Disruption This Week—–23/2/2024

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2024年2月19日から2024年2月22日まで。

Magazine ABCs 2023: Full breakdown of titles shows 12.4% circulation fall
英国の有料雑誌の発行部数(電子版を含む)を開示するABC調査によると、1位はThe Economistの電子版で99万1,887部。100万部超だった22年からわずかに減少。月間平均発行部数の合計で見ると、21年は2680万、22年は2400万部、23年は2100万部となった。
「サブスク1,000万をいかに達成したか」NYタイムズ発行人が語るデジタル戦略の10年とは?
「(イノベーション・レポートは)未来の洞察の文書だと思われていた。しかし、あれはカルチャーについての文書で、人々が変化に対してノーと言うのをやめるために、必要な条件を整理しただけのものだ。間違っていたことはたくさんあった」。

——現New York Times発行人A・G・サルツバーガー氏へのロイター・ジャーナリズム研究所による長文インタビュー。どう紹介しようかと思っていたところ平和博氏が整理してくれた。引用箇所も面白いが、個人的にはWashington PostやWall The Wall Street Journalなどがレイオフをしていることについて、失敗ではない、むしろ素晴らしく善戦していると持ち上げている点が印象的だった。

米国の配信サブスク利用者、年間支出額は平均約14万円
「新しいレポートによると、サブスクリプションサービスを利用する米国人は、平均で年間924ドル(約13万9000円)のサブスクリプション料金を支払っているという。月額にすると77ドル(約1万2000円)だ」。

——自分の場合は、Amazon PrimeとYouTubeをサブスクしているが、あくまでリニアTVのニュース報道の補完の扱い。アメリカなどでは主役がストリーミングなのだろう。

YouTube dominates TV streaming in US, per Nielsen’s latest report | TechCrunch
米調査会社Nielsen、リニアTV(オリジナルのTV番組視聴)とストリーミングの視聴に関する1月の調査結果を公表。YouTubeがテレビ画面での視聴の8.6%を占め、米国で再びストリーミングサービス全体のトップとなったことを明らかにした。一方、Netflixのテレビ視聴率は7.9%だった。
Washington Post taps Connelly as senior editor for AI strategy and innovation - Talking Biz News
米Washington Post、AI戦略およびイノベーションを所管する上級編集長としてPhoebe Connelly氏を起用。同氏はこれに先駆けて若年層読者獲得のための次世代イニシアティブを率いてきた。同グループでは昨年からAIを活用するためのハッカソンなどを社内で開催するなど活動中だという。
Apple reportedly faces €500m fine from EU over music streaming access
音楽ストリーミングのSpotifyがAppleによってアップストア以外の代替支払い手段の提供を妨害されたとする訴訟で、EU規制当局は、Appleに対し800億円(5億ユーロ)もの制裁金を課す動きと英Financial Timesが報道。
既に紹介しているように、Appleは制裁を逃れるための新ポリシーを発表しているわけだが。
Top 25 US newspaper circulations: Largest print titles fall 14% in year to September 2023
米Alliance for Audited Media調査、米25の日刊紙の1日平均発行部数は、230万部(2023年9月時点)。前年は270万部、2023年3月までの半年間では260万部だった。米最大の日刊紙のWSJ(555,182部)とNYTimes(267,639部)は、それぞれ前年比14%減、13%減に。詳しい一覧表を含む記事。
PAPERWALL: Chinese Websites Posing as Local News Outlets Target Global Audiences with Pro-Beijing Content - The Citizen Lab
カナダToronto大に設けられたCitizen Lab、欧州、アジア、南アメリカの30カ国で現地の報道機関を装った、中国により運営されている少なくとも123のWebサイトのネットワーク「ペーパーウォール」を発見。その詳細な事例と手順などを研究し暴露した。
岸田首相の偽画像などがSNSで相次ぎ拡散 注意を呼びかけ | NHK
「この偽画像を投稿したのはロシアを支持する投稿を繰り返しているアカウントで、転載されたものを合わせて70万回以上見られていました。 また、岸田総理大臣の発言の映像を切り貼りして、『日本人の割合は10%で、残りの90%は移民で構わない』などと述べたとする偽情報もXで拡散しました」。

——以前には、岸田首相が卑猥な発言をする…という愉快犯的偽動画が話題となったが、今回のケースでは、政治性を帯び始めた。影響工作が意図されているようにも見えないではない。警戒水域に入ってきた。

米・オープンAI 文章から動画を作成する新たなAI「Sora」開発を発表|日テレNEWS NNN
「夜の東京の街を歩く女性や東京郊外を走る電車の車窓など日本に関する動画もあり、サクラが満開の中、雪が降る東京の街といった中々見られない光景もAIによって簡単に作成できることがうかがえます」。

——日本をテーマにした動画では、なかなかありそうでなさそうな光景を創り出している。動画広告を安上がりに制作するのにはフィットしそう。現在は、制作者(クリエイター)を選んで試行運用を始めた段階だが、本格的にサービスインする際にはどうするのだろうか。

Disruption This Week—–17/2/2024

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2024年2月13日から2024年2月16日まで。

‘Less writing articles; more AI conversation’: We get reaction to ex-Googler’s WaPo op-ed tip for publishers
“書かれたものから会話へ”。
印刷物の時代には、出版社は「記事」を作り、それを印刷、その紙を読者に配布していた。Webは、配布と紙に関するすべてを変えたが、記事はほとんどそのままに。だが将来は、出版社とって記事が主題ではなくなり、読者との会話について考えることになるとの論説。どのように会話の関係として読者(というよりユーザー)をつなぎ止めるのか。AIチャット能力が主役となる時代がやってくる。
'Miraculous' Substack-based Ankler Media eyes $10m annual revenue next year
2022年1月創刊のSubstackベースのニューズレターメディアのAnkler Media。ハリウッド情報のメルマガが出発点だが、早くメルマガ5タイトル、ポッドキャスト2タイトルのメディア企業に成長。すでに年商100万ドル超に。25年には1,000万ドル超を目指すとCEOは述べる。
Slate reports best year | Semafor
30年近い歴史を誇る米メディアSlate。老舗のカルチャー、政治関連メディアにとって、2023年は、長い歴史のなかで最高収益となったという。ポッドキャストとWebサイトで50/50の広告収入を獲得。しかも広告収入は同社収入の半分以下。有料メンバー制が過去2年で倍増という。
Extending our Mastodon social media trial
英BBCのソーシャルメディアへのアプローチを研究するチーム、昨年、7月に開始した分散型ソーシャルメディアMastodonサーバーの試行運用が6万ユーザーに到達と公表。詳細なデータや見解を開示。良好な運用状況から試行運用をさらに6か月延長を決めたとする。
Paramount cuts 800 staff two days after Super Bowl was biggest ever TV show
米放送大手CBS、平均視聴者数で1億2340万人(TVとストリーミング合計)を突破し、史上最も視聴された「テレビ番組」となったSuper Bowl LVIIIを放映し、その記録破りの成果を公表した数時間後、CEOであるBob Bakish氏は同社800人のレイオフを発表した。
French Watchdog Uncovers Massive Russian Disinformation Operation 'Portal Kombat'
フランスの対外情報監視機関Viginum、「Portal Kombat」とのコードネームで呼ばれるロシアの大規模なオンライン影響工作活動を指摘。193ものWebサイトからなり、ウクライナでの戦争をめぐる欺瞞情報を流布し、欧州各国のウクライナ支持を挫くことを目的としたものだとする。
食べログ「評点」変更の是非は 高裁判決を弁護士が解説 - 日本経済新聞
【有料購読者向け記事】:
「グルメサイト『食べログ』の評価基準の変更が独占禁止法違反に当たるかが争われた裁判に関心が集まっている。東京高裁は1月、評価点を決める『アルゴリズム(計算手法)』の変更が『優越的地位の乱用』に当たるとして飲食チェーン店側への賠償を命じた一審判決を取り消し、サイトを運営するカカクコム側の逆転勝訴とした」。

——高裁で一審判決が取り消された。プラットフォーマーによるアルゴリズム変更をめぐる判例が揺れている。専門家3名による見解を紹介する記事。

Decoding new newsroom jobs in the age of AI

Media Makers Meet | What’s new in media

Decoding new newsroom jobs in the age of AI
“AI時代の新しい報道部門の仕事を読み解く”。AIを報道メディアの業務にどう生かすか。最近現れた報告書を読み解く論。後半ではAIを報道に生かすために生み出される新たな職務を解説している。
広告だらけの低品質サイトに100億円超流入 資生堂は監視強化 - 日本経済新聞
【有料購読者向け記事】:
「広告だらけで独自性のない低品質コンテンツを集めたサイトに、国内で年100億円超の企業広告費が流入している疑いがあることがわかった。生成AI(人工知能)が悪用されて低品質サイトは3割以上増えた。見せかけの閲覧数に基づいて広告費が請求され、広告主の予算が浪費されている。資生堂などは検知ツールで監視を強める」。

——「生成AIによる低品質コンテンツ」に力点が置かれた記事だが、これをある種のコンテンツファーム(検索上位を狙って人為的にコンテンツを生産し広告収入を集める手法)は、米国では2010年ぐらいには大きな動きになったし、2016年にはご存じキュレーションメディア騒動があった。根幹にはこの種のモラルハザードを生みやすい広告テクノロジーがある。

Artificial Intelligence in the News: How AI Retools, Rationalizes, and Reshapes Journalism and the Public Arena
英Guardian、独バイエルン放送、米Washington Post、英Financial Timesなど35のメディア(新聞、放送など)と報道に携わる多くの専門家から聴取したAIと報道をめぐるさまざまな現状と課題、そしてプラットフォームとの関係をリポートした必読資料が公開された(PDFも入手可)。
メディア接触の新潮流...「ニュース回避傾向」が強い層の特徴とは?
【ご紹介】:
昨年11月に公開された「スマートニュース・メディア価値観全国調査」。そこからいくつも新たなファクトが浮かび上がります。本記事は気鋭の研究者・大森翔子氏が調査から見出した、我が国での「ニュース回避」トレンド。従来、ロイター・ジャーナリズム研究所が例年取り扱い、注目を集めてきました。それが日本においても姿を現しています。「メディア接触の6類型」分析で読み解く斬新で貴重な論考です。
今のニュースメディアに欠けている機能とは何か
【ご紹介】:
私も末端で参加させてもらったメディアをめぐる座談会。元日経メディアラボ所長の坪田知己氏が中心となってメディアをめぐる話題が広がりました。よろしければご一読を。

Disruption This Week—–29/12/2023

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2023年12月25日から2023年12月29日まで。

How Artificial Intelligence Will Change in 2024
【有料購読者向け記事】:
米InformationのやはりAI論説担当のStephanie Palazzolo氏が2024年のAIを展望。1) OpenAIとMicrosoftは仲違いへ、2) AI企業のM&Aが活発に、3) 高コストで雑なTransformerベースのAIから代替手法が台頭、4) 大統領選がAIで混とん化、5) AIハードウェア新潮流へというラインナップだ。
アルトマン氏ら、AIデバイスでアップルのベテラン起用-関係者
「アップルを退社する幹部のタン・タン氏がこの取り組みの一環としてアイブ氏のデザイン会社ラブフロムに加わり、同社は新製品の外観と機能を形作る。アルトマン氏はソフトウエアの基盤を提供する計画」。

——すでに紹介した話題だが、元Appleのデザイナー主幹であったジョニー・アイブ氏(iMacやiPhone、iPadの製品デザインをリードしたとされる)と、OpenAI CEOのサム・アルトマン氏が組んで、ジェネレーティブAIを駆使するハードウェア製品を創るとのプロジェクト。記事は、このプロジェクトにやはりiPhoneとApple Watchデザインを担当タン・タン氏が加わるという話題。
まだ、まったく先行きがつかめるところにきていないが、もし、具体化するとすれば興味津々だ。

New York Times Co.’s OpenAI-Microsoft Suit Is a Negotiating Tactic
【有料購読者向け記事】:
米New York TimesがOpenAIとMicrosoftを訴えたが、「これは交渉戦術だと考えるべきだ」と米The Information論説委員Cory Weinberg氏が述べる。かつ、NYTにとって「危険」な戦術でもある。裁判の動きによっては、交渉上の優位性を失いかねないとする。
記事は、「著作物の限定的な利用を認めるフェアユースの原則が人工知能モデルにどのように適用されるかをめぐって、Times紙が裁判を起こすのはあまりにも危険だ。裁判所は、OpenAIが合法的に運営されていると判断すれば、Timesが求めるライセンス収入の一部を得ることができなくなる」と述べる。
How one of the world’s oldest newspapers is using AI to reinvent journalism
「世界最古の新聞社がAIを活用してジャーナリズムを改革する方法」。英Worcester Newsは、1690年創刊の老舗ローカル紙。「AIアシスト記者のおかげで、編集部の他の記者は、裁判所に行ったり、議員に会ってコーヒーを飲んだり、村祭りに参加したりできる」と同紙編集者は語る。
The Times Sues OpenAI and Microsoft Over A.I. Use of Copyrighted Work
【有料購読者向け記事】:
米New York Times、OpenAIおよびMicrosoftの両者を、同社の「数百万の記事を、信頼できる情報源」としてChatGPTなどのAIに学習させたことを、「価値ある著作物を違法なコピーで使用」したと提訴。生成したLLMやトレーニングデータの破棄を求める。当該New York Timesによる報道。
TikTok teams up with fact checkers to stop election disinformation on site
TikTok、1月に行われる台湾総統選をめぐり、TikTok上の偽情報の拡散を抑止するなどの目的で「2024年選挙ガイド」を策定。台湾のファクトチェック団体MyGoPenとパートナーシップを提携。選挙の中立性を守るため、公式情報への誘導、真偽確認のヒントなどを提供していくという。
TikTokの親会社が中国大陸発であることを考えると、興味深い動きだ。
Emplifi Reports Instagram Reels Outperformed All Other Video Content Across Instagram, Facebook, and TikTok
SNSマーケティング支援プラットフォーム提供の米Emplify、Instagram、Facebook、そしてTikTokの動画によるマーケティング効果を比較調査。中でもInstagram Reelsの効果が最も高いとし、その長尺化で、短尺と比較して広告主により多くのエンゲージメントを提供しているとする。短尺動画全盛から、中・長尺化への動きがここでも進展。
イスラエル・パレスチナ問題の100年を読み解く 「三枚舌」起点に - 日本経済新聞
【有料購読者向け記事】:
「問題の根っこには、100年以上前の英国による『三枚舌外交』がある」。

——日経新聞が3つのグラフィックと3つのQAで難しい問題を分かりやすく解説する試み。“お子様向け”の体だが、もちろん、実は大人が難しいと感じているニュースを解説する試みだ。

Apple Explores A.I. Deals With News Publishers
【有料購読者向け記事】:
これはちょっとした衝撃のスクープ。
ジェネレーティブAI関連で音沙汰のなかったAppleだが、水面下で、著名メディア(出版社)とAI学習のための許諾交渉を進展させているという。複数年で5,000万ドル規模だと米New York Timesが報じた。提案を受けた企業には冷淡な対応を示しているところもあるという。
Online searches to evaluate misinformation can increase its perceived veracity - Nature
「誤報を評価するためのオンライン検索は、誤報の信憑性を高める可能性がある」と、科学雑誌「Nature」に掲載された新研究。情報の真偽を確かめるべく検索を行うことで偽情報をより信じてしまうと、5つの実証実験。
(パブリックエディターから 新聞と読者のあいだで)読みやすさへ、スマホ仕様の編集を 藤村厚夫:朝日新聞デジタル
【ご紹介・有料購読者向け記事】:
朝日新聞パブリックエディターとしてのコラム第2回目を執筆しました。個人的に、「新聞(の記事)は難しい」のが課題だと思っています。が、多くの人は「難しい」とは言いません。悩みつつ裾野からアプローチしてみました。
ビートルズの「新曲」発売にAIの力 - 日本経済新聞
【ご紹介】:
日経MJ紙への寄稿が、日経電子版に転載されました(大部時間が経っていますが笑)。よろしければご一読を。➡ ビートルズの「新曲」発売にAIの力

Disruption This Week—–22/12/2023

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2023年12月18日から2023年12月22日まで。

I gave ChatGPT the last 13 years of Nieman Lab predictions
こちらもカスタムChatGPTを用いたジャーナリズムへの応用を試したとする論説。「箇条書きを段落に展開したり、記事を要約に収縮させることができる。ニュースレターのプレビュー用の要約や、通知用の短いフレーズなどだ」など実践的に使えることを述べる。
また、過去Nieman Labが掲載した1,369本の将来予測記事を学習させ、それによる検証を行ったところ、正解と誤回答を得たとレビューする。こちらも興味深い。
How less, not more, data, could help journalism | Semafor
米Semafor記者らが、カスタムGPT作成ツールを使い、3種のAIボットを実験的に開発。分かったことは、少量データでもLLMを効果的に構築することができること。もっと言えば、適切にデータを絞るのが有用ということだ。記事は、「ジャーナリズムを変えるかもしれない」とする。
The obsession with “trust” will end
報道メディアが、読者に自身への「信頼」を闇雲に求めるのは間違っていると語る英ジャーナリズム研究者。
「読者にあなたの働きを示し、あなたの間違いを認め、訂正しなさい。知らないことを正直に述べ、読者が興味を持っていることに耳を傾けなさい」と述べる。
AIと著作権、明確化の一歩 データ検索や回答生成「許諾必要な場合も」 文化庁「考え方」素案:朝日新聞デジタル
【有料購読者向け記事】:
「今回示された素案では、生成AIによるデータ検索や回答の生成は、著作権法上許諾が必要となる場合もあると記した。また、生成AIによる学習をパスワードなどで防いでいるデータベースの著作物に対し、それを回避して学習させることは、法の定める『著作権者の利益を不当に害する場合』に該当するとした」。

——ある種のガイドラインの働きをする、考え方を示したというもの。案外影響力を及ぼしそうだ。

TikTokのバイトダンス、23年売上高1100億ドル突破へ-テンセント抜く
「短編動画投稿アプリ『TikTok(ティックトック)』で知られる中国のスタートアップ、字節跳動(バイトダンス)は、2023年の売上高が1100億ドル(約15兆7800億円)を超える可能性があることが関係者の話で明らかになった」。

——米、インドなどで叩かれつつ、それでもTikTokパワーは止まらない。中国国内でも最大級の企業へと成長。

広告掲載料は0円。3万部がすぐに在庫切れ。京都の型破りフリーマガジン『ハンケイ500m』編集長/円城新子さん【編集者の時代 第8回】|クリエイティブのコアとカラーに迫るメディア「CORECOLOR〜コレカラ」
「円城:ハンケイ500mは、京都のあるバス停を起点に半径500mのお店を紹介するマガジンです。なので、まずは編集部のメンバー数人で、その範囲を歩きます。普段の歩くスピードより、ゆっくりと。そして、ここ、面白そうという『触覚』が反応したお店に入る」。

—— 古幡さんの「出版業界ニュースまとめ」の紹介で見つけた記事。一気に読んでしまうのが惜しいような楽しいインタビュー。

Inside The New York Times’ Big Bet on Games
【有料購読者向け記事】:
「いまや、New York Timesは、たまたまニュースも提供するゲーム会社でもある」。社内で冗談めかして語られるほど、「Wordle」「Connections」「Spelling Bee」と同社はゲームがもたらす収益に賭けている。同部門の人員は約100名となった。
EU、DSA(デジタルサービス法)違反の疑いで正式にXの調査を開始。調査の主要対象は、イスラエル・ハマス間の先頭をめぐる違法性の高いコンテンツ。その他にも研究者へのデータ提供、コンテンツ監視態勢、広告をめぐる透明性その他も調査される。
News Publishers See Google’s AI Search Tool as a Traffic-Destroying Nightmare
【有料購読者向け記事】:
米メディア「Atlantic」のタスクフォースの調査では、Google検索に、新たなにAIによる検索が導入されれば、ユーザーのクエリに対する完全な回答を提供してしまう。同サイトは、そうでなければ得られたであろうトラフィックを75%の確率で逃してしまうことがわかったとする記事。検索からのトラフィックに依存していたメディアはその脅威に怯えている。
TikTok is pushing longer videos. Some creators worry about the vibe shift | CNN Business
TikTokが中・長尺動画投稿をクリエイターに呼びかけている動きはすでに紹介した。収益化をめざすクリエイターらへのインセンティブプログラム「Creator Fund」を廃止し、新たに「Creativity Program Beta」を開始。だが、短尺を動機にしてきたクリエイターは困惑しているとの記事。
メディア感度格差、データで顕在化! 若者にとっての「ネオ新聞一面」はこれ  | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)
【ご紹介】:
「どの層も、マスメディアへの信頼度よりも高い割合で『マスメディアが大きく扱うニュースは重要だ』と感じる傾向がみられた 一方、『重要だと思うニュース』について『新聞1面に掲載されるニュース』を選択した割合には、世代差が如実にあらわれた」。

——先般発表したスマートニュース メディア研究所による調査結果を取り扱った記事。引用箇所にも現れたように、大きく3つに分けた年齢階層のいずれも、マスメディアの発信に価値観、重要性を依拠している。
記事が指摘するように、年齢階層によりそれが異なるのもポイントだが、自分としては、それよりも全体としてマスメディアを重視していることがわかったのが、発見だった。

Disruption This Week—–24/11/2023

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2023年11月20日から2023年11月24日まで。

The top 7 media people in AI

Business Insider

The top 7 media people in AI
米Business Insiderが選ぶ「2023年 AIの100名」から、メディアに関わる研究者、メディア人、IT企業人のトップ7名を紹介する記事。例えば、New York Timesのチーフ・データサイエンティストのChris Wiggins氏は、同社の約1,000万人の購読者の行動分析に深く関与しているとする。
アルトマン氏CEO復帰、オープンAI解任劇の火種となった1本の論文とは?
「論文では、アンスロピックが安全性を重視し、クロードのリリース時期を遅らせたことに対し、スピードを重視したオープンAIが、『見切り発車』的にチャットGPTを公開し、様々な問題点を指摘される、という経緯をたどったことを指摘した。
問題になったのは、この共著論文の筆者の1人が、オープンAIの取締役のメンバー、トナー氏だったことだ」。——今回の騒動の一因として、米New York TimesやWall Street Journalが報道したAI開発における安全性問題をめぐる攻防があったと整理する平和博氏の論。OpenAIとAnthropic間のビジネス面に熾烈な競争と研究者らの倫理面を含む生々しい攻防が表面化していたことは、間違いない。それほど、技術、研究、そしてビジネスが未分離な分野なのだ。

How Bloomberg Media got to 500,000 subscribers - and how it plans to reach a million
デジタルの有料会員数50万人を超えた米Bloomberg Media。そのデジタル担当最高責任者Julia Beizerに成功要因を取材した記事。現在の成功要因は18カ月前に遡るという。購読者の88%が年会員だとし、オファリングや会員育成やエンゲージメント強化策などなんでもやると述べる。
テレビとスマホが競る時代…毎日の生活に必要な情報、何から得てますか?(最新) : ガベージニュース
「(生活に必要な情報の入手先として:)全体では『テレビ』『スマホ・携帯電話』の順だが、年齢階層別では50代までは『スマホ・携帯電話』の方が上になる。さらに70歳以上では『新聞』が『スマホ・携帯電話』を追い越す形となり、『テレビ』『新聞』『スマホ・携帯電話』の順となる」。——2023年9月公表の文化庁の調査から。本日行うスマートニュース メディア研究所の世論調査と研究者の研究とも関わるのだが、メディア接触と年齢階層の関係が、現代、そしてこれからの社会的統合に影響を及ぼす可能性が強い。個人的にも考えるべき重要なポイントと見ている。

AIタレントの功罪「もっと危機感を」 権利課題の日本が最も推進?:朝日新聞デジタル
【有料購読者向け記事】:
「2020年の芸能実演家などの生活実態調査報告書では、インターネットで利用するための音楽・映像に参加する際に『必ず契約を交わしている』という芸能実演家が2.6%しかいなかった。これでは権利が十分に行使されないだろう。著作権料及び著作隣接権料収入が全くない人は78.7%もいた」。——ジェネレーティブAIが芸能分野にもたらしかねないインパクトを、多面的に論じていて勉強になる記事。ただし、やや引いた視線で見ると、AIがインパクトをもたらし、場合によれば労働市場の変化を生むかもしれないのは、芸能の分野だけではない。また、引用した部分などは、AIが関与する以前の旧弊的問題であり、その現代化の方が先に問われるべきではないかとも感じるのだが。

投稿削除「1週間程度で」 ネット中傷、事業者に要請 総務省案:朝日新聞デジタル
【有料購読者向け記事】:
「削除する場合の判断基準や手続きなどを定めた削除指針を作り、公表させることが適当と判断。被害者からの削除申請を受け付ける窓口の整備や、日本語による対応も求める。誹謗中傷を含む投稿の拡散を防ぐため、申請の受け付けから1週間程度での対応を求める」。
——雑にいうと、経営体制の変更やコスト削減などの動きから、人的な監視力が落ちているプラットフォームに対して、対処、それも迅速な対処を求めるのは意味のある動きと言える。その一方で、「削除の強制力」だけに重きが置かれては、言論の自由が損なわれるという古典的命題も浮上する。やはり影響力あるプラットフォームに(削除だけの強制ではなく)「対処の透明化」を求めることが必要。その仕組みづくりそのものも、社会的視線の届く場で決まっていくのが、望ましい。
 I Tried Meta’s Ad-Free Instagram Subscription. This Is What It Was Like. 
【有料購読者向け記事】:
EUの規制強化に対処し、広告フリー・有料版のInstagramが誕生。記事は仏在住記者がしつこいターゲティング広告を避けるため試した有料版のレビュー。
「広告なしのInstagramを使っても、プロモーション・コンテンツからは逃れられない。私は広告の本質に疑問を感じている」。
「AI翻訳システムを活用すれば、すべてのメディアがグローバルな競争に参加する日も近い」。
英FT参加のコンサル企業FT Strategiesの中心人物がメディアとジェネレーティブAI活用のトレンドを語る。一方で「車輪の再発明は避けよう」とも述べる。
マスク氏が自己弁護、反ユダヤ投稿巡り-メディア報道「虚偽」と反論
「米テスラの最高経営責任者(CEO)でXのオーナーであるマスク氏が先週、ユダヤ人が白人に憎悪を抱いているとの投稿に同調したことで、反発の声が噴出。このメッセージはその後、ホワイトハウスやテスラの投資家からも批判を浴びた。ウォルト・ディズニーもXから離れた大企業の一つ」。——OpenAI騒動に隠れているが、同じくらい騒動を起こしているのがXだ。Musk氏が「反ユダヤ」的言説に一定の賛同を示したことと、X内でナチス支持投稿に大手ブランドの広告が近接して掲記されたことが、広告主らにインパクトを与えている。

「GAFA」は「GOMA」に? AIの未来を握る4社とは | 米誌が考える、テックの行き先
【有料購読者向け記事】:
「米誌『アトランティック』が着目したのは、勢いを増す生成AIの分野で注目を集める『GOMA』だ。AIチャットボットとその類のものはまだ初期段階にあるとしながらも、『AIの世界では、すでにすべてがたった4社に集約されつつある。グーグル、オープンAI、マイクロソフト、アンソロピックである』と書く」。——AIの大トレンド。その現段階の集約点が見えてきた。昨日まで見ていたGAFA中心的な世界観とも異なることは、OpenAIのCEO辞任劇でも垣間見える。