Disruption This Week—–25/8/2023

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2023年8月21日から2023年8月25日まで。

生成AIによる「“新”証言」で物議 日赤、関東大震災100年企画の一部展示を取りやめ
「しかし企画内容が報じられると、SNSを中心に『証言を生成はない』『AIねつ造』『冒涜では?』など批判的な声が多く上がった。中には『数年後には史実として語られてそう』と心配する声もあった」。

——興味深い騒動だが、結局のところ、新たに創造したのだから「証言」という文言を使うのはウソだろう、ということのようだ。個人的には見てみたい展示。中止せずともキャッチコピーを変更すればいいのではないか。

Writer making six figures on Substack says 'I won't write for free anymore'
「もうタダでは書かない」——。英国で1,000名超の有料購読者を擁するニューズレター(=Substack)ライターへの取材記事。英国では現在、「数十人」のライターがSubstackで6桁以上の収入を得ているという。取材されたEmma Gannon氏はInsta、Xは購読者源としては最下位とする。
【下山進=2050年のメディア第6回】週刊「ダイヤモンド」女性編集長が経験する初めての右肩あがり | AERA dot. (アエラドット)
「(新編集長の浅島亮子氏は)デジタル有料化を社の政策とすることができず、NewsPicksに、編集部の中核メンバー三人を奪われたときには、『うちが「変われないオールドメディア」の烙印を押されたも同然』と愕然とした」。

——なんというかこの辺りのくだりは、“下山進節”的だ。自分はこの箇所を読んでいて、いよいよレガシーメディアと新興メディアの双方向でのヒトの往き来が生まれてくるのだと感慨を持った。悪いことばかりではない。

ユーチューブとUMG、AI対価支払いの仕組み開発へ
【有料購読者向け記事】:
「米アルファベット傘下のユーチューブは、生成人工知能(AI)ツールがアーティストの作品を使用した際にそのアーティストが対価を受け取る仕組みの開発に向け、音楽世界最大手ユニバーサル・ミュージック・グループ(UMG)と手を組む」。

——水面下でAI大手とライツマネジメント側との協議が始まっているとの報道は、すでに紹介している。いよいよ浮上してきたようだ。本件は楽曲および関連する映像のAI利用に関するもの。アーティスト自身が直接関わるのではなく、レーベルなど中間業者がとりまとめる動きで、レガシーモデルだ。大きなカネが動きそう。

メタ、音声翻訳AIモデルを発表 数十言語に対応
「米メタ・プラットフォームズは22日、数十カ国語の音声を翻訳・文字化できるAIモデル『SeamlessM4T』を発表した。ブログで明らかにした。
このモデルは約100言語の文字・音声に対応し、35言語では完全な音声対音声翻訳も可能という。
メタはこのモデルを非商用利用向けに一般公開する方針」。

——ジェネレーティブAI版多国語翻訳機が現実のものに。デバイスも含めて同種機能はすでに存在しているが、精度が重要。また、メタはどのようなビジネス化をめざすのかにも関心がある。

Who’s hiring in Subscription Publishing
米英で購読戦略を推進する著名メディアの求人一覧。New York Times、The Economist、The Atlantic、The Information、Dow Jonesなど各社が求める人材スペックが見えてくる。この記事からより詳細な応募ページへの遷移もできる。
個人情報保護委「生成AI利用に注意」 事業者・行政機関向けにポイント解説
「サービス組み込み用の生成AIを提供する事業者などは、利用者が入力した情報を学習に使う場合もある。サービスの実装方法や規約によってはこれが個人情報保護法に触れる可能性があるため、確認するよう注意喚起したものとみられる」。

——いまも、そして今後も、ジェネレーティブAIをAPI経由で自社サービスに接続していくケースが増える。ユーザーもだが、その種のサードパーティ事業者も注意することが増える。

‘Don’t Put Your Head in the Sand’: Stars Are Quietly Inking Deals to License Their AI Doubles
【有料購読者向け記事】:
フォトグラメトリ(複数の2D画像から3D画像を生成する)技術を使い、ハリウッドスターたちが作品ごとに自身の人工的な複製(デジタルツイン)を許諾していることに気づいた人物が、スターのデジタルツインの永続的な権利販売ビジネスを見いだしたという経緯を詳細に追ったストーリー。
もちろん、それがジェネレーティブAI時代の新たな産業を生み出すことになるのだろう。
33歳のNewsPicks編集長「新しい発明を探索」動画で新境地:朝日新聞デジタル
【有料購読者向け記事】:
「ユーザーとして必然だと思いませんか。スマホや5G(高速通信)で環境は整っています。情報感度の高いビジネスパーソンでも、『効率が良いのでテキストで』という人は一部だと思っています。僕自身、昔よりも集中しないと、テキストを読もうとはなりません」。

——“知ったかぶり”のような口の利き方はしたくないが、この一連のシリーズで語られていることは、ある意味で(ネット)メディアでの“常識”。それを朝日新聞が熱心に咀嚼している構図が興味深いと思っている。

「生成AIは著作権保護の検討が不十分」新聞協会など声明 「著作権法30条の4は大きな課題」
「学習利用の価値が著作権者に還元されないまま大量のコンテンツが生成されることで、創作機会が失われ、経済的にも著作活動が困難になる」「海賊版をはじめとする違法コンテンツを利用した、非倫理的なAIの開発・生成が行われる」「元の作品への依拠性・類似性が高い著作権侵害コンテンツが生成・拡散される」

——今後は、国内でのジェネレーティブAIをめぐる騒動は、著作権法第30条の4をめぐっていきそうだ。さて、法改正論議のテンポを世界が待ってくれるのだろうか?

Disruption This Week—–16/6/2023

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2023年6月12日から2023年6月16日まで。

【インド太平洋地域のディスインフォメーション研究シリーズ Vol.5】韓国のフェイクニュース対策(上):日本とは様相が異なる韓国の現状 | 記事一覧 | 国際情報ネットワークIINA 笹川平和財団
「韓国におけるフェイクニュースを用いたネット世論操作は、韓国の政府機関によって以前から行われてきたことが指摘されている。例えば、2012年の朴槿恵元大統領を選出する選挙で、彼女の勝利に貢献するために、偽草の根運動(astroturfing)を国家情報院が主導して行ったとされている」。

——上中下の大変な労作。お隣の国でどのようなニセ情報環境が生じているのかを詳細に点検している。まず、気になったのは引用箇所。昨今、日本でも政府主導の“ニセ情報対策”の動きが活発だが、それに全面的にアラインすることのリスクは自覚すべきだろう。

How AI tools already contribute to daily news: Insights from Semafor, BBC and others | What’s New in Publishing | Digital Publishing News
ジェネレーティブAIは、報道メディアの現場でどのような使われ方をしているか。英BBC、米Semafor、同じくWashington Post、Bloombergなどでの利用法を紹介する貴重な解説記事。
EU欧州議会がAI規制案採択 文章など「生成」明示求める
「欧州連合(EU)欧州議会は6月14日、本会議を開き、対話型人工知能(AI)『ChatGPT』など生成AIを含む包括的なAI規制案を賛成多数で採択した」。

——素早い動き、とは言え、年内いっぱいに成案を得るというのがスケジュール。施行は翌年以降だ。その間に、開発社側がどのような自己規制を打ち出すのか。

Young people are abandoning news sites: New research reveals scale of challenge to media | What’s New in Publishing | Digital Publishing News
“若者のニュース離れ”現象。Reuters Institute「Digital News Report2023」によれば、英国市場では、35歳以上は、直接の好みが時代とともにほとんど変化していないが、18~24歳は、ニュースサイトやアプリの利用率が著しく低くなっていることがわかると指摘する記事。
Worldwide, online news is looking a lot more like TikTok and a lot less like “shared articles”
英Reuters Institute、2023年版Digital News Reportを公開。毎年注目している「ニュース忌避」について、より具体的なケースを調査。たとえば、「ニュースが流れたらラジオを消す、SNSではスクロールしてニュースを読み飛ばす」などの習慣化が忌避者の半数以上(53%)と判明した。
A Reckoning Arrives for Creator Economy Startups
【有料購読者向け記事】:
大手SNSがクリエイター獲得合戦を演じ、数百の新興企業がクリエイター向けツールやサービスを提供する“クリエイターエコノミー”ともてはやされたトレンドに、早くも大きな逆風。米Informationのデータベースによれば、7つの関連新興企業がこの1年強で閉鎖となったという。M&Aの数は相当数に上るはずだ。
【編集長雑記】「ar」編集長:令和の編集長は忙しいけど“楽しい” | ほんのひきだし
「スマホ一つで何でもわかる世界。
“可愛い誌面”を追求していればよかった『ar』編集部の仕事は、ここ数年で大きく変わりました。どんなによいコンテンツを作っても届かなければ意味がなく、雑誌離れと言われて久しい20代を相手に情報を届けるとなれば、“スマホのお作法”を知ることはマストとなりました」。

——昨今のメディアの現場感覚がよく伝わってくる記事。勉強になった。「雑誌のほかにWEBサイトを2つ、SNS4つを運営しており、その合間に本誌から発展させた写真集を作ったり、さらにその宣伝やイベント等もやっています。あえてWEBと雑誌の部署は分けていません」という点、忙しさがよく分かる。「脳内が忙しいのです」なのだ。

May 2023 Layoffs Jump on Tech, Retail, Auto; YTD Hiring Lowest Since 2016 | Challenger, Gray & Christmas, Inc.
米雇用関連コンサル企業のChallenger, Gray & Christmas、5月に米国内でのレイオフが急増したと発表。特にメディア業界は、2023年に入りこれまでに17,436人の削減。過去最高の年初来(YTD)記録を更新した。
JASRAC、世界のデジタル配信サービスのコンテンツや楽曲情報を共有・交換する「GDSDX」
「日本音楽著作権協会(JASRAC)は6月9日、グローバル展開する動画、音楽の配信サービスのコンテンツ情報と、著作権管理団体が管理する楽曲情報を共有、交換するプラットフォーム『GDSDX』を5月31日にリリースしたと発表した」。

——JASRACをめぐってはとかくいろいろ批判的な指摘がされるが、このGDSDXリリースの動きは興味深い。デジタル配信が大前提の市場で、各国での消費を的確に結んでいくことができる仕組みづくりは喫緊の課題だったはず。対抗するシステムは存在していたのだろうか?

焦点:米国で広がるメディアリテラシー教育、若者の必須スキルに
「最初のうち、ヘイジャーさんは、責任はソーシャルメディアの不十分なコンテンツ規制にあると考えていたが、その後『ネット上で目にするレトリック(巧みな弁舌)に対処するツールを生徒たちに与えるべきかもしれない』と考えるようになった」。

——青少年自らが“メディアリテラシー”に取り組む事例を紹介する記事。確かに単に教育関係者、政府が与える啓発がらみの教材の無力を感じることが多い。そもそもが単なる道徳教育であるようなケースが見受けられる。

(パブリックエディターから 新聞と読者のあいだで)ニュース回避、疲れた心に配慮を 藤村厚夫:朝日新聞デジタル
【ご紹介】:
朝日新聞に寄稿したコラムが電子版にも掲載されました。よろしければご一読を。➡ ニュース回避、疲れた心に配慮を 藤村厚夫
生成AI、音楽配信や報道現場に変化の波 - 日本経済新聞
【ご紹介】:
月1回連載の記事が日経電子版に掲載されました。よろしければどうぞ。➡ 生成AI、音楽配信や報道現場に変化の波

Disruption This Week—–10/2/2023

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2023年2月7日から2023年2月10日まで。

AI is eating itself: Bing's AI quotes COVID disinfo sourced from ChatGPT
誤ったAI生成情報をAIベースの検索エンジンが紹介、拡散するという恐れられていた負のフィードバックループが早くも現実味。米TechCrunchが報道。メディアの偽情報検証を行うNewsGuradが実験意図でAI生成させた陰謀論的コンテンツをBingが検索結果としてピックアップした。
アップルとグーグルは「寡占状態」 公取委がアプリ市場の規制提言:朝日新聞デジタル
【有料購読者向け記事】:
「公正取引委員会は9日、スマートフォンの基本ソフト(OS)やスマホ向けアプリ配信市場の実態を調べた報告書を発表した。市場は米IT大手のアップルとグーグルによる寡占状態になっており、『十分な競争が働いていない』と指摘。競合の参入を促すため、新たな法整備を政府に提言した」。

——先日のApple CEOの来日などは、この件のロビーイング活動も含まれていたものと見える。公取、提言までしたが、このあとは、自主規制を待つということだろうか。

The Times Reports 11% Increase in Revenue as Digital Subscriptions Climb
【有料購読者向け記事】:
米New York Times、2022年通期および同第4四半期の業績を開示。通期では、買収したThe Athleticの会員を別にして、有料購読者100万人超獲得、計960万人とした。デジタル購読者数は880万。売上では、前年比11%増を果たした。利益は微増に止まる。
Google Search's guidance about AI-generated content  |  Google Search Central Blog  |  Google Developers
Google、同社の検索エンジン運用ガイドラインで、AI生成によるコンテンツの取り扱いについて同社の方針を解説。同社の過去からの取り組みを振り返りながら、自動生成コンテンツは必ずしもスパムでないと明言。引き続きコンテンツの有用性と品質に注目していくと述べる。
睡眠時間をいくら削っても報われない…全国紙の元政治部記者がユーチューバーに転身した理由 「いい記事を書けばカネになる」は過去の話
「ネット社会は魅力ある個人がインフルエンサーとなってファンに支えられるような場となっているのだ。その中で新聞社が情報を売るためには、個人の発信を重視してファンを作っていく必要があるのではないか……」。

——今度、毎日新聞を辞め“ユーチューバー”業に専念するらしい宮原健太氏の説得力あるオピニオン。情報源を築き、記事を生み出す新聞社記者の価値は減じていないと思うが、それを以下に伝えるかという点では、組織も個人もネット時代の変化に適合すべきという趣旨。

Google now wants to answer your questions without links and with AI. Where does that leave publishers?
MicrosoftがChatGPT搭載の検索エンジンBingを発表したが、プレビューの範囲では既存検索UIとChatGPT版の“両論併記”に見える。一方のGoogleもBard版をプレビューし対抗。事件は、検索からのリンクをライフラインとしてきたメディア業界に累が及ぶことになると指摘する記事。
Googleが築いてきた検索連動型広告は、同社にとり今にいたる巨大な収益源だが、それと同程度にメディアに“検索流入”をもたらしてきた。これらが音を立てて崩れる可能性も見え隠れしてきた。
Microsoft launches the new Bing, with ChatGPT built in
昨日予告したとおり、米MicrosoftがChatGPT搭載の新Bingをプレビュー。CEOのSatya Nadella氏がアナウンスした。一般に提供しているChatGPTの新バージョン、ChatGPT-4という。日本版Bingでも「順番待ち」に登録するとChatGPT版が使えるようになるようだ。
サブスクはもう古い?…世界的な不況が従量課金への移行を促す
「従量課金モデルは、名称通り顧客が使用した量に応じて金額を請求するというものだ。アマゾンウェブサービス(AWS)などのクラウドプラットフォームは、ホスティングサーバーの使用料を分単位で請求している」。

——買い切りのモデルからサブスクモデルへ。そして、今後は従量制、すなわち“使った分だけ”支払うモデルが普及するという。固定両料金のサブスクが高価に感じられるようなタイミングで。さて、普及するのかどうか。

Google details Bard, its ChatGPT rival
Google、大規模言語モデルLaMDAをベースにしたチャットボット「Bard」を限定的ながら外部テストに提供すると発表。もちろん、ChatGPT対抗。Googleは3つのAI関連プロジェクトを社内で推進中だったが、取り巻く状況の急進展で急きょその3つを公表することになったようだとする記事。
ChatGPTを越えてその先へ:企業におけるジェネレーティブAIの未来 | ガートナー
「マーケティングとメディアでは既に、ジェネレーティブAIの影響が及んでいます。ガートナーの予測は次のとおりです。
– 2025年までに、大企業から送信されるマーケティング・メッセージの30%は、合成的に生成されたものになる(2022年の2%未満から増加)。
– 2030年までに、AI生成コンテンツ(テキストから映像ま) が90%を占める大ヒット映画が公開される(2022年の大ヒット映画では0%)」。

——生成型AIが今後生み出す各種産業へのインパクトをガートナーが整理、予測。もちろん並行して消費者への直接的な影響も大きい。

動画配信、ゲーム市場に熱視線(写真=ロイター)
【ご紹介】:
日経MJ紙での連載が日経電子版に掲載されました。よろしければお読み下さい。
2022年、編集部員がハマったコンテンツを振り返る - Media × Tech
【ご紹介】:
Media×Techから新着記事です。やや遅めの振り返り。私もコメントで参加しています。よろしければどうぞ。➡ 2022年、編集部員がハマったコンテンツを振り返る

Disruption This Week—–30/12/2022

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2022年12月26日から2022年12月30日まで。

後藤達也の特別授業at東工大 個人ジャーナリズム・クリエイターのあり方とは
私個人的には、お歳暮もしくはお年玉的価値のあるレクチャー。
Gaming takes over everything
“ゲームこそストリーミングの最大の競合”との認識は新しいものではない。今度は、ハリウッドやストリーミングがゲームを題材に次々と大作。23年には「The Super Mario Bros. Movie」、そしてPlayStation題材の作品などが控えている。もちろん、ゲーム開発をめぐってはサウジアラビアが動き出すなど、ゲームはますますエンタメの中心、カネの集まる場へと向かっているとする記事。
Creator Financing Is Going Mainstream
【有料購読者向け記事】:
大手プラットフォームでは、“クリエイターエコノミー”トレンドに絡んで設立した“基金”から撤退する動きが目立つが、クリエイター向けファイナンススキームづくりに初期から関与してきた投資家が、着実に前進しつつある現況と進む方向を詳細に解説した記事。
The AI spammers are coming
「よくできていて、説得力があり、そしてまったく間違っている」コンテンツスパムが、ChatGPTのようなテクノロジーで大量に算出される。それはSEOのあり方を変える。10年続いたプラットフォームがメディアへ与えた影響力に匹敵する地殻変動が来年以降やってくるとの論説。
「イノベーション促進へ内製化によるデータビジネスの推進を」:毎日新聞社 高添博之 氏 | DIGIDAY[日本版]
「『re:Invent』に弊社からエンジニアを派遣しました。今回は「データビジネス」関連の新サービス・新機能が多く発表されています。AWSが言うように『データアクセスの民主化が企業のイノベーション促進』することを実現するため内製化を進めていきたいと考えています」。

——読者についても、コンテンツについても、老舗メディアの強みはその膨大な“資産”だ。だが、その資産をデータとして活用できなければ、つねに“フロー”としてのビジネスであり続けることを強いられる。資産の活用が手がけられれば、展望が見えてくるはずだ。

The rise of misinformation and how governments are combatting it
「エコーチェンバーからの脱出:各国政府はどう偽情報と闘っているか」。欧州の各国政府関係者向けメディア「Global Government Forum」が政府広報担当者のパネルディスカッションを開催。欧州各国の「偽情報」への対処を議論。基本は、政府と市民間のコミュニケーションをどう増やしていくかが課題ということに。
米サウスカロライナ州Furman大の教授は、ある学生がChatGPTを用いて課題論文を提出したのを発見。課題は“恐怖のパラドクス”を論じることだが、論文は哲学者ヒュームに結びつけ自信満々に誤った引用をしていた。教授はこれがChatGPTの特徴をなすと指摘する。
Googleは敵か味方か 米メディアに「現実主義」の兆し
【有料購読者向け記事】:
「多くの新聞社にとってテック企業は『宿敵』というのが定説だが、ドクター氏(=メディア評論家で、自らも地方メディア「ルックアウト・サンタクルーズ」を立ち上げたケン・ドクター氏)は『グーグルやフェイスブックと競うつもりはない』と言い切る。きめ細かい需要開拓の結果、『地域の潜在顧客とつながる新たな方法のニーズがある』と分かってきたことが大きい」。

——糧道を食われ、窮地の老舗メディア群が法案に支えられてプラットフォームと戦う、もしくは支払交渉に持ち込む……という見慣れた図式から、プラットフォームとの協業関係を引きだす動き。当然ながら望ましい構図だが、プラットフォームの動きが単なるポーズで止まらないようにするためにも、注視を続ける必要がある。

The Atlantic introduces dynamic paywall with varying prices as it hopes to attract 1 million subscribers
米Atlantic、1月より読者の行動から購読料金を変化させる“ダイナミック・ペイウォール”制を開始する。従来は電子および印刷版の組み合わせ、プレミアム版など3種の価格があったが、読者1人当たり収入の増加を目指して動的に価格が変化する新システムを稼働させる。
A New Chat Bot Is a ‘Code Red’ for Google’s Search Business
【有料購読者向け記事】:
新しい種類のチャットボット技術が従来の検索エンジンを再発明、あるいは代替する態勢を整えたことで、Googleは同社の主要な検索ビジネスに対する初めての深刻な脅威に直面している可能性がある。ある幹部は、これが同社の将来を左右すると評する。
検索生み出す収益は同社全体のそれの8割に及ぶという(記事)。そのような強力なビジネスモデルを持てば、この刷新に向かうことは難しくなると、New York Timesの記事は結論として述べている。
AI創造作品、「人工合成メディア」への懸念
【ご紹介】:
日経MJ紙への寄稿が日経電子版に掲載されました。よろしければご覧下さい。➡ AI創造作品、「人工合成メディア」への懸念

NHK、BBCなどと偽情報対策で連携へ【ファクトチェック通信】

FIJ|ファクトチェック・イニシアティブ

NHK、BBCなどと偽情報対策で連携へ【ファクトチェック通信】
【ご紹介】:
FIJ(ファクトチェック・イニシアティブ)が時々のファクトチェックに関連する話題を配信するニューズレター「ファクトチェック通信」にWeb版ができました。ぜひご活用下さい。

Disruption This Week—–16/12/2022

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2022年12月12日から2022年12月16日まで。

An Alternate Reality: How Russia’s State TV Spins the Ukraine War
【有料購読者向け記事】:
米New York Times、ロシア最大の国営メディア企業「全ロシア国立テレビ・ラジオ会社(通称VGTRK)」から流出した膨大なデータからメール通信部分を分析。ウクライナ侵攻開始後のやり取りから、数々の情報工作(キャンペーン)の実態を明らかにした。
ユーチューバー、映像権売却で大金獲得
【有料購読者向け記事】:
「同氏(=ジャスティン・ワトキンス氏)はあるスタートアップ企業からの売り込みに驚いた。それは、同氏が制作した何千もの古い動画から得られる広告収入と引き換えに200万ドル(2億7000万円)以上を受け取らないかというものだった」。

——過去の投稿記事をめぐる権利を売却するような取引がYouTuberにも生じている。もちろん、このトレンドは音楽業界で起きており、ビッグネームが次々と過去の楽曲をめぐる権利を手放している。個人的にはこのスキームをより小型にして汎用化できないものかと考える。もちろん、それもまた今起きているトレンドだ。

Synthetic media forces us to understand how media gets made
「実在の人物がしてもいないことをしているリアルなシーンや、性的な女性の画像、あるいは戦争犯罪の偽画像の氾濫を簡単に偽造できるようにすることは、決して笑えない事態だ」。
“ジェネレーティブAI”が生み出す人工合成メディアの時代に備え、取り組む動きを紹介・論説する記事。
Twitterの「シャドウバン」の実態を暴露するイーロン・マスクお墨付き社内文書「Twitterファイル」第2弾が公開される
「Twitter Japanの公式アカウントが2020年に『Twitterがシャドウバンを行っていると指摘されますが、現在も過去にも行ったこともありません』と述べるなど、Twitterはシャドウバンの実施を否定しています。
そんなシャドウバンの実態を明かす『Twitterファイル』第2弾が、2022年12月9日に公開されました」。

——昨日から紹介しているTwitter社内で行われてきた恣意的な投稿検閲(党派的な偏りから投稿を排除するなどの行為)、“シャドーバン”について、第2弾の報道が米国で行われている。記事はそれを紹介したもの。興味深い事例が含まれている。

Will your paywall kill your website traffic (and ad revenue)? | What’s New in Publishing | Digital Publishing News
従量型ペイウォール(たとえば、月々一定数の記事は無料とし、それ以上を有料とするような運用)を推進する筆者が、設計によってペイウォール化しても読者流入、広告収入などを激減させることはなく、むしろ向上させるケースがあるのだと論説する記事。
Bari Weiss reveals business plan for buzzy new media startup
Elon Musk氏がSubstack買収に関心を持つようになった背景? New York Timesコラムニストを辞め、Substackニューズレターで独立メディアを立ち上げたBari Weiss氏の話題。Musk氏提供の資料でTwitter内部における“影の検閲”体制を暴いたことから知名度急上昇だ。
Who will win digital advertising’s ‘Game of Thrones’?
米Insider Intelligenceアナリストらによる、2023年のデジタル広告市場予測。15年にはGoogleとMetaで8割近くを占めるという複占状況が相当程度崩れる。市場伸長のわずか15.8%を両社が占めるのみに。では成長株は…? チャートを見れば一目瞭然だ。
The traditional story structure gets deconstructed
「ニュースのテクノロジーは大きく変化しているが、今日の記事の基本構成は、例えば1932年のものと大きくは変わっていない」と指摘し、新興メディアのAxiosやSemaforなどについて触れ、今後のChatGPTなどとのインタラクションに可能性を見る論説。短いが刺激的だ。
How ChatGPT could disrupt the business of search
米Axiosが「ChatGPTがどう検索ビジネスをディスラプトするか」との論説。簡単な質問を文書で入力すると、ひとつのまとまった文章で回答を返してくれるChatGPT。あふれかえる候補群とリンクの束がかえってくるのとどちらが消費者にとって魅力的に見えるか? 答えは見えている。
BBC preparing to go online-only over next decade, says director general
英BBC会長Tim Davie氏、今後の10年間で放送を終了し、BBCがオンライン専業となるビジョンを呈示。
「やがて、リニア放送は減少し、よりカスタマイズされたオンラインサービスが提供されることになるだろう」「BBCを1つの提供物(アプリ)にまとめる」とも述べた。
実践ノウハウ公開!ニュースレターとポッドキャストで「個人メディア」 - Media × Tech
【ご紹介】:
Media×Techから新着です。個人メディアの運営にまつわるノウハウ、実践記をお届けします。ぜひご参考に。