Disruption This Week—–2/2/2024

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2024年1月29日から2024年2月2日まで。

A.I. Fuels a New Era of Product Placement
【有料購読者向け記事】:
AIが古くからある宣伝手法プロダクトプレイスメント(現在、米国ではこのタイプの広告市場が230億ドル近いとされる)を甦らせる。TikTok動画で踊るクリエイターの背後にスポンサー飲料のポスターが合成されている。クリエイターは広告でないと言うのだが。
‘A moment for the ages’ as Mark Zuckerberg apologizes to families of abuse victims - Poynter
米Missouri州選出の上院議員Josh Hawley氏に促され、公聴会に立ったMark Zuckerberg氏は、振り返って家族の遺影を掲げる遺族に向かい、「あなた方のご家族が苦しんだようなことは、誰も経験すべきではない。だからこそ、私たちはこれほど投資したのです」と述べた。
Media startup The Messenger disintegrates, leaving staff nothing | TechCrunch
米メディアのThe Hollywood ReporterやThe Hillを保有してきた業界著名人Jimmy Finkelstein氏が昨5月に創業したThe Messengerが閉鎖。
「昨年末までに創業資金約3800万ドルを失い、300万ドルしか生み出せなかった」とする記事。同氏は「創業1年で1億ドルの収益を生む」と豪語していたのだが。記事はやはり「今はBuzzFeedブームの時代ではない」とも論評。
Publickeyは今月で15周年を迎えます。読者の皆様、スポンサーや広告代理店の皆様、いつもありがとうございます
「僕自身は2006年頃、まだ@ITの事業部長をしていた頃に、米国でTechCrunchやEngadgetなどのブログメディアが盛り上がっているのを見て、ブログを基に個人や少人数でもちゃんとメディアが作れるのだ、ということに大きく刺激を受けました」。

——“稼げる”個人ブロガー/個人メディアの草分け、「Publickey」が開設15周年! おめでとう。
その新野氏と組んで「@IT」を開設したのは2000年だから、お互いなんとも遠くまで歩んできたものだ。私の場合は、組織を前提にした取り組みだったが、新野氏は一人旅、その偉さはよくわかる。

YouTube and Google Subscription Services Hit $15 Billion in 2023 Revenue
【有料購読者向け記事】:
AlphabetのCEO、Sundar Pichai氏、12月期の業績において、YouTube Premium、YouTube Music、YouTube TV、(ストレージサービスの)Google Oneなど、購読サービス売上が2023年に150億ドルに達するとし、同氏はYouTubeが「購読収益の源泉」と形容。
Our Redesigned Byline Pages | The New York Times Company
「調査によれば、読者が記者についてより深く知れば知るほど、私たちのジャーナリズムのプロセスの厳しさを理解し、その結果を信頼する可能性が高まる」。
米New York Times、記事を執筆した記者情報をよりリッチにした「エンハンスト・バイオ(強化した略歴)」フォーマットを運用開始。
出版状況クロニクル189(2024年1月1日~1月31日) - 出版・読書メモランダム
「23年はかろうじて1兆円を上回ったものの、24年の出版物推定販売金額の困難さを予兆させる数字となってしまった。
ピーク時の1996年の2兆6564億円とくらべれば、実質的に3分の1の売り上げになってしまったのである。
そうした出版物売上状況において、出版社はともかく、流通と販売を担う取次と書店は本当に深刻な事態に追いやられている。それは流通と販売自体が恒常的な赤字となっているのではないかと考えられるからだ」。

——記事中に、出版科学研究所による1996年から2023年にかけての出版物推定販売金額の一覧が示されている。1997以降、04年のたった一度を除き、販売(書籍+雑誌)の売上は前年をつねに下回ってきている。

Journalism, media, and technology trends and predictions 2024

Reuters Institute for the Study of Journalism

Journalism, media, and technology trends and predictions 2024
例年、年初に公開されるReuters Instituteによる「ジャーナリズム、メディア、テクノロジートレンドと各種予測」2024年版が公開。ニュース忌避など例年のテーマに加え、「7. ジェネレーティブAIと編集部への影響」が新たに加わった。深い懸念と同時に利点も強調する。
On The Record with Will Lewis | Semafor
米Semafor、今年、Washington PostのCEOに就任したWill Lewis氏にインタビュー。同氏はペイウォールの“次”について、「月額購読の意思がない、多くの若年層を惹きつけるには、彼らがジャーナリズムにアクセスできる新しい方法をデザインするのが、業界の責務となる」と述べる。
例として、「1日パス」「週間パス」、あるいはThe Guardianのような寄付モデルなどをあげる。「まったく新しい世代の有料ユーザーコンセプトがある」と。
Apple announces changes to iOS, Safari, and the App Store in the European Union
Apple、EU域内におけるiOS、Safari、そしてApp Storeの変更を発表:
「代替の支払い方法を使用しているアプリについては、Appleは返金を行うことができず、問題や詐欺、詐欺に遭遇したお客様をサポートする能力も低下する。問題の報告、ファミリー共有、購入依頼など、App Storeの便利な機能も、これらの取引には反映されない。ユーザーは、支払い情報をさらに多くの相手と共有しなければならなくなる可能性があり、悪質な業者が機密性の高い金融情報を盗む機会が増えることになる」。

Disruption This Week—–26/1/2024

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2024年1月25日から2024年1月26日まで。

How AI could sap — or save — local news - Poynter
「ここにアイデアがある:2.6兆〜4.4兆ドルの経済価値を生み出すとされ、数十億ドルの投資を受けているジェネレーティブAI部門は、2万5,000人の地元記者を支援する資金を援助すべきだ。地元に特化したジェネレーティブAIサービスを実際に提供することができるようになる」。

——ある米ローカルメディアの経営者が語る、ジェネレーティブAIが抱える数々の課題。反則かもしれないが、同氏が最後に述べるポジティブな提案。ネガティブな論点を読むのも良いし、最後のポジティブなアイデアを検討するのも良いと思う。

サムスン、AIスマホで巻き返しなるか
【有料購読者向け記事】:
「サムスンにとって賭け(=オンデバイスAIへの賭け)の度合いは大半の企業より高いと言えそうだ。同社は長い間販売台数に関してスマートフォン市場で首位の座にあったが、2023年に販売が大きく落ち込み、初めてその座をアップルに譲った」。

——オンデバイスAIのトレンドが、これからのスマホやスマホ外のスマートデバイスにどのような影響を与えるか? AI処理がリアルタイム化することで、これまでは“SF的”だったようなサービスが可能になる先陣を切ったサムスンは、そのフロンティアを行くかもしれないが、悪い冗談として終わることさえある。
同社にとって(スマホ分野においては)社運を賭けた戦いになるのかもしれない。

読売新聞、Web記事の“生成AIへの学習利用”を禁止に 利用規約を改定 スクレイピングなどもNG
「禁止事項として新たに3点を追加。『データマイニング、テキストマイニングなどのコンピュータによる言語解析行為』『クローリング、スクレイピングなどの自動化した手段でデータ収集や抽出、加工、解析、蓄積などをする行為』『生成AIなどに学習させる行為、生成AIなどを開発する行為』を禁じた」。

——ご存じ米国でのNew York Timesらによる訴訟問題なども背景にした厳しい動き。一方で、記事にあるように「これらの禁止事項を含めた情報解析のために、同メディアの記事を利用したい場合は、読売新聞とライセンス契約を結ぶ必要があるとしている」という道を残しているわけだが。

アップル、アプリストア開放で手数料を計画
【有料購読者向け記事】:
「米アップルは、スマートフォン『iPhone(アイフォーン)』に外部ストアからサードパーティー製アプリをダウンロードできるようにする一方、新たな手数料と制限を導入する方針だ」。

——WSJのスクープ記事。ただし、適用されるのは欧州市場だと記事は述べている。もともと「アップル税」をオフロードされるなら、別途30%に限りなく近い仲介料を取る動きがあると報道されていたので驚きは少ないのだが。

食べログが逆転勝訴 アルゴリズム変更「合理的」、独禁法違反認めず:朝日新聞デジタル
「(原告は)『評点を下げることになるアルゴリズム変更をしない義務があった』とも新たに主張していた。
だが、高裁は『原告が契約上、アルゴリズムの変更について、何らかの権利や法律上保護される利益を持つとは認められない』として退けた」。

——この辺りは重要な論点として、今後も検討されていくことになるのだろう。

How The Guardian raised a record amount of reader revenue in the U.S.
英The GuardianのUS版は、北米の読者から通年でおよそ3000万ドルの寄付収入を獲得。米英全体でも1/3が北米からの収入だという。同メディア編集部が読者に訴求するメッセージに加え、募金総額以上に重要視してきた指標などを解説した記事。
Netflixの純利益17倍 2023年10〜12月、会員増最高の1300万人 - 日本経済新聞
【有料購読者向け記事】:
「売上高が前年同期比12%増の88億3200万ドル(約1兆3100億円)、純利益が17倍の9億3700万ドルだった。アカウント共有の禁止や広告付きの安いプランを広げたことで、会員数は12月末までの3カ月間で約1300万人増え、増加幅は10〜12月期として過去最高だった。3四半期連続で増収増益を確保した」。

——ポイントは、1) 不正なアカウント共有の取締策、2) 広告表示付き廉価版の好調、およびそれに連なる施策ということのようだ。一方でNetflixを追っていたはずの他ストリーミング勢は足もとの業績および投下資金の減少で、息切れを起こしつつあるようだ。

Los Angeles Times to Slash Newsroom by Over 20%
【有料購読者向け記事】:
米The Los Angeles Times(LA Times)が115名に及ぶ記者・編集職の削減を公表。2018年に富豪Patrick Soon-Shiong氏が買収してから初のレイオフ。
同氏は「われわれはほぼ10億ドルを投資し、その遺産を守り、その未来の確保に献身してきた」と述べる。
「フェイクニュースの年」2024年にファクトチェックは役に立つのか?
「デバンキングの介入は、新型コロナの誤情報について、参加者の識別力を向上させ、信じやすさを低下させるのに役立った。19件のデバンキングの介入のうち16件(84%)で、参加者が誤情報を信じることや正確性の判断を改善した」。

——平和博さんのブログから。ファクトチェックの無力、脆弱さを指摘する声がたびたびあがる。実際、技術支援なければ無力だったりする。その意味では、銀の弾丸探しから、社会に遍在する点と点を結んでいく仕事の重要性も増す。それも技術的な可視化支があると効果的なのだが。

Infographic: Where False Information Is Posing the Biggest Threat
“選挙イヤー2024”を迎えた世界。世界経済フォーラム(通称ダボス会議)開催に合わせて、世界34か国で生じる偽誤情報リスクの度合いを専門家チームが分析。データビジュアル化のstatistaがインフォグラフィック化してわかりやすい。色彩濃度でそのリスク程度も表現している。

Disruption This Week—–12/1/2024

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2024年1月1日から2024年1月12日まで。

声で指示すれば、あとのアプリ操作は“AIウサギ”におまかせ 小型AIデバイス「rabbit r1」登場
「rabbitsは、最新情報を検索するといった単純なタスクから、次の旅行のオプションを徹底的に調べて予約したり、ネットスーパーのカートに商品を入れて購入したりといった、複雑なデジタルタスクを処理できるという」。——開催中のCES2024で、ジェネレーティブAI活用に特化した新たなハードウェア+サービス製品が登場した。「たまごっちなどのレトロガジェットを彷彿させる」デザイン。独自のLLM(オープンソース利用?)で動作し、外部の各種アプリやサービスとの連携を、現在トレーニング中だという。200ドル程度と買いやすい価格設定からか、すでに予約で1万台を受注。

Netflix’s Ad Tier Now Has More Than 23 Million Monthly Active Users, Advertising Chief Says
米Netflixの広報担当幹部、広告表示付き廉価版NetflixのMAU(月間アクティブ数)が全世界で2,300万人を突破と説明。2か月前の1,500万人から急増。全世界12か国での新規契約者数の3割がこの廉価版層。エンゲージメントも高く、この層の利用者は85%以上が月に2時間以上視聴しているという。
オープンAIがCNNやFOX、タイムと交渉-コンテンツ使用巡り
「米オープンAIはニュースコンテンツのライセンス取得を目指し、CNNとFOX、タイム誌と交渉していることが複数の関係の話で分かった。オープンAIは著作権侵害疑惑に直面しながらも、AI製品を構築するためコンテンツへのアクセスを確保する取り組みを広げている」。——New York Timesによる提訴とは並行して、OpenAIは多くのメディア(報道機関)との提携交渉を進めている…ようだ。TimeのCEOは交渉を認めたが、あげられた他のメディア関係者はコメントしていない。交渉の存在をリークする動きも含めて微妙なバランスでメディア業界は動いている。

OpenAI launches a store for custom AI-powered chatbots | TechCrunch
OpenAI、開設が遅れていた「GPTストア」の開設をアナウンス。ChatGPTの表紙部分に「By ChatGPT」という項目でサードパーティ製GPTアプリ多数示される。記事によれば現時点では、サードパーティがアプリに課金できないが、今後課金も可能になる見込みだ。

Journalism, media, and technology trends and predictions 2024

Reuters Institute for the Study of Journalism

Journalism, media, and technology trends and predictions 2024
Reuters Institute、「2024年のジャーナリズム、メディア、テクノロジーのトレンド予測」を公開。50以上の国から300名以上のメディアリーダーから聴取。
「1.ジャーナリズムにとって今年も困難な年に」「2.プラットフォームシフトとリファラルモデルの終焉?」「3.人工知能時代の検索の未来」「4.ジャーナリズム・ビジネスはさらなる激変に直面する」「5.ニュースの形式が変わる:音声と動画が増える」「6.ニュース断絶と選択的ニュース回避」…と刺激的な項目が続く。
How Google perfected the web
「インターネットは少しずつ、Googleのイメージ通りに作り変えられている。そして、その結果に対処しなければならないのは、機械ではなく人間なのだ」。
Google検索が支配するWeb。検索結果の上位をめざし最適化を繰り返すことで、すべてのページがGoogle好みになってしまった。米Vergeが実験的にWebページを制作してさまざまな問題点を指摘。
この記事自体、動的なページ、ビジュアルづくりはなかなか魅せるものになっている。
Americans Are Canceling More of Their Streaming Services
【有料購読者向け記事】:
米消費者のストリーミングサービス解約が加速。調査会社Antennaによると、Apple TV+、Discovery+、Disney+、Netflixといった主要サービス加入者の内4分の1が過去2年間に3つを解約。2年前には15%だった。背景に値上げと広告付き廉価版の台頭がある。

The New York Times’ AI Opportunity

Stratechery by Ben Thompson

The New York Times’ AI Opportunity
「New York Times AIをめぐる機会(チャンス)」。ブロガーBen Thompson氏が自身のブログで、NYTがOpenAIを訴えた件で、長文の論考を公開。
「フェアユース」が論点となるが、NYTのプロンプトによりChatGPTがWirecutterの記事をそのままダンプしてしまった点に勝利の可能性があるとする。OpenAIはそれを“バグ”として修正済みと主張するわけだが。
(サムネールで赤字が並記されているのが、原文とGPT-4が出力したものが、これだけ共通していると主張している箇所)
OpenAI and journalism
OpenAIがNew York Timesによる提訴に反論。
その骨子は、1) 報道機関と協力し、新たな機会を創出している。2) 学習はフェアユースであり、オプトアウトを提供している。3) (指摘されている、記事をそのまま吐き出す)“問題”は稀なバグで、それをゼロにするために取り組み中だ。4) 同紙は全容を伝えていない、といったもの。
出版状況クロニクル188(2023年12月1日~12月31日) - 出版・読書メモランダム
「23年11月の書籍雑誌推定販売金額は865億円で、前年比5.4%減。
書籍は493億円で、同2.9%減。
雑誌は372億円で、同8.5%減。
雑誌の内訳は月刊誌が313億円で、同9.2%減、週刊誌は58億円で、同4.2%減」。——2023年の1〜11月の書籍および雑誌の(推定)販売の動きがわかる。12月分はこれからだが、23年も9・10月のいくぶんのプラスを除いて壮烈な状況。

Disruption This Week—–22/12/2023

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2023年12月18日から2023年12月22日まで。

I gave ChatGPT the last 13 years of Nieman Lab predictions
こちらもカスタムChatGPTを用いたジャーナリズムへの応用を試したとする論説。「箇条書きを段落に展開したり、記事を要約に収縮させることができる。ニュースレターのプレビュー用の要約や、通知用の短いフレーズなどだ」など実践的に使えることを述べる。
また、過去Nieman Labが掲載した1,369本の将来予測記事を学習させ、それによる検証を行ったところ、正解と誤回答を得たとレビューする。こちらも興味深い。
How less, not more, data, could help journalism | Semafor
米Semafor記者らが、カスタムGPT作成ツールを使い、3種のAIボットを実験的に開発。分かったことは、少量データでもLLMを効果的に構築することができること。もっと言えば、適切にデータを絞るのが有用ということだ。記事は、「ジャーナリズムを変えるかもしれない」とする。
The obsession with “trust” will end
報道メディアが、読者に自身への「信頼」を闇雲に求めるのは間違っていると語る英ジャーナリズム研究者。
「読者にあなたの働きを示し、あなたの間違いを認め、訂正しなさい。知らないことを正直に述べ、読者が興味を持っていることに耳を傾けなさい」と述べる。
AIと著作権、明確化の一歩 データ検索や回答生成「許諾必要な場合も」 文化庁「考え方」素案:朝日新聞デジタル
【有料購読者向け記事】:
「今回示された素案では、生成AIによるデータ検索や回答の生成は、著作権法上許諾が必要となる場合もあると記した。また、生成AIによる学習をパスワードなどで防いでいるデータベースの著作物に対し、それを回避して学習させることは、法の定める『著作権者の利益を不当に害する場合』に該当するとした」。

——ある種のガイドラインの働きをする、考え方を示したというもの。案外影響力を及ぼしそうだ。

TikTokのバイトダンス、23年売上高1100億ドル突破へ-テンセント抜く
「短編動画投稿アプリ『TikTok(ティックトック)』で知られる中国のスタートアップ、字節跳動(バイトダンス)は、2023年の売上高が1100億ドル(約15兆7800億円)を超える可能性があることが関係者の話で明らかになった」。

——米、インドなどで叩かれつつ、それでもTikTokパワーは止まらない。中国国内でも最大級の企業へと成長。

広告掲載料は0円。3万部がすぐに在庫切れ。京都の型破りフリーマガジン『ハンケイ500m』編集長/円城新子さん【編集者の時代 第8回】|クリエイティブのコアとカラーに迫るメディア「CORECOLOR〜コレカラ」
「円城:ハンケイ500mは、京都のあるバス停を起点に半径500mのお店を紹介するマガジンです。なので、まずは編集部のメンバー数人で、その範囲を歩きます。普段の歩くスピードより、ゆっくりと。そして、ここ、面白そうという『触覚』が反応したお店に入る」。

—— 古幡さんの「出版業界ニュースまとめ」の紹介で見つけた記事。一気に読んでしまうのが惜しいような楽しいインタビュー。

Inside The New York Times’ Big Bet on Games
【有料購読者向け記事】:
「いまや、New York Timesは、たまたまニュースも提供するゲーム会社でもある」。社内で冗談めかして語られるほど、「Wordle」「Connections」「Spelling Bee」と同社はゲームがもたらす収益に賭けている。同部門の人員は約100名となった。
EU、DSA(デジタルサービス法)違反の疑いで正式にXの調査を開始。調査の主要対象は、イスラエル・ハマス間の先頭をめぐる違法性の高いコンテンツ。その他にも研究者へのデータ提供、コンテンツ監視態勢、広告をめぐる透明性その他も調査される。
News Publishers See Google’s AI Search Tool as a Traffic-Destroying Nightmare
【有料購読者向け記事】:
米メディア「Atlantic」のタスクフォースの調査では、Google検索に、新たなにAIによる検索が導入されれば、ユーザーのクエリに対する完全な回答を提供してしまう。同サイトは、そうでなければ得られたであろうトラフィックを75%の確率で逃してしまうことがわかったとする記事。検索からのトラフィックに依存していたメディアはその脅威に怯えている。
TikTok is pushing longer videos. Some creators worry about the vibe shift | CNN Business
TikTokが中・長尺動画投稿をクリエイターに呼びかけている動きはすでに紹介した。収益化をめざすクリエイターらへのインセンティブプログラム「Creator Fund」を廃止し、新たに「Creativity Program Beta」を開始。だが、短尺を動機にしてきたクリエイターは困惑しているとの記事。
メディア感度格差、データで顕在化! 若者にとっての「ネオ新聞一面」はこれ  | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)
【ご紹介】:
「どの層も、マスメディアへの信頼度よりも高い割合で『マスメディアが大きく扱うニュースは重要だ』と感じる傾向がみられた 一方、『重要だと思うニュース』について『新聞1面に掲載されるニュース』を選択した割合には、世代差が如実にあらわれた」。

——先般発表したスマートニュース メディア研究所による調査結果を取り扱った記事。引用箇所にも現れたように、大きく3つに分けた年齢階層のいずれも、マスメディアの発信に価値観、重要性を依拠している。
記事が指摘するように、年齢階層によりそれが異なるのもポイントだが、自分としては、それよりも全体としてマスメディアを重視していることがわかったのが、発見だった。

Disruption This Week—–15/12/2023

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2023年12月11日から2023年12月15日まで。

News avoiders shouldn’t be ignored
「ニュースの特定のトピックやニュース全体から意図的に離れている(多くの場合、あまりに憂鬱になったり、消耗したりするため)という人々は、通常、意図的にニュースを避けていると報告していない人々とほぼ同じ量のニュースを全体的に消費している」。

——ニュースの「選択的回避」議論が少しずつ高まっている(Reuters Instituteが何年も前から指摘している)。これが何をもたすのか自分も気にしているが、スペインの学識である筆者は引用箇所のように述べている。選択的回避者は、一方でニュースの熱烈な回避者でもある可能性。

People are watching longer TikToks. What does that mean for competition with YouTube?
TikTokが数十秒の短尺動画だけでなく、クリエイターに長尺(最長で15分程度)系を推奨し始めたことは紹介した。米Insider Intelligenceは、この動きもあってか、2024年には米成人のTikTok平均視聴時間が55分と、YouTubeを5分程度上回ると予測する。
ただし、その利用者数比でいえば、23年においてYouTubeはTikTok(1億230万人)の2倍以上(2億3740万人)ではあるが。
オープンAI、独メディア大手のコンテンツ有償利用へ
【有料購読者向け記事】:
「生成AI(人工知能)の『チャットGPT』を手掛ける米オープンAIは、ドイツの出版・メディア大手アクセル・シュプリンガーと複数年のライセンス契約を交わした。AIツールによるコンテンツ利用に対価を受け取りたいメディア業界には画期的な動きだ」。

——昨日は、米NYTimesがジェネレーティブAI担当幹部を外部から招聘という話題を紹介した。続く今日は、この話題。独最大手メディアが、OpenAIと手を組んだ。AP通信やGetty Imagesなどとの提携に続く大きな動き。記事は「共同発表によれば、チャットGPTはユーザーの質問への回答にアクセル・シュプリンガー傘下メディアのコンテンツを基に要約した回答を作り、回答の下に出典へのリンクを表示する。この新形式は近く利用可能になる予定」と伝える。このようなフォーマットがこれからメインストリームになる可能性が高い。

電子版「For You」開始 一人ひとりに最適記事をお届け - 日本経済新聞
「日本経済新聞社はこのほど、日経電子版アプリに一人ひとりの興味や好みに応じて記事を自動配信する読者専用ページ『For You』を新設しました。記事を読む目的や関心のある分野などの3つの質問への回答をもとに、好みを反映した記事20本をおすすめします」。

——いろいろなコンテキストからニュース(記事)に出会う仕組みが必要。紙面の編成だけが新聞の読み方ではない。

アップルにも影響必至、グーグル敗訴でアプリストア市場揺らぐ可能性
「スマートフォンのアプリストア運営を巡りグーグルがゲーム大手のエピック・ゲームズに敗訴したことで、年2000億ドル(約29兆円)近くを生み出すアプリストア市場のグーグルとアップルの2社による複占が揺らぐ可能性がある」。

——「陪審は全員一致で…エピック側の訴えを認める」とある。同様の訴訟でEpicはAppleに一度は敗れているが(2021年)、状況の変化は加速している。いずれ複数のアプリストアが並び立ち、“税金”のディスカウントが始まる…のだろうか。

WSJスクープ | 米紙NYタイムズ、AI担当の編集幹部を初採用
【有料購読者向け記事】:
「米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)は、同社初の人工知能(AI)担当編集ディレクターにデジタルメディア『クオーツ』の共同創業者、ザック・スワード氏を起用した。主要報道機関の間でAIの潜在性やリスクが議論される中、この新技術を重視する姿勢を浮き彫りにした」。

——懐かしい「Quartz」の名が。それはともかく、NYTimesはやはり、ジェネレーティブAIにリーチしてきた。対外的にはAIへの抵抗感や懸念を打ち出しているが、内部的にはどう活用するかを真剣に検討していることは想像できた。さて、国内勢諸紙はどう感じたか?

Audiobox
米Meta、自身の音声を数秒間サンプリングするだけで、人工音声を生成するサービス「Audiobox」を公開(デモ版)に供した。先月発表されていたもの。
自身の音声に加えて、さまざまな効果音を追加できる。単なるスピーチデータだけでなく、“番組”を創れるというわけだ。
The Next News Disruption Has Already Begun
【有料購読者向け記事】:
先日も簡略に紹介したが、厳格なペイウォール制に賭け、広告に依存しないメディア「The Information」が開設から10周年。
創業者でCEOのJessica E. Lessin氏がこれまでの10年、今後の10年を語る記事を執筆。広告(主や売上の)プレッシャーをはねのけることで、スクープに専念できたと誇ると同時に、テクノロジーへの期待も述べる。
「生成AIを使って、読者は質問により新しいことを学ぶことができるようになる。チャットボットが世界を征服するとは思わないが、新しいツールは今後も大きな心理的変化を促し、読者の出版物に対する期待も変えていくだろう」。
「ChatGPT」から個人情報含む学習データの抽出に成功--Google DeepMind研究者ら
「プロンプトでコマンドを入力し、『poem(詩)』といった単語を延々と繰り返すようChatGPTに求めたところ、学習データを含むテキストの断片を丸ごとChatGPTに出力させることに成功した。アライメントされたプログラムでは通常、そのような漏えいは起こらないはずだ」。

——ジェネレーティブAIがユーザーのプロンプトによって、機微な情報を出力しないよう調整する仕組みを「アラインメント」と呼ぶ(らしい)。これをハックするアプローチが次々と発見されているとする記事。GenAIの脆弱性が顕在化されてきている。

日経、デジタル購読数100万に 専門メディアで法人開拓 - 日本経済新聞
「日本の有料ニュース媒体で100万超えは初めて。電子版有料会員数は89万7千、電子版以外のデジタル購読数が3年前の約2倍の11万5千。英文媒体『Nikkei Asia』とあわせると107万となりました。世界の新聞社の有料ニュース媒体では日経グループの英フィナンシャル・タイムズ(FT)に次ぐ5位水準で、FTとあわせると326万と世界3位の規模です」。

——デジタル版購読100万人突破は、国内メディアとしては“悲願”だっただろう。チャートでもわかるように、専門(バーティカル)系など、多メディア化が寄与している側面もある。

有料ネットニュース利用、日英は9% エンタメと競合 - 日本経済新聞
【ご紹介】:
日経MJ紙への連載コラムが日経電子版に転載されました。よろしければどうぞ。➡ 有料ネットニュース利用、日英は9% エンタメと競合
保守・リベラル、日米で差異 - 日本経済新聞
【ご紹介】:
「日本の有権者の政治的価値観を扱った調査結果がこのほど明らかになった。スマートニュースメディア研究所が大学教授らと取り組んだ『スマートニュース・メディア価値観全国調査』だ」。

——スマートニュース メディア研究所が実施した大規模な世論調査結果から。まだ、発表時のリリースや解説中心に紹介されているが、今後、データを用いた本格的な研究が現れてくるだろう。

スマートニュース、有料ビジネスニュースとクーポンを集約した日本初の購読サービス『SmartNews+』を提供開始 国内外25以上のメディアの厳選記事が読み放題
【ご紹介】:
「ニュースアプリ『SmartNews』で、有料ビジネスニュースとクーポンを集約した日本初となる、購読サービス『SmartNews+』(スマートニュースプラス)の提供を開始しました」。

——ビジネスメディア系の各種プレミアムコンテンツを定額で読み放題に。いずれ購読すべきメディアを発見するのにも良いかもしれないです。