Disruption This Week—–26/11/2021

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2021年11月22日から2021年11月26日まで。

Is the music industry's future on the blockchain?
つい先日、私も紹介した楽曲著作権をめぐる新星Royalについて、Casey Newton氏がニューズレター「Platformer」で論評している。同氏は暗号化資産について極めて懐疑的でもあり、興味深い。「NFT」と紹介したが、Royalは「限定デジタル資産(LDA)」という手法を推進する。“リミックス”時代には、この手法で精度高くロイヤルティが得られるとすれば、その意義は大きいものとなる。
NFT音楽著作権のスタートアップRoyalがa16z Cryptoの主導で63.1億円調達、前ラウンドからわずか3カ月 | TechCrunch Japan
「スタートアップ(=Royalのことだろう)によれば、それらのトークンの二次販売がすでに60万ドル(約6890万円)近く行われており、新シングルの暗黙の評価額は600万ドル(約6億8900万円)に達しているという」。

——自分の理解では、Royalは楽曲をめぐる著作権をNFT化して、ファンや投資家に販売できるようにする。すると、NFTを保有するファンらは、楽曲から生じるロイヤルティを受け取ることができるというわけだ。アーティストは、NFT投資家から自身の楽曲の権利を売ることで、早期に収入を得られる。市場を通じて安全に転売をすることを念頭に置くと、NFTの使い道として面白い。

From micropayments to eBooks (and NFTs): How publishers can diversify their revenue | What’s New in Publishing | Digital Publishing News
米オレゴン州立大教授、Damian Radcliffe氏が出版した『50 Ways to Make Media Pay』から注目の新たな5つのメディア収益化手法を紹介する記事。1) マイクロペイメント、2) ダイナミックペイウォール、3) 電子書籍化、4) アーカイブ活用、5) NFT化による販売が、それだ。
Apple ATT 実装から約四半期、アプリ広告に長い影を落とす | DIGIDAY[日本版]
【有料購読者向け記事】:
「フィナンシャル・タイムズ(Financial Times)が最初に引用したアドテクベンダー、ロテーム(Lotame)のデータによると、Facebook、Twitter、YouTube、Snapの4社は、第3四半期および第4四半期に売上の12%(99億ドル:約1.1兆円)を失ったという」。

——AppleによるiOS上での広告ターゲティングに対する抑止策(ATT=App Tracking Transparency)の影響が、全面的にではないにせよ、徐々に広がっている。広告主や広告を稼働させるプラットフォームなどでの受け止めを扱った記事。

Twitter Joins Big Tech Assault on Live-Shopping Startups; Harassment on TikTok
【有料購読者向け記事】:
米国ではクリスマス商戦を念頭に、“ライブコマース”への参入が相次いでいる(もちろん、中国などでのトレンドの後追いではあるが)。Pinterest、Facebook、YouTubeなどでの取り組みに次いで、いよいよTwitterまでが参入との話題。ライブコマースは、“クリエイターエコノミー”の文脈にもあるトレンド。個々のクリエイターが商品、サービスをフォロワーに推奨することでサヤを得るメカニズムだ。
Here’s the Best Strike for Most People
5年前、米New York Timesに買収された商品レビューサイトのWirecutter。当時のNYTのCEOは、Wirecutterを「NYT編集部の高い基準と価値をあらわす」ものと持ち上げたが、待ち受けていたのは、社内で二級市民と見なす視線と孤立だった。同労組はストライキを実施する構えだ。
Washington Post taps its former CMO to lead tech division
米Washington Post、購読と広告に続き、ソフトウェアビジネスを収益の柱へ育成中。同社が開発してきたコンテンツと広告配信システムArcは、1,900以上のライセンス先にまで拡大。今回、同事業を率いるトップにMiki King氏を招聘したとする話題。同氏は以前WaPoでCMOを務めた。
米Wall Street Journal出身の一ジャーナリストJessica Lessin氏が、2013年に立ち上げた完全購読制メディア「The Information」が堅実に成長、22万超の有料購読者を獲得と、同氏が英Financial Timesmに語る。
DuckDuckGo Wants to Stop Apps From Tracking You on Android
Appleは広告やスパイウェアがiOS上でユーザを追跡することを抑制する機構である「App Tracking Transparency(ATT)」を実装。これに対し、Android上で同様の働きをする「App Tracking Protection for Android」を、ユーザプライバシー重視をめざす企業DuckDuckGoが提供へ。同社プロダクトディレクターは、「オンラインであなたを追い回す不気味な広告は、はるかに少なくなるはずだ」と述べる。
Mediumがオーディオ学習プラットフォームのKnowableを買収 | TechCrunch Japan
「Mediumは自身の成果を共有する、収益化可能な新しいフォーマットです。Knowableのレッスンはすぐに消え収益化できないソーシャルオーディオと、大変な労力を要するポッドキャストやオーディオブックとの間に位置するものです。Knowableが制作サイドの難しい部分を担当することで、クリエイターはオーディオに不慣れであってもすばらしいコンテンツを提供できます」。

——Mediumはそもそもブログと課金を組み合わせた出版サービス。最近になって、ショートフォームをはじめとするフォーマットの多様化を手がけるが、音声コンテンツにも。それが教育系コンテンツという点も、示唆的。

Disruption This Week—–15/10/2021

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2021年10月11日から2021年10月15日まで。

New York Times Audio Could Spur a Realignment of the Podcasting Landscape
米New York Timesが意欲的な試み。同社の数々の番組やBuzzFeedなど他社のコンテンツを提供する、ポッドキャスト専用アプリ「New York Times Audio」のテストを開始した。昨年買収した人間が読み上げ・朗読を担当するAudmが制作する。Spotifyなど外部プラットフォームに頼らないという挑戦だ。
How Newspaper Closures Open the Door to Corporate Crime
「上場企業の何千もの施設を調査、地元の新聞社が閉鎖された町では、その後、地域の上場企業の違反行為が1.1%増加し、規制当局からの罰則が15%増加したことがわかった。また、新聞社のない町では、多くの違反行為の内容がより悪いものであることも判明した」。

——Marvin Bower ハーバード・ビジネス・スクール准教授であるJonas Heese氏の調査研究から。

アルゴリズムvs.中国、世界が見つめる激闘の行方
【有料購読者向け記事】:
「8月に発表されたルール案によると、企業は中毒や過剰支出につながるアルゴリズムの使用が禁じられる。また、ユーザーには、使用しないという選択肢が与えられるべきとしている」。

——すでに紹介した話題だが、改めて。非常にインパクトのあるテーマだと思う。いまやネット上の情報はあふれかえっており、なんらかの“自動的な選択”(アルゴリズム)による中間処理なしでは、最小の労力で最適な情報にたどり着けない。もちろん、そこにさまざまな作為が入り込む余地があることから、隠された大問題が生じているわけだ。

架空TikTokスターのネットワークを構築するFourFrontがシード資金調達 | TechCrunch Japan
「FourFrontの共同創業者Ilan Benjamin(イラン・ベンジャミン)氏によると、キャラクターのネットワークが本物の人間と誤解されないようにしており、彼らのプロフィールでストーリーのフィクション性を強調し、それぞれの動画には#fictional(フィクション)のタグがつけてある」。

——リアリティのある人間(キャラクター)を複数用意し、さまざまなショートムービーを配信していく試み。シナリオ次第で大量にストーリーを生み出すことができる。これからはバーチャル空間を舞台にしたクリエイティブビジネスが次々に誕生するのだろう。

ウェザーニュースの急成長を支える、Growth Hackチームの取り組みに迫る
「――現在はどのような体制でGrowth Hackチームを運営しているのでしょうか。
石橋(知博氏):開発を担うエンジニア、サービス運営を行うオペレーション、そしてマーケティングが三位一体となってサービスの改善に取り組んでいます」。

——ウェザーニュースという特性のあるサービス(コンテンツ)をどう、成長させるか。同社の「Growth Hackチーム」の取り組みを詳しく解説する記事。メディア系事業でもGrowth Hackのあり方は参考になるはず。

The creator economy is failing to spread the wealth
“クリエイターエコノミー”は、組織に属さない個人クリエイターでも相応の収入を得られるというトレンド。しかし、先ほど紹介したTwitchのデータ流出でもわかるように、著名な最上位のクリエイターがクリエイター収入の多くを占めてしまうという“現実”が少しずつ明らかになってきている。
中国、メディアの民間資本禁止を提案-企業統制を一段と強化へ
「発改委(=国家発展改革委員会)のウェブサイトに掲載された提案によれば、民間資本はニュースの収集・取材と配信が禁じられる。通信社や新聞社、放送局などの報道機関の設立・運営に民間資金が投じられることも禁止され、外国メディアのニュースコンテンツを再配信することも認められなくなる」。

——もはや、強権的だとか言論の自由がといったステレオタイプな報道ではなく、中国国内で何が進行しており、その着地点はどのようなものなのかを詳しく解説して欲しい。

Facebook is willing to open algorithms to regulators, Clegg says
“Facebook文書”問題でCNNの番組に出演したFacebookの広報責任者(と記事にある)Nick Clegg氏は、同社のアルゴリズムが、ユーザに言っていることと起きている実際が一致するよう、場合によって規制に基づく説明責任を果たす必要があると語った。
The Atlantic wants to hire newsletter writers — and it wants their subscribers, too
Substackを代表格にニューズレター配信プラットフォームは、既存メディアの書き手をニューズレターメディアの運営者として独立させようとしている。老舗メディアThe Atlanticはこの逆張りを狙う。これら運営者とニューズレターを、金銭保証した上で丸ごと傘下に治めようというのだ。面白いのは、購読者が独立したニューズレターにこれまで支払っていた金額で、Atlantic全体とニューズレターを購読できる点だ。Atlanticは傘下に入れる各種ニューズレターの購読者を、丸ごと獲得できるというわけだ。
かくして〈インターネット例外主義〉の時代の幕は開けた:『ネット企業はなぜ免責されるのか』池田純一書評
「1996年に米国で成立した通信品位法230条は、起草段階では、匿名掲示板の主に性的な品位を欠いた投稿に対して、プロバイダー企業、プラットフォーム企業による自主規制を促すための法律だった。しかし、1997年にケネス・ゼラン対アメリカ・オンライン訴訟の判決が出ると、風向きが変わる」。

——「パブリッシャーか?ディストリビューターか?」という問題の源泉から始まる豊かな書評。

衆院選にまつわる真偽不明な情報の検証を 総選挙ファクトチェックが始まる
【ご紹介】:
非営利法人FIJ(ファクトチェック・イニシアティブ)は、衆院選にまつわる真偽不明な情報の検証する「総選挙ファクトチェックプロジェクト」を立ち上げました。本記事を執筆したBuzzFeed Japanを含めた複数のパートナーメディアと取り組みます。

Disruption This Week—–8/10/2021

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2021年10月5日から2021年10月8日まで。

Twitter invests in avatar startup Facemoji – TechCrunch
Twitter、アバター開発のFacemojiに出資。Facemojiは、各種プラットフォームに連携したアバター開発キットを提供する。数年前のブームを経て、アバターはメタバース、NFTブームの重要なピースになろうとしている。NFTプロジェクトに注力中と報じられるTwitter CEO Jack Dorseyの狙いが見えてきた?
グーグル検索、言葉にならないことまで調べてくれるように
「『Things to know』の裏にあるのはMUM(Multitask Unified Model)なる機械学習モデルで、このモデルはテキストだけじゃなく、絵や音声、動画といったフォーマットからも情報を拾います。MUMは日本語を含む75言語とさまざまなタスクで学習済みで…」。

——“検索がさらに進化”ということだが、いくつものアプローチがあることは、記事で確認を。「Tings to know」は文脈を構成して、ユーザが知りたいことを先回りして検索結果をチューニングするもの。
しかし、これを突き進めていくと、周囲の音や声、地理情報、先ほど読んだメール…といった背景情報も分析すれば、より“あたり”の確度が高められるということにもなるはずだ。
“検索の最も進んだ姿は、ユーザがなにも入力しなくても、知りたいことを表示する”ことだと、以前読んだことがある。

「激白」「震える」「地獄」に頼った “感情刺激競争“がもたらすクリックの罠とニュースの未来
「共感を狙ったニュースが、今のメディア環境の中で流布すると喜怒哀楽を刺激するだけで終わってしまいがち。結果として(読者が)考えることが後回しになっていく」「共感は大切だが、ニュースを共感を集めるためだけに使うのはもったいない」。

——石戸諭氏が最近上梓した書物をめぐるインタビュー。指摘のとおりだと受け止める。報道フォーマットにエモーショナルな要素を持ち込むスタイルは、ネットの普及に端緒があるようにも思うが、それ以前がある気がしている。たとえば、戦前戦中の新聞報道。お涙頂戴の見出しが乱立していた。

How the secrets of the Pandora Papers were freed
巨大なオフショア金融取引情報のリークを端緒にした「パンドラ文書」報道プロジェクト。データは約4TBにものぼり、フォーマットは、文書(PDF)、メモ、リストなど多岐。これをどう捌いたのか。立役者であるICIJのCTOらがその労と技術インフラを解説するという驚きの解説記事。
中国がアルゴリズム利用にメス、規制の最先端に
【有料購読者向け記事】:
「中国国家インターネット情報弁公室(CAC)が先週発表した取り組みは、アルゴリズムの使用を規制する包括的システムを3年以内に確立することを目指している。中国共産党は不正とみなすビジネス慣行の締め付けや、ネット上の言論統制を強化しており、新方針はそうした活動の一環となる。
規制当局が求めるアルゴリズムとは、公正かつ透明で、中国共産党のイデオロギーに忠実なものだ」。

——大きなインパクトを感じさせる動き。反競争的、反国家的な企業活動を取り締まるにあたり、AIを活用したアルゴリズムの中味にまで取り締まりの網がかぶせられる。記事中にあるように、その動きは、世界最先端をいくもの。世界の国家がこの種の欲求を持つ時代でもある。

How news publishers are turning casual, infrequent readers into paying subscribers
INMA(世界ニュースメディア協会)がとりまとめたデジタル購読者の新たな獲得手法分析調査によると、「すでに大きな投資をしている読者のエンゲージメントを最大化するよりも、ライトな読者のエンゲージメントを高めることに集中したほうが良いことは明瞭だ」という。ここで「ライトな読者」とは、もちろん、一見かつ訪問頻度が頻繁でない読者層を指す。多くのメディアが多く抱える読者はこのような層だ。この人々のニーズや行動をよく理解する必要があるのだと述べている。そして、この理解を阻む落とし穴は、メディアの運営者側は、このようなライトユーザの対極である、ヘビーユーザに占められていることだとも指摘。
How dynamic paywalls help publishers connect potential subscribers with the right offer at the right time | What’s New in Publishing | Digital Publishing News
サイト来訪者の閲覧を許す回数や金額などを、来訪者の諸々の行動データで動的に変化させる“ダイナミックペイウォール”の仕組みと運用についての記事。利用各社がコメントするなど有益なリポート。米WSJでは、来訪者を65ものパラメータ(!)で分析し動的に対応しているという。
Facebook whistleblower urges Congress to move against the company
Facebookの内部告発者Frances Haugen氏の米議会小委員会での証言が行われた。
同氏は「Facebookは変わることができますが、明らかに自力では変わりません」とし、強制力ある監視や介入を求める発言を行った。議員側は、今後は超党派で取り組むことに合意したと表明。もちろん、CEOであるMark Zuckerberg氏の召喚に向かっていくことになる。
フェイスブック内部告発者、その動機と目的は?
【有料購読者向け記事】:
「ホーゲン氏は5月17日午後7時前、自身の動機を説明しようとワークプレース(=Facebookの社内向け掲示板)の検索バーに最後のメッセージを打ち込んだ。
『私はフェイスブックが嫌いなのではない。フェイスブックを愛している。救いたいのだ』」。

——昨日、英文記事で紹介したが、今回のFacebook騒動の本家Wall Street Journalが、膨大な内部文書(数万ページを超えるという)をリークした元従業員フランシス・ホーゲン氏にインタビューした記事。邦訳が出たので改めて紹介しておく。記事は、ホーゲン氏がFacebookで虚偽情報に対抗する機能に取り組み、結果として同社の姿勢に疑問を持ち退職に至る私的拝啓が説得力をもって語ったもの。
同氏は、米国時間の本日、議会小委員会で証言をする予定だ。

世界の権力者たちの脱税と隠し財産を暴いた「パンドラ文書」の衝撃  | 5年前のパナマ文書を超えた
「国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が入手し、米紙『ワシントン・ポスト』や英紙『ガーディアン』などのメディアが分析した。同様の脱税を暴いた『パナマ文書』は5年前に流出して世界を震撼させたが、今回の『パンドラ文書』はよりスケールが大きいもの」。

——パナマ文書、パラダイス文書に続いてのパンドラ文書。日本人の名前も1,000名を超えているとか。単に税逃れだけでは終わらない。資金洗浄を経るなかで世界の政治が動いている要素がある。
ジャーナリズムには、世界的な協業のスキームが必要だ。1分1秒の“発表報道”を追いかけるだけでなく、このような丹念な仕事に力を注いで欲しい。別の記事を紹介しながら、またもう少し分け入ってみたい。

次世代SNSは仮想現実に、フェイスブックの本気度(写真=ロイター)
【ご紹介】:
月一連載が日経電子版に掲載されました。渦中にあるFacebookですが、VR分野で新たな動きには大いに興味を惹かれています。よろしければ一読下さい。

Disruption This Week—–1/10/2021

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2021年9月27日から2021年10月1日まで。

This is your brain on streaming audio
Spotify、 Neuro-Insight社と組み、ニューロ(神経)マーケティング技術により音声メディア体験が人間に与える効果を調査。他のメディアに比し情報や記憶を長期間記録する結果となった。デジタルオーディオが、広告を含むコンテンツ体験の面で他メディアより優位であると主張する。
子ども版インスタの他にも FBが狙う低年齢層
【有料購読者向け記事】:
「同社内部では何年にもわたり、世間に知られている以上に13歳未満の子どもを引きつけるさまざまな計画が立てられていた。それを駆り立てたのは、フェイスブックの未来を左右する新世代のユーザーを失うかもしれないという危機感だった」。

——Instagramがティーンの精神衛生を損ねている……との最初のWSJ砲へのFacebook側の反論が出るだろうタイミングを測って、WSJは、Facebookが長年、この層へのアプローチを戦略的に練っていたという、これまた内部文書を暴いてこれまでの報道を補強。

出版状況クロニクル161(2021年9月1日~9月30日) - 出版・読書メモランダム
「光文社の決算は売上高168億5100万円、前年比8.8%減。経常損失7億1600万円、当期純損失8億700万円。2期連続の赤字決算。
内訳は雑誌・書籍が84億5100万円、同4.6%減、広告収入が36億1200万円、同36.6%減、電子書籍・版権事業その他が41億9900万円、同25.6%増となっている」。

——直前に集英社の記録的な決算が紹介されている。対照的な両者決算で感じるのは、(デジタル化した)コミックスと関連IPを保有することの威力。

How Creator Marketplaces From Social Networks Stack Up
【有料購読者向け記事】:
“ユーチューバー”ブームといった第一次インフルエンサーマーケティングの次に到来する波は、TikTok、Instagram、そしてSnapchatの若者に人気のサービスだ。出揃ったこれらSNSが提供する広告主とクリエイターのマッチング事業の動きを概観する記事。
「Guardian」のオーナー企業がサブスクやメンバーシップ用に設計されたNFTプロトコルUnlockに投資 | TechCrunch Japan
「GMG Ventures(「The Guardian」の親会社)が、コミュニティのメンバーシップを収益化・管理するために設計された、イーサリアムベースのオープンソースプロトコルの開発者であるUnlock(アンロック)に投資を行った」。

——GMG(the Guardian Media Group)がトークンベースのコミュニティ報酬システムのUnlockに出資。記事は“クリエイターエコノミー”にフィットするシステムを目指すと解説。興味深いアプローチ。

TikTokの視聴時間、米英でYouTubeを上回る
「アメリカとイギリスにおいて、ティックトックの視聴時間はユーチューブのそれを上回っているという。アップアニーが測定する、アプリ利用者当たりの月間平均消費時間なので、テレビによる視聴時間などは含まれていないと思われる」。

——この間、YouTubeの幹部らがTikTokの急成長に危機感を募らせていることは紹介してきた。その理由が客観的に見えてきた。

TikTok hits 1 billion users
TikTokが月間10億アクティブユーザを突破というニュースはすでに紹介した。今日紹介するのは、その10億突破にいたる期間を、他の著名アプリと横並び比較したチャートだ。誕生する新たなSNSが次々グロースを加速しているのがわかる。
Twitterタイムラインから“情報の偏り”を分析、東大教授のツールが話題 「エコーチェンバー現象」を可視化
「Twitterアカウントを登録することで利用できる無料のWebサービスとして、東京大学大学院の鳥海不二夫教授(工学系研究科システム創成学専攻)が公開。ユーザーは自身のタイムラインや、フォローしているユーザーの「エコーチェンバー現象」(閉じたコミュニティーでのやりとりにより、特定の意見が先鋭化すること)の度合を確認できる」。

——通常、「あなたの○×を登録して試してみましょう」的サービスは避けて通るのだが、鳥海教授が作られたということで、自分も試してみた。結果はなんと(?)
「エコーチェンバー度:3.84
偏りは標準的
エコーチェンバー率上位20.0%」
だとか。

The pandemic created a boom in online influencers
「パンデミック中にインフルエンサーをめざす人々が爆発的に増加」。インフルエンサーマーケティングを行うTakumiによれば、2020年には応募者が前年比で倍増し、今年はさらに増加中。広告主が同じインフルエンサーを何度も使いたがらないのも、この市場拡大の背景だという。
フェイスブックがアップルのプライバシーポリシー変更による広告事業への影響を報告 | TechCrunch Japan
「しかし、売上やアプリのインストールなどを含む実際のコンバージョンは、広告主がFacebookのアナリティクスを使って見ている数値よりも高い可能性があると述べている」。

——iOSとAndroidの両プラットフォームでユーザ追跡型の広告が制限される動き(iOSではすでに実施。Andでは当面実施が先送りされている)について、Googleに続く世界最大の広告配信事業者であるFacebookがその影響評価を訂正、市場にインパクトを与えている。

データポータルで作るTwitterダッシュボード - Media × Tech
【ご紹介】:
Media×Techから新着記事です。各種データを活用するメディア運営の実務家にぜひ。データポータルの分かりやすい解説記事です。➡ データポータルで作るTwitterダッシュボード

朝日新聞がメディアパートナーに加盟しました

FIJ|ファクトチェック・イニシアティブ

朝日新聞がメディアパートナーに加盟しました
【ご紹介】:
「朝日新聞の加盟により、メディアパートナーは23団体・媒体となりました(うち国内18、海外5)」。

——私が理事を務めるファクトチェック・イニシアティブ。メディアパートナーに朝日新聞が加わりました。さらに多様なメディアとのパートナーシップ構築に向かっていきます。

Disruption This Week—–3/9/2021

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2021年8月30日から2021年9月3日まで。

The Next Creator Economy Unicorns
【有料購読者向け記事】:
米The Information、「クリエイターエコノミー」関連スタートアップで、ユニコーン(時価総額10億ドル以上)企業を7つをリストアップ。それに続き、ユニコーンを目指す存在として、Substack、WhatnotそしてSpliceをあげる。
How to make money on Substack: Newsletter platforms charted
ニューズレター(メルマガ)配信サービスSubstackと、クリエイターへの定期支払やチップなどが可能なPatreonを、ジャーナリストがどう活用できるか? 詳細な比較と活用事例を紹介する重要な記事。
アップル「公取委の調査が終結」発表の真意…どのAppビジネスへ影響があるのか
【全文閲読には要購読】:
「今回の発表に伴う変更点は『アプリ内に、外部決済サイトへつながるリンクを1つ配置できる』という点に集約できる。
これはアプリ内に、自社の決済サイトへ誘導する『決済はこちら』のようなリンクボタンを置けるようになる、ということだ」。

——App Store以外での決済手法をアプリ内に掲示できる。ただし、ゲームなどはその範囲に含まれていない。それでも、ユーザに別途、決済方法を(メールなどで)告知できる…。まあ、本当のユーザにとっては、支払い体験はシンプルであれば良いのだが。さすがに30%の“課税”では、ビジネスモデルが成立しない分野が多かったので、朗報。

Tech companies will try to push private browsing into the mainstream
Appleが今月にも、ユーザ情報をWebサイト等から遮断するセキュリティ機能「Apple Private Relay」を(iCloud+として)リリースする。Firefoxなどでも同様に、ユーザのブラウジング情報を遮断する動きが本格化。ますますターゲティングが困難な時代へ。
Biggest US newspapers by circulation revealed – 20% fall after Covid-19
ABC公査に相当するAAMが公開したデータによると、米国の大手新聞上位25紙は新型コロナ禍の1年間で、平日の印刷部数を20%も失ったという。なかでも際立った下落を示したのがUSA Today。やはり1年で60%以上の下落だ。(同紙はホテル配布が多い)
Scoop: Amazon quietly building live audio business
Amazon、ClubhouseやTwitterのSpacesに対抗する新たなライブオーディオ事業を多額の投資で準備中? 米Axiosが「スクープ」。AudibleからポッドキャストへとAmazonはオーディオ事業を拡張してきた。これをAmazon Musicやスマートスピーカー事業へとつなげる構想と記事は述べる。
“More than 60% of those readers that leave your site will not return”: How publishers can overcome churn to build engagement and loyalty | What’s New in Publishing | Digital Publishing News
今日もChartbeatが公開したリポート「Navigating the New Reader Journey」からの紹介。サイト来訪者から読者へとエンゲージメントを高めるためのアプローチを6ステップで紹介する。
最初の「流入(コンテンツの発見)経路ごとにアプローチをカスタマイズする」は重要だ。
“The evidence is clear”: Headline testing continues to drive higher engagement for publishers | What’s New in Publishing | Digital Publishing News
分析サービスのChartbeatによる調査と分析によると、メディア各社にとって、相当数の候補を使って効果的な記事見出しを見いだすテストへの取組みで、エンゲージメントが5倍といった有意な結果が得られるという。また、その取組みは継続によっても効果は逓減しないとする。
若者たちに不人気な「スポーツ観戦」…東京五輪で若年層の視聴率は伸びた? プロ野球中継のメイン視聴者は“75歳以上”説も…(沼澤典史)
「15分もテレビを見ない若者が、わざわざ1時間以上のスポーツ中継を見るわけがない」。

——「若者研究の第一人者で、マーケティングアナリストの原田曜平氏」のコメントだという。然り。75歳以上かぁ。

「数字やシェア数の競い合いは、僕の感覚からすると地方支局で繰り広げられる特ダネ競争ととてもよく似ています。県警ネタを一刻も早く出そうと競い合う。ゲーム的な競争の先にいるのは読者ではなく、『良い結果を残した自分(もしくはメディア)』を認めてほしいという承認欲求になっているところが特に似ています」。

——『ニュースの未来』を上梓した石戸諭氏の、ネットニュースのタイトルをめぐる論点。石戸氏はネットニュースのタイトルが皆似てきているとし、そのパターンを解説する。悩ましいのは、いまや新聞社など伝統メディアが、その技法を学び始めており、それによる手応えをつかみ始めているということではないのか。「良いニュース」の文化を創ることの難しさを感じもする。