Disruption This Week—–28/7/2023

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2023年7月24日から2023年7月28日まで。

As Actors Strike for AI Protections, Netflix Lists $900,000 AI Job
「ハリウッドは、脚本家や俳優に高額を支払う気はないが、AIに対してはその気だ」。米The Intercept_は、Netflixが人材募集でAIプロダクトマネージャに「年収90万ドル」を呈示と報告。ある俳優は、この額で組合に属する35人の俳優とその家族を健康保険に加入させられると皮肉。
メタ増益、Threads収益化焦点 ネット広告底入れの兆し - 日本経済新聞
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「『ウクライナ戦争やロシア事業を中止した影響が軽くなったほか、広告に対する需要が増えて効率が高まった』。メタが26日に開いた決算説明会で、スーザン・リー最高財務責任者(CFO)はこう総括した」。

——「米アルファベットと米メタの2強はそろって増益を確保した」と記事では述べるが、Google(およびYouTube)の復調はMetaほど劇的ではない。その意味で広告の完全復調とは言い得ない。さらにジェネレーティブAI投資は膨大だが収益力には当面結びつきにくい。まだ不透明。

グーグルとマイクロソフト増収増益 生成AIの競争激化、投資を加速:朝日新聞デジタル
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「アルファベットは主力の広告事業が持ち直し、前期から売り上げの伸びが加速した。売上高は前年同期比7%増の746億ドル(約10.5兆円)、純利益は15%増の184億ドル(約2.6兆円)となった」。

——タイトルだけ見ると、好調ぶりが揺るがないように見えるが、米市場の見立ては異なる。成長が鈍化している事実は両社に共通。だが、Alphabetは広告事業が復調。特にYouTubeは勢いが増している。Microsoftは企業向けやPCが良くない。まだら模様。加えてR&D投資が重くなる。

生成AI「絶対必要な武器」少年ジャンプ+編集長ら期待 - 日本経済新聞
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「プロの漫画家が『結構使える』などと言っており、予想より良かった。(今はテキストでしか入力できないが)漫画の設計図であるネームの画像を入れて反応を見てみたい、といった声もある」(少年ジャンプ+編集長・細野修平氏)

——「クリエイターの代わりではなく、ツール」と佐渡島庸平氏。その通りで、産業分野ごとに需要の柔軟性が異なり、マンガではジェネレーティブAIの取り込みが進むのかもしれない。

Facebook頼みに誤算 BuzzFeed News閉鎖を元編集長が語る - 日本経済新聞
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「11年末に創刊したバズフィード・ニュースは、ソーシャル・メディアを基盤にした報道機関を目指した。しかしいくつかの誤算があった。一番の問題はSNSが質の高いジャーナリズムを無料で提供するという事業モデルが成立する構造ではなかったということだ。特に、世界最大のSNSであるフェイスブックはそうだった」。

——BuzzFeed Newsの初代編集長Ben Smith氏への取材記事。歴史を振り返り反省の弁も述べるが、これを巻き戻したところで、正答が見えてくるわけではない。同氏は「ニュースの「届け方」については、まだみんなが『next big thing(次の大きな革新)』を待っているところだ」とするが、そこにヒントが仄見える。自分もnext big thingづくりを考えたい。

Washington Post drives revenue through its subscriber investments

International News Media Association (INMA)

Washington Post drives revenue through its subscriber investments
購読者のエンゲージメント向上が、社業の成長と財務上の成功にとり重要と語る米Washington Postの「ライフサイクル・マーケティング」責任者が語るチャーン(退会)対策の4つの重要ポイント。1) 訪問頻度、2) ニューズレター、3) 知人による紹介、4) 多様なコンテンツ消費だ。
「AIの学習データが底をつく」’2026年問題’の衝撃度とその対策とは?
「チャットGPTのような大規模言語モデル(LLM)の開発には、膨大な学習データが必要だ。
主な収集先はネットだが、使えそうなデータは徐々に使い尽くされ、良質なデータは2026年には底をつくと見られている。
ツイッターは7月初め、利用回数の制限を実施し騒動となった。その引き金になったのも、AIの学習データ収集のためのアクセス集中だったという」。

——平和博さんのまとめ。問題は、“無限”とも形容されているネット上のコンテンツでさえ、人類が築いた文化的資源の一部でしかないことが可視化されたこと。自由にはクロールできない文化の宝庫が、新聞社や図書館などに非デジタルな形式で保存されていることをどう守り、どう活用するのかが重要。

AI, the media, and the lessons of the past

Columbia Journalism Review

AI, the media, and the lessons of the past
OpenAIが米ローカルジャーナリズムを支援する団体(American Journalism Project)に対し1,000万ドルを拠出する提携をすでに紹介した。本記事は、このようなIT側からのアプローチは、MetaやGoogleらか繰り返し起きており、その過去の教訓から学ぶべきと辛辣に語る論評だ。
OpenAIやMetaなどAI大手7社、米連邦政府に「責任あるAI開発」を“自主的に”約束
「米連邦政府は7月21日(現地時間)、AIを手掛ける7社の代表をホワイトハウスに招集し、AIの安全性、セキュリティ、透明性の高い開発に向けた取り組みを支援するため、これらの企業から自主的な取り組みを確保したと発表した。
サイバーセキュリティ対策やコンテンツがAIによって生成されたことをユーザーに示すための透かしへの投資などを約束するものだが、“自主的”なものであり、規制ではないので守れなくても責任は問われない」。

——政府からの働きかけによるわけだ。このままでは、欧州など規制に積極的な国々で一網打尽にされかねないと判断したのだろう。米政府は、AI分野での寡占企業の暴走を抑えたい一方、世界での優位性を維持したい。中国がこの分野でどれほどのポテンシャルを持っているのかも、認識しているはずだ。

AIの報道利用、日経はこう考えます - 日本経済新聞
「AI作成の文章や画像をそのまま公開することはありません。利用する場合は事前の報告、許可、結果の検証、記録、修正がすべての編集メンバーの義務です。取材や業務で知り得た機密情報や個人情報の入力は禁止です。
AIの提案を採用する場合は、その旨を明記します」。

——うっかり本記事の紹介をもらしていた。先週公表されたこの記事は、日経のジェネレーティブAIの利用についてのガイドラインを内外に説明するもので、重要。ITmediaがすでにガイドラインを公表しているが、各社はこのような表明を進めるべきだろう。技術の進展に合わせてバージョンが変わることも、容認されるべきだ。

Disruption This Week—–21/7/2023

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2023年7月18日から2023年7月21日まで。

Most popular news sources in the UK: Tiktok overtakes BBC Radio 1 and Channel 5
英国成人(16歳以上)に利用されるニュース源として、TikTokが2年連続で急成長。いまや10人に1人のニュース源に。BBCが依然トップだが、マイナス成長。TikTokの利用はセレブや著名ジャーナリストのフォローが中心。もちろんBBC発などの商業メディアの動画も含まれるのだが。
Google Tests A.I. Tool That Is Able to Write News Articles
【有料購読者向け記事】:
Google、報道メディア向けAI「ジェネシス(Genesis)」をプレゼン。同社から説明を受けたメディアは、NY Times、Washington Post、Wall Street journal(News Corp)など。G社広報は「ジャーナリストの本質的な役割を代替することはない」と述べる。
記事中は、NY市立大の起業家ジャーナリズム教授のJeff Jarvis氏によるGenesisへの2項対立的なコメントを掲げており興味深い。
「ChatGPT」も活用してウェブサイトを丸ごと生成する新AIツール、Wixが発表
「(イスラエルの)Wixは現地時間7月18日、『AI Site Generator』を発表した。近くリリースされるこの新ツールは、『ChatGPT』とWix独自のAIモデルを活用し、利用者がプロンプト(指示)を入力するだけで、個別のニーズに合わせた独自のウェブサイトをデザインしてくれる」。

——プログラミング(コーディング)などもそうだが、これから(私のような)初学者には、HTMLやJavaScriptなどから勉強しなければならないというハードルが下がるのだろうか。大いに期待。

OpenAI partners with American Journalism Project to support local news
OpenAI、米ローカルメディア(ジャーナリズム)を支援するプロジェクトに500万ドルを拠出と発表。American Journalism Project (AJP)のCEOは、このパートナーシップで、AIがジャーナリズムを脅かすのではなく、むしろ強化する方法を促進することを目指すと述べた。
Semafor CEO Justin B Smith says start-up heading for profitable month in year one
ほぼ1年前、Justin B SmithとBen Smithの両氏が創業した米メディアSemafor。かつてのQuartzやAxiosなどをよりモダンにしたような高級誌志向のWebメディアだ。CEOのJustin Smith氏は、単月黒字が現実になると述べる。
AI生成「ごみ記事」に汚染されるウェブ空間
【有料購読者向け記事】:
「ユーチューブでは『チャットGPT』のゴールドラッシュが本格化している。これを使ってお金を稼ぐ方法を助言する動画が数十本あり、何十万回も視聴されている。その多くはごみのようなコンテンツを作る疑わしいスキームを紹介している」。

——私は約1年前に共同執筆した書籍の原稿で、「近い将来、Web上のコンテンツの9割がAIに生成されたものとなる」との専門家の予測を書いた。着実にその実現に向かって世界は歩んでいるようだ。AIが用いた安価な記事生成手法が広がろうとしている。
記事が触れるように、AIが生成した低品質コンテンツをAIがさらに学習してしまうという「モデル崩壊」も近々生じることだろう。

The story of Europe’s hottest TikTok news account: Ac2ality | What’s New in Publishing | Digital Publishing News
欧州でTikTokを用いたニュースメディアとして2022年に創業した「Ac2ality(アクチュアリティ)」。0人のフォロワーから、現在は70万人近いところまで成長。何より、若者をユーザーにターゲットにニュースを1分の動画で語るメディアの創業者2人に取材した記事。
FEATURE: Disinformation on TikTok worries Taiwan - Taipei Times
台湾では、TikTokが来年に迫る総統選をめぐる熾烈なキャンペーン・プラットフォームになろうとしている(台湾では、TikTokのDAUはYouTube、Facebookに劣後しているが)。同地のファクトチェック団体CofactsはTikTok人気の高まりから、ニセ情報拡散の危険度も高まると警戒する。
Generative AI and journalism: All we know as AP and Shutterstock sign deals with OpenAI
「AP通信は、知的財産が確実に保護され、コンテンツ制作者がその仕事に対して公正に補償される枠組みを断固として支持する。大小の報道組織がAI技術を活用してジャーナリズムに利益をもたらすことができるよう、報道機関は協議をしていく必要がある」。

——AP通信とShutterstockがOpenAIと正式なコンテンツ供与契約を結んだことはすでに紹介した。この記事では、関連する情報と、他の報道メディアがどのようなスタンスをとっているか概観する。

ハリウッド、エキストラをAIスキャンして永遠に無料で使う案を思いついてしまう
「AMPTP(=映画製作者協会)は、SAG-AFTRA(=映画俳優組合)に対して『エキストラの顔や姿をスキャンし1日分の報酬を支払う。そのスキャンしたデータは企業が同意や保証なしに使用できるようにする』という”画期的な提案”をしていました」。

——記事にあるように、ハリウッド制作映画では、エキストラは日本のようにボランティアではなく、職業である場合が多いという。AI制作において再利用権を売買することは「報酬を得られず生活の基盤が緩むだけでなく、スターになるチャンスまで失うことになる」のだという。

Disruption This Week—–14/7/2023

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2023年7月10日から2023年7月14日まで。

F.T.C. Opens Investigation Into ChatGPT Maker Over Technology’s Potential Harms
【有料購読者向け記事】:
FTC(米連邦取引委員会)、ChatGPTを運用するOpenAIに捜査協力を要請する書簡を送付。書簡には同社がどのようにAIモデルを訓練しているのか、個人データをどのように扱っているのかなど、数十の質問が含まれており、これらへの回答を要請した。
ビッグテック相手の提訴では次々と敗北をしているFTC、今度は成果を上げられるだろうか?
GoogleのチャットAI「Bard」に新機能 回答のシェア、文章の読み上げなど
「AIの回答の下部にあるボタンを押すとシェア用のURLを発行できる。読み上げ機能は回答の右上にあるスピーカーアイコンを押すと利用可能。日本語での読み上げにも対応している」。

——ChatGPTに存在感で遅れをとる、GoogleのBard、使い勝手などの工夫で追い上げてきた。音声入出力がジェネレーティブAIに組み込まれると、日常的な利用の範囲が広がるはずだ。

Exclusive: AP strikes news-sharing and tech deal with OpenAI
AP通信、ChatGPTを運用するOpenAIと提携と発表。契約には、契約の一環として、OpenAIが1985年までさかのぼるAPの記事アーカイブ(の一部)をライセンスし、AIアルゴリズムの訓練に役立てることが含まれると記事は述べる。
メタ「スレッズ」急成長、ツイッターに早くも打撃か
【有料購読者向け記事】:
「調査会社シミラーウェブによれば、スレッズの本格利用が可能になった最初の2日間に、ツイッターのトラフィックは前週同日比で5%減少した。前年比では11%減となった。
さらに、クラウドインフラ企業クラウドフレアのマシュー・プリンス最高経営責任者(CEO)が9日のツイートで、ツイッターのDNSランキングが低下している様子を示したチャートを添えて『ツイッターのトラフィックが激減している』と述べた」。

——いまだに私の古典的な感覚では、“模倣”による成功をよしとしないところがあるが、とはいえ、Twitterのここで受けている打撃は、自ら招いた要素も大きいことは間違いない。

「ニュースの未来はどうなる?」SnapChatがChatGPTを統合したサービス「My AI」。会話を生み出すことができるだけでなく、ニュースを消費する革新的な方法を提供し、Z世代が好む消化しやすい形式で重要な情報を配信すると、My AIとその可能性に期待する記事。
Writing guidelines for the role of AI in your newsroom? Here are some, er, guidelines for that
米Nieman Lab、世界各国21の編集部が定めた、各編集部におけるAIの役割とその表明化についてのガイドラインを収集、その概要をリポートする記事。「OVERSIGHT(監督)」「TRANSPARENCY(透明性)」「BANNED VS. ALLOWED USES(禁止と許可)」「ACCOUNTABILITY AND RESPONSIBILITY(説明責任と責任)」「PRIVACY AND CONFIDENTIALITY(プライバシーと守秘義務)」「CAUTIOUS EXPERIMENTATION(慎重な実験)」…といった、項目だてなども含めて非常に有力な参考となるはずだ。
UUUM、業績予想を下方修正 原因は「YouTubeショートの再生回数の増加」
「『YouTubeショートの再生回数増加に伴い、YouTubeショートを除く動画再生回数が当初の想定を下回る形で推移し、売上高は想定を下回る見通しとなった』(同社)といい、所属するYouTuberの広告収入に影響が出ているとみられる」。

——「ショート」の再生回数増加がどうして収入減になるかというと、(私の理解では)TikTokに始まる短尺動画ブームが、まだ十分なビジネスモデルを創りだせていないということだろう。従来のYouTube動画では、各種の挿入広告のモデルが築かれており、そこに最適化が進んでいたということなのだろう。

How AI will turbocharge misinformation — and what we can do about it
米Axiosの「Tech」担当Ina Fried氏は、AIが引き起こす情報リスクへの対抗策として有効と考えるものを4つあげる。1) 証明(だれが作ったかを証するメタ技術)、2) 規制、3) アルゴリズム(対抗的なAI技術)、そして4) メディアリテラシー(賢い消費者への支援)だ。
「Threads」ユーザー1億人突破 サービス開始から5日
「7月10日午後6時ごろに新規アカウントを作成し、同社が提供する別のSNS『Instagram』との連携機能を使って何番目の登録者か確認したところ、すでに1億人以上のユーザーがいることが分かった」。

——同じ記事の後段では、「10億」突破から収益化を考えたいとするMeta CEOの意向も紹介されている。ちなみに自分はいまだにThreadsを使っていない。Twitterをニュース情報源として利用しているので、Threadsが満たすまでにはまだ時間がかかるだろうと踏んでいるから。

Why Threads Is Bad for the News Business
【有料購読者向け記事】:
米Information創業者Jessica E. Lessin氏、「Threads」について「質の高いニュースは、アルゴリズムがスクロールさせ続けるために何かを提供しようとするモデルではうまく機能しない」と批判的な見解を述べる。
「Facebookアプリが数年前にニュースを軽視したのには理由がある。また、インスタグラムが質の高い報道メディアの大きな紹介元になっていないのも理由がある」とする。良質な報道を体験することと、情報中毒的にスクロールを際限なく行うビジネスモデルとは相性が悪いという視点。
動画配信・AIに揺れるハリウッド - 日本経済新聞
【ご紹介】:
月一連載が日経電子版に掲載されました。よろしければご一読を。いまやNetflixはクリエイターの憎悪の対象に? ➡ 動画配信・AIに揺れるハリウッド

Disruption This Week—–7/7/2023

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2023年7月3日から2023年7月7日まで。

AI Is Tearing Wikipedia Apart
「懸念されるのは、機械が生成したコンテンツは多くの人間のレビューとバランスを取らなければならず、あまり知られていないWikiを悪いコンテンツで圧倒してしまうことだ。AI生成は、信憑性のある人間のような文章を書くのに便利な反面、誤った情報を含んでしまったり、存在しないソースや学術論文を引用してしまったりすることもある」。

——WikiはジェネレーティブAIの誕生で岐路に立たされているように見える。一つは、AIは自由に使える貴重なトレーニング教材としてWikiをクロールし尽くしている。他方、AIが生成する情報(知識)がWikiにどんどん書き加わっていく。実際、記事によれば、Wiki財団はこれへの対策ツールの開発などに取り組んでいるという。

MetaのTwitterっぽい新SNS「Threads」使ってみた かなり近いが投稿検索・ハッシュタグなく性格は別物
「では実際に投稿してみよう。Twitterでいう『ツイート』のことは『スレッド』と呼ぶようだ。機能はシンプルで、文字を書いて投稿ボタンを押すだけ。写真は10枚まで添付できる。1スレッド当たりの文字数制限は500文字」。

——話題のThreads。実際にどう使うのか(使えるのか)? 試用記事。ポイントはInstagram(Metaは相互運用性を追求するので、Facebookもか)の目的別アプリということで、アカウントを共有する。言い換えれば、InstaやFacebookのフォロワーをインポートできるというのが魅力(言い換えれば、危険性)ということのようだ。つまり、ゼロからフォロワーを築いていく必要はない。

ITmedia NEWSは記事執筆フローにChatGPTなどAIを導入します
「分かりやすいように要約を先に示しておきます。

– 『取材・執筆・編集』のアシスト全般にAIを利用
– ChatGPT利用は『情報漏えいの懸念がないもの』に当面は限る
– 『AIを使ったから間違えた』は言い訳にならない
– 記事を作る主体はあくまで人」

——ジェネレーティブAIの利用の是非を、倫理的に騒ぎ立てるような時代ではないと思う。ITmedia NEWSがChatGPTの業務的な利用を明言。引用したような「ポリシー」の明言が重要なんだと思う。

How (and should?) we stop the infinite scroll
「ネズミがレバーを押すと、おやつがもらえる。たとえレバーを押してもいつもおやつがもらえるわけではなくても、たまにおやつがもらえることがある……だからレバーを押し続けるのだ。私たちはフィードをスクロールし、興味をそそる楽しい投稿を探している。すべての投稿が面白いとは限らないが、私たちはドーパミンの素早いヒットを求めてスクロールし続ける」。
近年のスマホUIの方程式である「無限スクロール」。「ビジネスに優しく、健康に悪い」仕組みを掘り下げ批判する論。
Fake journalist profiles used to launch Bournemouth Observer - Journalism News from HoldtheFrontPage
英ローカルメディアの体をなした非常に巧妙な偽造サイトが出現したという話題。最近立ち上がった「Bournemouth Observer」は、英国のローカル報道メディアだが、11名の記者らのプロフィールはすべて非実在の人物。掲載された事件報道も地元警察が確認できないという謎のサイトだ。
Gen Z and AI: The Publishers' Guide | What’s New in Publishing | Digital Publishing News
インターネットのない世界を知らない最初の世代、同時にソーシャルメディア必須の時代(幼少期にはYouTubeが存在)を生きてきた“Z世代”。1990年代半ばから2010年代前半に生まれたこれら若者をオーディエンスとするメディアをどう開発していくかを論じるガイドライン。
“The single greatest threat and the single greatest opportunity”: Insights on AI and publishing, from FIPP World Media Congress 2023 | What’s New in Publishing | Digital Publishing News
「AI、それは単一の最大の脅威であり、単一の最大の機会」だと述べる、最近行われたFIPP世界メディア会議での講演概要。
「1. 物語のために来訪、コミュニティのために滞在、2. 伝統的な記事の解体、3. AI:単一にして最大の脅威、最大の機会」という魅力的な構成。
「マスメディアは作れる」元テレ東高橋弘樹Pが目指すゲームチェンジ:朝日新聞デジタル
【有料購読者向け記事】:
「仮に(朝日新聞の販売部数が)400万部だとして、ユーチューブでも400万回再生とかいくわけです。400万人が目にしたコンテンツを『マス』と言うとすると、『マスメディア』とは輪転機を持っていることや地上波の権利を持っていることではなくなる」。

——ひろゆき氏や成田悠輔氏の起用で人気コンテンツをYouTubeに提供し続けた高橋P氏。自らの媒体社をたちあげてやりたいことを述べた。正論が多く、納得感がある。

「退屈な仕事が減った」 米地方メディア、ChatGPTの活用進む:朝日新聞デジタル
【有料購読者向け記事】:
「アウトポストの取材地域は、地元ハンボルト郡のほかユーリカなどの自治体。山形県ほどの面積を6人の記者でカバーしている。シムさんのソフトは、それぞれの議会で取り上げる議題に関する公開データを集める。そのデータを『平易な文章で要約して』とチャットGPTに自動的に送り、サマリーを書かせるというものだ」。

——一方で、ジェネレーティブAI利用の浸透に対して猛反対する新聞事業社がある一方で、このような零細事業者がAIを活用。事態への多面的な視点、のみならず新聞メディアのなくしてはならない使命を思い起こさせる点でも、意義の高い記事。

出版状況クロニクル182(2023年6月1日~6月30日) - 出版・読書メモランダム
「とりわけ『出版社がボロ儲け 狂乱のIP(漫画の知的財産)パブル』は、コミックスとアニメのメディアミックスによる版権収入が集英社、小学館、講談社の業績を支えていることを明らかにしている。それが現在の大手出版社のトレンドなのだ」。

——引用箇所は、「アニメ熱狂のカラクリ」を特集した東洋経済誌から。その突出した大手の一角である小学館の決算に触れて、このブログでは、出版やIPをめぐる業績停滞を迎えるなか、増収を支えたのが広告とデジタル収入であることを伝えている。出版とその流通産業の姿は、かつてに比べ決定的に変わってしまっている。

Disruption This Week—–30/6/2023

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2023年6月26日から2023年6月30日まで。

WSJ News Exclusive | Big News Publishers Look to Team Up to Address Impact of AI
【有料購読者向け記事】:
米Wall Street Journal、複数の大手ニュース・雑誌出版社が、AIが業界に与える影響に対処するために圧力団体の結成を協議中とスクープ。大手メディアには、News Corp、New York Times、Axel Springerその他が含まれる。協議は、ジェネレーティブAI技術台頭が業界と社会の両方にとり存亡の危機であることを示している。
「AIは古いWebを殺し、新しいWebが生まれようとしている」。米The Vergeの論考。
ジェネレーティブAIが引き起こす懸念を整理しつつ、「本質的にこれは情報をめぐる戦いであり、誰が情報を作り、どのようにアクセスし、誰が報酬を得るかをめぐる戦いだ」とする。つまり、Web上でつねに起きてきたことでもあるというわけだ。
Bloomberg to Publish More Audio on YouTube
【有料購読者向け記事】:
Bloomberg、音声コンテンツ(ポッドキャスト)を強化中。従来はBloomberg専用端末や同社アプリ中心路線だったが、聴取者拡大のために、YouTube Shorts、InstagramそしてTikTokへの配信を強化し、成功裡に進める動画コンテンツと融合させていくという。
WSJスクープ | グーグル、広告掲載の自社基準に違反=調査
【有料購読者向け記事】:
「アダリティクスはグーグルが、収益化基準を満たさないサイト上で、ページのメインコンテンツの脇に小さくミュートの状態で自動再生動画に広告を掲載するなど、違反行為を行っていると非難した」。

——この間、注目されているGoogleの“自主的基準緩和”の動き。コンテンツファーム的動きが再来。広告主にもブランド毀損に向かう悪いスパイラルとなるはずなのだが。

‘TikTok is age-agnostic’: how Kylie and Fleetwood Mac found new young fans
かつてはティーンエイジャーのダンスブームと見なされていたTikTok。だが、音楽業界における重要なプレイヤーのひとつへと進化した。Kate BushからFleetwood Mac、そしてKylie Minogue氏ら古典的なスーパースターたちも、彼らの時代から数十年後に生まれたファンとつながることができることから積極的に利用することとなったのだ。
生成AIで広告収入目的のゴミサイトが急増、1日1200本更新も
【有料購読者向け記事】:
「140社を超える大手ブランドが、おそらく知らず知らずのうちに、AIで作成された信頼性の低いサイトの広告費用を支払っているとみられる。こうしたAI生成ニュースサイトで見つかった大手ブランドの広告の90%はグーグルが配信したもので、グーグル自身のポリシーに違反している」。

——昨日も取り上げた話題。自動生成したコンテンツをサイトによっては1200本/日も掲載して、これまた配信型広告で荒稼ぎという、懲りないコンテンツファームが急増中。なぜこんな商売が成立するかと言えば、Googleなどがせっせと大手ブランドの広告を送り込んでいるからだ。

CBS News effort shows the growth in solutions journalism to combat bad news fatigue
「記者は悪いニュースの運び屋以上の存在でなければならない」。
米CBS News、さまざまな事例を通じて“問題解決型ジャーナリズム”を模索。問題に取り組もうとする人々や組織を見つけることを重視。ジョージア州では、学校での子ども逮捕を抑止する教育者を養成しているとする。
Funding the Next Generation of Content Farms - Misinformation Monitor: June 2023 - NewsGuard
「誤報モニター」を毎月発信する、メディアの品質監視ビジネスの米NewsGuard。ジェネレーティブAIが生成する低品質コンテンツで運営するメディアが、過去1か月で49から217へ急増中と警鐘。Googleらアドテクが、一流ブランドの広告を配信し、これらの事業化を助けているとも。相変わらずの構図。
The “passive news consumer” is on the rise
Reuters Instituteによる定期調査「Digital News Report2023」は、世界46市場の平均的動向として、ニュースの「受動的消費者」(利用はするが、「いいね」など積極的な参加はしない)の比率が増えていると報告。「積極的参加者」は全体の4分の1以下(22%)で減少中だとする記事。
Facebook、Instagram「ニュース停止」の衝撃、生成AIで複雑化する攻防とは?
「これまでの『ニュース使用料』をめぐる議論は、検索サービスやソーシャルメディアにおけるニュースの見出し、文章の抜粋(スニペット)、写真、記事へのリンクなどの掲載、すなわち『引用』が焦点となってきた。
だが生成AIにおけるニュースの扱いは、いったん言葉の単位に分解され、改めて文章として再構成される『生成』だ」。

——実際、ジェネレーティブAIによって咀嚼された情報に対して権利を主張できるのかどうか。多くの人びとがさまざまな情報源から得た知識を、あたかも自身の知性であるかのように吹聴しているはずだ。期待の「情報源としての透かし(ウォーターマーク)」も、現実的なものとして実装できるのかどうか。実現が危ぶまれている。

スマートニュースが個別に最適化「クーポン」開始。ニュース配信の“機械学習”を活用
【ご紹介】:
「クーポンを提供する企業からも『商品ニーズにあったユーザーにクーポンを配信してほしい』というニーズがあったという。
そこで、これまでニュース配信に活用してきたマシンラーニング技術をクーポンでも活用し、ユーザーの興味関心に最適化したクーポンを配信することにした」。

——SmartNewsが配信するオンラインクーポンが進化。記事配信に用いていた技術を利用とのこと。