Disruption This Week—–19/4/2024

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2024年4月15日から2024年4月19日まで。

メディア業界を揺るがす、Forbesによる MFA サイト運営問題。プレミアムパブリッシャーに向けられる懐疑の目 | DIGIDAY[日本版]
「クライアントの広告が何年ものあいだ、効果測定企業、DSP、SSP、さらにはエージェンシー自体によっても検出されずにこのサブドメインに表示していたという事実こそ最大の脅威であり、ドメインなりすましを検出するための機能とレポート結果に大きなギャップが存在することを明らかにしている」。

——先日紹介した米Forbesの広告用インプ稼ぎに用いられていたらしいサブドメイン問題。“広告テクノロジー”というようなハイテク手法でもないが、機械による計測に任せているだけでは、広告主側にはなにが起きているかも分からない。また、何が起きていても、さして問題でもなかったのかもしれない。エージェントが介在していただろうが、広告をめぐるモラルハザードをあらわすエピソードだろう。

Newsweek is making generative AI a fixture in its newsroom
約90年の歴史をもつ米NEWSWEEK。同メディア編集部はAI利用について非常に積極的。記事には「方針と基準」へのリンクが設けられ、AI利用についても開示。人が関与するのを前提に、編集部が「執筆、調査、編集、その他のジャーナリズムの中核的機能」でAIを使用する許可与える。
続々と課金制を施行するメディアが増えるなか、そのコンバージョン率を上げることが最初の課題となる。その点で、固定的なペイウォールをダイナミックモデルにするのが有望視されるが、その6つのアプローチを事例で解説する記事。
AI Index Report 2024 – Artificial Intelligence Index
米Stanford大のAI研究所、「AI Index Report 2024」(第7回)を公開。10のポイントを呈示。「1. AIは一部のタスクでは人間に勝るが、すべてのタスクで勝てるわけではない」「7. データあり:AIは労働者の生産性を高め、より質の高い仕事をもたらす」など。興味深い論点を網羅。
Two new books are essential reading for anyone considering a news startup - Poynter
ニュースメディアで起業を検討する人々に必読の2冊の新刊書。ひとつは、起業家たちの物語。もうひとつは、進化するメディアの状況におけるツール、テクニック、トレンドに焦点を当てたもの。米メディアPoynter.が紹介する。
Meta、著名人になりすました詐欺広告に対する取り組みを説明
「Metaは人による広告の審査と、自動検知を組み合わせて運用中。審査チームには、日本語や日本の文化的背景、ニュアンスを理解する人員も含まれているという。『最新の傾向を把握することで新たな脅威に備えることができるよう、今後も取り組みを続けてまいります』」。

——話題になっている“有名人(を騙る)詐欺広告”問題への対処策。「日本語がわかるスタッフも(多少は)含まれている」辺りから取り組み強化が必要そうだ。まだAIにはそこまでの実務能力はないということか。

アングル:メタのニュース配信停止、政治分野で高まる情報操作リスク
「調査の一つに関わったマギル大学メディアセンターのディレクター、テイラー・オーウェン氏は『政治グループで話題になるニュースが、ミームに取って代わられつつある。われわれのフィードではかつて、ジャーナリズムや真実の情報が常に流れ、信頼感の印となっていたが、それが消えてしまった』と話した」。

——Facebookが(報道メディアのへの支払を嫌って)報道メディアの記事リンクの投稿抑止する動きの結果、政治的、党派的な偏りのある投稿が減るどころか、もっと怪しい言説が増えてしまったという調査結果が報じられている。

Oh look at that! Now Google is using AI to answer search queries.
Googleは、通常の検索結果にAIが生成した回答をひそかにテスト中だ。これは「AI Overviews」と命名されており、米英両国で約1か月前に始まった。同社は、回答が複雑(だが回答可能)と思われる通常の検索クエリに対して、自己生成のOverviewsをテストしているのだという。自らの牙城を崩すかもしれない試行に、同社は大変に慎重な扱いをしているようだ。
最長で禁固20年「フェイクニュース法」がニュースを脅かす、その本当の理由とは?
「世界31カ国32件の『フェイクニュース法』を調査したところ、対策の効果よりも、政府による濫用のリスクが際立ったという。
大きな原因は、そもそも『フェイクニュース』とは何かが、はっきりしないことだ」。

——32件の法律・法案の分析から見えた特徴の1つは、大半が規制対象としている「フェイクニュース」について、明確な定義をしていないという。各国が大きな選挙を控えて、偽・誤情報対策に乗り出しているが、法制化には、国家権力による恣意的な運用を行いやすい下地づくりという側面がついて回る。

Google blocking links to California news outlets from search results
米カリフォルニア州で、「カリフォルニア・ジャーナリズム保護法案(CJPA)」が制定へ向かう。可決されれば、同州在住者がGoogle検索などを利用した際に表示される記事リンクに応じた利用料が求められる。Googleは法案牽制のため、一時的にリンク表示のブロックに踏み切った。

Disruption This Week—–5/4/2024

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2024年4月1日から2024年4月5日まで。

米グーグル、生成AI検索サービスの有料化検討=FT
「報道によると、グーグルはAI検索をサブスクリプション(定額課金)サービスに含めるなどの選択肢を検討中。既に「Gメール」や「Docs(ドキュメント)」といったサービスでは、自社の生成AI「ジェミニ」によるアシスタント機能を提供している」。

——昔々、Google検索やGmailなどの使い始めの頃には、「散々便利に使わせて、いずれは有料化に転じるのではないか」と猜疑心を持った記憶が。それが薄れてはいたが、今ごろになってそれが現実になってきたようだ。

AI生成テキストの透かし、改ざんは簡単 新研究で実証
「5月に施行される欧州連合(EU)の『AI法』は、AI生成コンテンツに電子透かしを入れるよう開発者に義務付けている。しかし、新たな研究によって最先端の透かしテクノロジーは規制当局の要件を満たしていないことが示された」。

——研究は、最新の電子透かし技術(アルゴリズム)をAIを使ってハッキングしたと主張。その簡略な要約を記事は紹介している。どうやって、電子透かしが、そのコンテンツをAI生成だと示せるのかが理解できて面白い。

Fact-checking grows but concerns remain over funding, harassment, report finds - Poynter
4月2日の「国際ファクトチェッキング・デー」に際して、国際的なファクトチェック団体のネットワークであるIFCN(International Fact-Checking Network)が「ファクト・チェッカーの現状報告」を発表。記事はその要約で、ファクトチェックの最大課題は資金とヘイト問題とする。

米メジャーリーグのデジタル顧客体験改革、年間球場来場者数が9.6%増 | AdverTimes.(アドタイ) by 宣伝会議

AdverTimes(アドタイ)宣伝会議が運営する、広告界のニュース&情報プラットフォーム

米メジャーリーグのデジタル顧客体験改革、年間球場来場者数が9.6%増 | AdverTimes.(アドタイ) by 宣伝会議
「試合時間の短縮化に並行して、顧客体験の刷新も図っていった。
MLBでは顧客のファーストパーティデータを収集し、顧客をより正しく理解すべく、試合をリアルタイムで追えたり好きな選手の戦果をフォローしたりできる『MLBアプリ』や、メジャーリーグの野球場を訪れる際のチケット管理のための『MLB BallParkアプリ』、MLBの試合をストリーミングできる有料の『MLB.tv』といったデジタルプロダクト、チケット購入サイト『ickets.com』などを有している」。

——Adobe社のイベントで、MLBチーフオペレーションズ&ストラテジーオフィサーが語った、MLBのDX改革。データに基づく分析から3つの改革を実施と具体的な取り組みを紹介。特にパーソナリゼーションのアプローチが興味深い。
https://www.advertimes.com/20240403/article455247/

For Data-Guzzling AI Companies, the Internet Is Too Small
【有料購読者向け記事】:
OpenAIやAnthropicといった大手ジェネレーティブAI開発企業は、学習のための高品質のテキストデータの収集に苦慮している。低品質な情報源には事欠かないが、高品質な情報源であるメディアなどとの交渉は難航。
YouTube上の字幕を利用するアイデアやAIが生成した文章を再利用するなどの苦肉の策も検討されているとする記事。
レディットがニューヨーク・タイムズよりも価値が高い理由
「- レディットは損失を出しているものの、時価総額は約80億ドルを超えている。
– 一方、利益を上げているニューヨーク・タイムズの時価総額は約70億ドルだ。
– これは、ユーザーによる無料コンテンツを生かすレディットのビジネスモデルを、投資家が評価していることを意味している」。

——いまさらながらの問題意識ではあるが、メディアの価値をどう計量するか。もちろん、公開企業の株価の総額で測るのは、ある種の代替的なアプローチだが、意味がなくはない。記事が示唆しているのは、運営にかかるコストという視点。Redditではユーザー投稿という原稿コスト・ゼロというSNSの圧倒的なアドバンテージだ。

Discord to Start Showing Ads for Gamers to Boost Revenue
【有料購読者向け記事】:
米チャットプラットフォームのDiscord、近日中にも広告掲載を開始と米Wall Street Journalが報道。同社CEOのJason Citron氏は広告体験について否定的な意見を再三述べ、広告事業には着手してこなかった。異なる収益化アイデアに期待したのだが……。ちょっと残念。
「耳の可処分時間」が拡大!デジタルサービスで活性化する音声メディア | ウェブ電通報
「『日本の広告費』では、2023年はマスコミ四媒体合計広告費が前年比96.6%(2兆3,161億円)となる中で、ラジオ広告費は前年比100.9%(1,139億円)と、マスコミ四媒体の中では雑誌広告とともに増加となりました。…マスコミ四媒体の中で唯一3年連続の増加となりました」。

——広告費の側面から音声メディアの好調を紹介したが、自身の経験や種々のテクノロジー進化で、この分野にはまだ発展の余地が高いと注目している。特にジェネレーティブAI技術の出現は、品ぞろえの多様化がなかなか進まない(一部の売れ筋に集中する)オーディオ書籍市場が活性化させるだろう。

「世界のアニメファンは10億人に」 クランチロール首脳陣が語る、日本アニメへの期待 | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)
クランチロールのCEO ラウール・プリニ氏:
「実際のところ、どの国にも違法アップロードのサイトはあり、なかなかなくなりません。ですので、我々ができることは“クランチロールのサイトで見た方が良い”と思えるような体験を提供することに尽きると思っています」。

——世界で10億人のユーザーをめざすクランチロール。課題は、やはり違法アップロード問題のようだが、対策には傾聴すべきものがある。

OpenAIの「Voice Engine」は15秒分の声データを元に本人そっくりに喋る
「米OpenAIは3月29日(現地時間)、人の声を再現できる生成AIモデル『Voice Engine』を発表した。テキスト入力と15秒分の音声サンプルで、元の話者によく似た自然な音声を生成できる。感情的なリアルな音声で、母国語以外の言語も話せる」。

——すでにOpenAIはこの技術を昨年中からさまざまな箇所で利用している。Spotifyも昨年9月、この技術を用いた「Voice Translation」を発表している。問題は、同社も認めている“悪用の可能性”をどう防ぐかだ。同社はそれを念頭に「慎重なテストを行っている」という。悪用問題を除けばさまざまなサービスを思い浮かべることができるな。

Disruption This Week—–22/12/2023

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2023年12月18日から2023年12月22日まで。

I gave ChatGPT the last 13 years of Nieman Lab predictions
こちらもカスタムChatGPTを用いたジャーナリズムへの応用を試したとする論説。「箇条書きを段落に展開したり、記事を要約に収縮させることができる。ニュースレターのプレビュー用の要約や、通知用の短いフレーズなどだ」など実践的に使えることを述べる。
また、過去Nieman Labが掲載した1,369本の将来予測記事を学習させ、それによる検証を行ったところ、正解と誤回答を得たとレビューする。こちらも興味深い。
How less, not more, data, could help journalism | Semafor
米Semafor記者らが、カスタムGPT作成ツールを使い、3種のAIボットを実験的に開発。分かったことは、少量データでもLLMを効果的に構築することができること。もっと言えば、適切にデータを絞るのが有用ということだ。記事は、「ジャーナリズムを変えるかもしれない」とする。
The obsession with “trust” will end
報道メディアが、読者に自身への「信頼」を闇雲に求めるのは間違っていると語る英ジャーナリズム研究者。
「読者にあなたの働きを示し、あなたの間違いを認め、訂正しなさい。知らないことを正直に述べ、読者が興味を持っていることに耳を傾けなさい」と述べる。
AIと著作権、明確化の一歩 データ検索や回答生成「許諾必要な場合も」 文化庁「考え方」素案:朝日新聞デジタル
【有料購読者向け記事】:
「今回示された素案では、生成AIによるデータ検索や回答の生成は、著作権法上許諾が必要となる場合もあると記した。また、生成AIによる学習をパスワードなどで防いでいるデータベースの著作物に対し、それを回避して学習させることは、法の定める『著作権者の利益を不当に害する場合』に該当するとした」。

——ある種のガイドラインの働きをする、考え方を示したというもの。案外影響力を及ぼしそうだ。

TikTokのバイトダンス、23年売上高1100億ドル突破へ-テンセント抜く
「短編動画投稿アプリ『TikTok(ティックトック)』で知られる中国のスタートアップ、字節跳動(バイトダンス)は、2023年の売上高が1100億ドル(約15兆7800億円)を超える可能性があることが関係者の話で明らかになった」。

——米、インドなどで叩かれつつ、それでもTikTokパワーは止まらない。中国国内でも最大級の企業へと成長。

広告掲載料は0円。3万部がすぐに在庫切れ。京都の型破りフリーマガジン『ハンケイ500m』編集長/円城新子さん【編集者の時代 第8回】|クリエイティブのコアとカラーに迫るメディア「CORECOLOR〜コレカラ」
「円城:ハンケイ500mは、京都のあるバス停を起点に半径500mのお店を紹介するマガジンです。なので、まずは編集部のメンバー数人で、その範囲を歩きます。普段の歩くスピードより、ゆっくりと。そして、ここ、面白そうという『触覚』が反応したお店に入る」。

—— 古幡さんの「出版業界ニュースまとめ」の紹介で見つけた記事。一気に読んでしまうのが惜しいような楽しいインタビュー。

Inside The New York Times’ Big Bet on Games
【有料購読者向け記事】:
「いまや、New York Timesは、たまたまニュースも提供するゲーム会社でもある」。社内で冗談めかして語られるほど、「Wordle」「Connections」「Spelling Bee」と同社はゲームがもたらす収益に賭けている。同部門の人員は約100名となった。
EU、DSA(デジタルサービス法)違反の疑いで正式にXの調査を開始。調査の主要対象は、イスラエル・ハマス間の先頭をめぐる違法性の高いコンテンツ。その他にも研究者へのデータ提供、コンテンツ監視態勢、広告をめぐる透明性その他も調査される。
News Publishers See Google’s AI Search Tool as a Traffic-Destroying Nightmare
【有料購読者向け記事】:
米メディア「Atlantic」のタスクフォースの調査では、Google検索に、新たなにAIによる検索が導入されれば、ユーザーのクエリに対する完全な回答を提供してしまう。同サイトは、そうでなければ得られたであろうトラフィックを75%の確率で逃してしまうことがわかったとする記事。検索からのトラフィックに依存していたメディアはその脅威に怯えている。
TikTok is pushing longer videos. Some creators worry about the vibe shift | CNN Business
TikTokが中・長尺動画投稿をクリエイターに呼びかけている動きはすでに紹介した。収益化をめざすクリエイターらへのインセンティブプログラム「Creator Fund」を廃止し、新たに「Creativity Program Beta」を開始。だが、短尺を動機にしてきたクリエイターは困惑しているとの記事。
メディア感度格差、データで顕在化! 若者にとっての「ネオ新聞一面」はこれ  | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)
【ご紹介】:
「どの層も、マスメディアへの信頼度よりも高い割合で『マスメディアが大きく扱うニュースは重要だ』と感じる傾向がみられた 一方、『重要だと思うニュース』について『新聞1面に掲載されるニュース』を選択した割合には、世代差が如実にあらわれた」。

——先般発表したスマートニュース メディア研究所による調査結果を取り扱った記事。引用箇所にも現れたように、大きく3つに分けた年齢階層のいずれも、マスメディアの発信に価値観、重要性を依拠している。
記事が指摘するように、年齢階層によりそれが異なるのもポイントだが、自分としては、それよりも全体としてマスメディアを重視していることがわかったのが、発見だった。

Disruption This Week—–3/11/2023

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2023年10月30日から2023年11月2日まで。

「ナイトシェード」はAI企業とアーティストの力関係を変えるか
「シカゴ大学のベン・ジャオ教授(コンピューター科学)だ。『AIを訓練する企業はやりたい放題です』。
だが、ジャオ教授の研究室が開発した新しいツールにより、この力関係は変わるかもしれない。 『ナイトシェード(Nightshade)』と呼ばれるこのツールは、画像のピクセルに微妙な変化を与えることで機能する。人間の目には見えない変化だが、機械学習モデルを騙して、画像に実際とは異なるものが描かれていると思わせるのだ」。

——人間にとって不可視の細工が、AIの誤動作を引き起こすのだという。「犬の画像は猫になり、帽子はトースターになり、車は牛になる」。画像をめぐる防御モデルは得られそうだが、依然としてテキストをめぐる防御モデルへの展望が確立していない。

Condé Nast, Publisher of Vogue, Will Cut 5% of Its Work Force
【有料購読者向け記事】:
「VOGUE」誌をはじめとする著名媒体を多く擁する米Condé Nastが従業員の5%相当の削減に踏み切る。大々的に発表していた動画制作の社内スタジオ構想を撤回。同社が儲からないTikTokやYouTubeショートなどの分野で変化が著しいとする。従来であれば、出版社が作成したメディアブランドによる中・長尺動画をYouTube等に投入するビジネスモデルが想定されていたが、早くもそのトレンドは消失してしまった。
Interview: The War on Disinformation
OSINTを手がける著名なBellingcat。リーダーのEliot Higgins氏が今次のパレスチナ紛争をめぐる情報戦について見解。
「人々は何が起きているのかに非常に強い見方を持っているだけでなく、早く早くと答えを求める。そのため、OSINTをしている人々にプレッシャーがかかる」。
Elle UK's move from subscriptions to membership shares access to editors' 'daily joys'
英国版Elle(Elle UK)の編集長Kenya Hunt氏、印刷版&オンライン版購読制に加えて、メンバーシップ制のElle Collectiveを立ち上げた意味を、取材インタビューで語る。Elleファン層に対し、読書以外にさまざまな体験を共有するアプローチを採ると述べる。
出版状況クロニクル186(2023年10月1日~10月31日) - 出版・読書メモランダム
「23年はかろうじて1兆円の(出版物)販売金額を保つことになろうが、24年には1兆円を割ってしまうことが確実となってきた。ピーク時の1996年には2兆6564億円に達していたわけだから、24年には実質的にその3分の1程度となり、それは1970年後半の金額をも下回ってしまう」。

——人口減のトレンドは加味するとしても、新たなコンテンツの流通形態を見いださなければ。雑誌、書籍分野に包含されてきた(産業としての)創造力を保持する仕組みをどう生かすべきだろう。

Briefing: Meta To Offer Ad-Free Subscriptions for Facebook, Instagram in EU
【有料購読者向け記事】:
Meta、厳しいEUの規制への対処として、FacebookとInstagramに広告非表示のサブスクバージョンを来月から投入と発表。Web経由での購読は月額10.60ドル、iOS/Androidからの購読は同13.79ドルだ。同社はEU域内の規制と戦う姿勢だったが方針を転換した。
Are publisher aggregation apps the new top of funnel or a long-term product?
「ニュース(マガジン)コンテンツのアグリゲーションアプリは、メディアにとり新集客源となるか?」INMA(国際ニュースメディア協会)の議論を伝える記事。プラットフォーマーがファネルの役割を果たさなくなる(?)この時期、改めてニュースアプリに関心が寄せられている。
「『スペイン語の音声として最も多く複製され、利用されているのは私の声だと思う』とプラタ氏。快活で太い声の持ち主で、声優としてのキャリアは50年、コロンビア声優協会の会長を務めている。
現在プラタ氏は中南米諸国の声優を組織し、『自分の声に対する権利』の法制化をめざしている」。

——プラタ氏とは、コロンビア人声優のアルマンド・プラタ氏のことだ。なぜこのような事態になったかと言えば、「ある企業のためにテキスト音声読み上げのプロジェクトに参加して報酬を得たのは20年前の話だ。ところがその後、その企業はプラタ氏の了解を得ることなく、録音した音声をAIソフトウェア企業に売り渡してしまった」からだ。他人事ではない。

How advances in AI can make content moderation harder — and easier | Semafor
米Discordの「信頼と安全性」チームを率いるJohn Redgrave氏に、AIを用いた「コンテンツモデレーション(監視)」業務の現在をインタビュー。同チームは従業員全体の15%もの規模で、機械学習と人間の力で業務を行う。効果は絶大でブラジルで銃乱射事件を未然に防いだりと成果をあげる。
さよならスマホ、2050年に普及率0% 眼球に情報端末 - 日本経済新聞
【有料購読者向け記事】:
「スマホが影も形もなくなったとしても、生活のデジタル化は止まらない。同報告書は、眼鏡型の『スマートグラス』や裸眼に装着する『スマートコンタクト』などの次世代の情報端末が、スマホの代わりに生活に溶け込んでいくと指摘する」。

——この種の“未来予測”ものは、はずれるのが当たり前。2050年を想像するには、いくつか補助線が必要だろう。自分は数年内に、個人を取り巻く情報インターフェイスの遍在化が起きているか(スマホ一極化が終わっているか)がポイントと考えている。同時に、特定のプラットフォーマーに個人の情報を丸ごと握られることがないかも、重要なイシューと思う。

Jaroslovsky stepping down as VP of content at SmartNews - Talking Biz News
【ご紹介】:
私にとって、長らくの米国側同僚、SmartNews USのVP of Contentを務めてきたRich Jaroslovsky(ジャロスロフスキー)が今年で退任。しばらくは私と同様アドバイザーを務めるようだ。お疲れさま、Rich!
私などとは違って素晴らしいジャーナリストとしてのキャリアを誇りながらも、スタートアップでの活動を楽しむ術を知っている人物。一緒にAT&Tパークに野球観戦にも行った楽しい記憶もある。

Disruption This Week—–27/10/2023

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2023年10月23日から2023年10月27日まで。

ディープフェイクポルノ被害を描いた衝撃的なドキュメンタリー
「事件の発覚は、22歳の大学生のテイラーさんが、友人から受け取ったメッセージから。
『本当に申し訳ないけど、これ、見たほうがいいと思う』という、ゾッとするようなFacebookメッセージでした。そこにあったのはポルノサイト『PornHub』のリンク」。

——「これはただ嫌がらせや支配、屈辱を与えるための新しい方法に過ぎない」とのコメントが、記事中にあるが、この単なる邪な欲求を手軽かつ効果的に満たす手段が、世に満ちてきている。

Cisac report reveals global music collections rose 28% in 2022
CISAC(著作権協会国際連合)、2022年の最新年次報告を発表。作詞家・作曲家の印税が28%増の108億ユーロ(約114億ドル)に達した。100億ユーロを超えたのは初めてで、新型コロナ禍以前の数値を上回った。また、デジタル経由の印税が、19年比でほぼ倍増となった。
【全文閲覧には要購読】:
米国消費者の67%が、購読の解約手続きが簡単であれば、デジタル出版物を購読する可能性が高まると回答。また、51%がデジタル出版物の購読を解約する際に困難に遭遇したことがある。米メディアToolkitsとNational Research Groupが調査した。
Google is actively looking to insert different types of ads in its generative AI search | TechCrunch
GoogleはAIを活用したジェネレーティブな検索体験のためのさまざまな広告フォーマットの開発に取り組んでいることを明らかにした。
CEOのSundar Pichai氏は「検索ジャーニーのすべてのステップにカスタマイズされたネイティブ広告フォーマットを実験する予定だ」と述べたという。
ジェネレーティブAIが生成するコンテンツに「ネイティブ広告」を投入……。悪夢のような時代がやってきそうだ。
ニュースと決別するSNS メディアに深刻な打撃 NYT【前編】:朝日新聞デジタル
【有料購読者向け記事】:
「ニュースメディア側は、プラットフォーマーからのトラフィック(読者の流入)がかつてのレベルに戻ることはないだろうと諦めているようだ。
これまでにも摩擦が多かったニュースメディアとプラットフォームとの関係の中で、今回は際立っており、ニュースメディアへの影響も深刻だ」。

——色々な視点があると思うが、“プラットフォーマー”が金を稼ぐ鉱脈としてニュースメディアを見てきた帰趨だと思っている。このモデルについて誰がどう答えを出せるのか。

Instagram is testing a dedicated feed for posts from Verified users | TechCrunch
Instagram、認証(Meta認証=月額12〜15ドルの支払いが必要)ユーザーの投稿のみ表示するフィードチャンネルをテスト中と公表。一定の信頼性ある投稿と収入増の両面を追うアプローチのようだ。だが、Xでは有料課金が極端な主張を排除できないという面も指摘されているのだが。
NIKKEI FT the World |FTの厳選記事で世界の潮流をつかむ
日経新聞が、バーティカル系メディア(NIKKEI Prime)を続々投入。今度は「日経FT the World」。これで5媒体目となる。日経電子版のほぼ半額のプライシング。かつ、日経電子版購読者には割引もある。
‘Here is the news. You can’t stop us’: AI anchor Zae-In grants us an interview
「彼女の唯一の欠点は、その完璧さである」。
アジア、そして欧州などでAI生成のキャスターがニュースを読み上げるのを多く目にするようになっている。K-Popスターかのような完璧な仕上がりを見せるAIの合成を行う現場を取材した記事。
Universal Musicら音楽出版各社、歌詞の剽窃をめぐってジェネレーティブAI企業のAnthropicを提訴。「少なくとも500曲の歌詞を使用することで出版社の権利を侵害している」との趣旨。
その記事の内容、本当? 実態不明のニュースサイト「ピンクスライム」が増殖中…保守系団体が資金提供も:東京新聞 TOKYO Web
「今後は、人工知能(AI)を活用した『ピンクスライム3.0』の拡大が予想されている。
報道機関の信頼や透明性を評価するプロジェクト『ニュースガード』によると、既存報道からほぼAIだけで記事を生成しているサイトは世界に数百ある。研究者が『ハルシネーション(幻覚)』と呼ぶAI特有の『もっともらしいうそ』が入り交じる」。

——ほぼでっち上げ、もしくは間接的にしか見聞していない情報をもっともらしい報道とするビジネス。記事はすでに消滅してしまった米ローカルメディアの代わりにはびこっている実態を記事は取材するが、その次世代版をジェネレーティブAIが担うとの見立てを示している。注視すべき動向。問題は、ジェネレーティブAIなど存在する以前からこの種のビジネスがはびこっていることだろう。

米Zoom、従業員に出社義務 生産性向上迫る - 日本経済新聞
【ご紹介】:
日経MJ掲載の連載コラムが、日経電子版に掲載されました。在宅勤務時代のスター企業が皮肉な動きを見せています。よろしければどうぞ。➡ 米Zoom、従業員に出社義務 生産性向上迫る