Disruption This Week—–1/3/2024

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2024年2月26日から2024年3月1日まで。

How the Media Industry Keeps Losing the Future
【有料購読者向け記事】:
印刷版の新聞に代わる画面上の新聞「Viewtron」が1986年に閉鎖されて以降、未来の電子版新聞の試みが何度か生じ、敗退していった。記事は、その試みを紹介しつつ歴史的人物の証言などに当たるが、最後にこれらの敗北は、SNSへの敗北だったと指摘する。
出版状況クロニクル190(2024年2月1日~2月29日) - 出版・読書メモランダム
「『出版状況クロニクルⅦ』で、23年は電子コミックシェアが90%を超えるだろうと予測しておいたが、4830億円という90.3%を占め、そのとおりになってしまった。それは電子書籍が440億円の8.2%、電子雑誌が81億円の1.5%とマイナス基調にあり、これらの回復は難しい状況だといっていい」。

——昨日、「新文化」の記事を通じて紹介しておいた。データ推移が分かるので、目を通しておきたい。

OpenAI、NYTに提訴された裁判で「証拠はChatGPTのハッキングで生成されたもの」と申立
「文書(=OpenAIが呈示した申し立て)によると、NYTが提示したような『異常な結果を生成するためには数万回の試行が必要』で、NYTはOpenAIの利用規約に明らかに違反する欺瞞的なプロンプトを使って例を生成したという」。

——New York TimesとOpenAIとの係争について、何度か紹介しているが、重要なポイントのひとつに、NYTimesがChatGPTの脆弱性を意図的に突いたのではないかということがある。その経緯が理解できる報道。

米英で読者を伸ばすThe Guardian。同メディアが力を入れる指標が「Deeply Read(深く読まれた)」ランク。記事に費やされたアクティブな時間を計測し、記事の長さと組み合わせ「この長さにしては素晴らしい読書時間」などと評価する。読者とのエンゲージメントを重視する戦略から導かれたアプローチ。
San Francisco Chronicle tries an AI chatbot — er, Chowbot — for food recs
米「San Francisco Chronicle」紙、AIチャットボットを使い、読者がベイエリアでのおすすめレストランや特定の料理を見つけられる実験的サービス「Chowbot」を開始。実際にお勧めされる店舗、フードは同氏記者らが実際に評価したものを呈示するため、「信頼に値する」とする。
2023年 日本の広告費 - News(ニュース) - 電通ウェブサイト
「インターネット広告費は、3兆3,330億円(前年比107.8%)と過去最高を更新し、前年より2,418億円増加した。コネクテッドTVの利用拡大に伴う動画広告需要の高まりや、デジタルプロモーション市場の拡大などが成長に寄与した」。

——詳細は、リポートを読んで欲しいが一読した上での感想は、動画系広告にお金がシフトしていることが見えてくる。“四マス”に出自を持つネットメディアでは、テレビ系に広告支出の伸長が著しい。引用箇所でCTVの伸長が語られていることも、動画系の動きだろう。

LINEヤフー、業績回復の裏で目立つ劣悪広告 ユーザーの不満噴出
【有料購読者向け記事】:
「X上に投稿された、LINEの広告への不満の傾向を可視化したグラフだ。ネガティブな感情を持つ意見は、2023年の1年間で累計4000件以上に拡大した。10月には1月の約3倍となり、月間600件超に。24年1月も昨年同月の2倍以上の件数だ」。

——記事の前半はだれでも閲覧可能だ。LINEヤフーで劣悪広告が異常に多いとの“風評”をデータ解析から跡づけている。もっとも、LINEヤフーに限らず、つとに指摘されているようにFacebook上の広告(と言えるの?レベルな)など、世界的にモラルハザードがこの分野で深まっている。

Microsoft’s AI Access Principles: Our commitments to promote innovation and competition in the new AI economy - Microsoft On the Issues
米Microsoft、プレジデント兼副会長のBrad Smith氏の名前で「AIアクセス原則」を告知。
「マイクロソフトの49年の歴史の中で、これまでのどの取り組みよりも大規模な投資、より多くのビジネス・パートナーシップ、イノベーションと競争を促進するための広範なプログラムを約束する。我々は、世界中の組織や個人が公益に資する方法でAIを開発し、利用できるようにするために必要な幅広い技術へのアクセスを提供することを約束する」。
Reddit says it's made $203M so far licensing its data | TechCrunch
株式公開の目論見書が公開された米Reddit。掲示板型のSNSだが、その収益源はいまのところ、ジェネレーティブAIを開発する企業のデータ学習費だという。
契約総額2億300万ドル、契約期間2年から3年のデータ・ライセンス契約を締結と明らかになった。
Technology newsbrand with 'optimistic view' and 20-strong team launches in London
「楽観的な視点を」と、英ロンドンで新興テックメディア「Digital Frontier」が創業。購読料、広告、イベントから収入を得る計画で、ニュース速報ではなく、深いジャーナリズムを提供していくと宣言。英国でもジャーナリズムは苦境にある中での発進だと報じる記事。

Disruption This Week—–23/2/2024

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2024年2月19日から2024年2月22日まで。

Magazine ABCs 2023: Full breakdown of titles shows 12.4% circulation fall
英国の有料雑誌の発行部数(電子版を含む)を開示するABC調査によると、1位はThe Economistの電子版で99万1,887部。100万部超だった22年からわずかに減少。月間平均発行部数の合計で見ると、21年は2680万、22年は2400万部、23年は2100万部となった。
「サブスク1,000万をいかに達成したか」NYタイムズ発行人が語るデジタル戦略の10年とは?
「(イノベーション・レポートは)未来の洞察の文書だと思われていた。しかし、あれはカルチャーについての文書で、人々が変化に対してノーと言うのをやめるために、必要な条件を整理しただけのものだ。間違っていたことはたくさんあった」。

——現New York Times発行人A・G・サルツバーガー氏へのロイター・ジャーナリズム研究所による長文インタビュー。どう紹介しようかと思っていたところ平和博氏が整理してくれた。引用箇所も面白いが、個人的にはWashington PostやWall The Wall Street Journalなどがレイオフをしていることについて、失敗ではない、むしろ素晴らしく善戦していると持ち上げている点が印象的だった。

米国の配信サブスク利用者、年間支出額は平均約14万円
「新しいレポートによると、サブスクリプションサービスを利用する米国人は、平均で年間924ドル(約13万9000円)のサブスクリプション料金を支払っているという。月額にすると77ドル(約1万2000円)だ」。

——自分の場合は、Amazon PrimeとYouTubeをサブスクしているが、あくまでリニアTVのニュース報道の補完の扱い。アメリカなどでは主役がストリーミングなのだろう。

YouTube dominates TV streaming in US, per Nielsen’s latest report | TechCrunch
米調査会社Nielsen、リニアTV(オリジナルのTV番組視聴)とストリーミングの視聴に関する1月の調査結果を公表。YouTubeがテレビ画面での視聴の8.6%を占め、米国で再びストリーミングサービス全体のトップとなったことを明らかにした。一方、Netflixのテレビ視聴率は7.9%だった。
Washington Post taps Connelly as senior editor for AI strategy and innovation - Talking Biz News
米Washington Post、AI戦略およびイノベーションを所管する上級編集長としてPhoebe Connelly氏を起用。同氏はこれに先駆けて若年層読者獲得のための次世代イニシアティブを率いてきた。同グループでは昨年からAIを活用するためのハッカソンなどを社内で開催するなど活動中だという。
Apple reportedly faces €500m fine from EU over music streaming access
音楽ストリーミングのSpotifyがAppleによってアップストア以外の代替支払い手段の提供を妨害されたとする訴訟で、EU規制当局は、Appleに対し800億円(5億ユーロ)もの制裁金を課す動きと英Financial Timesが報道。
既に紹介しているように、Appleは制裁を逃れるための新ポリシーを発表しているわけだが。
Top 25 US newspaper circulations: Largest print titles fall 14% in year to September 2023
米Alliance for Audited Media調査、米25の日刊紙の1日平均発行部数は、230万部(2023年9月時点)。前年は270万部、2023年3月までの半年間では260万部だった。米最大の日刊紙のWSJ(555,182部)とNYTimes(267,639部)は、それぞれ前年比14%減、13%減に。詳しい一覧表を含む記事。
PAPERWALL: Chinese Websites Posing as Local News Outlets Target Global Audiences with Pro-Beijing Content - The Citizen Lab
カナダToronto大に設けられたCitizen Lab、欧州、アジア、南アメリカの30カ国で現地の報道機関を装った、中国により運営されている少なくとも123のWebサイトのネットワーク「ペーパーウォール」を発見。その詳細な事例と手順などを研究し暴露した。
岸田首相の偽画像などがSNSで相次ぎ拡散 注意を呼びかけ | NHK
「この偽画像を投稿したのはロシアを支持する投稿を繰り返しているアカウントで、転載されたものを合わせて70万回以上見られていました。 また、岸田総理大臣の発言の映像を切り貼りして、『日本人の割合は10%で、残りの90%は移民で構わない』などと述べたとする偽情報もXで拡散しました」。

——以前には、岸田首相が卑猥な発言をする…という愉快犯的偽動画が話題となったが、今回のケースでは、政治性を帯び始めた。影響工作が意図されているようにも見えないではない。警戒水域に入ってきた。

米・オープンAI 文章から動画を作成する新たなAI「Sora」開発を発表|日テレNEWS NNN
「夜の東京の街を歩く女性や東京郊外を走る電車の車窓など日本に関する動画もあり、サクラが満開の中、雪が降る東京の街といった中々見られない光景もAIによって簡単に作成できることがうかがえます」。

——日本をテーマにした動画では、なかなかありそうでなさそうな光景を創り出している。動画広告を安上がりに制作するのにはフィットしそう。現在は、制作者(クリエイター)を選んで試行運用を始めた段階だが、本格的にサービスインする際にはどうするのだろうか。

Disruption This Week—–17/2/2024

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2024年2月13日から2024年2月16日まで。

‘Less writing articles; more AI conversation’: We get reaction to ex-Googler’s WaPo op-ed tip for publishers
“書かれたものから会話へ”。
印刷物の時代には、出版社は「記事」を作り、それを印刷、その紙を読者に配布していた。Webは、配布と紙に関するすべてを変えたが、記事はほとんどそのままに。だが将来は、出版社とって記事が主題ではなくなり、読者との会話について考えることになるとの論説。どのように会話の関係として読者(というよりユーザー)をつなぎ止めるのか。AIチャット能力が主役となる時代がやってくる。
'Miraculous' Substack-based Ankler Media eyes $10m annual revenue next year
2022年1月創刊のSubstackベースのニューズレターメディアのAnkler Media。ハリウッド情報のメルマガが出発点だが、早くメルマガ5タイトル、ポッドキャスト2タイトルのメディア企業に成長。すでに年商100万ドル超に。25年には1,000万ドル超を目指すとCEOは述べる。
Slate reports best year | Semafor
30年近い歴史を誇る米メディアSlate。老舗のカルチャー、政治関連メディアにとって、2023年は、長い歴史のなかで最高収益となったという。ポッドキャストとWebサイトで50/50の広告収入を獲得。しかも広告収入は同社収入の半分以下。有料メンバー制が過去2年で倍増という。
Extending our Mastodon social media trial
英BBCのソーシャルメディアへのアプローチを研究するチーム、昨年、7月に開始した分散型ソーシャルメディアMastodonサーバーの試行運用が6万ユーザーに到達と公表。詳細なデータや見解を開示。良好な運用状況から試行運用をさらに6か月延長を決めたとする。
Paramount cuts 800 staff two days after Super Bowl was biggest ever TV show
米放送大手CBS、平均視聴者数で1億2340万人(TVとストリーミング合計)を突破し、史上最も視聴された「テレビ番組」となったSuper Bowl LVIIIを放映し、その記録破りの成果を公表した数時間後、CEOであるBob Bakish氏は同社800人のレイオフを発表した。
French Watchdog Uncovers Massive Russian Disinformation Operation 'Portal Kombat'
フランスの対外情報監視機関Viginum、「Portal Kombat」とのコードネームで呼ばれるロシアの大規模なオンライン影響工作活動を指摘。193ものWebサイトからなり、ウクライナでの戦争をめぐる欺瞞情報を流布し、欧州各国のウクライナ支持を挫くことを目的としたものだとする。
食べログ「評点」変更の是非は 高裁判決を弁護士が解説 - 日本経済新聞
【有料購読者向け記事】:
「グルメサイト『食べログ』の評価基準の変更が独占禁止法違反に当たるかが争われた裁判に関心が集まっている。東京高裁は1月、評価点を決める『アルゴリズム(計算手法)』の変更が『優越的地位の乱用』に当たるとして飲食チェーン店側への賠償を命じた一審判決を取り消し、サイトを運営するカカクコム側の逆転勝訴とした」。

——高裁で一審判決が取り消された。プラットフォーマーによるアルゴリズム変更をめぐる判例が揺れている。専門家3名による見解を紹介する記事。

Decoding new newsroom jobs in the age of AI

Media Makers Meet | What’s new in media

Decoding new newsroom jobs in the age of AI
“AI時代の新しい報道部門の仕事を読み解く”。AIを報道メディアの業務にどう生かすか。最近現れた報告書を読み解く論。後半ではAIを報道に生かすために生み出される新たな職務を解説している。
広告だらけの低品質サイトに100億円超流入 資生堂は監視強化 - 日本経済新聞
【有料購読者向け記事】:
「広告だらけで独自性のない低品質コンテンツを集めたサイトに、国内で年100億円超の企業広告費が流入している疑いがあることがわかった。生成AI(人工知能)が悪用されて低品質サイトは3割以上増えた。見せかけの閲覧数に基づいて広告費が請求され、広告主の予算が浪費されている。資生堂などは検知ツールで監視を強める」。

——「生成AIによる低品質コンテンツ」に力点が置かれた記事だが、これをある種のコンテンツファーム(検索上位を狙って人為的にコンテンツを生産し広告収入を集める手法)は、米国では2010年ぐらいには大きな動きになったし、2016年にはご存じキュレーションメディア騒動があった。根幹にはこの種のモラルハザードを生みやすい広告テクノロジーがある。

Artificial Intelligence in the News: How AI Retools, Rationalizes, and Reshapes Journalism and the Public Arena
英Guardian、独バイエルン放送、米Washington Post、英Financial Timesなど35のメディア(新聞、放送など)と報道に携わる多くの専門家から聴取したAIと報道をめぐるさまざまな現状と課題、そしてプラットフォームとの関係をリポートした必読資料が公開された(PDFも入手可)。
メディア接触の新潮流...「ニュース回避傾向」が強い層の特徴とは?
【ご紹介】:
昨年11月に公開された「スマートニュース・メディア価値観全国調査」。そこからいくつも新たなファクトが浮かび上がります。本記事は気鋭の研究者・大森翔子氏が調査から見出した、我が国での「ニュース回避」トレンド。従来、ロイター・ジャーナリズム研究所が例年取り扱い、注目を集めてきました。それが日本においても姿を現しています。「メディア接触の6類型」分析で読み解く斬新で貴重な論考です。
今のニュースメディアに欠けている機能とは何か
【ご紹介】:
私も末端で参加させてもらったメディアをめぐる座談会。元日経メディアラボ所長の坪田知己氏が中心となってメディアをめぐる話題が広がりました。よろしければご一読を。

Disruption This Week—–2/2/2024

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2024年1月29日から2024年2月2日まで。

A.I. Fuels a New Era of Product Placement
【有料購読者向け記事】:
AIが古くからある宣伝手法プロダクトプレイスメント(現在、米国ではこのタイプの広告市場が230億ドル近いとされる)を甦らせる。TikTok動画で踊るクリエイターの背後にスポンサー飲料のポスターが合成されている。クリエイターは広告でないと言うのだが。
‘A moment for the ages’ as Mark Zuckerberg apologizes to families of abuse victims - Poynter
米Missouri州選出の上院議員Josh Hawley氏に促され、公聴会に立ったMark Zuckerberg氏は、振り返って家族の遺影を掲げる遺族に向かい、「あなた方のご家族が苦しんだようなことは、誰も経験すべきではない。だからこそ、私たちはこれほど投資したのです」と述べた。
Media startup The Messenger disintegrates, leaving staff nothing | TechCrunch
米メディアのThe Hollywood ReporterやThe Hillを保有してきた業界著名人Jimmy Finkelstein氏が昨5月に創業したThe Messengerが閉鎖。
「昨年末までに創業資金約3800万ドルを失い、300万ドルしか生み出せなかった」とする記事。同氏は「創業1年で1億ドルの収益を生む」と豪語していたのだが。記事はやはり「今はBuzzFeedブームの時代ではない」とも論評。
Publickeyは今月で15周年を迎えます。読者の皆様、スポンサーや広告代理店の皆様、いつもありがとうございます
「僕自身は2006年頃、まだ@ITの事業部長をしていた頃に、米国でTechCrunchやEngadgetなどのブログメディアが盛り上がっているのを見て、ブログを基に個人や少人数でもちゃんとメディアが作れるのだ、ということに大きく刺激を受けました」。

——“稼げる”個人ブロガー/個人メディアの草分け、「Publickey」が開設15周年! おめでとう。
その新野氏と組んで「@IT」を開設したのは2000年だから、お互いなんとも遠くまで歩んできたものだ。私の場合は、組織を前提にした取り組みだったが、新野氏は一人旅、その偉さはよくわかる。

YouTube and Google Subscription Services Hit $15 Billion in 2023 Revenue
【有料購読者向け記事】:
AlphabetのCEO、Sundar Pichai氏、12月期の業績において、YouTube Premium、YouTube Music、YouTube TV、(ストレージサービスの)Google Oneなど、購読サービス売上が2023年に150億ドルに達するとし、同氏はYouTubeが「購読収益の源泉」と形容。
Our Redesigned Byline Pages | The New York Times Company
「調査によれば、読者が記者についてより深く知れば知るほど、私たちのジャーナリズムのプロセスの厳しさを理解し、その結果を信頼する可能性が高まる」。
米New York Times、記事を執筆した記者情報をよりリッチにした「エンハンスト・バイオ(強化した略歴)」フォーマットを運用開始。
出版状況クロニクル189(2024年1月1日~1月31日) - 出版・読書メモランダム
「23年はかろうじて1兆円を上回ったものの、24年の出版物推定販売金額の困難さを予兆させる数字となってしまった。
ピーク時の1996年の2兆6564億円とくらべれば、実質的に3分の1の売り上げになってしまったのである。
そうした出版物売上状況において、出版社はともかく、流通と販売を担う取次と書店は本当に深刻な事態に追いやられている。それは流通と販売自体が恒常的な赤字となっているのではないかと考えられるからだ」。

——記事中に、出版科学研究所による1996年から2023年にかけての出版物推定販売金額の一覧が示されている。1997以降、04年のたった一度を除き、販売(書籍+雑誌)の売上は前年をつねに下回ってきている。

Journalism, media, and technology trends and predictions 2024

Reuters Institute for the Study of Journalism

Journalism, media, and technology trends and predictions 2024
例年、年初に公開されるReuters Instituteによる「ジャーナリズム、メディア、テクノロジートレンドと各種予測」2024年版が公開。ニュース忌避など例年のテーマに加え、「7. ジェネレーティブAIと編集部への影響」が新たに加わった。深い懸念と同時に利点も強調する。
On The Record with Will Lewis | Semafor
米Semafor、今年、Washington PostのCEOに就任したWill Lewis氏にインタビュー。同氏はペイウォールの“次”について、「月額購読の意思がない、多くの若年層を惹きつけるには、彼らがジャーナリズムにアクセスできる新しい方法をデザインするのが、業界の責務となる」と述べる。
例として、「1日パス」「週間パス」、あるいはThe Guardianのような寄付モデルなどをあげる。「まったく新しい世代の有料ユーザーコンセプトがある」と。
Apple announces changes to iOS, Safari, and the App Store in the European Union
Apple、EU域内におけるiOS、Safari、そしてApp Storeの変更を発表:
「代替の支払い方法を使用しているアプリについては、Appleは返金を行うことができず、問題や詐欺、詐欺に遭遇したお客様をサポートする能力も低下する。問題の報告、ファミリー共有、購入依頼など、App Storeの便利な機能も、これらの取引には反映されない。ユーザーは、支払い情報をさらに多くの相手と共有しなければならなくなる可能性があり、悪質な業者が機密性の高い金融情報を盗む機会が増えることになる」。

Disruption This Week—–26/1/2024

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2024年1月25日から2024年1月26日まで。

How AI could sap — or save — local news - Poynter
「ここにアイデアがある:2.6兆〜4.4兆ドルの経済価値を生み出すとされ、数十億ドルの投資を受けているジェネレーティブAI部門は、2万5,000人の地元記者を支援する資金を援助すべきだ。地元に特化したジェネレーティブAIサービスを実際に提供することができるようになる」。

——ある米ローカルメディアの経営者が語る、ジェネレーティブAIが抱える数々の課題。反則かもしれないが、同氏が最後に述べるポジティブな提案。ネガティブな論点を読むのも良いし、最後のポジティブなアイデアを検討するのも良いと思う。

サムスン、AIスマホで巻き返しなるか
【有料購読者向け記事】:
「サムスンにとって賭け(=オンデバイスAIへの賭け)の度合いは大半の企業より高いと言えそうだ。同社は長い間販売台数に関してスマートフォン市場で首位の座にあったが、2023年に販売が大きく落ち込み、初めてその座をアップルに譲った」。

——オンデバイスAIのトレンドが、これからのスマホやスマホ外のスマートデバイスにどのような影響を与えるか? AI処理がリアルタイム化することで、これまでは“SF的”だったようなサービスが可能になる先陣を切ったサムスンは、そのフロンティアを行くかもしれないが、悪い冗談として終わることさえある。
同社にとって(スマホ分野においては)社運を賭けた戦いになるのかもしれない。

読売新聞、Web記事の“生成AIへの学習利用”を禁止に 利用規約を改定 スクレイピングなどもNG
「禁止事項として新たに3点を追加。『データマイニング、テキストマイニングなどのコンピュータによる言語解析行為』『クローリング、スクレイピングなどの自動化した手段でデータ収集や抽出、加工、解析、蓄積などをする行為』『生成AIなどに学習させる行為、生成AIなどを開発する行為』を禁じた」。

——ご存じ米国でのNew York Timesらによる訴訟問題なども背景にした厳しい動き。一方で、記事にあるように「これらの禁止事項を含めた情報解析のために、同メディアの記事を利用したい場合は、読売新聞とライセンス契約を結ぶ必要があるとしている」という道を残しているわけだが。

アップル、アプリストア開放で手数料を計画
【有料購読者向け記事】:
「米アップルは、スマートフォン『iPhone(アイフォーン)』に外部ストアからサードパーティー製アプリをダウンロードできるようにする一方、新たな手数料と制限を導入する方針だ」。

——WSJのスクープ記事。ただし、適用されるのは欧州市場だと記事は述べている。もともと「アップル税」をオフロードされるなら、別途30%に限りなく近い仲介料を取る動きがあると報道されていたので驚きは少ないのだが。

食べログが逆転勝訴 アルゴリズム変更「合理的」、独禁法違反認めず:朝日新聞デジタル
「(原告は)『評点を下げることになるアルゴリズム変更をしない義務があった』とも新たに主張していた。
だが、高裁は『原告が契約上、アルゴリズムの変更について、何らかの権利や法律上保護される利益を持つとは認められない』として退けた」。

——この辺りは重要な論点として、今後も検討されていくことになるのだろう。

How The Guardian raised a record amount of reader revenue in the U.S.
英The GuardianのUS版は、北米の読者から通年でおよそ3000万ドルの寄付収入を獲得。米英全体でも1/3が北米からの収入だという。同メディア編集部が読者に訴求するメッセージに加え、募金総額以上に重要視してきた指標などを解説した記事。
Netflixの純利益17倍 2023年10〜12月、会員増最高の1300万人 - 日本経済新聞
【有料購読者向け記事】:
「売上高が前年同期比12%増の88億3200万ドル(約1兆3100億円)、純利益が17倍の9億3700万ドルだった。アカウント共有の禁止や広告付きの安いプランを広げたことで、会員数は12月末までの3カ月間で約1300万人増え、増加幅は10〜12月期として過去最高だった。3四半期連続で増収増益を確保した」。

——ポイントは、1) 不正なアカウント共有の取締策、2) 広告表示付き廉価版の好調、およびそれに連なる施策ということのようだ。一方でNetflixを追っていたはずの他ストリーミング勢は足もとの業績および投下資金の減少で、息切れを起こしつつあるようだ。

Los Angeles Times to Slash Newsroom by Over 20%
【有料購読者向け記事】:
米The Los Angeles Times(LA Times)が115名に及ぶ記者・編集職の削減を公表。2018年に富豪Patrick Soon-Shiong氏が買収してから初のレイオフ。
同氏は「われわれはほぼ10億ドルを投資し、その遺産を守り、その未来の確保に献身してきた」と述べる。
「フェイクニュースの年」2024年にファクトチェックは役に立つのか?
「デバンキングの介入は、新型コロナの誤情報について、参加者の識別力を向上させ、信じやすさを低下させるのに役立った。19件のデバンキングの介入のうち16件(84%)で、参加者が誤情報を信じることや正確性の判断を改善した」。

——平和博さんのブログから。ファクトチェックの無力、脆弱さを指摘する声がたびたびあがる。実際、技術支援なければ無力だったりする。その意味では、銀の弾丸探しから、社会に遍在する点と点を結んでいく仕事の重要性も増す。それも技術的な可視化支があると効果的なのだが。

Infographic: Where False Information Is Posing the Biggest Threat
“選挙イヤー2024”を迎えた世界。世界経済フォーラム(通称ダボス会議)開催に合わせて、世界34か国で生じる偽誤情報リスクの度合いを専門家チームが分析。データビジュアル化のstatistaがインフォグラフィック化してわかりやすい。色彩濃度でそのリスク程度も表現している。