Disruption This Week—–23/8/2024

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2024年8月19日から2024年8月23日まで。

Twitter alternative? News publishers see potential in Bluesky
報道機関にとって、BlueskyはX代替となるか? 英Press Gazetteが、Blueskyを利用するメディア、報道機関に、このプラットフォームの可能性について訊いた。NYTimesやCNNなど大手も使い始めたこのX代替は、大手プラットフォームよりはメディア事業者に協力的なのだという。
July Exhibits Rare Upswing in TV Viewing, Amplified by Streaming and First Days of Summer Olympics, according to Nielsen’s The Gauge™ | NielsenJuly Exhibits Rare Upswing in TV Viewing, Amplified by Streaming and First Days of Summer Olympics, according to Nielsen’s The Gauge™ | NielsenShareClose
米視聴調査Nilsen、7月のTVおよびストリーミング視聴者調査を発表。YouTubeがテレビ視聴の41.4%を占めた。ストリーミング・プラットフォームとして初めてTV視聴全体の10%を突破したことも明らかに。
「生成型AI」活用急ぐグローバル縦読み漫画…韓国で高まる「規制・政策」急ぐ声
「縦読み漫画『ウェブトゥーン』のグローバルなプラットフォームが生成型AI(人工知能)の活用を積極的に進める中、韓国国内でも関連する規制や政策の整備が急務だという声が高まっている。新技術に対応する政策の枠組みが整備されていないため、ウェブトゥーン業界は海外市場に目を向けている状況である」。

——お隣りの韓国発の話題だが、効率的な多言語対応が求められるクリエイティブ(まさにこのウェブトゥーンなど、コミックスはそうだろう)には、ジェネレーティブAIサービスとの融合、利用が急務だろう。その一方で、剽窃や改ざんも簡単に起きそうだ。権利保護と市場活性化策の両面が浮上するという図式がAIにはついて回る。

Pindrop、精度99%でディープフェイク音声を見抜く「Pulse Inspect」をローンチ

BRIDGE(ブリッジ)|「起業家と投資家を繋ぐ」テクノロジー&スタートアップ関連の話題をお届けするブログメディア

Pindrop、精度99%でディープフェイク音声を見抜く「Pulse Inspect」をローンチ
「Pindrop によると、350以上のディープフェイク生成ツール、2,000万以上のユニークな発話、40以上の言語で独自のディープフェイク検出モデルをトレーニングした結果、約20万サンプルのデータセットの社内分析に基づくディープフェイク音声の検出率は99%に達したという」。

——“Deep”なのか“Cheap”なのかはいざしらず、世界では手軽に画像合成、音声合成などができるツールが出回るようになっている。これらを解析し、合成の痕跡を検知するツールやソリューションも、動き始めている。

OpenAI signs deal to train on Condé Nast content, surface stories in ChatGPT | TechCrunch
OpenAI、雑誌メディア大手の米Condé Nastと提携。ChatGPTおよびSearchGPTで、New Yorker、Vogue、Vanity Fair、Bon Appétit、そしてWiredなど名前の立ったメディアのコンテンツを学習、表示できるようにする。契約内容の詳細は不明だが、複数年契約との情報だ。
デジタル広告で生成AIを使用する際の課題
「IABが、デジタル広告で生成AIを使用する際の法的問題とビジネス上の考慮事項を整理したホワイトペーパーを発行。著作権などの知的財産権、プライバシー、倫理など」。

——ほぼ全文の引用なので恐縮ですが。広告をめぐるジェネレーティブAIの利用も、実は昨今の重要な課題。記事中に資料原典への倫苦あり。

オリンピック、TVer再生が1億回超…民放初の配信一本化が奏功・放送では視聴率伸びず
【有料購読者向け記事】:
「民放が受け持った試合のライブ配信と、日本選手の活躍を短くまとめたハイライト動画、配信開始から1週間の見逃し配信などにより、計約3800時間分を提供。約2100万人が利用し、総再生数は1億1000万回を超えた。総再生時間は2300万時間に上った」。

——時差が絶妙に日本の視聴時間とずれていたことで、この種のオンデマンド視聴を伸ばす格好に。またそもそもTVer自体の認知も高まっていた。記事は「昨年7月に3000万人弱だった月間利用者数が、今年7月は過去最高の4000万人超となる」と伝える。リアル視聴の衰退と好コントラストに。

米Bloomberg Media、6月には全世界での購読者数54万人を公表し、好調に成長を続けている。記事は同メディアCDO(Chief Digital Officer)のJulia Beizerにその好調の理由をインタビューする。同氏は、HuffPost、Washington Postでデジタル(プロダクト)を推進した。
OpenAIの「SearchGPT」はグーグルへの挑戦状…「検索には、今よりもはるかに優れたものになる余地がある」
「サム・アルトマン(Sam Altman)CEOも『検索には今よりもはるかに優れたものになる余地があると我々は考えている』とXに投稿し、『「昔ながらの検索」の方がいいと思うことに、我ながら驚いている』と付け加えた」。

——少し前にOpenAIが発表したAI検索「SearchGPT」の実像が少しずつ見えてきた(先日、日本でもAI Overviewsを公開したGoogleは、SearchGPTに先んじるのを重視したのだろう)。
チャットボットの利用用途は、なによりも「教えて」だろうから、検索との親和性が高いことは想像できる。まさに「検索はもっと進化できる」。

Local News Is Dying, but Not in San Francisco
【有料購読者向け記事】:
米国内のローカルメディアの危機的な状況について何度か紹介している。この記事はその逆の現象を報じる。場所はサンフランシスコ。この地域では10年前と同数で27ものメディアが存在する「超競争的環境」。
中でも際立つのが、富豪に支援されたThe San Francisco Standardで、2021年創刊だ。

Disruption This Week—–16/8/2024

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2024年8月13日から2024年8月16日まで。

SAG-AFTRA Strikes Groundbreaking AI Digital Voice Replica Pact With Startup Firm Narrativ
米SAG-AFTRA(映画俳優組合・米テレビ・ラジオ芸術家連盟)、新興AI企業Narrativとの間で、会員である声優の音声を用いたスポット広告の制作と広告主とのマッチングを行う事業について契約を締結。声優への支払いが定めた額を下回らないようにするなど各種保障を盛り込むもの。

How does the BBC use AI?

Media Makers Meet | What’s new in media

How does the BBC use AI?
「例えば、『スプリングウォッチ』という番組があ。自然を題材にしたシリーズで、AIは、予想される野生動物の種類を学習した上で、鳥や動物を発見する。 プロデューサーは何時間もかけて撮影した映像の中からカモが映る場所を探す手間が省ける」。

——英BBC在籍の「テクノロジー予測ヘッド」のタイトルをもつLaura Ellis氏にインタビューした記事。(ジェネレーティブ)AI利用の意義と、一方で課題(リスク)などに言及。そのリスクについて、同社がどんなポリシーで対処しているのかなどにも言及。

UK local newspaper closures update: 293 now gone since 2005
米ローカル紙が次々と休刊…。“ニュース砂漠化”が話題になって久しいが、英国でも同様の現象。
英Press Gazette調べでは、過去2年間で22の英ローカル紙が休刊。2005年以降では少なくとも293紙が消滅。
だが、デジタル創刊も20との朗報もある。

「AI編集者」と講談社現代新書の表紙や帯を生成、開始1カ月で18万回利用

AdverTimes.(アドタイ) by 宣伝会議 – 宣伝会議が運営する、広告界のニュース&情報プラットフォーム「AdverTimes.(アドタイ)」

「AI編集者」と講談社現代新書の表紙や帯を生成、開始1カ月で18万回利用
「サービスは、担当編集者の『相川さん』に扮したAI との対話を通して進む。相川さんから『早速ですが出版までに本のタイトルを決めていきましょう、タイトル案を教えて下さい。』とチャットが届き、自ら考えたタイトルと著者名義を入力する」。

——一言で言えば、現代新書の企画シミュレーション(ゲーム)ということだろうか。実際の出版企画に結びつくものが出てくる可能性もあるのでは?

The Little Streamer That Could
【有料購読者向け記事】:
「FAST」(Free Ad-Supported Streaming TV)が注目されているが、なかでも米Fox傘下の「Tubi」が話題。視聴調査のNielsenによれば、総視聴時間でPeacock、Max、Paramount+、Apple TV+を常時上回り、Disney+と互角の戦いを繰り広げる。視聴を伸ばしている背景には、視聴無料というのに止まらず、視聴者登録も不要という手軽さがあると指摘する記事。
ポーランド起業家、メタ提訴へ 権利侵害する偽広告を放置と主張
「ポーランドの起業家ラファウ・ブルゾスカ氏は、フェイスブックとインスタグラムに自身の顔を使った偽の広告が掲載され、妻に関する虚偽の情報が拡散されたとして、メタを提訴する考えを明らかにした。問題を報告した後も広告が表示され続けることについて、同社の責任を追及する」。

——各国で同様の事象が起きているわけだ。認識すべきなのは、同じ手法が、あるいは同じ犯罪者集団が世界で暗躍しているのではという仮説。もう一つのポイントは、規制当局が強く動かなければ、Metaは、この種の犯罪を抑え込もうとしないということ。つまり、世界で一斉に抑止する行動をとらないということのようだ。

視聴者が「切り抜き動画」作れる番組、フジテレビが放送 番組の放送前後に素材を提供
「動画共有サービス『TikTok』を運営するバイトダンスは8月13日、視聴者が切り抜き動画を作成できるテレビ番組『1分 de トレンドシェア キリヌキ可TV ~ウチのキリヌキはご自由に~』をフジテレビで放送すると発表した」。

——なんとなく既視感のある発想。“うまく話題を呼べれば…”ステップアップを考えようかというアプローチだろう。最初からもっとユーザーに自由度を提供しなければなと思う。

Separate, unequal, and ‘glorious’

Columbia Journalism Review

Separate, unequal, and ‘glorious’
分離、不平等、そして「栄光」——。
Clay Christensen氏の「イノベーションのジレンマ」学説をニュースメディアに当てはめると何が起きるか。社内外の新興勢力に対する旧編集部勢力の猛反発だ。これらを分離すべきか、統合すべきか。最近の米Washington Post、CNNなどを題材に論じる記事。
Elon Musk's misleading election claims have accrued 1.2 billion views on X, new analysis says
こちらは英国暴動関連ではないが、Elon Musk氏の問題投稿をめぐる分析。非営利団体Center for Countering Digital Hateの調査分析によると、同氏が今年Xに投稿した米大統領選関連の偽・誤情報は50件を超え、約12億ビューを生んでいる。いずれにもコミュニティ・ノートは付されていないというのだが。
イギリス暴動の発端「デマ」捏造の女逮捕 イーロン・マスク氏も偽情報を拡散 | TBS NEWS DIG
「現地メディアによりますと、女はイギリス中部に住むアパレル会社の役員で、X上で殺人犯の名前を捏造した上、『去年、ボートでイギリスに渡って来た難民だ』とする虚偽の投稿をした疑いが持たれています」。

——先にBBCの真偽検証(BBC Verify)チームからの記事を紹介した。どうやらその延長線上(つまり、影響工作というよりも経済犯か)で逮捕に至ったようだ。タイトルに加えられたマスク氏の件は、同氏がX上で散々、偽誤情報を振りまいていることを指す。別の投稿で紹介しよう。

Disruption This Week—–28/6/2024

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2024年6月24日から2024年6月28日まで。

NYT's Hannah Yang on subscription ceilings, international markets and the news bundles
「New York Timesは、ユーザーを獲得して6〜12か月間維持するために、紹介キャンペーンを利用している。だが、価格などのオファーはユーザーの行動と機械学習アルゴリズムに依存する。
ここ英国では、1年間、週わずか0.50ポンドのオファーが届いたばかりだ。別のブラウザでは、7日間無料、その後月2ポンドというオファーだった」。

——記事は、米New York Timesの「最高グロースおよび顧客担当」のHannah Yang氏にインタビューしたポッドキャストの紹介。
引用のくだりは、記事を執筆したJacob Granger氏の地の部分。記事は、NYTimesがデジタル購読者をさらに増やせる余地(2027年には、現在の1,050万人を1,500万人とする計画)として、世界の購読者予備軍の存在と、ゲーム、料理、スポーツと多種のコンテンツをアップセル可能な購読予備軍の存在をあげる。

GeminiがYouTube動画を一瞬で要約してくれるようになった(しかも無料) | ライフハッカー・ジャパン
「Geminiは、キャプションや字幕など、YouTubeが自動的に生成するテキストを使ってYouTube動画を要約します。つまり、動画にキャプションや字幕がない場合は、動画からは何も抽出できません。また、要約機能はすべての言語に対応しているわけではありません。現在対応しているのは英語、日本語、韓国語のみ」。

——YouTubeコンテンツの要約機能は、便利そうだ。若干の注意点を紹介しておく。

AI検索「Perplexity」の記事盗用疑惑を独自調査──無断スクレイピングで回答を生成か
「『WIRED』の調査から、Perplexityに関連するマシン(具体的にはAmazonのサーバー上にあり、Perplexityが操作していることがほぼ確実なもの)が、WIRED.comや、『WIRED』と同じコンデナストに所属するほかのメディアのコンテンツをスクレイピングしていることが判明したのである」。

——Perplexity関連で紹介してきた記事の和訳が出たので改めて照会しておく。WIREDはこの事象について詳しく報道しているメディアだ。

国産LLM開発のELYZA、GPT-4の性能を凌ぐ新モデルを発表

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国産LLM開発のELYZA、GPT-4の性能を凌ぐ新モデルを発表
【有料購読者向け記事】:
「特筆すべきは、このモデルが推論や知識応用の面で優れた結果を示している点だ。文章生成、ロールプレイ、情報抽出、推論、構造化、人文科学、科学技術、プログラミングなど、幅広いタスクで高い能力を発揮している。唯一、数学の分野でやや劣る結果となったものの、それ以外のカテゴリではほぼ完璧な性能を示した」。

——興味深い進展。気になるのは、このようにポジティブに報じられるような技術開発であれば、喜んでコンテンツプロバイダーは、自らのコンテンツ資産を学習用に差し出すのかどうかということ。

声優の利益保護へ音声データを認証 AIカバー対策、初の団体設立へ:朝日新聞デジタル
「AI(人工知能)に学ばせる音声データを認証する団体が来月にも設立される。25日に会見した関係者によると、国内初。AI開発者は、認証を受けた質の高い安全なデータを購入でき、声優らにも対価が支払われるようになる。データの追跡や透明性の確保につながるため、AI開発と知的財産の保護という点からも先駆的な例となりそうだ」 。

——一般社団法人・日本音声AI学習データ認証サービス機構(AILAS(アイラス))の設立にともなっての報道。世界に先駆ける取り組みではないだろうか。データ認証(お墨付き)を与えるプロセスが興味深い。

Smashing, from Goodreads' co-founder, curates the best of the web using AI and human recommendations | TechCrunch
すぐれた書籍の紹介に力を注ぐソーシャルサービス「Goodreads」。共同創業者Otis Chandler氏が新たに、すぐれた「ニュース記事、ブログ記事、SNS投稿、ポッドキャスト」などの発見を助けるサービス「Smashing」が発表。AIとコミュニティの力を駆使するモデルだという。
記事はChandler氏が、その発想を得るにいたった経緯を詳しく述べている。
音楽生成AIのSunoとUdioを全米レコード協会が著作権侵害で提訴
「訴状では、特定の音声録音の特徴(発売された年代、テーマ、ジャンル、アーティストの説明など)を含む的を絞ったプロンプトを使用すると、著作権で保護された音声録音に酷似した音楽ファイルが生成される例が複数提示されている」。

——記事には、RIAAが権利侵害と酷似を指摘する楽曲のデモプレーヤーがリンクされている。また、サムネールはその酷似ぶりを指摘する比較図版だ。また、この種の侵害の特徴は、「規模は想像を絶するものだ」ということかもしれない。自動的に無数の権利侵害と見られる楽曲が生成できるということだ。

Exclusive: Amazon mulls $5 to $10 monthly price tag for unprofitable Alexa service, AI revamp
米Amazon、製品投入以来10年間利益をあげたことがなかったスマートスピーカープロジェクトのAlexaにテコ入れを計画。新たなAI開発で「能力を高めたAlexa」を投入、同時に月額5〜10ドルの有料課金化をめざす。Reutersによるスクープ。
Algorithms should not control what people see, UN chief says, launching Global Principles for Information Integrity
「アルゴリズムが人々の見るものを制御すべきではない」——。
国連事務総長が「情報の完全性に関するグローバル原則」を発表。誤った情報、偽情報、ヘイトスピーチによる被害に対処するための早急な行動の必要性を強調した。
AI音声による詐欺防止へ メタ、オーディオ透かしで新技術
「メタ(Meta)は、人工知能(AI )が生成したオーディオ・クリップに、いわゆる『透かし(ウォーターマーク)』となる隠し信号を埋め込めるシステムを開発した。ネット上でのAI生成コンテンツの検出に活用できる可能性がある」。

——画像系ではC2PAのようなメタデータを透かしとして用いる業界標準が動き出している。音声データでも同様の仕組みが待たれてきたが、Metaが「オーディオシール(AudioSeal)」を発表。すでにGitHubなどで公開済みだという。これを標準に育てられるかどうか。

Disruption This Week—–7/6/2024

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2024年6月3日から2024年6月7日まで。

How Taiwan’s factcheckers fight Chinese disinformation and ‘unstoppable’ AI - Taipei Times
台湾のファクトチェック組織「MyGoPen」(現在、40万人の購読者を擁する)創始者の葉子揚氏への取材記事。Taiwan FactCheck CenterやCofactsなど新たなファクトチェック組織が加わったが、台湾を標的にした偽情報の脅威もより巨大化。さまざまな事例を生々しく紹介する記事。
It Looked Like a Reliable News Site. It Was an A.I. Chop Shop.
【有料購読者向け記事】:
月間来訪者数1,000万人を誇り、米msnをはじめとしてWashington Postや英Guardianなどにも記事を提供してきた香港発ニュースサイト「BNN Breaking」。従業員らの証言で、数々のジェネレーティブAIを用いた他社サイト模倣記事を発信してきたことが明らかになった。NYTimesらに追及され、サイトを閉鎖に。
ワシントン・ポストがニュースレターに音声 生成AI を導入。「自分の好きな方法でコンテンツを消費する時代だ」 | DIGIDAY[日本版]
【全文閲覧には要購読手続き】:
「5月20日、米紙ワシントン・ポスト(The Washington Post)は政治と政策をテーマとする3つのニュースレターに音声生成AIを追加し、購読者はニュースレターの内容を『聴く』ことができるようになった」。

——「ワシントン・ポストが所有、運営するプラットフォームでは、音声コンテンツの再生回数が30日間の平均で400万回に達するが、そのうち90%近くはアプリによるもので、音声コンテンツが大部分を占めているという。1日あたりの音声コンテンツ再生数は昨年末から倍増していると広報担当者は語った」と記事にはある。優良顧客(愛読者)と音声コンテンツ利用とには正の関係があるらしい。

無名の作家がTikTokを最大限に利用してベストセラーになるまで | 自費出版で100万部以上も!
【有料購読者向け記事】:
「視聴者から『本にしてほしい』というメッセージを受け、2021年の秋にこの本を一冊19.99ドル(約3100円)で販売しはじめた。
『最初の売れ行きは遅かった』が、2022年後半にTikTokの直接販売プラットフォームを使い始めて風向きが変わった」。

——YouTubeやTikTokのインフルエンサーであった25歳のケイラ・シャヒーン氏が、自身の啓発トレーニングを“自己出版”。TikTokの直販システムを使い100万部販売という……。

Fake AI Tom Cruise is part of a Russian scheme to mess with the Olympics, Microsoft alleges
【有料購読者向け記事】:
すでに紹介したが、ロシアがEUへの影響力工作を進めていることが、種々報道されている。ターゲットの一つに仏五輪があるが、AI生成の偽Tom CruiseがIOC幹部を侮辱する動画が、ロシア発の「Storm-1679」によって流布とMicrosoft脅威分析チームが警告している。偽動画はNetflixなどのブランドを騙る一方、一方でレビューで高い星を獲得したなども偽装。手の込んだ仕掛けだという。
News avoidance: Publisher rewrites journalism rulebook for most contentious stories
ニュージーランドのあるメディア、読者の「ニュース回避」を抑止する新メソッドを発表。同メディアは、読者の感情の変動を追跡する「センチメントトラッカー」を駆使して、従来言われてきた回避対策とはことなる手法を実践する。
ジャーナリズムの古典的な文章作法だった「逆三角形」を見直す。「子猫とスポーツ」だけが対策ではないと。
メディア総接触時間、20代男性が500分越え/若年女性はスマホが5割以上占める【博報堂DYMP調査】
「スマートフォンでのテレビ番組視聴およびテレビ受像機での無料動画視聴の利用率を調査。すると、スマートフォンでのテレビ番組視聴が3割台に増加した。また、テレビ受像機での無料動画視聴も過半数に達した」。

——恒例の博報堂DYMPによるメディア接触(時間)の調査結果。スマートフォン優位の趨勢は、2024年も変わらないが、CTVによるネット視聴の動きが進んでいるのが、興味深い。個人的にはYouTubeの“マスメディア化”が進んでいる動因のひとつと見ている。

Guardian CEO Bateson ready to ‘do a deal’ with AI companies ‘on the right terms’
英メディアThe Guardianを率いるGMGのCEO、Anna Bateson氏、公開イベントでAI企業との取引交渉に取り組んでいると示唆。1年前の同イベントで居並ぶメディア企業は否定的な姿勢だったが、その後、すでにFTら2社が交渉を締結。Guardianもそれに続く動きを示した。
Washington Post: Telegraph veteran to take over from Sally Buzbee as executive editor
昨日の米メディア界の話題は、Washington PostとWall Street Journalでの動き。まずはWaPo。同紙初の女性編集長となったSally Buzbee氏が短い在任期間で、編集部を去る。同紙は昨年200名を超す人員削減を行うなど大きな経営危機に直面していることが知られている。
“The way we raise the money at The Guardian is different than any place I’ve ever been”
1億2,000万ドルもの個人からの寄付金を得る英The Guardian。特に収入増が顕著な米Guardian担当者に取材した記事。「我々はEメールの充実に力を注いできた。今では7%から24%となっだ。だがそれでも76%はWebからの獲得だ」とペイウォール制を敷かない利点を述べる。

Disruption This Week—–31/5/2024

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2024年5月27日から2024年5月31日まで。

Early signs show Google AI Overviews won't mean 'dramatic downward dive' for news traffic
検索結果を要約という形式で返す新たな検索機能「Google Overviews」。サイトへの参照トラフィックを劇的に減らすのではとの懸念が高まるが、SEOの専門家は「激減とはならない」との見方を示した。Googleのパートナーシップ担当の幹部も、「過度に要約はしない」と述べる。
どうやら、チューニングレベルで、メディア側の懸念を沈静化させようということのようだ。
AI image misinformation has surged, Google researchers find
Googleや複数のファクトチェック団体の研究者によれば、AIによって生成された偽画像が2023年春以降、急速に拡散、今やテキストやフォトショップのような従来の編集ツールで加工された画像とほぼ同程度に一般的になっているという。
「A Large-Scale Survey and Dataset of Media-Based Misinformation In-The-Wild」との査読前論文で公表。
London Evening Standard to close daily newspaper and launch new weekly
創刊160年を超える英国の老舗日刊紙「London Evening Standard」、日刊を廃止し週刊化を計画と発表。地下鉄構内でのWiFi整備、コロナ禍での在宅勤務の常態化が経営を圧迫と、Paul Kanareck会長が説明。
メタなどSNS大手に広告審査基準の公表義務化へ なりすまし防ぐ - 日本経済新聞
【有料購読者向け記事】:
「30日の論点整理では広告掲載に関する事前審査基準の策定・公表のほか、『日本語や日本の社会・文化・法令を理解する者が十分配置されている』ことも求める。人工知能(AI)による自動審査を実施している場合は、その実効性に関する説明も要請する」。

——いわゆる“著名人を騙る詐欺広告”問題。もちろん、念頭にあるのは、SNSなどを運用する大手プラットフォーマらによる広告内容の事前(掲載中もだが)審査体制の強制化。

HUGE Google Search document leak reveals inner workings of ranking algorithm
Googleの検索ランキングアルゴリズムに関連する膨大なドキュメントが漏洩。3月13日以降Githubにて閲覧できる形になっていた。同社アルゴリズム関連の漏洩はこれが初めてではないという。文書のさまざまな点を専門家が分析しているが、大きなサプライズはない模様だ。
OpenAI's new safety committee is made up of all insiders | TechCrunch
OpenAI、同社プロジェクトと運営を巡る安全性とセキュリティを監督する新しい委員会を設置と発表。だが、この委員会は第三者ではなく、同社CEOであるSam Altman氏を含む社内の人間で構成される。同社は、最近も安全性をめぐり幹部が退社するなどの対立を起こした経緯がある。
「AIと共存すべき」人気声優・梶裕貴 自身の声で自由にしゃべれるAIソフト発売へ 「たくさん悩んで」決断
「梶(=梶裕貴)さんは『当初はソングボイス(歌声合成ソフト)のみの開発にとどめる考えだった』という。だが『プロジェクトに対する大きな期待値を感じ、少しでも音声AIの明るい未来に貢献できるなら』と、トークボイス(声の再現ソフト)の開発を決断した」。

——「AIと敵対するのではなく、共存すべき」と梶氏は考えだそうだ。この種のアーリーアダプターが学んだことを近い将来、開示・共有してくれれば、さらにありがたい。

Big Tech Moves More AI Spending Abroad
【有料購読者向け記事】:
米コンサルティング企業DA Davidsonのアナリストは、AmazonやMicrosoftなどがAIインフラに今年1000億ドル以上を費やすと予想。場合によればさらにそれが増えるとする。経済成長の進ちょくとスループット向上のため、投資が世界へと分散するとも指摘する記事。

米Washington Postの発行人兼最高経営責任者に就任して間もないWill Lewis氏が、集まった社員に向け同氏が「昨年、7700万ドルの損失を出したこと、2020年の最盛期から読者が50%激減したこと」を表明し、再建プロジェクトの概要を説明。新たな有料購読サービスの追加を提唱した。
オープンAIがニューズと提携、WSJなどのコンテンツ表示可能に
「合意の一環としてオープンAIのサービスは、ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)、バロンズ、マーケットウオッチなどニューズの出版物に掲載されたニュースを表示できるようになる。オープンAIはここ数週間にフィナンシャル・タイムズ(FT)やドットダッシュ・メレディス、ソーシャルメディア企業レディットなど欧米の主要メディア企業とコンテンツの表示やライセンスに関する契約を結んでいる」。

——大手報道企業から総スカンを食らったかと思いきや、News Corpら最大手となんとか提携にこぎ着けつつあるOpenAI。現在では、良質な英語コンテンツが最大の獲得目標のようだが、これから多言語展開への遠い道筋が待っている。