Disruption This Week—–8/12/2023

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2023年12月4日から2023年12月8日まで。

100k Club: Exclusive ranking of world’s top paywalled news publishers
英Press Gazette、恒例の購読者10万超の英字メディアのトップランキングを更新。1位は想像通りNew York Times。わずか3か月で電子版のみの購読者数を21万増とし940万人に。2位は、なんと420万人を数えた同じNYT傘下のThe Athletic。Wall Street Journalは350万で3位となった。
ChatGPTが15秒で作った条例が議会で可決、ブラジルで物議
「250字の指示で、わずか15秒後に条例案が完成。同案は委員会で審議されたとはいえ、表現の一部が修正された程度で内容はほぼ当初通りになったという。ホザリウ氏(条例案を提案したハミル・ホザリウ市議)は『AIが作ったブラジル初の条例』と胸を張る」。

——ChatGPTが生成した条例案に一言一句を加えずに上程されたのかどうか確かでないが、問題のある行為とも思えない。要は実質的に正しい、賛意を得る条例であるかどうかだ。

Journalism prepares for a post-search, post-social future
報道メディア業界は、身近に迫ったポスト検索、ポスト・ソーシャルの世界に備えなければならない。
過去10年間、報道メディアはGoogleやMetaのようなデジタル媒介に依存して、記事を配信し、リーチを拡大してきたが、この時代は終わりを迎えようとしているとする、British Columbia大のジャーナリズム研究者によるミニ論説。
「このニュースはAIで生成」と表示するとメディアの信頼度が落ちる、そのわけとは?
「我々はここで、『AIの情報開示のパラドックス』と呼ぶものの証拠を発見した。(中略)透明性が報われず、むしろ これらの(AI)ツールの利用を公表する報道機関は、信頼性が低いと認識され、そのため、そのようなインセンティブが低下する可能性がある」。

——先日紹介した学術論文について、平和博さんが詳しく紹介。要はAIが生成した記事(とそれを掲載するメディア)への警戒感が読者側にあるのだが、これを受けて透明性を高めるべく「AIが生成した記事」といったラベルを、メディアが記事に付したりすると、むしろ、読者はそのメディアに対して不信感を高めるという結果が見えてきた。ヒトの心理機制って、そんなものなのだろう。

トップパフォーマンスのコンテンツをカウントダウンしてみると、現代で最も影響力のあるプラットフォームの1つであるTikTokにおいて、私たち一人ひとりの体験がいかにバラバラであるかがよくわかる。
「私がTikTokで見ているものは、必ずしもあなたが見ているものとは限らないのだ」。
[情報偏食 ゆがむ認知]第5部 操られる民意<1>「中国発」偽情報広がる
【有料購読者向け記事】:
「(NewsGuardアナリストの)ワン氏は、アメブロについて『確認したPFの中で、単一の言語で偽情報を広めたアカウント数が最も多かった』と述べ、『(投稿は)米国は悪の国だと日本の世論に働きかけ、日米関係にひびを入れようとする狙いがある』と指摘する」。

——日本ドメスティックなプラットフォーム(やSNS)などにも影響力工作の動きを読売が大きく紙面を割いて展開。ややこしいのは、日本(の政権)などを直接的に攻撃するようなキャンペーンではないものの、日米の間を裂く取組が動きとして顕在化されていること。日本でも影響力工作は着々と浸透を続けている。

テレビ番組の“今の視聴率”が分かるWebサイト登場、SNS投稿も 「リアルタイム視聴への関心を高めたい」
「その時間に放送しているテレビ各局の番組名とリアルタイム視聴率、視聴率推移グラフなどを確認できるWebサイト。3時間前までの視聴率を確認できるため、少し前のクライマックスシーンの視聴率なども分かるという」。

——「調査パネル(関東: 1万2000人、関西: 4000人、中京: 2000人)のデータから、リアルタイムの視聴率データを生成する」という仕組みだ。そのデータをSNSで共有することもできるという。これはけっこう流行りそうなサービス。

How Jessica Lessin’s The Information Has Survived a Decade of Media Tumult
「現在、Jessica Lessinによれば、Informationのアクティブ読者数は47万5000人(有料購読者と無報酬のニュースレター購読者)である。同氏によれば、今年は黒字を見込む。2023年には、会社の売上計を前年比30%成長させる」。

——米メディアThe Informationが創刊10周年。その間、VCマネーと広告の仕組みを用いて鳴り物入りで誕生した数多くの新興メディア(たとえば、BuzzFeedはその最たるもの)が誕生しては消失していった。Wall Street Journal記者出身のCEO Jessica Lessin氏は、VCマネーに頼らず、広告非表示・厳格なペイウォール型のメディアを創業し、成功に導いた。

Shuffle, subscribe, stream: Consumer audio market is expected to amass listeners in 2024, but revenues could remain modest
調査会社Deloitteが毎年恒例のテクノロジー市場の近未来予測「TMT Predictions 2024(Deloitte Center for Technology, Media & Telecommunication)」を公表。さまざまな分野に焦点を当てるが、紹介するのは継続的な成長が期待されるオーディオ市場。特に、ポッドキャストは全世界で月間17億人のリスナー市場へと成長。
箱庭化するSNS、他サイト誘導2〜4割減 XやFacebook - 日本経済新聞
【有料購読者向け記事】:
「SNSのうちフェイスブック経由は41%も減少した。運営する米メタは投稿の表示順を決めるアルゴリズムを頻繁に変えている。特に5月はニュースサイトなどの外部リンクの掲載順位が下がったとされる」。

——米New York Timesらが“プラットフォームのニュース離れ”と報じてきた事象。記事のとおり、それぞれのプラットフォームの囲い込み的な事情によるのはもちろんだが、ジェネレーティブAIのブームで見えてきたように、利用者も自分の知りたいことを教えてくれるストレートな利用法に傾いているのだろう。

Disruption This Week—–1/12/2023

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2023年11月27日から2023年12月1日まで。

On ChatGPT's first anniversary, its mobile apps have topped 110M installs and nearly $30M in revenue | TechCrunch
ChatGPTがサービス開設からようやく1周年。モバイル関連調査企業data.aiによると、1周年を迎えた現在、ChatGPTのモバイルアプリバージョンは合計で1億1,000万インストールを突破、消費者からの売上は約3,000万ドルに達した。
出版状況クロニクル187(2023年11月1日~11月30日) - 出版・読書メモランダム
「今世紀に入っての雑誌の凋落が一世帯当たりの消費支出にも露わである。2000年の5386円に対して、22年は2526円と46.9%になり、まさに半減してしまっている。
しかもこれは平均であり、20代の場合は2000年7916円に対し、22年は959円、30代は7740円に対し、2154円となり、かつての雑誌のコア読者層の雑誌離れが歴然となっている」。

——引用箇所は、『季刊出版指標』(2023年秋号)が特集した企画から「一世帯当たりの年間品目別支出金額〈雑誌・書籍〉」を惹いた部分。注意したいのは年齢を平均化した記述である点で、年齢階層別に見ると、「とりわけ20代は半減どころか、90%近いマイナス…」となる。これだけを見れば、「雑誌」フォーマットは、もはや消滅に向かっていると言っても良さそうだ。

<img src="https://www.niemanlab.org/images/caleb-woods-VZILDYoqn_U-unsplash-700×467.jpg" alt="So who are the consistent news avoiders?” />
「私たちが、何者であるか(アイデンティティ)、何を信じているか(イデオロギー)、そして私たちが利用するメディアの経路(インフラストラクチャー)が、私たちがニュースとどのように関わるかに大きな影響を及ぼしているということだ」『ニュース回避』。

——「はっきりさせておきたいのは、若者や女性、社会経済的階層の低い人たちのすべて、あるいはそのほとんどが、一貫してニュースを避けているということではない。それは事実ではない」と新刊書『Avoiding News:Reluctant Audiences for Journalism』は述べているという。

Federal government reaches deal with Google on Online News Act | CBC News
Googleとカナダ政府、オンラインニュース法(ONA)をめぐる争いで合意に達し、Googleがニュースメディア企業に年間1億ドル規模の支払いをする見返りに、カナダ国内でニュースのオンライン共有を継続することとなったとする報道。政府高官もそれを認めた。
ttps://www.cbc.ca/news/politics/google-online-news-act-1.7043330
オープンAI内紛 「効果的利他主義」巡る騒動
【有料購読者向け記事】:
「アルトマン氏は今年の春、世界各地を回って、AIは深刻な害をもたらす可能性があると警鐘を鳴らしたが、同氏はまた、EA(=「効果的な利他主義」)を『非常に奇妙な目新しい行動』を見せる『信じられないほど欠陥のある運動』と呼んだ」。

——OpenAIのCEOをめぐる大騒動の背景にあった要素のひとつに、「EA」と「e/acc」(「効果的な加速主義」)があったとの指摘が徐々に明らかになっている。本記事もその視座で解き明かそうとしている。当事者や社員向けの(会社からの)メッセージも、明瞭な説明をしていないので、判定が難しいのだが。

インスタ創業者が作ったニュースアプリ「Artifact」、AIのおすすめが的確すぎて驚いた
「Mark as Clickbait Titleは、要するに“釣りタイトル通報ボタン”です。これはニュースを読んでいるときに媒体にフィードバックしたいことですね。書き手のしての私としても、読者のこういう情報はぜひ欲しいです」。

——いしたにまさき氏によるニュースアプリ「Artifact」試用記。
アルゴリズムがニュースを選択、提案は一般的だが、それへの反応でユーザーのステータスを変化させ、そのステータスに対応した機能を提供する…という相互作用的な特徴が興味深い。併せて、引用箇所のような、“荒れない”ユーザーからの意思表明の仕方については学べそうだ。

Sports Illustrated’s Parent Says Articles by Allegedly Fake Writers With AI-Generated Photos Came From Third-Party Provider
水着写真などで有名な米スポーツ専門老舗メディア「Sports Illustreated」、Webサイトに掲載した記事がAIが作成した顔写真入りで、実在しないライターによる記事と指摘され、それがパートナーから供給を受けた記事だったと認め、パートナー契約を破棄したことを公表。ライターの略歴なども仮想のものだった。
WSJ News Exclusive | Instagram’s Algorithm Delivers Toxic Video Mix to Adults Who Follow Children
【有料購読者向け記事】:
米Wall Street Journal、十代もしくはより幼いインフルエンサーのみをフォローするInstaアカウントを設定し、Reel広告にどのような表示をするか検証。子供たちのきわどい映像やあからさまに性的なアダルトビデオを表示するアルゴリズムだと判明した。
TikTok Ignited a Frenzy for Short Videos. Now It Wants Longer Ones
【有料購読者向け記事】:
「YouTubeはわざわざTikTokのような存在になろうとし、いまやTikTokはYouTubeのような存在になろうとしている」。
YouTubeが短尺動画のShortsに乗り出す一方、短尺動画の本家TikTokは、「1分以上の動画」投稿を奨励。実際、ユーザーの視聴時間の半分が、これらやや長めの動画視聴に集まっているという。
ソーシャルメディアはテレビになるのか
【有料購読者向け記事】:
「ソーシャルメディアがマスメディアへと変貌を遂げたのは、中国系動画投稿アプリ、TikTok(ティックトック)が登場し、テレビを通じた体験を再現できるものが今でも非常に好まれていることが世界中のソーシャルメディア企業に実証されたことが大きい」。

——このテーマはメディアの変遷を考えるうえで、それなりに重要だと思う。TikTokやInstaで人気を博すコンテンツ(投稿)は一握りの人気クリエイターだ。SNSが多種多様な社会的島宇宙を形成している…と想像できる時代は過ぎ去ってしまった。言いかえれば「SNS」と呼ばれるものはもはや消滅してしまった。

新聞・テレビ「信頼」68%…メディア価値観調査
【ご紹介・有料購読者向け記事】:
「『ニュースを十分かつ正確、公平に報道する点においてマスメディアを信頼しているか』との質問で、『信頼している』とした回答は、政治的立場が保守的の人は69%、リベラルは67%、中間は70%だった」。

——こちらもスマートニュース メディア研究所が発表した世論調査の結果からの記事。「マスメディア」への信頼度の高さと政治的な偏りの少なさで、米Pewなどとの調査結果と大きな隔たりが示された。「問題」は、先ほど紹介した「時事」の記事にあったように、若者の新聞離れの進行で、将来の分断の芽がそこに含まれているかもしれない点だ。

Disruption This Week—–3/11/2023

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2023年10月30日から2023年11月2日まで。

「ナイトシェード」はAI企業とアーティストの力関係を変えるか
「シカゴ大学のベン・ジャオ教授(コンピューター科学)だ。『AIを訓練する企業はやりたい放題です』。
だが、ジャオ教授の研究室が開発した新しいツールにより、この力関係は変わるかもしれない。 『ナイトシェード(Nightshade)』と呼ばれるこのツールは、画像のピクセルに微妙な変化を与えることで機能する。人間の目には見えない変化だが、機械学習モデルを騙して、画像に実際とは異なるものが描かれていると思わせるのだ」。

——人間にとって不可視の細工が、AIの誤動作を引き起こすのだという。「犬の画像は猫になり、帽子はトースターになり、車は牛になる」。画像をめぐる防御モデルは得られそうだが、依然としてテキストをめぐる防御モデルへの展望が確立していない。

Condé Nast, Publisher of Vogue, Will Cut 5% of Its Work Force
【有料購読者向け記事】:
「VOGUE」誌をはじめとする著名媒体を多く擁する米Condé Nastが従業員の5%相当の削減に踏み切る。大々的に発表していた動画制作の社内スタジオ構想を撤回。同社が儲からないTikTokやYouTubeショートなどの分野で変化が著しいとする。従来であれば、出版社が作成したメディアブランドによる中・長尺動画をYouTube等に投入するビジネスモデルが想定されていたが、早くもそのトレンドは消失してしまった。
Interview: The War on Disinformation
OSINTを手がける著名なBellingcat。リーダーのEliot Higgins氏が今次のパレスチナ紛争をめぐる情報戦について見解。
「人々は何が起きているのかに非常に強い見方を持っているだけでなく、早く早くと答えを求める。そのため、OSINTをしている人々にプレッシャーがかかる」。
Elle UK's move from subscriptions to membership shares access to editors' 'daily joys'
英国版Elle(Elle UK)の編集長Kenya Hunt氏、印刷版&オンライン版購読制に加えて、メンバーシップ制のElle Collectiveを立ち上げた意味を、取材インタビューで語る。Elleファン層に対し、読書以外にさまざまな体験を共有するアプローチを採ると述べる。
出版状況クロニクル186(2023年10月1日~10月31日) - 出版・読書メモランダム
「23年はかろうじて1兆円の(出版物)販売金額を保つことになろうが、24年には1兆円を割ってしまうことが確実となってきた。ピーク時の1996年には2兆6564億円に達していたわけだから、24年には実質的にその3分の1程度となり、それは1970年後半の金額をも下回ってしまう」。

——人口減のトレンドは加味するとしても、新たなコンテンツの流通形態を見いださなければ。雑誌、書籍分野に包含されてきた(産業としての)創造力を保持する仕組みをどう生かすべきだろう。

Briefing: Meta To Offer Ad-Free Subscriptions for Facebook, Instagram in EU
【有料購読者向け記事】:
Meta、厳しいEUの規制への対処として、FacebookとInstagramに広告非表示のサブスクバージョンを来月から投入と発表。Web経由での購読は月額10.60ドル、iOS/Androidからの購読は同13.79ドルだ。同社はEU域内の規制と戦う姿勢だったが方針を転換した。
Are publisher aggregation apps the new top of funnel or a long-term product?
「ニュース(マガジン)コンテンツのアグリゲーションアプリは、メディアにとり新集客源となるか?」INMA(国際ニュースメディア協会)の議論を伝える記事。プラットフォーマーがファネルの役割を果たさなくなる(?)この時期、改めてニュースアプリに関心が寄せられている。
「『スペイン語の音声として最も多く複製され、利用されているのは私の声だと思う』とプラタ氏。快活で太い声の持ち主で、声優としてのキャリアは50年、コロンビア声優協会の会長を務めている。
現在プラタ氏は中南米諸国の声優を組織し、『自分の声に対する権利』の法制化をめざしている」。

——プラタ氏とは、コロンビア人声優のアルマンド・プラタ氏のことだ。なぜこのような事態になったかと言えば、「ある企業のためにテキスト音声読み上げのプロジェクトに参加して報酬を得たのは20年前の話だ。ところがその後、その企業はプラタ氏の了解を得ることなく、録音した音声をAIソフトウェア企業に売り渡してしまった」からだ。他人事ではない。

How advances in AI can make content moderation harder — and easier | Semafor
米Discordの「信頼と安全性」チームを率いるJohn Redgrave氏に、AIを用いた「コンテンツモデレーション(監視)」業務の現在をインタビュー。同チームは従業員全体の15%もの規模で、機械学習と人間の力で業務を行う。効果は絶大でブラジルで銃乱射事件を未然に防いだりと成果をあげる。
さよならスマホ、2050年に普及率0% 眼球に情報端末 - 日本経済新聞
【有料購読者向け記事】:
「スマホが影も形もなくなったとしても、生活のデジタル化は止まらない。同報告書は、眼鏡型の『スマートグラス』や裸眼に装着する『スマートコンタクト』などの次世代の情報端末が、スマホの代わりに生活に溶け込んでいくと指摘する」。

——この種の“未来予測”ものは、はずれるのが当たり前。2050年を想像するには、いくつか補助線が必要だろう。自分は数年内に、個人を取り巻く情報インターフェイスの遍在化が起きているか(スマホ一極化が終わっているか)がポイントと考えている。同時に、特定のプラットフォーマーに個人の情報を丸ごと握られることがないかも、重要なイシューと思う。

Jaroslovsky stepping down as VP of content at SmartNews - Talking Biz News
【ご紹介】:
私にとって、長らくの米国側同僚、SmartNews USのVP of Contentを務めてきたRich Jaroslovsky(ジャロスロフスキー)が今年で退任。しばらくは私と同様アドバイザーを務めるようだ。お疲れさま、Rich!
私などとは違って素晴らしいジャーナリストとしてのキャリアを誇りながらも、スタートアップでの活動を楽しむ術を知っている人物。一緒にAT&Tパークに野球観戦にも行った楽しい記憶もある。

Disruption This Week—–27/10/2023

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2023年10月23日から2023年10月27日まで。

ディープフェイクポルノ被害を描いた衝撃的なドキュメンタリー
「事件の発覚は、22歳の大学生のテイラーさんが、友人から受け取ったメッセージから。
『本当に申し訳ないけど、これ、見たほうがいいと思う』という、ゾッとするようなFacebookメッセージでした。そこにあったのはポルノサイト『PornHub』のリンク」。

——「これはただ嫌がらせや支配、屈辱を与えるための新しい方法に過ぎない」とのコメントが、記事中にあるが、この単なる邪な欲求を手軽かつ効果的に満たす手段が、世に満ちてきている。

Cisac report reveals global music collections rose 28% in 2022
CISAC(著作権協会国際連合)、2022年の最新年次報告を発表。作詞家・作曲家の印税が28%増の108億ユーロ(約114億ドル)に達した。100億ユーロを超えたのは初めてで、新型コロナ禍以前の数値を上回った。また、デジタル経由の印税が、19年比でほぼ倍増となった。
【全文閲覧には要購読】:
米国消費者の67%が、購読の解約手続きが簡単であれば、デジタル出版物を購読する可能性が高まると回答。また、51%がデジタル出版物の購読を解約する際に困難に遭遇したことがある。米メディアToolkitsとNational Research Groupが調査した。
Google is actively looking to insert different types of ads in its generative AI search | TechCrunch
GoogleはAIを活用したジェネレーティブな検索体験のためのさまざまな広告フォーマットの開発に取り組んでいることを明らかにした。
CEOのSundar Pichai氏は「検索ジャーニーのすべてのステップにカスタマイズされたネイティブ広告フォーマットを実験する予定だ」と述べたという。
ジェネレーティブAIが生成するコンテンツに「ネイティブ広告」を投入……。悪夢のような時代がやってきそうだ。
ニュースと決別するSNS メディアに深刻な打撃 NYT【前編】:朝日新聞デジタル
【有料購読者向け記事】:
「ニュースメディア側は、プラットフォーマーからのトラフィック(読者の流入)がかつてのレベルに戻ることはないだろうと諦めているようだ。
これまでにも摩擦が多かったニュースメディアとプラットフォームとの関係の中で、今回は際立っており、ニュースメディアへの影響も深刻だ」。

——色々な視点があると思うが、“プラットフォーマー”が金を稼ぐ鉱脈としてニュースメディアを見てきた帰趨だと思っている。このモデルについて誰がどう答えを出せるのか。

Instagram is testing a dedicated feed for posts from Verified users | TechCrunch
Instagram、認証(Meta認証=月額12〜15ドルの支払いが必要)ユーザーの投稿のみ表示するフィードチャンネルをテスト中と公表。一定の信頼性ある投稿と収入増の両面を追うアプローチのようだ。だが、Xでは有料課金が極端な主張を排除できないという面も指摘されているのだが。
NIKKEI FT the World |FTの厳選記事で世界の潮流をつかむ
日経新聞が、バーティカル系メディア(NIKKEI Prime)を続々投入。今度は「日経FT the World」。これで5媒体目となる。日経電子版のほぼ半額のプライシング。かつ、日経電子版購読者には割引もある。
‘Here is the news. You can’t stop us’: AI anchor Zae-In grants us an interview
「彼女の唯一の欠点は、その完璧さである」。
アジア、そして欧州などでAI生成のキャスターがニュースを読み上げるのを多く目にするようになっている。K-Popスターかのような完璧な仕上がりを見せるAIの合成を行う現場を取材した記事。
Universal Musicら音楽出版各社、歌詞の剽窃をめぐってジェネレーティブAI企業のAnthropicを提訴。「少なくとも500曲の歌詞を使用することで出版社の権利を侵害している」との趣旨。
その記事の内容、本当? 実態不明のニュースサイト「ピンクスライム」が増殖中…保守系団体が資金提供も:東京新聞 TOKYO Web
「今後は、人工知能(AI)を活用した『ピンクスライム3.0』の拡大が予想されている。
報道機関の信頼や透明性を評価するプロジェクト『ニュースガード』によると、既存報道からほぼAIだけで記事を生成しているサイトは世界に数百ある。研究者が『ハルシネーション(幻覚)』と呼ぶAI特有の『もっともらしいうそ』が入り交じる」。

——ほぼでっち上げ、もしくは間接的にしか見聞していない情報をもっともらしい報道とするビジネス。記事はすでに消滅してしまった米ローカルメディアの代わりにはびこっている実態を記事は取材するが、その次世代版をジェネレーティブAIが担うとの見立てを示している。注視すべき動向。問題は、ジェネレーティブAIなど存在する以前からこの種のビジネスがはびこっていることだろう。

米Zoom、従業員に出社義務 生産性向上迫る - 日本経済新聞
【ご紹介】:
日経MJ掲載の連載コラムが、日経電子版に掲載されました。在宅勤務時代のスター企業が皮肉な動きを見せています。よろしければどうぞ。➡ 米Zoom、従業員に出社義務 生産性向上迫る

Disruption This Week—–20/10/2023

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2023年10月16日から2023年10月20日まで。

Silicon Valley Ditches News, Shaking an Unstable Industry
【有料購読者向け記事】:
米New York Times、大手プラットフォーム(Google、Meta、Xら)とメディア(出版社)との関係悪化を総合的に論評。「2020年9月、アメリカのトップニュースサイトのソーシャルネットワークからのトラフィックは約11.5%だった。今年9月には、6.5%に減少した」とする。
YouTubeの18歳以上の月間利用者数は7120万人超 「YouTube Brandcast2023」で最新のユーザー動向が発表に | AdverTimes.(アドタイ) by 宣伝会議
「YouTubeの利用者動向としては『日本の18歳以上の月間利用者は7,120万人以上(18歳以上の日本人の66%以上)』だった。
また近年、国内においてインターネットに結線されたテレビの台数が増えているが、こうした動きに伴い、YouTubeをテレビデバイスで視聴している人が増えているという。具体的には『日本でYouTubeをテレビ画面で視聴する人は3,800万人以上で、18歳〜44歳に限ると、その視聴者数は1,800万人以上に達する』との発表があった」。

——Google、YouTubeが広告関係社向けにイベント開催。そこで示されたYouTubeの影響力。引用箇所は、YouTubeが“第2のTV”としての存在感を示す。TVを追い越すのか否かは、もちろん、オリジナルコンテンツに依るのだろう。それは蜃気楼のように遠方に見えてきているのか。

‘Verified’ OSINT Accounts Are Destroying the Israel-Palestine Information Ecosystem
「イスラエルとガザにおける現在の戦争がここ数日で明らかにしたことは、X(旧Twitter)にはOSINTという用語を使い、粗悪な仕事に正当性を与え、さらなる混乱を生むだけの、認証された人気アカウントが多数存在するということだ」。

——Bellingcatに代表されるようなOSINTアカウントは、すでに無数に存在する(それ自体はありがたいことだ)。だが、今回のガザ紛争が明らかにしたのは、そこに間違った情報や、情報戦としてOSINTを仮装するアプローチが見えてきた。OSINTからの引用も注意深くあらねばならない。

目立つ「選択的ニュース回避」 日本が最多の「つながらない人たち」:朝日新聞デジタル
【有料購読者向け記事】:
「ニュースを避ける人は、どんな話題に関心があるのか。
最も多いのは、『明るいニュース』(55%)で、『解決法を提案するニュース』(46%)、『複雑な出来事を理解するのに役立つ解説』(39%)などが続く」。

——だからこそ「で、どうする?」という問いが重要になる。社内向けの記事と受け止めた。

Welcome To The Post-Social Media Era In News | Semafor
「ポスト・ソーシャルメディア時代のニュースへようこそ」。米新興メディアSemaforが開設1周年。文中いくつもの要素をあげて新時代ニュースのありようを宣言。個人的には、ニューズレター「Semafor Flagship」が世界を簡潔ながらうまく概要紹介してくれており、重宝している。
電通グループ、「2024 メディアトレンド調査」を発表 – 株式会社電通グループ
「dentsuのインターナショナル・マーケットにおけるメディアエージェンシーであるCarat(カラ)、dentsu X(デンツウクロス)、iProspect(アイプロスペクト)を中心とした専門家がグローバルに蓄積した知見に基づき、メディア業界における10の重要な変化の要因を予測・紹介しています」。

——10項目をタイトルのみ紹介しておこう。1) 生成検索(ジェネレーティブサーチ)の台頭、2) クリエイティビティの再構築、3) 生成の最適化、4) 類似アプリの乱立、5) データ保護の更なる強化(クローズドプラットフォームからクローズドパイプラインへ)、6) アイデンティティへの再注目、7) より多くの広告とより多くのリターン、8) 成長への新たな局面へ、9) より安全に、より良く、より速く、より強く、10) 注目度を高め、排出量を削減。
全文PDFでダウンロードできるが、要登録だ。

Israel-Hamas War Misinformation Tracking Center - NewsGuard
ファクトチェックとメディアの信頼性調査企業である米NewsGuard、「イスラエル・ハマス戦争誤報追跡センター」を立ち上げ、同紛争をめぐる“15(タイプ)の迷信”について検証した結果を一覧化し公表した。
AI、記事無断使用疑い 新聞協会が例示 偽情報拡散防止 OP期待
【有料購読者向け記事】:「『1000年以上も前の、平安時代の夜、突然、日本の南の夜空に訪れた『客星』について教えてください』と入力したところ、出力された回答は、読売新聞オンラインで8月10日に公開された記事と複数の箇所で文字が一致していたという。一致率は五つの段落でそれぞれ52~35%に上った」。

——シンプルだが興味深い実証記事。さてこの先にどのような動きが生じるだろう?

[FT]「報道離れ」にデータの力 - 日本経済新聞
【有料購読者向け記事】:
「新型コロナの感染が拡大した結果、一般市民のデータリテラシーが向上したことも研究で明らかになっている。
データが豊富なコンテンツは、それを解釈するスキルの向上に役立つ。
言うまでもなく、データが中立だと声高に叫ぶことは間違っている。どのデータをどのように提示するかは本来、政治的な決断だ」。

——データの差し出し方によっては、読者(生活者)が受け止める印象は正反対にまで振れる。だが、データのない(基づかない)主張は、もっと危険だ。単に目先の賑やかしでなく、メディア、特にジャーナリズムは読者が自主的に読み取れるようなデータの提示が必要だとつねに思う。新聞を読むと、いまだに延々とテキストで読み込ませることに執着していると感じる。

Telegraph auction poses litmus test for value of newspapers in digital age
もはや日刊新聞に未来(価値)はない、と見なされていたが、どっこい英日刊紙Telegraphの売却価額は急騰。「もし5年前にTelegraphを買っていたら、今頃は売値が2倍になっていただろう」と他紙幹部。コロナ禍を経て購読者を100万人台に急増させ収入を安定させたためだ。