Disruption This Week—–22/11/2024

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2024年11月18日から2024年11月22日まで。

コムキャストがCATVチャンネル分離へ、MSNBCなど-関係者
「メディア・ケーブルテレビ(CATV)大手の米コムキャストはニュース専門局『MSNBC』や『CNBC』『USA』などのCATVチャンネルをスピンオフ(分離・独立)する計画だ。事情に詳しい関係者が明らかにした。視聴者や広告主を失いつつあるCATV事業へのエクスポージャーを減らす」。

——Bloombergの報道が出てから、米メディア業界はこの話題で持ちきりだ。各社の経営上の複雑な要因が作用しているため、一概に言えないが、なによりも最大の環境変動要因はCATVの収益構造が弱体化していることだろう。これまで収益性が良すぎたことから変革が遅れたのは、他のレガシーメディアに似ている。ストリーミングの一部がかろうじて黒字化を示すが、安定化するには、独占的な地位獲得が必要になる。

Google Discover has become Reach’s ‘biggest referrer of traffic’
Facebook、InstagramなどSNS、Google検索からの流入が減少していると、多くのメディア担当者が体感している。そんななか、検索を利用したコンテンツフィードの「Google Discover」が存在感を増している。記事は英大手メディア企業Reachの幹部がその影響や特性を語る。
AI detection tool helps journalists identify and combat deepfakes
DeepfakeをAIを用いて検知するジャーナリスト向け無償サービス「TrueMedia」の紹介記事。開発するTrueMedia.orgの創業者はAI研究家Oren Etzioni氏。同氏のコメントなどを紹介。難題はフェイク作成側も検知を回避する方策を生み出してくることだという。
米司法省、グーグルに「クローム」売却を求める方針-関係者
「訴訟はトランプ政権下で提起され、バイデン政権でも継続された。判事が是正案を受け入れれば、オンライン検索市場と急成長するAI業界を一変させかねない」。

——PCなどでは重要アプリであり続けるWebブラウザ。そのシェアトップの「Chrome」は、Googleにとっても、検索、マップ、Gmailなどの重要基盤で、ブラウザ自体は無料だとしても市場の支配力はすさまじい大きさだ。かつてNetscapeを駆逐したMicrosoftとIEの関係が想起される。

Unveiling LIMINAL PANDA - Threats to Telecom Sector | CrowdStrike
米CrowdStrikeの防諜対策幹部、同社が「LIMINAL PANDA」との名称を与えた、重要インフラに対する中国のサイバー脅威アクターについて初めて公開。リポートでは、LIMINAL PANDAのインフラへの侵入の手口など詳細に紹介する。
「2024年米国選挙におけるプラットフォームXのアルゴリズムによる潜在的偏向の計算分析」。
豪Queensland大研究者Timothy Graham氏ら、X(Twitter)が2024年7月に大きくアルゴリズムを変更。オーナーMusk氏によるTrump候補支持表明に符合するとの論文(プレプリント)を公表。
報道経験ないニュース系インフルエンサー、米若者の頼れる情報源に
「ピューの調査によると、30歳未満の成人の約40%が、ニュース系インフルエンサーから時事問題や政治の最新情報を入手している。こうしたインフルエンサーの大半に上る77%は、報道機関に所属せず、メディアでの勤務経験もない。
新たなデータはメディア環境の変化を浮き彫りにした。若者を中心に、政府や社会問題、経済といった重要なニュースについては、非伝統的な情報源の利用が一段と増えている」。

——併せて紹介する米Pew Research自身のリリースブログを参照されたい。

幻冬舎コミックス、Xへの画像投稿は「AI学習阻害・ウォーターマーク付き」で 11月15日の規約変更を理由に
「Xは15日の規約変更により、ユーザーが入力した情報を、AIのトレーニングに利用する旨を明文化する予定だ。しかしXでは、これを嫌って他のSNSに“移住”しようとするユーザーや、投稿する画像にAI学習の阻害処理・ウォーターマークをつけようと呼び掛ける人も見られ…」。

——これもXをめぐる話題なので、遅まきながら紹介しておく。引用箇所にあるように、Xの利用規約がAI学習に強制的に用いられることを嫌っての動き。この種のせめぎ合いがこれから活性化するだろう。Xは、自社のxAIの開発にとどまらず、他のAI開発ベンダーに学習用コンテンツを売って大儲けするオプションを手に入れようとしているわけだ。

Norwegian startup Factiverse wants to fight disinformation with AI
ノルウェーのスタートアップであるFactiverse、米国大統領討論会のライブファクトチェックを提供し、いくつかのメディアパートナーによって利用されたという。同社の技術はLLMとは異なり、情報検索に基づいく別タイプのモデルを構築したと創業者は述べる。
「X」利用者が続々と「ブルースカイ」へ移動 仕組みは? オーナーは? - BBCニュース
「世界各地でかなりの人数がブルースカイのアプリをダウンロードしている。イギリスでは14日、アップルのアプリ市場『AppStore(アップストア)』で、最もダウンロードされた無料アプリになった」。

——Musk氏の振る舞いもあって、Xを離脱する動きが高まっているものの、記事にもあるように、BlueskyがXを脅かす存在になるためには、今後の長期にわたり成長が欠かせない。そのためには、大物たちの寄付に頼る資金源では心許ない。これからがBlueskyの胸突き八丁の上り坂だろう。

Disruption This Week—–9/11/2024

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2024年11月5日から2024年11月8日まで。

AIや独禁法巡る米政策、大きく変化か-身構えるシリコンバレー
「トランプ氏との関係を改善させる方法を見つけた大物もいる。7月13日の暗殺未遂事件に対する同氏の対応を『最高だ』と称賛したメタのマーク・ザッカーバーグCEOだ。そしてフェイスブックは偽情報対策の多くを取りやめた。米紙ワシントン・ポストのオーナーであるベゾス氏は、選挙の2週間前に民主党のハリス副大統領を支持する社説の掲載に待ったをかけた」。

——記事で触れている他の重要なポイントは、AIガバナンスの方向感の急転換だろう。バイデン政権が打ち出した政策をどれくらいひっくり返すのかに注目が集まる。

Musk says Trump’s podcast appearances made ‘big difference’ in election
今回の選挙で見事な勝利を実現したTrump氏。それは、Joe Rogan氏のような人気ポッドキャスターとの自由奔放なインタビューを喜んで受けたおかげでもある、とElon Musk氏は主張する。リスナーはTrump氏の何気ない会話で人物を高評価し、対立候補との違いを見たのだとする。
Publishers hooked on Google Discover traffic risk race to the bottom
世界中の多くのメディア企業にとって、Google Discoverは今や主要なトラフィック源だ。総Googleトラフィックの平均55%をディスカバーが占めている。だが、そこに集中するのは危険だとする記事。Discoverのアルゴリズムはつねに修正され、変動するからだ。
Bloomberg Media launches Bloomberg Live Q&A - Talking Biz News
米Bloomberg Media、最大4人のジャーナリストがその週の主要な経済からハイテクなどのトピックを議論するライブ番組Bloomberg Live Q&Aを開始する。有料購読者はジャーナリストに質問ができる。聴取だけなら無料も可だという。
マスク氏とX、米大統領選偽情報の発信地=専門家
「米実業家イーロン・マスク氏が自身のソーシャルメディア『X』に投稿した米大統領選に関する偽情報や誤解を招く情報が、今年20億回閲覧されるなど、Xが偽情報の発信地となっていることが、非営利団体『センター・フォー・カウンタリング・デジタル・ヘイト(CCDH)』の調べで分かった。
選挙と偽情報の専門家らが4日語ったところでは、選挙結果を左右しそうな7つの激戦州における偽情報の拡散でも、Xが中心的な役割を担っている」。

——強力なインフルエンサーが、自身が保有するプラットフォームを活用して引き起こす化学反応。まさに恐れられていた現代の脅威の一つを、われわれは目撃しているのかもしれない。

「AIエージェント」続々登場 富士通やNTTデータ提供、仕事の進め方に変化迫る 編集委員 吉川和輝 - 日本経済新聞
【有料購読者向け記事】:
「人工知能(AI)が人の具体的な指示なしに自律的に仕事を進める『AIエージェント』が広がりを見せている。AIによるパソコンの自動操作や、企業のAIエージェント開発を支援するサービスも登場」。

——個人的にもエージェントは、一人一サービス、もしくはその得意不得意に応じて一人の利用者が複数サービスを使う時代になるのではと想像する。サブスク型のビジネスに発展していくのでは?

Inside Dow Jones’s AI governance strategy, with Ingrid Verschuren
1年半前に結成された「AI運営委員会」は、米Dow Jonesの組織全体から集まった10人のメンバーで構成され、内および社外におけるジェネレーティブAIの使用事例を評価していると、同社データ・AI担当幹部は述べているという。
AI音声合成サービス「DMMボイス」盛況 公開4日で700万文字の音声を生成 アプリやAPIの提供も計画
「原田さんは、DMMボイスを使った作品を公開しているX上の投稿を紹介しながら『実際DMMボイスを触っているとわかるのですが、すごく楽しいんですよね。声がリアル過ぎて本格的な動画を簡単に作れるので、作り始めると止まらない癖になるサービスです』という」。

——楽しそうだ。この種のサービスを用いて、より凝った作品が生まれていきそうな予感。社会的な安全性を担保するための歯止めをどの辺りに差し込んでいくのか、オープンに議論されるべき。

NYタイムズ、デジタル購読者数伸び鈍化 不透明な経済情勢受け
「米紙ニューヨーク・タイムズが4日発表した第3・四半期決算は、デジタル購読者数の伸びが鈍化し、市場予想を下回った。不透明な経済情勢を受け、消費者が支出を削減していることが背景にある。
デジタル版のみの購読者数は26万人増。前四半期は30万人増だった。ビジブル・アルファのまとめたアナリスト予想は28万200人増」。

——NYTimesの躍進にやや陰り? のちほど紹介するが、自社IRでは買収したスポーツメディアが黒字化、総購読者数が1,100万の大台乗せなどプラスの材料も。

Exclusive: Walt Disney forms business unit to coordinate use of AI, augmented reality
すでに紹介したように、米Walt DisneyがAIやXR(拡張現実)などの新興技術の利用をコーディネートする組織Office of Technology Enablementの設立を公表。従業員は100人程度になる見込みだとの内部情報も。

Disruption This Week—–1/11/2024

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2024年10月28日から2024年11月1日まで。

オープンAI、ChatGPTに検索機能を追加-グーグルへの対抗強化
「オープンAIの『4o』モデルを利用した新たな検索機能はまず、有料サービス『ChatGPT Plus』と『Team』の加入者向けに31日からモバイルとウェブで提供される。無料ユーザーは今後数カ月内にアクセスできるようになる。同社の発表を受けて、アルファベットの株価は一時1.9%下落」。

——ChatGPTの有料バージョンに、「AI検索」機能が追加。わかりづらいが、要するに、従来のChatGPTでは(ニュースなど)最新情報は対象外だったが、それが最新情報にまで拡張されるというのがポイント。驚きは、これを受けてGoogleの株価が下落したこと。やはりAIが従来の検索ビジネスの脅威だと、市場も認識しているということだ。

Exploiting Meta’s Weaknesses, Deceptive Political Ads Thrived on Facebook and Instagram in Run-Up to Election
米メディアProPublica、米国内で8つの偽広告ネットワークが、340以上のFacebookページに16万以上の選挙広告とディープフェイクを用いた政治・社会問題広告を掲載と報道。広告をクリックして毎月のクレジットカード請求にサインアップさせられたりとの被害も生じているという。
How The New York Times is using generative AI as a reporting tool
米New York Timesは、AIを報道にどう用いているか——共和党・Trump陣営の選挙活動を批判するため、同メディアは共和党の活動家らの数年にわたる会議の動画記録(およそ400時間)を入手。単純な文字起こしに始まり、その概要把握にLLMを活用し、調査報道に結びつけたとする記事。
アメリカ大統領選挙、マスコミ信頼度が過去最低 主戦場はSNSに - 日本経済新聞
【有料購読者向け記事】:
「最終盤を迎えた米大統領選で、共和党のトランプ前大統領、民主党のハリス副大統領の両候補はマスメディア以外での情報発信に力を入れている。ポッドキャストや動画共有サイト『ユーチューブ』などSNS上で人気のある人物との連携が、有権者に接近する近道となっているためだ」。

——度々紹介しているが、米大統領選では、SNSなどのプラットフォーム上で人気を得ているクリエイターの役割が大きな注目を集めている。背景には、従来メディアへの不信が、計量的にも示されている。

オープンAI、収入全体の75%は消費者の有料サービス利用-CFO
「(OpenAIの)フライヤーCFOは28日、ブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、オープンAIの収入全体の約75%が消費者のサブスクリプション(定額課金)によるものだと説明。同社の対話型AI『ChatGPT(チャットGPT)』の消費者向け有料プランは現在、月額20ドル(約3060円)からとなっている」。

——では法人向け事業はどのような状態なのか? といえば、「同社は9月、ChatGPTの法人向けバージョンで有料ユーザー数が100万を突破したと発表した」と記事にある。いずれもOpenAIの直販事業を指していると思うが、一方で、大株主のMicrosoftは法人向けビジネスに強いはずだが。OpenAIの収入基盤は強固だ。

バイデン政権、AIに関する国家安全保障覚書を発表
「AI NSM(=国家安全保障覚書)は、安全で信頼できるAI開発における米国のリーダーシップ確保、国家安全保障目標達成のための強力なAIの活用、世界的に有益な国際的なAIガバナンス枠組みの促進という3つの柱に基づいて、具体的な行動を指示するものだ」。

——すでに紹介したが、米国は(特に中国を念頭に)AI開発による安保上の優位性を保つ一方、AIが持つリスクを抑え込むための統治を強化しなければならないという、両極の課題を自覚。その課題に明文的に対処を始めた。

Disney Poised to Announce Major AI Initiative | Exclusive
米Disney、制作者向けの大規模なAIイニシアティブの発表を準備中と、米メディアThe Warpがスクープ。この構想は、クリエイティブワーク(特にポストプロダクションと視覚効果)を一変させるような大規模なもので、同社従業員数百名が携わっているものだという。
「AIゴーストライター」が侵食する創作市場 編集委員 瀬川奈都子 - 日本経済新聞
【有料購読者向け記事】:
「『本当に人が作った曲ですか』。音楽著作権管理のNexTone(ネクストーン)の担当者は、都内の音楽出版社に出向き確認した。生成AIが国内で普及し始めたこの1〜2年、この出版社は毎月のように数千曲もの作品登録申請を続けている」。

——登録申請を求める楽曲の、そのオリジナリティを審査する仕組み自体にも、AIの能力が必要なのではないか。近未来的に見える世界が、すでに現実になっている。

Joe Rogan Takes Center Stage in an Election Season Dominated by Podcasts
【有料購読者向け記事】:
2024年の米大統領選では、マスメディア以上にクリエイターの役割、とりわけポッドキャスターの存在が大きく注目された。SpotifyやYouTubeなどで1,500万人ものリスナーを集めるNo.1ポッドキャスターJoe Rogan氏の番組に、Trump氏が出演した。Rogan氏は、Harris氏にも出演を求めているが、難航しているという。
バイデン政権、安保強化でAI活用へ-軍事・スパイ対策で官民協力
「バイデン米政権は24日公表した国家安全保障に関する新たな覚書で、軍事および情報収集目的での人工知能(AI)の採用を加速させる必要があると指摘し、各政府機関に強力なシステムを安全な方法で速やかに展開するよう指示した」。

——昨今、テクノロジーの話題は、そのまま安全保障の話題として登場する。テクノロジーが安保課題となるまでのサイクルが超短縮されているのだ。AIがその例。いまやAIは米国にとって、対立国への戦略優位性の源泉だが、同時にいかに統制していくかの悩ましい課題でもある。

「人工知能と人間のよりよい共生のために」久木田水生 - スマートニュース メディア研究所 SmartNews Media Research Institute
【ご紹介】:
スマートニュースメディア研究所が開催している「AIと人間のあいだ」研究会からの、新たな論考です。名古屋大学の久木田水生氏「人工知能と人間のよりよい共生のために」。
是非ご一読を。

Disruption This Week—–25/10/2024

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2024年10月21日から2024年10月25日まで。

Google DeepMind、AI生成テキスト判別向け透かし「SynthID Text」リリース
「これは、モデルがテキストを生成する際に、透かし情報をエンコードした疑似乱数関数を用いて、生成される単語の確率分布をわずかに調整することで、透かしを埋め込むというものだ。
テキストの一部を切り取ったり、単語を少し変更したり、言い換えをしたりといった操作を加えても検出可能であり、堅牢性が高い点が特徴という」。

——画像に埋めこむ電子透かしに続いて、テキストでも同様の電子透かしが可能になる技術を発表。画期的だ。ただし、記事中で触れているように、弱みもある。
「SynthID」は、オープンソースとして提供されると、他の報道では述べられている。

Bluesky Announces Series A to Grow Network of 13M+ Users - Bluesky
X代替サービスのBluesky、ユーザー急増と有料オプションなどをアナウンス。それによれば昨年の増資以降、昨年のユーザー100万人から、現在1,300万人に成長。新たな資金調達により高画質動画の投稿やアバターオプションなどを有料で提供するなどに取り組むと表明。
Why millions of Americans avoid the news – and what it means for the US election
「ここ数年、プラットフォームは多くのニュースを配信することから方向転換した。 そのため、数年前と同じように報道に接している人が今もいるかわからない。 ニュースに関心のある人とそうでない人の間には大きな隔たりが生じ、それはますます拡大しているのではないか」。

——近年、Reuters Instituteで、人々のニュース回避現象を研究し、同時にニュースへの信頼意識についても検証してきたBenjamin Toff Minnesota大ジャーナリズム専攻の助教授が語る最近の傾向。
実際、FacebookやInstagram、そしてGoogleのプロダクトが、大手メディア企業への支払いの強制に嫌気して、これらメディア企業のニュースを取り扱わない方針を強めている(実際、プラットフォームからのリファラルトラフィックが激減している)。しかし、多くの(米国では)人々は“ニュースはSNSで手に入る”と考えているということの問題が新たな現象として立ち上がっている。

A Q&A with Semafor founders Ben and Justin Smith on the outlet's second birthday
創刊2周年を迎えた米新興メディアの雄、Semafor。創業CEOと創刊編集長の2人のSmith氏が、この2年を振り返ったインタビュー記事。ジョークも交え抜群に面白い会話。同メディアは現在、ペイウォール制を敷いていないが、収益化の「順序」を意識しているとCEO。意味深な発言だ。
Why Microsoft Copilot Daily launch is 'moment of significance' for news industry
今月初めに米Microsoftが密かに発表した「Copilot Daily」。毎朝、ユーザー一人ひとりにパーソナライズされたニュース(や天気予報)を届けるAIベースのコンテンツサービス。実は、これがニュース業界にとって大きなできごと(の第一歩)である理由を考察する記事。
アクシオス 、特定業界を狙うニッチ戦略で収益回復。米大統領選も追い風に | DIGIDAY[日本版]
【有料購読者向け記事】:
「2年前にカンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル(Cannes Lions International Festival of Creativity)に参加したとき、『ニッチが新たなマスである』という言葉を耳にした。そして今日、当社はニッチにうまくアプローチする方法をブランドに教授している」。

——米新興メディアAxiosの最高収益責任者ジャクリーン・キャメロン氏の言。「ニッチ」が強力かつ巨大な市場であるという逆説は、昨今、さまざまなシーンで感じさせられるところだ。Axiosはシンプルな記事フォーマットと同様、各対象分野に焦点を絞ったバーティカルなニューズレター・メディアの取り揃えというアプローチでも市場をリードしている。

Filmmakers Are Worried About AI. Big Tech Wants Them to See ‘What's Possible’
先週、AIによる動画生成サービスのFBRC .AIとAWSが組み、ジェネレーティブAI映画コンペを開催。また、米Metaは同様のツールMovie Genを一部の映画制作者の試用版を提供開始。Adobeもまた同種製品をデモ。映画産業はAIの台頭の恐れを感じつつ、何ができるか検討に入っている。
ネスレ日本、「キットカット」など音声広告費5倍に 効果は動画並み - 日本経済新聞
【有料購読者向け記事】:
「ネスレ日本(神戸市)が、『キットカット史上最高』キャンペーンなどで、音声メディアへの広告投資に力を入れている。従来と比較し、『Spotify(スポティファイ)』の音声広告にかける費用を5倍に拡大した。同キャンペーンでは、大手動画配信サービスと比較して、同等以上のROI(投下資本利益率)を実現」。

——「音声メディア」といっても、「Spotify」に限定した効果のようだ。加えて、ポッドキャストというよりも、聴き放題楽曲間のCMに効果的のようだ。つまり、語りというより、声・楽曲・効果音重視。クリエイティブの比重が大きい。

How the TikTok Algorithm Works: A Visual Guide to Maximising Engagement [INFOGRAPHIC] - Giraffe Social
TikTokアルゴリズムがコンテンツをピックアップし、より多くの人に見せるようになるのは、何が重要な要素となるのか? それは、ユーザー・インタラクション、ビデオ情報、デバイスとアカウントの設定、そして最後にユーザーの属性と興味だという。
クリエイターのためのTikTokアルゴの詳細解説。
ネットフリックス、会員数の伸びは市場予想上回る
「動画配信サービスの米ネットフリックスは17日、7-9月(第3四半期)に会員数が500万人強の純増となったことを明らかにした。昨年起きたハリウッドのストライキで新しい番組計画が影響を受けたが、同四半期の決算は、財務面のあらゆる主要指標で予想を上回る結果となった」。

——パスワード使い回し対策効果が現時点で現れているとすると、今後の減速が想定される。ただし、映像業界ナイでのNetflixの一強ポジションが数字を押し上げていることもありそう。

「日本の分断を読むための教科書」石澤靖治~「日本の分断はどこにあるのか」・書評 - スマートニュース メディア研究所 SmartNews Media Research Institute
【ご紹介】:
スマートニュース メディア研究所の大規模世論調査を基に上梓された『日本の分断はどこにあるのか』。ジャーナリズムでの経験の深い石澤靖治氏に書評を執筆していただきました。

Disruption This Week—–11/10/2024

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2024年10月1日から2024年10月11日まで。

「Xプレミアム」収益配分の仕組みを変更 インプレゾンビ対策にも?
「今後は投稿の返信欄に広告が表示されても収益は発生しません。代わりにこれからは、投稿に対してプレミアムユーザーがエンゲージメントすることで支払いが行われます」。

——「エンゲージメントとは、ある投稿に対してシェアやコメントなどのアクションを起こすこと」だと記事で解説。「これまでの広告収益分配プログラムでは閲覧数に応じて収益が発生していたため、日本人の投稿に海外のアカウントからリプライが付くケースが多く、災害発生時などに問題視されていた」とも述べている。要するに、“無意味な”閲覧数を稼いでも商売にはならないスキームを目指しているわけだ。

How The New York Times incorporates editorial judgment in algorithms to curate its home page
米New York Timesは、Webでもアプリでも、トップページにアルゴリズムを駆使したコンテンツキュレーションを施している。1日に公開する記事が250超だが、トップページに表示できる記事は50〜60に限られているからだ。このアルゴに編集者の意思をどう反映しているかを語った記事。
X、ブラジルでのサービス再開へ 命令に従い2860万レアルの罰金も支払ったため
「モラエス判事は、Xがブラジルの法律と『国家主権を尊重した司法の決定』を完全に順守することを条件に、活動の再開を許可した。
Xは、虚偽情報を拡散していた(と判事が指摘した)アカウントのブロックと、ブラジルでの海外企業の運営に関する法律で義務付けられているブラジルでの法定代理人の任命という、活動再開のための2つの条件を9月27日に完全に満たしたことを証明した」。

——ブラジル司法の求めるところにXが完全に屈伏した図式のようだ。法令遵守があるとはいえ、“言論プラットフォーム”でもあるものが、権力の意向に屈伏するだけがよいことなのかと言えば、留保しなければ。各国で「擬誤情報のまん延」を材料に、権力が情報の統制に身を乗り出そうとしている瞬間に起きた出来事だ。

グーグルに事業分割要求も、米当局が検討 ネット検索巡る訴訟で
「米司法省は8日、アルファベット傘下グーグルのインターネット検索が独占に当たるとの裁判所の判決を受け、同社にブラウザ『クローム』や基本ソフト(OS)『アンドロイド』など一部事業の切り離しを命じるよう裁判所に求める可能性があると明らかにした」。

——昨日はEpic Gamesとの係争をめぐり、Google Playアプリストアの開放という判決を紹介したが、今日は、改めて分割問題が話題になっている。改めて引用箇所を読み直すと、かつてのMicrosoftの独占時の問題と同じことが起きていることがわかる。

OpenAI exec rules out sharing revenue from SearchGPT with publishers, for now
OpenAIのメディアパートナーシップ担当責任者は、現在のところ、同社がSearchGPT製品から得られる広告収入を、コンテンツを掲出したメディア事業者と共有する方針はないとした。「新しい視聴者による大幅なトラフィック増」で、各メディアに公平に分配されると述べた。
Who U.S. Adults Follow on TikTok
米Pew Researchが新調査結果を発表。いまや成人の半数(52%)がTikTokを通じて定期的にニュースに接触する。だが、米成人のTikTokユーザーが多くフォローするのは、著名人などインフルエンサー。残念ながらジャーナリストらはごく少数に過ぎない。
US judge orders Google to open app store to competitors
「米連邦判事、GoogleにPlayストアをライバルに開放するよう命令」。Apic GamesがGoogleに提起した訴訟で大勝利。競合他社の作るアプリストアに、Google Playストアのカタログを利用できるようにしなければならない。進行中のAppleとの係争の行方にも影響大だろう。
Substack wants to do more than just newsletters | Semafor
好調に拡大するニューズレター配信サービスSubstackの現状を、米Semaforが報じた。報道に寄ればSubstackは直近1年で、購読者を100万人増やしたという。黒字化には至っていないものの、2022年に900万ドルだった売上は好調に推移しているものと見る。
Google’s Grip on Search Slips as TikTok and AI Startup Mount Challenge
【有料購読者向け記事】:
「調査会社eMarketerによると、米国の検索広告市場におけるグーグルのシェアは来年、10年以上ぶりに50%を下回ると予想されている」。TikTokやAmazonがブランド商材の検索に力を入れているからという。特にAmazonは22%のシェアが見込まれているとする。
「沖縄独立」煽る偽投稿拡散 背後に約200の中国工作アカウント - 日本経済新聞
【有料購読者向け記事】:
「『沖縄独立』を促す偽動画が今、SNS上で拡散し続けている。日本経済新聞が先端の人工知能(AI)ツールで解析したところ、背後に拡散を請け負う大量の『情報工作アカウント』が見つかった。主に中華圏に向けたSNSの投稿だが、専門家は今後、日本の世論分断にもつながりかねないと警鐘を鳴らす」。

——朝日新聞による調査報道を紹介してきたが、今度は日経新聞による読みごたえのあるビジュアル調査報道を紹介する。こちらイスラエルで開発されたツールを使うなどして流布されている偽情報を追跡すると、おもに3つの発信源(アカウント)が浮かび上がったという。それぞれは幼稚な動画などだが、結果として広範囲に偽情報が拡散していることも判明。

ロシアの偽情報作戦「ドッペルゲンガー」は西側諸国だけではなく自国首脳部も欺いている
「ロシア政府主導の工作ネットワーク『ドッペルゲンガー』は、西側諸国を標的として、さまざまな偽情報作戦を展開しています。しかしその偽情報作戦が、西側諸国だけではなく、ロシア政府の首脳部も欺く結果になっていることを、世界情勢を扱うニュースサイト・Foreign Affairsが報じています」。

——一昨年にその存在が暴露された、ロシア政府系の偽情報生産企業SDAとその偽情報キャンペーンの主体「ドッペルゲンガー」。その大規模な偽情報生産の状況を克明に伝える膨大な内部資料が西側メディアに漏えいした。この記事は、数GBにおよぶ文書を入手した外交専門誌「Foreign Affairs(フォーリン・アフェアーズ)」の記事を翻訳紹介したもの。影響工作の実像を伝える驚愕の内容。

ChatGPT、会話がスムーズになりました
「ChatGPTで、『高度な音声モード』(Advanced Voice Mode)の提供が始まりました。有料プラン加入者が対象の新しいアップデートです。
OpenAIは機能のリリースに合わせて、本機能を使っている動画を投稿」。

——すでに紹介をしている話題だが、改めて。50か国語に対応しており日本語も含まれる。応答速度が速いのは謳い文句どおりだが、さらに凄いのは動画にもあるように、注文された文章を生成中に、ユーザーが割り込んで指示を与えると、即座に対応する。あとは音声の自然さが高まっていけば……。

Microsoft starts paying publishers for content surfaced by Copilot | TechCrunch
米Microsoftは、同社が展開中のAI機能のCopilotの各種アップデートを発表。注目される新機能が「Copilot Daily」。提携した大手メディアからの天気や時事問題記事の要約を音声で提供する。Dailyに用いられるコンテンツに対して、報酬を支払うという。
“広告への苦情”の50年史 Webサイトで26万件をまとめて紹介 ネット広告に「見たくない」の声も
「日本広告審査機構(JARO)は10月1日、設立から50年の間に寄せられた広告への苦情をまとめたWebサイト『苦情の50年史』を公開した。累計約26万件の消費者の声を分析し、時代ごとの件数の推移や内容、広告媒体などの変化について紹介している」。

——素晴らしい取り組み。「50年間の(苦情・問合せ)件数推移」のチャートを見ると、現在がそのピークであることが如実。興味深い。

Politico’s wonky Pro service to roll out new AI tool | Semafor
米政治専門メディアPoliticoは、テック企業Capitol AIと提携。政策、州・連邦立法、議会委員会の公聴会を詳細にカバーするPoliticoのプレミアム購読版Politico Proの購読者用ツールを開発すると発表。メディアが自らの読者専用サービスのためにAI技術を導入するケースとなる。