Disruption This Week—–14/11/2020

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2020年11月9日から2020年11月13日まで。

 

 

メディアへの忠誠度(ロイヤルティ)の高い読者を見いだすことは、メディアへの読者による対価支払いに結びつく。よく語られることだが、ではそのロイヤルティはどう測るのかを掘り下げる論。習慣を形成し、それを維持する行為に結びつくことだとする。難しいが、一考に値する議論が提示されている。

 

 

「Facebook(およびその子会社Instagram)とGoogleは一緒に今年、英国のデジタル広告に費やされた推定150億ポンドの80%近くを獲得することになる」。

——英Press Gazetteによる、英国オンラインメディアの現況分析。著名オンラインメディア(ネット専業メディア)のパンデミック後が見えてくるが、もう一つの焦点として、英国内の広告市場でも複占が顕著だということだ。

 

 

「ブラウザがWebページをどのようにレンダリングしているか、図を用いてやさしく解説した記事を紹介します。
レンダリングの仕組みを理解することで、HTMLやCSSやJavaScriptなど実装時にも気をつける点があります」。——モダンなWebブラウザが、CSSを解析してWebページを表示するまでを、順序立てて分かりやすく解説した記事。JavaScriptがどのようなタイミングで実行されるのかなどを理解できる。(ちょっと勉強になる)

 

 

【有料購読者向け記事】:
Disney+など同社のストリーミング戦略を担い、今年TikTok USのCEOに就任。米中紛争のあおりを受けて、今はWarner Music Groupでデジタル音楽市場の戦略をリードするKevin Mayer氏。現代の音楽市場におけるSpotifyらストリーミングと、TikTokなどSNSの影響力の重要性を指摘する。オーディエンスからどうフィードバックを受けるかとの問いに、それは「データ」の分析が担うとの回答は、なるほどと思わせる。

「消費者のニュースへの注目は高まっているが、広告費はそれに伴っていない。その状況を打開すべくIABが調査したところ、ニュース内の広告はブランドの信頼性や評価を高め、購買意向に寄与することが明らかに」。

——「ニュース」と言っても、分野は広い。ただ、新型コロナウイルス禍をめぐる広告収入の下落局面では、ニュース(報道)は、ビューも伸ばしたし、ケースによるが広告単価をあまり落とさずに推移した事例は確かにある。

 

 

「複数の専門家と話をすると、いくつかの提案が返ってきた。まず、その人を排除しないこと。問題にはできるだけ素早く対応すること。しかも、相手に共感する姿勢を示しながら。
パンデミックに不安を抱く人は大勢いる。陰謀論は、とてつもなく複雑に見える問題に簡潔な答えを提供する。そうすることで、相手に満足感を与える」。——どこからが、虚構の世界なのか明確な線引きをすることが難しいことがら(やその理解)がある。記事にあるようにできるだけ素速く、コミュニケーションという架け橋を試みていくしかない。それを避けるわけにはいかない。これは、政治や宗教的な世界観の話題であると同時に、家族内の物語でもあるのだから。

 

 

「Quartzは再び独立したメディア企業になりつつあります。過去2年間、私たちは東京に拠点を置く株式公開会社Uzabaseに所有されていました。それはデジタルメディアの大きな変化の時代をナビゲートするのに役立ちましたが、今はスタートアップとして、自分たちの道を自由に切り開くことができています。私自身がQuartzを買収し、非公開化することに合意しました」。

——UzabaseからQuartzをMBOした、CEOのZach Seward氏の読者に宛てたレターから。

 

 

【有料購読者向け記事】:
「同社はパンデミックが始まる数カ月の時点で、すでにサブスク戦略で新規獲得よりもリテンション重視へとシフトさせていた。だがコロナ禍で購読者が急増したことに伴い、この読者を維持するという『より一層の必要性』に迫られたという」。——終了したIMD2020のあるセッションでも語られていたが、サブスクを指向するには、このリテンション率を上げる、いい換えればチャーン率(退会率)をどう下げられるかというポイントがある。早くから取り組んでいたEconomistが新型コロナウイルス禍に対して持ちこたえられた経緯を解説する記事。

 

 

FacebookやTwitterは、新型コロナウイルスをめぐる風評や、大統領選をめぐる真偽不明情報の流布を抑止するために、「シェア」(やRT)ボタンの機能に変更を加えている。MITのDavid Rand教授の調査研究では、シェアする前に立ち止まって考えれば、偽情報を流布することが減るというわけだ。

タイムラインアルゴリズムからの脱却とパーソナルメディアの未来(前編)【ゲスト寄稿】

BRIDGE(ブリッジ)|「起業家と投資家を繋ぐ」テクノロジー&スタートアップ関連の話題をお届けするブログメディア

 

 

「誰もがメールアドレスを収集でき、読者と直接繋がれるニュースレターサービスの Substack が生まれています。タイムライン上でのコンテンツマッチングアルゴリズムに依存せず、自分だけのファンや読者を集め、独自のコミュニティを構築していけるサービスが次々に成長しています」。

——自分も注目する“ニューズレター”のトレンドについて、「theLetter」を展開する濱本至氏が論考。その前編。さまざまな事例が紹介されている。

 

 

【ご紹介】:
月一連載が日経電子版に掲載されました。よろしければご一読を。➡ ウェブ会議「疲れ」どう解消? 適度なムダ、織り込む余裕を

Disruption This Week—–04/10/2019

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2019年9月30日から2019年10月4日まで。

「我々はレッドボックス(Red Box: ニュースUKのサブスクタイトル、タイムズ・オブ・ロンドンが発行する政治分野のニュースレター)に着目し、オーディエンスがメールに何を求めているかを観察した。オーディエンスはプラットフォーム外の配信のように、あちこちに飛ばされるのを嫌がることが判明した」。

——リテンション(購読者の維持)問題に悩む英国の無料(登録のみ)のゲームサイトが採った施策について解説した記事。本格的な有料サイトではなく、無料だがメンバー制を徒労としている、わが国の多くのサイトに参考になりそう。

「ビッグデータ分析からデザイン、アプリ開発など市場で引っ張りだこの『デジタル人材』は、20〜40代の働き手に占める割合が1割程度と希少な上に、『非デジタル人材』に比べて1年以内の転職意向が3倍以上と格段に高いことが、NTTデータ経営研究所の調べで分かった」。

——いろいろと示唆に富む記事。「求めているのは『尊敬できる上司』と『能力高い人の昇進』、『頻繁なフィードバック』」という箇所にも要注意だ。

米サイバーセキュリティ調査機関のInsikt Group、企業クライアントを偽装して、高度なサイバー犯罪のノウハウを積んだロシアの犯罪組織に対し、当該企業のポジ・ネガ双方の偽情報キャンペーンを数千ドル程度で発注できることを実証。
高度なサイバー犯罪が、民間でも容易に利用できるレベルへと“民主化”された産業になろうとしている。
英Financial Timesのプリントおよびデジタル編集の現場幹部に、2020年代のジャーナリスト足る要件を聞いた記事。データを読み解きそこにストーリーを見出す能力が重要と述べる。また、単に良い記事が書けるだけでなく、映像なども扱えるマルチスキルにも着目。
「かつて人文書取次の鈴木書店の店売には、人文会会員社の書籍が揃って常備として置かれていた光景を思い出す。それももはや20年前のものになってしまった。
まさに人文会の『オリジナルメンバー』に他ならない未来社の退会も、人文会の設立、鈴木書店の倒産と同様に、出版業界の変容を象徴しているのだろう」。

——人文系書籍のラインナップが、自分の世界を広げてくれそうな、近くて遠い山脈のような魅力を発していたことが思い起こされる。

Webサイトの表示速度(パフォーマンス)が果たす、ユーザー満足(リテンション)効果を改めてデータなどと合わせて説く記事。英BBCの調査では、表示が1秒遅くなるほど、10%ずつユーザーを失うのだという。
「記録が残っているもっとも古い2007年度ではインターネット総売上は3兆8800億円。インターネット経由による出版物の販売額は932億円。これが直近の2018年度ではそれぞれ8兆1800億円・2094億円にまで成長している。直近の2018年度の額は、それぞれ2007年度分からはおおよそ2.1倍・2.2倍の成長」。

——ネット上での総売上の伸びと、ネット経由での出版物の売上の伸び。概ね連動しているというある意味で当たり前。ある意味で健全な事実(?)

「GoogleとAlphabet傘下のJigsawは、俳優28人が登場する3000本の改変動画からなるデータセットを、顔操作検出の新たな自動ベンチマークである『FaceForensics Benchmark』に提供した」。

——良い試み。この種のサンプルや、良質な教師データを手に入れることが、最もカネがかかり、手間のかかるところ。同社グループが投入している費用は、得ている収入からすれば、微々たるものだ。

NPOの米Global Disinformation Index、偽情報サイト約2,000が稼ぐ年間収入は、約2億4,000万ドルと公開。PolitiFactらファクトチェッカーがサイトを判定。収入の多くはアドテク広告に依拠。4割はGoogle AdSenseからで、9,000万ドルに近い。
多くの(海外)メディアの間で、購読制(サブスクリプション)が進んでいない理由は? 課題は、「読者を購読に転換すること」、「支払いたくなる商品の開発」など。一方で、会社がその課題に投入しているリソースは、購読制への意向とは逆にお寒い状況とのDigidayの調査結果。
【ご紹介】:
月いち連載の日経MJコラムが、日経電子版で公開されました。よろしければどうぞ。➡ フィットネスクラブ、機器販売×番組サブスクで稼ぐ
【ご紹介・全文閲読には要購読】:
米TechCrunchが、US版SmartNewsのアプローチについて取材しました。日米の読者環境の違いは、政治的立場の極端な二極化。これに異を唱えるSmartNewsの取り組みに着目します。

Disruption This Week—–26/4/2019

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2019年4月22日から2019年4月26日まで。

長くQualcommに在籍し、3年前にSnap(Snapchat運営企業)に移籍、AR(拡張現実)プロダクトを所管してきたEitan Pilipski氏への興味深いインタビュー記事。“カメラ・カンパニー”Snapは、カメラ機能をテコに、ユーザー間のコミュニケーションの推し進める。“ARはテクノロジーではなく体験だ。自己表現とコミュニケーションの拡大だ”と、同社のAR哲学を語る。
英BBC、10年以上の歴史をもつ同社のストリミーングサービス「iPlayer」が、国内でNetflixに市場を奪われつつあることを認めた。2014年には40%あったシェアがいまでは15%に落ち込んだ。
理由は、Netflixが国内法で縛られないのに対し、BBCを縛る国内法では、地上波で放映したコンテンツを、タイムリーにiPlayerに表示させないことだと、BBC会長らは公然と不満を示す。
「新たなガイドラインでは、『ユーザーの真の興味・関心に基づき、有益なコンテンツをプレミアムなパブリッシャーサイト上で提供する』というアウトブレインの方針に基づき、これまでのコンテンツ審査基準を一層強化するものです」。

——先日のヤフーの広告審査基準強化の発表ともつながわる話題。幅の広いテーマだが、広告ビジネスの中核的課題としてアプローチが求められている。

「手がけたのはフランス企業「ショート・エディション」で、サスペンスからSFロマンス、子供向け小説まで幅広いジャンルを揃える。これまでフランスや香港、アメリカで1900万部以上のレシート型の短編小説を届けてきたが、イギリスでは初めての導入となる」。

——すごく面白い発想。もちろん、「自販機」ながら、お金を取っているわけでないという。

人気Podcast番組内「Note To Self」を運営者Manoush Zomorodi氏、誕生したばかりのサブスクリプション型アプリ「Luminaly」へと移行を決める。
有料(購読)型Podcastの現状や今後の可能性について、インタビューで答える。Podcastが置かれた場所が、広告でも購読でもまだ継続性が確かめられていないとの認識を示す。
2018年は米国内における、慈善投資によるジャーナリズム再興の年といわれる。だが、NYのような大都市部では成立する巨額な拠出は、ローカルジャーナリズムでは望むべくもない。Seattle TimesとSeattle基金の提携が切り拓いたのは、調査報道を支持する小額拠出の規模化だった。
Seattle基金は、自らのファンド資金を直接投入することなく、Seattle Timesのめざす50万ドル以上の寄付金を実現することができたのだ。
米Princeton大の学識らによる2016年大統領選をめぐる疑義言説流布の研究(本年1月に公開)で、65歳以上の人々が他の階層に比し7倍もの拡散パワーを発揮したという。
別の調査では同年齢以上の米国民の4割がFacebookを使っており、その半分はニュースフィードを理解していない。
簡単な理解としては、広く数多くの人々が疑義言説の流通に寄与したというよりは、特定階層により偏った行動だったというべきとの論。
「たしかに雑誌のコンテンツは読めます。新聞のコンテンツも読めます。でも、購読エクスペリエンスは最悪。言っておきますが、かなり長いことApple Newsのファンを続けているボクにここまで言わせるくらい最悪なんです」。

——記事中にもあるように、Appleは「Apple Music」の初期の利用者に大打撃を与えた。iTunesで購入済みの楽曲との統合がうまくいかず、行方不明のお気に入りの楽曲が無数に生じた(いまでも復活できずにいる)。過渡期はそんなものだというべきか。あるいは、根本的にユーザーを軽んじているのか。

「現代において、ネット上を席巻している4コマ漫画は、縦2コマ、横2コマ(2×2)という形式だ。この形式は、Instagramやredditの台頭など、さまざまな要素が合わさった末に主流となった」。

——現代のメディアとそのエコシステムのありようについて、重要なポイントを多面的に指摘してくれる論。

【ご紹介】:
私やスマートニュースも協力するNPO法人「ファクトチェック・イニシアティブ」が、疑義言説の検証をともに推進していくパートナーを募集しています。パートナーには、ノウハウやAIを用いた疑義言説の収集システムなども提供します。

Disruption This Week—–1/2/2019

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2019年1月28日から2月1日まで。

Disruption This Week—–10/12/2018

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2018年10月8日から12日まで。