」と呼ばれる分野が注目されているという。
The creator economy goes global
“クリエイターエコノミーは衰退するどころか、より協力に発展を続けている”。決済・金融サービスのStripeが歴年の資料を公開。21年に50のプラットフォームで67万人に100億ドルの支払いを受けたが、23年には100万人以上、250億ドル以上の収入を得ているとするもの。
Stability AI debuts Stable Audio bringing text to audio generation to the masses
Stability AI、「Stable Audio」技術を発表。テキスト、画像、そして(プログラミングなどの)コード生成に続き、ジェネレーティブAIの新領域は、テキストからのオーディオ生成とのことだ。画像生成と同じ「拡散モデル」を基礎とし、MIDIを超えるアウトプットとする。
テキストによるプロンプトでオーディオを生成するが、歯止めも設けられており、「ビートルズ風楽曲の生成」などは実行しないという。
米著作権当局、生成AI「Midjourney」で制作した優勝作品の著作権保護を拒否
「米著作権局審査委員会は9月5日(現地時間)、生成AIを使って制作された芸術作品の著作権保護を拒否したと、米Reutersが6日、委員会の文書を添えて報じた。対象となったのは、昨年9月にファインアートコンテストで優勝したアーティストのジェイソン・M・アレン氏による作品『Theatre D’opera Spatial』だ」。

——これからAIによる作品の学習、AI作品の著作権保護という両面からの権利問題が次々と生じるだろう。それがどう収束していくか。各国でも事情が異なるので追うのが大変だ。

検索でのグーグル優位は「公正な競争の結果」なのか? まもなく始まる裁判の重要な論点
「原告側の州司法長官らは、グーグルは一般的なオンライン検索で違法に90%のシェアを確立しており、それによって健全な競争があった場合と比較して消費者が不利益を被っていると主張している」。

——近年、米政府がビッグテック相手にいくつかの独禁法違反を問う訴訟を起こしているが、確実な勝訴はMicrosoftのIEをめぐる事案以降生じていないようだ。今回のケースは、IE以上の独占度を示す王国への切り込みとなる。どんな結果になるか。その間に、ジェネレーティブAIの台頭なども影響を及ぼしそうだ。

Ten major trends in news consumption publishers need to be thinking about
英Reuters InstituteのシニアリサーチアソシエイトであるNic Newman氏、講演でメディアが知るべき最新のトレンドを10に整理して説明。
1) ニュースソースとしてのTVと印刷物の役割は激減中、2) シニア層は依然TVを好み、若年層はSNSを好む、3) ニュースソースとしてのFacebookの地位は、ショート動画に取って代わられつつある…などだ。
Briefing: China’s Tencent Debuts AI Model for ChatGPT-Like Apps
【有料購読者向け記事】:
WeChatを運用する中国Tencent、ChatGPTを意識したジェネレーティブAIベースの新製品「Hunyuan」を発表。同社をはじめAlibaba、Baidu、ByteDanceが先陣争い中だが、もちろん最大の不確定要因は当局の壁だ。どうやらその制約を超えたらしい。
Publish 21 Issues to Enter the Top 5% of Newsletter Creators
ニューズレターの「Reletter」、ニューズレター配信サービスのSubstackとLinkedInを調査。この2サービスで、なんと170万ものニューズレターが存在。だが、過去1か月半で更新を行っているのは、その12%に過ぎず、2号を配信したのは35%。5号までは17%、10号は11%にすぎない。
スナップチャット、「無料SNS+広告」の次示すか - 日本経済新聞
【ご紹介】:
日経MJ紙への連載寄稿が日経電子版に掲載されました。よろしければどうぞ。➡ スナップチャット、「無料SNS+広告」の次示すか

Disruption This Week—–1/9/2023

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2023年8月28日から2023年9月1日まで。

出版状況クロニクル184(2023年8月1日~8月31日) - 出版・読書メモランダム
「上半期電子出版市場は2542億円、同8.3%増だが、電子書籍、電子雑誌は前年に続いていずれもマイナスで、やはり電子出版市場自体がコミック次第ということになる。
電子コミックは各ストアの販売施策、オリジナル作品の強化、縦スクロールコミックの伸長などによって成長が続いているとされる」。

——先ほど投稿したメディアドゥ幹部の論説と連関するファクト。電子書籍市場にイノベーションが起きていないという問題。

JEPA|日本電子出版協会  紙雑誌と電子コミックの現在が示す出版の未来
「ここからが本題です。電子コミックはなぜこんなに売上が伸びたのでしょう? 紙のコミックが電子に置き替わったというだけでは、市場全体が1.53倍になったことの説明がつきません。
…しかし私は、電子コミックの流通におけるビジネスモデルの革新が大きな理由のひとつだと考えています。合本によるまとめ買い、分冊による話売り、読み放題のサブスクリプションモデル、待てば無料などの連載、大胆な無料施策と価格政策、極めつけは縦スクロールという新しい形式です」。

——メディアドゥ取締役副社長 COOの新名 新氏の論。刺激的な内容。

Meta Removes Over 7,500 Facebook Accounts Linked To Chinese Influence Campaign
Metaは、米英・台湾などを標的とする中国政権の主張に沿った影響力キャンペーンに従事した「Spamouflage」と呼ばれるネットワークに属する7,704のFacebookアカウント、954のFacebookページ、15のFacebookグループ、15のInstagramアカウントを削除したことを発表。もちろん、過去最大級のネットワークと見られる。
東大発AIベンチャー、最大級の日本語LLM公開 metaの「Llama 2」を日本語化
「Llama 2の中では最も小さい70億パラメータのモデルを使用したが、性能評価では1750億パラメータを持つ『GPT-3.5 (text-davinci-003)』に匹敵するスコアを叩き出した。『日本語の公開モデルの中では最高水準の性能』」。

——日本語に特化したLLMが(複数)誕生するのは嬉しい。Llamaがベースになっているというのだから、Metaさまさまだ。ELYZAの公開(提供)方法については取りざたされた経緯がある。どのようなビジネスモデルとなっていくのだろうか。

The Washington Post lays off staff from tech arm | Semafor
米Washington Post、かつて同社の虎の子ともてはやされてきた出版システム「arcXP」など技術部門を密かに解体、主要メンバーを解雇していたと、米Semaforがスクープ。昨年、同システムをめぐっては売却案が取りざたされたがそれを同社は却下し、レイオフに踏み切ったわけだ。
メディア環境18年の変化「メディア定点調査」を一般公開|ニュースリリース|博報堂DYメディアパートナーズ
「今回の一般公開にともない、過去18年分の回答値を全体・性別・年代別に一覧できる数表(集計データ)と、時系列グラフを自動で簡単に作成できるプログラムを提供する。数表とプログラムは、同研究所のウェブサイトから、自由にダウンロードが可能」。

——ありがたい試み。ちょうど、総務省「情報通信白書」の過去からのデータ(転記してきた)をアップデートしようとしていたところ。このデータで代替できるわけではないが、この種のデータサービスが充実すると、メディアをめぐる論点が多様化する効果も期待できる。

フェイクニュースにだまされないための「予防接種」とは
「(ウィリアム・)マグワイアは、兵士たちを軽めのプロパガンダに晒すことで、捕虜になった際に受ける洗脳に打ち勝てるのではないか、という仮説を立てた。この仮説は、軍が戦闘の訓練を実施するのと同じように、兵士たちに思想に対する攻撃を事前に経験してもらうことで、洗脳に対する準備ができるだろうというものだ」。

——一般にいう「ワクチン」では、弱毒性もしくは無毒化した病原体を体内に入れることで免疫力を高めるが、ニセ情報に対しては「心理的ワクチン」が考えられるのではないか。これが「プレバンキング」(事前暴露)という手法だ。
ロシアによるウクライナ侵攻に際しても、米英は、しきりにロシアによる行動に先んじて牽制する行為を行っている。

The Markup Wins ONA Award in Technology Reporting – The Markup
ONA(Online News Association)、米テック系調査報道メディア「The Markup」に「2023 テクノロジー報道部門優秀賞(中小ニュースルーム部門)」を授与。対象は「Still Loading」。大手プロバイダーが米国内の低所得地域で差別的なサービス品質であると立証したもの。
音楽アプリ、Amazon首位陥落 課金誘導で利用者離反 - 日本経済新聞
【有料購読者向け記事】:
「音楽配信アプリの国内の勢力図が変わりつつある。アマゾンミュージックは、2022年11月に実施した有料会員向けの仕様変更が利用者の不興を買い、利用者数で首位から陥落した。代わってユーチューブミュージックがトップを奪い、スポティファイも勢いをみせる」。

——Amazonの仕様変更は、端的に収益増を狙ったもので、その観点から失敗だったと断定はできないが、利用者の期待値からこれだけずれたことを行える感覚はすごい。FTCが告発するプライム解約を困難にするダークパターン問題も含めて、寒々しい経営感覚が見えてくる。

How the EU Digital Services Act affects Facebook, Google and others
EU域内で8月25日より施行された「Digital Services Act(デジタル・サービス法:DSA)」。Facebook、X、Google、TikTokを含む40以上のオンライン大手が対象となる。この大きな動きを5つのポイントから概説する記事。

Disruption This Week—–18/8/2023

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2023年8月9日から2023年8月18日まで。

後藤達也さん「ニュースはすし屋のネタ」最強インフルエンサーの法則:朝日新聞デジタル
【有料購読者向け記事】:
「反応が見えることは、やはり大事なんですよ。新聞記事をつくるときって、読者の存在はゼロじゃないけど、意識は取材先や上司に向きがち。取材先とはじかに接するし、社内調整もこなさないと記事が出せないから。一方で読者は何百万人いても直接は話せない。目にも見えにくいから、うっかりするとないがしろになる」。

——後藤氏が言われていることはいちいちもっともだが、それより聞き手が真剣であることが伝わってくる。変わることへの希求がそこにはあるのではないか。

How short-form video is helping The Economist gain young users - WAN-IFRA
厳格なペイウォール制を敷く英老舗経済メディアのEconomist、TikTokなど短尺動画を運用するSNSに積極的に関与。同社コンテンツを「消化しやすく、魅力的で、風変わりで、興味深いフォーマットに変え、ペイウォールの向こう側にあるものを視聴者に見せる」とし、若者にリーチしている。同社の620万人のインスタグラム・フォロワーの3分の2は18歳から34歳である。
'New York Times' considers legal action against OpenAI as copyright tensions swirl
「米New York Times、OpenAIに対して法的措置を検討か」との記事。数週間前から、OpenAIとNYT間でライセンス契約の締結をめぐる緊迫した交渉が続けられてきたが、これがあまりに紛糾したため、同紙は法的措置を検討する段階となったと記事は指摘する。
ダイヤモンドオンライン「独自スクープのつくり方」有料会員3万超え:朝日新聞デジタル
【有料購読者向け記事】:
「広告と編集のファイアウォール(報道のための編集記事と企業からお金をもらって書く広告記事を分ける姿勢)は厳密に守りつつ、例えば、データ分析やユーザーエクスペリエンス(ユーザーが得られる体験)の向上につながるテクノロジーの部分については、ビジネスと編集部門とが協業して、読者に伝わりやすい最適な形で届ける努力は重ねていく必要がある。それができない限り、メディア企業の持続可能性はなくなるんじゃないかと感じます」。

——至言。ダイヤモンド・オンラインはここまでは十分に出来ているということだろう。「オーディエンス開発部」を独自の組織として持っているのはその流れからだろう。次は、デジタル基盤の完全な刷新だろう。それは道半ばだと見ている。

Streamflation Is Here and Media Companies Are Betting You’ll Pay Up
【有料購読者向け記事】:
映像ストリーミング各社の戦略について詳細なリポート。タイトルが端的なので紹介する。さすがのWall Street Journalの記事だ。
「“ストリーミングフレーション”の到来とメディア各社の賭け——ディズニーなどによる価格引き上げは、損失を削減し、より有利な広告付きプランにユーザーを誘導する努力の一環である」
Telegraph Media Group hits one million subscriptions
英Telegraph Media Group(TMG)、2023年内としていた有料購読者100万人を突破と発表。同社はその70%が電子版とする。英国での100万人突破は、The Guardian(21年)およびFinancial Times(22年)に次ぎ3番目だという。
Associated Press cements the AI era with newsroom guidance - Poynter
OpenAIと提携したAP通信、ジェネレーティブAI利用を念頭に「APスタイルブック」を改訂。同社幹部は「私たちが利用できるツールではあるが、ジャーナリズムの賢明さ、経験、専門知、そして読者とつながる仕事をする能力に取って代わるものではないと強調したい」と述べる。
Linear TV Falls Below 50 Percent of Viewing for First Time
「米リニアTV、初めて視聴の50%を下回る」。
Nielsenのプラットフォーム別視聴の月間調査によると、7月の「TV視聴」は前月比増だったものの、増分はストリーミングおよびゲーム、光学ディスクの再生などで占められた。調査が始まって2年間で初めての現象。
Can ChatGPT become a content moderator?  | Semafor
OpenAIの「安全(対策)システム」担当責任者Lilian Weng氏が、米Semaforの取材に応え、同社ではコンテンツのモデレーション(監視)をGPT-4自体が行っているとした。従来、これは発展途上国などで動員された低賃金労働者が担う「危険でトラウマ」を生みかねない作業だった。
人間が作成したポリシーに沿ってGPT-4が、実際の監視を行うプロセスにも記事は言及しているので、要参照だ。
LINE、日本語の大規模言語モデル公開 オープンソースで 商用利用もOK
「LINEは8月14日、日本語に特化した大規模言語モデル(LLM)『japanese-large-lm』を発表した。オープンソース(OSS)として公開し、商用利用も可能(Apache License 2.0)としている」。

——待たれていたLINEによる日本LLMのOSSでの供与開始。日本語対象で36億パラメータはそれなりに大きい。記事では、「最終学習は約650GBのコーパスで実施」とあるが、どのように素材を集めたのかに関心がある。

Bundled: Inside The New York Times’ revenue growth strategy
米New York Times CEOのMeredith Kopit Levien氏は、先日の第2四半期投資家向け説明で、「バンドル」という用語を15回も使ったという。同社の単体製品をバラ売りではなく、「全部入り」で販売することが同社の好調な業績の原動力だと示唆する。その戦略を子細に分析した記事。
The case for and against open-source large language models for use in newsrooms
「メディアはオープンソースLLM(大規模言語モデル)を採用すべきなのか?」
ChatGPTやBardは私的・商用目的のLLM。対するMetaのLlama 2はオープンソースで、“無料”が原則でカスタマイズが可能。となれば後者を選択すべきか? その課題を論じた記事。
ニュース対価支払い法制化「非常に成功」 元オーストラリア政府高官:朝日新聞デジタル
【有料購読者向け記事】:
「(豪州で成立した大手ITとメディア企業の取引ルール化の結果)各メディア企業への聞き取りによれば、これらの取引による収入の総額は、年間2億豪ドル(約190億円)をはるかに超えています。ジャーナリストの雇用も大幅に増えました」。

——記事中でも触れられているが、「大手メディア」との交渉に選別されることが、各種の副作用を生むのではないかという視点は、いまも払しょくされていないと思う。この問題は、「公益性」にかなうメディアに公金を充当しようという、将来あり得る政治的施策にも影響を及ぼすかもしれない。

2013年、良質なニュース記事をマイクロペイメント(記事単位の小額課金)で提供するコンセプトにオランダで創業したBlendle、その利用ベースの小ささを理由に小額課金事業を独・米両国でのサービスを終了。定額読み放題サービスへと舵を切る。途中、身売りも経た上だが、10年間よく頑張った。
生成AIによるフェイクコンテンツとの戦いは、ウォーターマークが導入されても終わらない
「現時点ではウォーターマークについて統一された基準はなく、それぞれの企業が異なったものを使っている。例えばDALL•E(ダリー)は目に見えるウォーターマークを画像に載せているが、Googleで検索すれば、それを消す方法もすぐに見つけられる」。

——ウォーターマーク(電子透かし)といった対策を付与することを業界側は、米政府に約束…が話題になっているが、記事はいまのところ堅固な電子透かし技術は存在していないと、専門家らのコメントを紹介する。