Disruption This Week—–29/11/2024

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2024年11月25日から2024年11月29日まで。

オーストラリア、16歳未満のSNS利用を禁止-新法が成立へ
「禁止措置の施行はハイテク企業自らが担当する仕組みで、対応を怠った場合は最大5000万豪ドル(約49億2300万円)の罰金が科せられる可能性がある。新法では、ユーザーの年齢をどのように確認するのかについては定められていない」。

——制裁金の額はともかくとして、ユーザーの年齢をどう厳密に認識するのかという、難しい課題が課された法制度。さらに言えば、青少年の言論の自由については、どう整理されたのかが気になるところ。記事は言及していないが、YouTubeは教育などにも活用されており、本規制の対象から逃れたという点も「?」が残る。

Yes, That Viral LinkedIn Post You Read Was Probably AI-Generated
AI検知新興企のOriginality AI、LinkedIn上の長めの英語投稿の54%以上が、AIによって生成された可能性が高いとする分析を示す。分析リポートが米メディアWIREDに提供された。ただし、LinkedIn自体がプレミアムユーザーには生成AIの執筆補助サービスを提供している。
コンテンツクリエイター経済、成長する一方で「脱落者は3年連続で増加」 | どのプラットフォームも「勝者総取りの構造」
「米誌『フォーチュン』によれば、米金融機関『バンク・オブ・アメリカ(BofA)』の顧客のうち、コンテンツクリエイターとして収入を得ている人の割合は、2024年11月現在、0.20%となっており、2021年の0.25%をピークに3年連続で低下している」。

——記事が指摘するのは、パンデミック下で多彩なコンテンツ需要が爆発。だが、それ以降、クリエイターの中でもプロ的な人々による「勝者総取り」状況が生じているという。米国では大物クリエイターは、ほぼ中小のメディア企業的規模に達している。アマとプロの差は広がるのだろう。

Meta Shares Threads Growth Stats to Counter Reports of Bluesky’s Growth
米大統領選(特にその投票日前後の)Blueskyの劇的な成長については、何度か紹介している。対抗する“本命”のMeta Threadsも、成長を繰り返しPR。10月末には2億7500万MAU(月間アクティブユーザー数)を発表後も、11月には3,500万以上のアカウント増と発表。
ビッグテックの合同テロ対策フォーラム、その2年間の混乱のゆくえ
【有料購読者向け記事】:
「2023年3月、メタ・プラットフォームズ、YouTube、ツイッター、マイクロソフトの副社長がZoom会議を行ない、最も強力なライバルのひとつであるTikTokを自分たちのクラブに迎え入れるべきかどうか検討した。4人の副社長はテロ対策グローバル・インターネット・フォーラム(GIFCT)の理事であり、自社のプラットフォームがテロの温床になることを防ぐために情報交換をしている」。

——その後、「X」が離脱したたが、この時期世界の4大プラットフォームが、「テロ対策」を名目とした業界秩序の維持と、ライバル排斥の機能を果たす協議を繰り広げていたことがわかる興味深いリポート。

How Rappler Is Building Its Own Communities to Counter AI and Big Tech
ノーベル賞受賞ジャーナリストMaria Ressa氏、同氏の経営下にあるメディアRapplerで、「Rappler Communities」を開発したと明らかにした。オープンソース、安全、分散型のMatrixプロトコルで構築されたアプリで、世界的な独立したニュース配信機関になる可能性を示すものだと述べる。
「検閲カルテルを解体する」米FCC次期委員長がプラットフォームに突きつける「広範な免責撤廃」
「フェイスブック、グーグル、アップル、マイクロソフトなどは、検閲カルテルで中心的な役割を果たしてきた。ファクトチェック団体や広告代理店とともに、『ニュースガード』という名の(ジョージ・)オーウェル的な組織が、一方的なナラティブ(筋書)を強制する手助けをしてきた。検閲カルテルは解体しなければならない」。

——個人的に注目していたWebサイトの信頼性評価事業者NewsGuardもやり玉に挙げられているのには少々驚き。そのぐらいに、同社の影響力が生じていたということか。さて、「検閲カルテル」の解体の後に残る課題は何だろう? 単なる罵詈雑言を自由放任、放置ですむだろうか。

中国ハッカー、米史上最悪 上院情報委員長が指摘 | 共同通信
「ウォーナー氏(=米上院の情報特別委員長)は、中国系のハッカー集団『ソルト・タイフーン』が米国の通信会社を介した音声通話をリアルタイムで盗聴していると説明。連邦捜査局(FBI)が確認した被害者は150人未満だが、数百万人分の電話やテキストメッセージが傍受されている恐れがあると指摘した」。

——「ソルト・タイフーン」。すでにWSJが事前に報道していたが、その具体的な姿が語られた。

Why is everyone talking about Bluesky right now?
ユーザー数“たったの”2,100万人のSNS「Bluesky」が爆発的に成長中。それも大統領選投票日前後の2週間のできごとだ。Blueskyは、現在、アプリストアでChatGPTとThreadsを抑えて1位の無料アプリとなった。
The Podcast Election | No Mercy / No Malice
「私が(かなり)確信している唯一のことは、若者たちがTrump氏に激しく傾倒するという決断を下す上で、初めて、極めて重要な役割を果たしたメディアは何かということだ。 そして、それがこの記事の主題である」。それはポッドキャストだとする。Scott Galloway氏の論。
「新しい形態のメディアは、定期的に我々の文化や政治を再形成する。 FDR(=ルーズベルトのこと)はラジオを使いこなし、JFK(=ケネディ)はテレビを活用し、レーガンはケーブルニュースに釘付けにした。 オバマはインターネットを通じて若い有権者に活力を与えた。 トランプはツイッターで世界中の注目を集めた。 今年はポッドキャスティングだった」との興味深い記述がある。
(パブリックエディターから 新聞と読者のあいだで)難しい記事こそ、簡潔に“見せ”て 藤村厚夫:朝日新聞デジタル
【ご紹介】:
朝日新聞にコラムを寄稿しました。ご一読ください。一般的な読解力をめぐる課題、そして新聞記事の理解しづらさをめぐる課題などについて考えてみました。新聞インサイダーにこそ届けば良いのですが。
SNSに潜む「エコーチェンバー」の危険とは:時事ドットコム
【ご紹介】:
藤村が『メディアリテラシー 吟味思考(クリティカルシンキング)を育む』に執筆した論からの抜粋が掲載されました。数年前に執筆したものですが。よろしければどうぞ。

Disruption This Week—–22/11/2024

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2024年11月18日から2024年11月22日まで。

コムキャストがCATVチャンネル分離へ、MSNBCなど-関係者
「メディア・ケーブルテレビ(CATV)大手の米コムキャストはニュース専門局『MSNBC』や『CNBC』『USA』などのCATVチャンネルをスピンオフ(分離・独立)する計画だ。事情に詳しい関係者が明らかにした。視聴者や広告主を失いつつあるCATV事業へのエクスポージャーを減らす」。

——Bloombergの報道が出てから、米メディア業界はこの話題で持ちきりだ。各社の経営上の複雑な要因が作用しているため、一概に言えないが、なによりも最大の環境変動要因はCATVの収益構造が弱体化していることだろう。これまで収益性が良すぎたことから変革が遅れたのは、他のレガシーメディアに似ている。ストリーミングの一部がかろうじて黒字化を示すが、安定化するには、独占的な地位獲得が必要になる。

Google Discover has become Reach’s ‘biggest referrer of traffic’
Facebook、InstagramなどSNS、Google検索からの流入が減少していると、多くのメディア担当者が体感している。そんななか、検索を利用したコンテンツフィードの「Google Discover」が存在感を増している。記事は英大手メディア企業Reachの幹部がその影響や特性を語る。
AI detection tool helps journalists identify and combat deepfakes
DeepfakeをAIを用いて検知するジャーナリスト向け無償サービス「TrueMedia」の紹介記事。開発するTrueMedia.orgの創業者はAI研究家Oren Etzioni氏。同氏のコメントなどを紹介。難題はフェイク作成側も検知を回避する方策を生み出してくることだという。
米司法省、グーグルに「クローム」売却を求める方針-関係者
「訴訟はトランプ政権下で提起され、バイデン政権でも継続された。判事が是正案を受け入れれば、オンライン検索市場と急成長するAI業界を一変させかねない」。

——PCなどでは重要アプリであり続けるWebブラウザ。そのシェアトップの「Chrome」は、Googleにとっても、検索、マップ、Gmailなどの重要基盤で、ブラウザ自体は無料だとしても市場の支配力はすさまじい大きさだ。かつてNetscapeを駆逐したMicrosoftとIEの関係が想起される。

Unveiling LIMINAL PANDA - Threats to Telecom Sector | CrowdStrike
米CrowdStrikeの防諜対策幹部、同社が「LIMINAL PANDA」との名称を与えた、重要インフラに対する中国のサイバー脅威アクターについて初めて公開。リポートでは、LIMINAL PANDAのインフラへの侵入の手口など詳細に紹介する。
「2024年米国選挙におけるプラットフォームXのアルゴリズムによる潜在的偏向の計算分析」。
豪Queensland大研究者Timothy Graham氏ら、X(Twitter)が2024年7月に大きくアルゴリズムを変更。オーナーMusk氏によるTrump候補支持表明に符合するとの論文(プレプリント)を公表。
報道経験ないニュース系インフルエンサー、米若者の頼れる情報源に
「ピューの調査によると、30歳未満の成人の約40%が、ニュース系インフルエンサーから時事問題や政治の最新情報を入手している。こうしたインフルエンサーの大半に上る77%は、報道機関に所属せず、メディアでの勤務経験もない。
新たなデータはメディア環境の変化を浮き彫りにした。若者を中心に、政府や社会問題、経済といった重要なニュースについては、非伝統的な情報源の利用が一段と増えている」。

——併せて紹介する米Pew Research自身のリリースブログを参照されたい。

幻冬舎コミックス、Xへの画像投稿は「AI学習阻害・ウォーターマーク付き」で 11月15日の規約変更を理由に
「Xは15日の規約変更により、ユーザーが入力した情報を、AIのトレーニングに利用する旨を明文化する予定だ。しかしXでは、これを嫌って他のSNSに“移住”しようとするユーザーや、投稿する画像にAI学習の阻害処理・ウォーターマークをつけようと呼び掛ける人も見られ…」。

——これもXをめぐる話題なので、遅まきながら紹介しておく。引用箇所にあるように、Xの利用規約がAI学習に強制的に用いられることを嫌っての動き。この種のせめぎ合いがこれから活性化するだろう。Xは、自社のxAIの開発にとどまらず、他のAI開発ベンダーに学習用コンテンツを売って大儲けするオプションを手に入れようとしているわけだ。

Norwegian startup Factiverse wants to fight disinformation with AI
ノルウェーのスタートアップであるFactiverse、米国大統領討論会のライブファクトチェックを提供し、いくつかのメディアパートナーによって利用されたという。同社の技術はLLMとは異なり、情報検索に基づいく別タイプのモデルを構築したと創業者は述べる。
「X」利用者が続々と「ブルースカイ」へ移動 仕組みは? オーナーは? - BBCニュース
「世界各地でかなりの人数がブルースカイのアプリをダウンロードしている。イギリスでは14日、アップルのアプリ市場『AppStore(アップストア)』で、最もダウンロードされた無料アプリになった」。

——Musk氏の振る舞いもあって、Xを離脱する動きが高まっているものの、記事にもあるように、BlueskyがXを脅かす存在になるためには、今後の長期にわたり成長が欠かせない。そのためには、大物たちの寄付に頼る資金源では心許ない。これからがBlueskyの胸突き八丁の上り坂だろう。

Disruption This Week—–9/11/2024

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2024年11月5日から2024年11月8日まで。

AIや独禁法巡る米政策、大きく変化か-身構えるシリコンバレー
「トランプ氏との関係を改善させる方法を見つけた大物もいる。7月13日の暗殺未遂事件に対する同氏の対応を『最高だ』と称賛したメタのマーク・ザッカーバーグCEOだ。そしてフェイスブックは偽情報対策の多くを取りやめた。米紙ワシントン・ポストのオーナーであるベゾス氏は、選挙の2週間前に民主党のハリス副大統領を支持する社説の掲載に待ったをかけた」。

——記事で触れている他の重要なポイントは、AIガバナンスの方向感の急転換だろう。バイデン政権が打ち出した政策をどれくらいひっくり返すのかに注目が集まる。

Musk says Trump’s podcast appearances made ‘big difference’ in election
今回の選挙で見事な勝利を実現したTrump氏。それは、Joe Rogan氏のような人気ポッドキャスターとの自由奔放なインタビューを喜んで受けたおかげでもある、とElon Musk氏は主張する。リスナーはTrump氏の何気ない会話で人物を高評価し、対立候補との違いを見たのだとする。
Publishers hooked on Google Discover traffic risk race to the bottom
世界中の多くのメディア企業にとって、Google Discoverは今や主要なトラフィック源だ。総Googleトラフィックの平均55%をディスカバーが占めている。だが、そこに集中するのは危険だとする記事。Discoverのアルゴリズムはつねに修正され、変動するからだ。
Bloomberg Media launches Bloomberg Live Q&A - Talking Biz News
米Bloomberg Media、最大4人のジャーナリストがその週の主要な経済からハイテクなどのトピックを議論するライブ番組Bloomberg Live Q&Aを開始する。有料購読者はジャーナリストに質問ができる。聴取だけなら無料も可だという。
マスク氏とX、米大統領選偽情報の発信地=専門家
「米実業家イーロン・マスク氏が自身のソーシャルメディア『X』に投稿した米大統領選に関する偽情報や誤解を招く情報が、今年20億回閲覧されるなど、Xが偽情報の発信地となっていることが、非営利団体『センター・フォー・カウンタリング・デジタル・ヘイト(CCDH)』の調べで分かった。
選挙と偽情報の専門家らが4日語ったところでは、選挙結果を左右しそうな7つの激戦州における偽情報の拡散でも、Xが中心的な役割を担っている」。

——強力なインフルエンサーが、自身が保有するプラットフォームを活用して引き起こす化学反応。まさに恐れられていた現代の脅威の一つを、われわれは目撃しているのかもしれない。

「AIエージェント」続々登場 富士通やNTTデータ提供、仕事の進め方に変化迫る 編集委員 吉川和輝 - 日本経済新聞
【有料購読者向け記事】:
「人工知能(AI)が人の具体的な指示なしに自律的に仕事を進める『AIエージェント』が広がりを見せている。AIによるパソコンの自動操作や、企業のAIエージェント開発を支援するサービスも登場」。

——個人的にもエージェントは、一人一サービス、もしくはその得意不得意に応じて一人の利用者が複数サービスを使う時代になるのではと想像する。サブスク型のビジネスに発展していくのでは?

Inside Dow Jones’s AI governance strategy, with Ingrid Verschuren
1年半前に結成された「AI運営委員会」は、米Dow Jonesの組織全体から集まった10人のメンバーで構成され、内および社外におけるジェネレーティブAIの使用事例を評価していると、同社データ・AI担当幹部は述べているという。
AI音声合成サービス「DMMボイス」盛況 公開4日で700万文字の音声を生成 アプリやAPIの提供も計画
「原田さんは、DMMボイスを使った作品を公開しているX上の投稿を紹介しながら『実際DMMボイスを触っているとわかるのですが、すごく楽しいんですよね。声がリアル過ぎて本格的な動画を簡単に作れるので、作り始めると止まらない癖になるサービスです』という」。

——楽しそうだ。この種のサービスを用いて、より凝った作品が生まれていきそうな予感。社会的な安全性を担保するための歯止めをどの辺りに差し込んでいくのか、オープンに議論されるべき。

NYタイムズ、デジタル購読者数伸び鈍化 不透明な経済情勢受け
「米紙ニューヨーク・タイムズが4日発表した第3・四半期決算は、デジタル購読者数の伸びが鈍化し、市場予想を下回った。不透明な経済情勢を受け、消費者が支出を削減していることが背景にある。
デジタル版のみの購読者数は26万人増。前四半期は30万人増だった。ビジブル・アルファのまとめたアナリスト予想は28万200人増」。

——NYTimesの躍進にやや陰り? のちほど紹介するが、自社IRでは買収したスポーツメディアが黒字化、総購読者数が1,100万の大台乗せなどプラスの材料も。

Exclusive: Walt Disney forms business unit to coordinate use of AI, augmented reality
すでに紹介したように、米Walt DisneyがAIやXR(拡張現実)などの新興技術の利用をコーディネートする組織Office of Technology Enablementの設立を公表。従業員は100人程度になる見込みだとの内部情報も。

Disruption This Week—–11/10/2024

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2024年10月1日から2024年10月11日まで。

「Xプレミアム」収益配分の仕組みを変更 インプレゾンビ対策にも?
「今後は投稿の返信欄に広告が表示されても収益は発生しません。代わりにこれからは、投稿に対してプレミアムユーザーがエンゲージメントすることで支払いが行われます」。

——「エンゲージメントとは、ある投稿に対してシェアやコメントなどのアクションを起こすこと」だと記事で解説。「これまでの広告収益分配プログラムでは閲覧数に応じて収益が発生していたため、日本人の投稿に海外のアカウントからリプライが付くケースが多く、災害発生時などに問題視されていた」とも述べている。要するに、“無意味な”閲覧数を稼いでも商売にはならないスキームを目指しているわけだ。

How The New York Times incorporates editorial judgment in algorithms to curate its home page
米New York Timesは、Webでもアプリでも、トップページにアルゴリズムを駆使したコンテンツキュレーションを施している。1日に公開する記事が250超だが、トップページに表示できる記事は50〜60に限られているからだ。このアルゴに編集者の意思をどう反映しているかを語った記事。
X、ブラジルでのサービス再開へ 命令に従い2860万レアルの罰金も支払ったため
「モラエス判事は、Xがブラジルの法律と『国家主権を尊重した司法の決定』を完全に順守することを条件に、活動の再開を許可した。
Xは、虚偽情報を拡散していた(と判事が指摘した)アカウントのブロックと、ブラジルでの海外企業の運営に関する法律で義務付けられているブラジルでの法定代理人の任命という、活動再開のための2つの条件を9月27日に完全に満たしたことを証明した」。

——ブラジル司法の求めるところにXが完全に屈伏した図式のようだ。法令遵守があるとはいえ、“言論プラットフォーム”でもあるものが、権力の意向に屈伏するだけがよいことなのかと言えば、留保しなければ。各国で「擬誤情報のまん延」を材料に、権力が情報の統制に身を乗り出そうとしている瞬間に起きた出来事だ。

グーグルに事業分割要求も、米当局が検討 ネット検索巡る訴訟で
「米司法省は8日、アルファベット傘下グーグルのインターネット検索が独占に当たるとの裁判所の判決を受け、同社にブラウザ『クローム』や基本ソフト(OS)『アンドロイド』など一部事業の切り離しを命じるよう裁判所に求める可能性があると明らかにした」。

——昨日はEpic Gamesとの係争をめぐり、Google Playアプリストアの開放という判決を紹介したが、今日は、改めて分割問題が話題になっている。改めて引用箇所を読み直すと、かつてのMicrosoftの独占時の問題と同じことが起きていることがわかる。

OpenAI exec rules out sharing revenue from SearchGPT with publishers, for now
OpenAIのメディアパートナーシップ担当責任者は、現在のところ、同社がSearchGPT製品から得られる広告収入を、コンテンツを掲出したメディア事業者と共有する方針はないとした。「新しい視聴者による大幅なトラフィック増」で、各メディアに公平に分配されると述べた。
Who U.S. Adults Follow on TikTok
米Pew Researchが新調査結果を発表。いまや成人の半数(52%)がTikTokを通じて定期的にニュースに接触する。だが、米成人のTikTokユーザーが多くフォローするのは、著名人などインフルエンサー。残念ながらジャーナリストらはごく少数に過ぎない。
US judge orders Google to open app store to competitors
「米連邦判事、GoogleにPlayストアをライバルに開放するよう命令」。Apic GamesがGoogleに提起した訴訟で大勝利。競合他社の作るアプリストアに、Google Playストアのカタログを利用できるようにしなければならない。進行中のAppleとの係争の行方にも影響大だろう。
Substack wants to do more than just newsletters | Semafor
好調に拡大するニューズレター配信サービスSubstackの現状を、米Semaforが報じた。報道に寄ればSubstackは直近1年で、購読者を100万人増やしたという。黒字化には至っていないものの、2022年に900万ドルだった売上は好調に推移しているものと見る。
Google’s Grip on Search Slips as TikTok and AI Startup Mount Challenge
【有料購読者向け記事】:
「調査会社eMarketerによると、米国の検索広告市場におけるグーグルのシェアは来年、10年以上ぶりに50%を下回ると予想されている」。TikTokやAmazonがブランド商材の検索に力を入れているからという。特にAmazonは22%のシェアが見込まれているとする。
「沖縄独立」煽る偽投稿拡散 背後に約200の中国工作アカウント - 日本経済新聞
【有料購読者向け記事】:
「『沖縄独立』を促す偽動画が今、SNS上で拡散し続けている。日本経済新聞が先端の人工知能(AI)ツールで解析したところ、背後に拡散を請け負う大量の『情報工作アカウント』が見つかった。主に中華圏に向けたSNSの投稿だが、専門家は今後、日本の世論分断にもつながりかねないと警鐘を鳴らす」。

——朝日新聞による調査報道を紹介してきたが、今度は日経新聞による読みごたえのあるビジュアル調査報道を紹介する。こちらイスラエルで開発されたツールを使うなどして流布されている偽情報を追跡すると、おもに3つの発信源(アカウント)が浮かび上がったという。それぞれは幼稚な動画などだが、結果として広範囲に偽情報が拡散していることも判明。

ロシアの偽情報作戦「ドッペルゲンガー」は西側諸国だけではなく自国首脳部も欺いている
「ロシア政府主導の工作ネットワーク『ドッペルゲンガー』は、西側諸国を標的として、さまざまな偽情報作戦を展開しています。しかしその偽情報作戦が、西側諸国だけではなく、ロシア政府の首脳部も欺く結果になっていることを、世界情勢を扱うニュースサイト・Foreign Affairsが報じています」。

——一昨年にその存在が暴露された、ロシア政府系の偽情報生産企業SDAとその偽情報キャンペーンの主体「ドッペルゲンガー」。その大規模な偽情報生産の状況を克明に伝える膨大な内部資料が西側メディアに漏えいした。この記事は、数GBにおよぶ文書を入手した外交専門誌「Foreign Affairs(フォーリン・アフェアーズ)」の記事を翻訳紹介したもの。影響工作の実像を伝える驚愕の内容。

ChatGPT、会話がスムーズになりました
「ChatGPTで、『高度な音声モード』(Advanced Voice Mode)の提供が始まりました。有料プラン加入者が対象の新しいアップデートです。
OpenAIは機能のリリースに合わせて、本機能を使っている動画を投稿」。

——すでに紹介をしている話題だが、改めて。50か国語に対応しており日本語も含まれる。応答速度が速いのは謳い文句どおりだが、さらに凄いのは動画にもあるように、注文された文章を生成中に、ユーザーが割り込んで指示を与えると、即座に対応する。あとは音声の自然さが高まっていけば……。

Microsoft starts paying publishers for content surfaced by Copilot | TechCrunch
米Microsoftは、同社が展開中のAI機能のCopilotの各種アップデートを発表。注目される新機能が「Copilot Daily」。提携した大手メディアからの天気や時事問題記事の要約を音声で提供する。Dailyに用いられるコンテンツに対して、報酬を支払うという。
“広告への苦情”の50年史 Webサイトで26万件をまとめて紹介 ネット広告に「見たくない」の声も
「日本広告審査機構(JARO)は10月1日、設立から50年の間に寄せられた広告への苦情をまとめたWebサイト『苦情の50年史』を公開した。累計約26万件の消費者の声を分析し、時代ごとの件数の推移や内容、広告媒体などの変化について紹介している」。

——素晴らしい取り組み。「50年間の(苦情・問合せ)件数推移」のチャートを見ると、現在がそのピークであることが如実。興味深い。

Politico’s wonky Pro service to roll out new AI tool | Semafor
米政治専門メディアPoliticoは、テック企業Capitol AIと提携。政策、州・連邦立法、議会委員会の公聴会を詳細にカバーするPoliticoのプレミアム購読版Politico Proの購読者用ツールを開発すると発表。メディアが自らの読者専用サービスのためにAI技術を導入するケースとなる。

Disruption This Week—–30/8/2024

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2024年8月26日から2024年8月30日まで。

Can Tech Executives Be Held Responsible for What Happens on Their Platforms?
【有料購読者向け記事】:
「Pavel Durov氏への告発によって、Meta社のMark Zuckerberg CEOのようなハイテク企業幹部が、次にヨーロッパの地を踏んだときに逮捕される危険性があるかという懸念や疑問が起きている」。米New York Timesがハイテク業界に生じている恐怖を伝える。
インターネットの検索行動、YouTube利用が増加/複数回検索する人は約半数に減少【ナイル調査】
「インターネットを利用して調べものをする時最も利用頻度が高いものを尋ねた。すると、『Google(50.0%)』『Yahoo!(25.2%)』『YouTube(5.3%)』の順となった。
2023年調査では3位に『Twitter(5.0%)』がランクインしており、2024年は『X_旧Twitter(4.4%)』は0.6ポイント下がり4位という結果に」。

——よく考えてみれば、検索エンジンは検索のためのツール。一方、YouTubeやInstaなどは、SNS閲覧(や投稿)のための場。文脈が異なるなど、いろいろ考えがふくらむ。

Newsrooms are finding new ways to build community, online and off
「一緒にニュースの意味を理解するのを助けてくれるコミュニティが周りにないとき、相談できる人がいないとき、ニュースを追いかけるための社会的通貨がないとき、それは切り離されたように感じる」。

——ニュースをめぐるコミュニティ構築の重要性を語る議論。Institute for Nonprofit News(INN)のカンファレンスでの発言から。

NFT価格、2年で10分の1 バブルの跡からビジネスの芽 価格は語る - 日本経済新聞
【有料購読者向け記事】:
「非代替性トークン(NFT)の平均単価が2年間で約10分の1に急落した。短文投稿に3億円の値がついたバブルが去った今、売買は手ごろなデジタルアートや会員権が中心だ。本来の特性を生かした使い道が少しずつ広がっている」。

——投機的な期待が先行していたNFTが、徐々に地に足が着いたビジネスへの動き。「会員権のようなサービス利用権との相性が良い。ホテル開発・運営のNOT A HOTEL(ノットアホテル、東京・渋谷)は、リゾート施設のシェア所有でNFTを活用している」というのは、なるほどなー。

紙の漫画を続けていたら、家賃6万8000円すら払えなかった…「パッとしない」漫画家が年収2000万円を稼げる理由 7人のアシスタントは全員リモート勤務
「自身が実践しているようにアシスタントには徹夜厳禁とし、人によっては最低限の筋トレと散歩を義務化する。そして、漫画作りのノウハウを紹介している自身のYouTubeをアシスタント教育にも活用している。
登録者数が2万5000人を超えたYouTubeでの発信の成果もあり、近年、美大や専門学校などで講演する機会が増えた」。

——「紙の漫画のアシスタントだった丸山恭右さんは2019年から漫画アプリへの配信を始め、年収2000万円を稼ぐ電子漫画家になった」と、丸山氏のサクセスストリーリーを取材した記事。要するに生産性を上げること、戦略の狂気じみた徹底が伝わる。“生産性”というコトバと縁遠いとみられてきた分野だが、やりようがあることもよく理解できる。

メタCEO、コロナ巡る投稿でバイデン政権からの「圧力」明かす
「メタ・プラットフォームズのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)のさなか、コロナ関連のコンテンツを『検閲』するよう米国政府から『圧力』を受けたと明かした。要求に応じた同社の決定を後悔しているとも述べた」。

——こちらも政府、プラットフォーマーをめぐる話題。優等生ぶりを発揮してきた米ITプラットフォームも、大統領選後を見据えてか、新たな動き、言動を示し始めている。

マスク氏、加州のAI規制法案支持 安全性テスト義務付け
「米実業家のイーロン・マスク氏は16日、カリフォルニア州の人工知能(AI)規制法案(通称SB1047)を支持する意向を示した。同法案はハイテク企業やAI開発者に対し独自モデルの一部について安全性テストの実施を義務付ける内容」。

——直前の投稿のように、Musk氏もまた、カリフォルニア州AI規制新法を支持。「私は20年以上にわたってAI規制を支持している」とのこと。

Inside Megyn Kelly's YouTube success | Semafor
米ニュースキャスターのMegyn Kelly氏、FOXそしてNBCで人気ニュース番組で人気を博していたが、“差別的”とされる発言で番組降板。現在は、スタッフ6名で、230万人が登録するYouTubeチャンネルやポッドキャストで、かつてのレガシーメディアに匹敵する数字を獲得と明かす。
Pro-Russia 'news' sites spew incendiary US election falsehoods
ロシア政府に近い“偽ニュースサイト”ネットワークが、Trump前大統領の暗殺未遂事件の背後に米民主党の謀略があるとの情報を拡散。元となったBarack Obama氏らの会話記録がAI音声合成と米NewsGuardが分析。ロシアに逃亡した元米海兵隊員John Mark Dougan所有サイトが発信源だ。
This startup wants to be the iTunes of AI content licensing
「新鮮で高品質なデータへのアクセスを必要とするAI企業と、実際にデータ生成にコストをかけているメディア企業をつなぐマーケットプレイスを作ること」の目的とする新興企業Toolbitの話題。同社創業者はRAG技術に着目して創業したと語る。