Disruption This Week—–7/6/2024

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2024年6月3日から2024年6月7日まで。

How Taiwan’s factcheckers fight Chinese disinformation and ‘unstoppable’ AI - Taipei Times
台湾のファクトチェック組織「MyGoPen」(現在、40万人の購読者を擁する)創始者の葉子揚氏への取材記事。Taiwan FactCheck CenterやCofactsなど新たなファクトチェック組織が加わったが、台湾を標的にした偽情報の脅威もより巨大化。さまざまな事例を生々しく紹介する記事。
It Looked Like a Reliable News Site. It Was an A.I. Chop Shop.
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月間来訪者数1,000万人を誇り、米msnをはじめとしてWashington Postや英Guardianなどにも記事を提供してきた香港発ニュースサイト「BNN Breaking」。従業員らの証言で、数々のジェネレーティブAIを用いた他社サイト模倣記事を発信してきたことが明らかになった。NYTimesらに追及され、サイトを閉鎖に。
ワシントン・ポストがニュースレターに音声 生成AI を導入。「自分の好きな方法でコンテンツを消費する時代だ」 | DIGIDAY[日本版]
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「5月20日、米紙ワシントン・ポスト(The Washington Post)は政治と政策をテーマとする3つのニュースレターに音声生成AIを追加し、購読者はニュースレターの内容を『聴く』ことができるようになった」。

——「ワシントン・ポストが所有、運営するプラットフォームでは、音声コンテンツの再生回数が30日間の平均で400万回に達するが、そのうち90%近くはアプリによるもので、音声コンテンツが大部分を占めているという。1日あたりの音声コンテンツ再生数は昨年末から倍増していると広報担当者は語った」と記事にはある。優良顧客(愛読者)と音声コンテンツ利用とには正の関係があるらしい。

無名の作家がTikTokを最大限に利用してベストセラーになるまで | 自費出版で100万部以上も!
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「視聴者から『本にしてほしい』というメッセージを受け、2021年の秋にこの本を一冊19.99ドル(約3100円)で販売しはじめた。
『最初の売れ行きは遅かった』が、2022年後半にTikTokの直接販売プラットフォームを使い始めて風向きが変わった」。

——YouTubeやTikTokのインフルエンサーであった25歳のケイラ・シャヒーン氏が、自身の啓発トレーニングを“自己出版”。TikTokの直販システムを使い100万部販売という……。

Fake AI Tom Cruise is part of a Russian scheme to mess with the Olympics, Microsoft alleges
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すでに紹介したが、ロシアがEUへの影響力工作を進めていることが、種々報道されている。ターゲットの一つに仏五輪があるが、AI生成の偽Tom CruiseがIOC幹部を侮辱する動画が、ロシア発の「Storm-1679」によって流布とMicrosoft脅威分析チームが警告している。偽動画はNetflixなどのブランドを騙る一方、一方でレビューで高い星を獲得したなども偽装。手の込んだ仕掛けだという。
News avoidance: Publisher rewrites journalism rulebook for most contentious stories
ニュージーランドのあるメディア、読者の「ニュース回避」を抑止する新メソッドを発表。同メディアは、読者の感情の変動を追跡する「センチメントトラッカー」を駆使して、従来言われてきた回避対策とはことなる手法を実践する。
ジャーナリズムの古典的な文章作法だった「逆三角形」を見直す。「子猫とスポーツ」だけが対策ではないと。
メディア総接触時間、20代男性が500分越え/若年女性はスマホが5割以上占める【博報堂DYMP調査】
「スマートフォンでのテレビ番組視聴およびテレビ受像機での無料動画視聴の利用率を調査。すると、スマートフォンでのテレビ番組視聴が3割台に増加した。また、テレビ受像機での無料動画視聴も過半数に達した」。

——恒例の博報堂DYMPによるメディア接触(時間)の調査結果。スマートフォン優位の趨勢は、2024年も変わらないが、CTVによるネット視聴の動きが進んでいるのが、興味深い。個人的にはYouTubeの“マスメディア化”が進んでいる動因のひとつと見ている。

Guardian CEO Bateson ready to ‘do a deal’ with AI companies ‘on the right terms’
英メディアThe Guardianを率いるGMGのCEO、Anna Bateson氏、公開イベントでAI企業との取引交渉に取り組んでいると示唆。1年前の同イベントで居並ぶメディア企業は否定的な姿勢だったが、その後、すでにFTら2社が交渉を締結。Guardianもそれに続く動きを示した。
Washington Post: Telegraph veteran to take over from Sally Buzbee as executive editor
昨日の米メディア界の話題は、Washington PostとWall Street Journalでの動き。まずはWaPo。同紙初の女性編集長となったSally Buzbee氏が短い在任期間で、編集部を去る。同紙は昨年200名を超す人員削減を行うなど大きな経営危機に直面していることが知られている。
“The way we raise the money at The Guardian is different than any place I’ve ever been”
1億2,000万ドルもの個人からの寄付金を得る英The Guardian。特に収入増が顕著な米Guardian担当者に取材した記事。「我々はEメールの充実に力を注いできた。今では7%から24%となっだ。だがそれでも76%はWebからの獲得だ」とペイウォール制を敷かない利点を述べる。

Disruption This Week—–31/5/2024

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2024年5月27日から2024年5月31日まで。

Early signs show Google AI Overviews won't mean 'dramatic downward dive' for news traffic
検索結果を要約という形式で返す新たな検索機能「Google Overviews」。サイトへの参照トラフィックを劇的に減らすのではとの懸念が高まるが、SEOの専門家は「激減とはならない」との見方を示した。Googleのパートナーシップ担当の幹部も、「過度に要約はしない」と述べる。
どうやら、チューニングレベルで、メディア側の懸念を沈静化させようということのようだ。
AI image misinformation has surged, Google researchers find
Googleや複数のファクトチェック団体の研究者によれば、AIによって生成された偽画像が2023年春以降、急速に拡散、今やテキストやフォトショップのような従来の編集ツールで加工された画像とほぼ同程度に一般的になっているという。
「A Large-Scale Survey and Dataset of Media-Based Misinformation In-The-Wild」との査読前論文で公表。
London Evening Standard to close daily newspaper and launch new weekly
創刊160年を超える英国の老舗日刊紙「London Evening Standard」、日刊を廃止し週刊化を計画と発表。地下鉄構内でのWiFi整備、コロナ禍での在宅勤務の常態化が経営を圧迫と、Paul Kanareck会長が説明。
メタなどSNS大手に広告審査基準の公表義務化へ なりすまし防ぐ - 日本経済新聞
【有料購読者向け記事】:
「30日の論点整理では広告掲載に関する事前審査基準の策定・公表のほか、『日本語や日本の社会・文化・法令を理解する者が十分配置されている』ことも求める。人工知能(AI)による自動審査を実施している場合は、その実効性に関する説明も要請する」。

——いわゆる“著名人を騙る詐欺広告”問題。もちろん、念頭にあるのは、SNSなどを運用する大手プラットフォーマらによる広告内容の事前(掲載中もだが)審査体制の強制化。

HUGE Google Search document leak reveals inner workings of ranking algorithm
Googleの検索ランキングアルゴリズムに関連する膨大なドキュメントが漏洩。3月13日以降Githubにて閲覧できる形になっていた。同社アルゴリズム関連の漏洩はこれが初めてではないという。文書のさまざまな点を専門家が分析しているが、大きなサプライズはない模様だ。
OpenAI's new safety committee is made up of all insiders | TechCrunch
OpenAI、同社プロジェクトと運営を巡る安全性とセキュリティを監督する新しい委員会を設置と発表。だが、この委員会は第三者ではなく、同社CEOであるSam Altman氏を含む社内の人間で構成される。同社は、最近も安全性をめぐり幹部が退社するなどの対立を起こした経緯がある。
「AIと共存すべき」人気声優・梶裕貴 自身の声で自由にしゃべれるAIソフト発売へ 「たくさん悩んで」決断
「梶(=梶裕貴)さんは『当初はソングボイス(歌声合成ソフト)のみの開発にとどめる考えだった』という。だが『プロジェクトに対する大きな期待値を感じ、少しでも音声AIの明るい未来に貢献できるなら』と、トークボイス(声の再現ソフト)の開発を決断した」。

——「AIと敵対するのではなく、共存すべき」と梶氏は考えだそうだ。この種のアーリーアダプターが学んだことを近い将来、開示・共有してくれれば、さらにありがたい。

Big Tech Moves More AI Spending Abroad
【有料購読者向け記事】:
米コンサルティング企業DA Davidsonのアナリストは、AmazonやMicrosoftなどがAIインフラに今年1000億ドル以上を費やすと予想。場合によればさらにそれが増えるとする。経済成長の進ちょくとスループット向上のため、投資が世界へと分散するとも指摘する記事。

米Washington Postの発行人兼最高経営責任者に就任して間もないWill Lewis氏が、集まった社員に向け同氏が「昨年、7700万ドルの損失を出したこと、2020年の最盛期から読者が50%激減したこと」を表明し、再建プロジェクトの概要を説明。新たな有料購読サービスの追加を提唱した。
オープンAIがニューズと提携、WSJなどのコンテンツ表示可能に
「合意の一環としてオープンAIのサービスは、ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)、バロンズ、マーケットウオッチなどニューズの出版物に掲載されたニュースを表示できるようになる。オープンAIはここ数週間にフィナンシャル・タイムズ(FT)やドットダッシュ・メレディス、ソーシャルメディア企業レディットなど欧米の主要メディア企業とコンテンツの表示やライセンスに関する契約を結んでいる」。

——大手報道企業から総スカンを食らったかと思いきや、News Corpら最大手となんとか提携にこぎ着けつつあるOpenAI。現在では、良質な英語コンテンツが最大の獲得目標のようだが、これから多言語展開への遠い道筋が待っている。

Disruption This Week—–17/5/2024

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2024年5月13日から2024年5月17日まで。

What’s on TV? For Many Americans, It’s Now YouTube
【有料購読者向け記事】:
先月に行われた米Nielsenの調査によれば、米国の視聴者10%近く(視聴時間)がYouTubeに。コネクティッドTVの普及度合いが進展か。
グーグルが「Astra」発表、AIアシスタントからエージェントへ
「ユーザーがスマホのカメラとスマートグラスを物に向け、それが何か説明するようAstraに求めた。デバイスを窓の外に向け、『ここはどこだと思いますか』と尋ねると、AIシステムはロンドンのキングスクロス、つまりグーグル・ディープマインドの本社所在地だと特定した」。

——OpenAIが発表し話題となっている「GPT-4o」に相当するGoogleの新製品(開発中だが)が「Astra(アストラ)」だ。「リアルタイムで動作するマルチモーダルAI(音声、映像、テキストなど複数の種類の入力を処理できるAI)」の試みで、私もたびたび言及してきた「AIアシスタント」を実現する上でのOSのようなものになる。

News publishers sound alarm on Google’s new AI-infused search, warn of ‘catastrophic’ impacts | CNN Business
Googleの「AI Overview」の発表に、さっそくメディア業界からの反応。
「表面的には便利に聞こえるかもしれないが、すでにトラフィックの急減に苦しんでいるニュースパブリッシャーの多くにとって、この検索エクスペリエンスの刷新は、読者数のさらなる減少を引き起こし、読者と収益を奪う可能性がある」。
Netflix ad-supported tier has 40 million monthly users, nearly double previous count
米Netflix、安価な広告表示付きプランのMAUが全世界で4,000万人に達し、1月の2,300万人からほぼ倍増と公表。Netflixの総加入者数は現在2億7000万人となった。同社はまた、独自のアドサーバを構築、この分野でのMicrosoftとの提携を打ち切った。
【コラム】GPT-4oはセクシーな声で誘惑、ユーザーに覚悟は-オルソン
「サンフランシスコ本社で行われたライブデモでは、代数の問題を手伝っている人にAIが突然『まあ、とてもおしゃれな服を着ているのね』と話しかけ、聴衆を驚かせた。このイベントに出席していたブルームバーグ・ニュースは、この声は『気を引こうとしている感じ』だったという」。

——いずれ、AIが利用者にエモい働きかけをするのを抑止する法制が求められることになるだろう。冗談でなく。

Google、AI関連事業を担うDeepMind CEOのDemis Hassabis氏が「Google I/O」で講演。注目される新たなタイプの電子透かし「SynthID」について発表。画像・動画に加えてテキスト、そして音声にも適用可能と述べる。
Music in the Air: Focus on monetisation, emerging markets and AI; updating global music industry forecasts
米Goldman Sachs、ストリーミングを中核にした世界の音楽産業を巡る各種データをアップデートした「Music in the Air 2024」を公表。50ページ近いPDFを参照できる。それによると2023年は業界にとって大転換期だったという。値上げ・ジェネレーティブAI・ロイヤルティ支払い構造の近代化が要因だという。
AIを駆使して「ガザ攻撃」の実態を暴く、ピュリツァー受賞ジャーナリズムの新たな手法とは?
「AIを活用した報道は、2024年のピュリツァー賞最終候補45件中でも5件、1割超に上る。
見えていなかった現実を、AIを活用したジャーナリズムで明らかにする。その新たな手法とは?」

——平和博さんのポスト。ガザでのイスラエルによるハマス攻撃が、住民の安全を脅かすにたるほどのものであることを分析、そして米シカゴで、警察発表とは異なる犯罪捜査の内実を警察の内部文書の解析で判明。ピュリツァー賞受賞作が、AIを活用したジャーナリズムのありようを示した。

オープンAI、新たな旗艦AIモデル発表-「GPT-4O」
「同社によれば、口頭で質問すれば、システムは数ミリ秒で音声で返答することができ、より流動的な会話を可能にする。同様に、システムに画像プロンプトを与えると、画像で応答することができる。
システムに話しかければ、わずかミリ秒で音声で返答し、流れるような会話が可能になると、オープンAIは説明」。

——OpenAIが、“ライバル”のGoogleがプライベートイベントで製品発表を行うGoogle I/O(5/15開催予定)の直前に、自社製品の進ちょくをアピール。専門メディアが予測していたとおり、音声・映像をリアルタイムに認識し、リアルタイムに返答できるチャットボット機能「GPT-4o」を発表。

Russian network found using genAI to spread disinformation
【有料購読者向け記事】:
ロシアの影響工作組織「CopyCop」が、ジェネレーティブAIを用いて西側の主要メディア(たとえばBBC)のニセドメインを作成し、イスラエル・ハマス紛争についての不和を煽り、ウクライナへの支援を弱めるための情報を拡散していると研究者が指摘している。
AI is disrupting the local news industry. Will it unlock growth or be an existential threat? - Poynter
米Northwestern大のメディル・ローカルニュース・イニシアティブ、AIがジャーナリズム、特にローカルニュースにどのようなインパクをともたらすか研究した「Impact of AI on Local News Models」を公開。当然ながらプラスとマイナスを冷静に評価。PDFをダウンロードできる。
スマートニュース、「SmartNews for docomo」をリリース 広告配信も開始
【ご紹介】:
「スマートニュースは、ドコモのAndroid端末向けにニュースアプリ『SmartNews for docomo』をリリースし、アプリ内広告配信を開始した。
…同アプリでは、SmartNewsアプリと同様にコンテンツと広告を配信する。リーチやクリック、ウェブコンバージョンを目的とした運用型広告Standard Adsの配信となる」。

Disruption This Week—–10/5/2024

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2024年4月30日から2024年5月10日まで。

Leaked Deck Reveals OpenAI's Pitch on Publisher Partnerships
米Adweek、OpenAIがメディアとの提携スキーム(メディアがコンテンツのAI学習を許可し、代わって対価を得る)を解説した提案書「Preferred Publishers Program」をスクープ。金額など具体的な表示はないが、全体像は見える。OpenAI側はそれは「古い情報」だとコメントしている。
Facebook's referral traffic for publishers down 50% in 12 months
2018年からChartbeatが追跡している792のニュースメディアのサイトへのFacebookからの流入トラフィックを集計すると、2018年3月の13億件から先月の5億6100万件と、過去6年間で58%もの急減。さらにこの1年間では50%減だった。

2024 Edelman Trust Barometer

エデルマン・ジャパン

2024 Edelman Trust Barometer
「日本では特に、ジャーナリストや記者への信頼が欠如している」(ダウンロード可能なPDF資料から)
——2024エデルマン・トラストバロメーター
AI動向の年次調査レポート「2024 AI Index Report」公開 スタンフォード大研究所
【全文閲覧には要購読】:
「スタンフォード大学の研究所は、AI動向をまとめた最新の年次調査レポート『2024 AI Index Report』を公開した。生成AIのトレーニングコストに関する新たな推定値、責任あるAIの展望に関する詳細な分析などを報告している」。

——一度紹介済みだが、改めて。スタンフォード大の詳細を究めたAIトレンドの調査リポート。記事は無料購読者への限定記事だが、原文PDFはだれでも入手できる。

ニュースレターで解決できる? AIの脅威、トラフィックの減少、ファーストパーティデータの蓄積 | DIGIDAY[日本版]
「ソーシャル・プラットフォームへの依存度は下がっている。今後は検索への依存度も下がるだろう。(中略)私たちは、最も忠実なオーディエンスといえるニュースレターのオーディエンスをしっかりとケアし、自社で多くをコントロールできるプラットフォームに対応しなければならない」。

——Webでの閲読体験は下がる一方だ。サーフィンならいざ知らず、“好みのメディア”を決め打ちで読むのなら、ニューズレター(メルマガ)が重要な選択肢になる。配信するメディアからすれば、購読制への架け橋としての役割を期待できる。
記事はニューズレターに力を入れるメディアの動向と、その意図を解説するもの。ただし、この種の取り組みはもはやWebサイトの副産物の域を脱して手間ヒマのかかる取り組みでもあるのだが。

「ガザ攻撃」大学デモに介入、工作ネット「ドッペルゲンガー」「スパモフラージュ」の影響力とは?
「米国内では、イスラエルによるガザ攻撃を巡って大学での抗議デモが急速に拡大する。そんな中で、ロシアや中国などの影響工作ネットワークや政府当局者のアカウントから、社会の混乱や世論の分断を強調する発信が行われ、拡散されているという」。

——ロシア系影響力工作組織である「ドッペルゲンガー」、中国系組織の「スパモフラージュ」の活動がわかりやすく描かれた興味深いリポート。

Small newsrooms won big in the 2024 Pulitzers - Poynter
米報道関係者に与えられるアワードである「ピューリッツァー賞」の2024年版が発表。記事が紹介するように、今年の特徴(の一つ)は、中小・新興メディアの受賞だ。Lookout Santa Cruz、Invisible Institute、そしてCity Bureauがその代表だ。各メディアへの取材、コメントが読める記事。
テイラー・スウィフトの「AIクローン」、ティックトックが排除約束
「動画共有アプリ『TikTok(ティックトック)』は音楽レーベル最大手ユニバーサル・ミュージック・グループ(UMG)と結んだ新たな契約で、人工知能(AI)が生成した未承認の音楽をプラットフォームから削除することに同意した」。

——政府などが求めるより、スウィフトが求める方がよっぽどニセ情報対策に進展がありそうな雰囲気。

X launches Stories, delivering news summarized by Grok AI | TechCrunch
X(旧Twitter)、話題になっているニューストピックスの要約を表示する機能「Stories」を提供開始(日本では未定?)。有料版購読者向けの限定機能。オリジナルソースではなく、同社の「Grok AI」がX上の投稿を読み取り、要約を行う仕組みだという。
小学館やJIC、AI翻訳で漫画5万点輸出へ スタートアップに29億円出資 - 日本経済新聞
【有料購読者向け記事】:
「漫画の文字部分をAIが画像分析で読み取り、英語や中国語などの言語に翻訳する。漫画の翻訳に特化しているため、ギャグ漫画などの特有の言い回しにも対応が可能だ。
オレンジは国内の複数の出版社と連携して作品を翻訳する」。

——良い試みだと思う。が、ジェネレーティブAIの活用はどうなのだろう? いずれかのLLMと連携するなどしていっきに多言語化を進めるなど“その先”もめざしてほしい。

What's next for The Atlantic after reaching profitability and 1m subscribers
黒字化と購読者100万人を達成した、創業170年近い老舗メディアの米「Atlantic」。WIRED編集長からAtlanticのCEOに転進したNicholas Thompson氏が語る躍進の秘訣は「われわれには大成功だが、他の多くの出版社では成功しないだろう。たまたま今がうまくいっているだけ」と控えめ。
興味深いポイントをいくつか開示しているが、最大のものは、「少なめの記事で、多くの人びとの話題となる」ことを編集ポイントとし、それがビジネスのポイントでもあるとしていることか。
Curio raises funds for Rio, an 'AI news anchor' in an app | TechCrunch
AIを使った音声ニュースのスタートアップである英Curio社、Bloomberg、WSJ、FT、そしてWaPoなどの著名紙の最新の記事見出しをスキャン、その記事の音声要約版をキュレーションする技術「Rio」に出資。
SMPP調査レポート① 日本では、イデオロギー的傾向を超えて、マスメディアへの信頼度が高い - スマートニュース メディア研究所 SmartNews Media Research Institute
【ご紹介】:
私も業務上関与しているスマートニュース メディア研究所。昨年11月に発表した「第1回スマートニュース・メディア価値観全国調査(SMPP調査)」の成果を次々記事化しています。本記事は、調査で分かった人びととメディア、その接触のありようをまとめたものです。

Disruption This Week—–26/4/2024

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2024年4月22日から2024年4月26日まで。

Google takes lion's share of growing UK ad market as publishers lose out
英広告協会の市場調査によると、2023年の英国広告市場全体が6.1%増の366億ポンドに成長し、オンライン・フォーマットが全体の4分の3以上を占めることと予測。だが、すべての成長は大手プラットフォーマーにもたらされ、最大の勝者はGoogleに。報道メディアは損失を被ったとする記事。
経済情報特化の生成AI、日経が開発 40年分の記事学習 - 日本経済新聞
「日本経済新聞社は24日、経済情報に特化した生成AI(人工知能)の基盤技術を開発したと発表した。大規模言語モデルと呼ばれるもので、約40年分の日経グループの新聞や雑誌の記事を学習させた。記事の要約機能などで活用を見込む」。

——オープンソースLLMを活用(具体的にはLlama3)しているという。記事要約はもちろん、すぐに思いつくが、やはりストック型情報の高度な再利用法を考えたいところ。

トムソン・ロイター、法律専門家向けの生成AIプラットフォーム「CoCounsel」を公開

BRIDGE(ブリッジ)|「起業家と投資家を繋ぐ」テクノロジー&スタートアップ関連の話題をお届けするブログメディア

トムソン・ロイター、法律専門家向けの生成AIプラットフォーム「CoCounsel」を公開
「CoCounsel は、法律 AI のスタートアップ Casetext を買収して開発されたもので、OpenAI の『GPT-4』のような高度な生成 AI モデルを使用して、Thomson Reuters 独自の膨大なコンテンツデータベースを理解し処理する」。

——次に日経新聞のAIへの取り組みを紹介するが、Reuters、そしてBloomberg(以前、Bloomberg LLMの試みを紹介した)など、専門分野でのストック情報を持つ企業が、AI活用で優位に立ちそうな予感がする。

TikTok、法廷闘争へ 米で「禁止」法成立
「バイデン米大統領は24日、中国系の短編動画投稿アプリ「ティックトック(TikTok)」の米国での利用禁止につながる法案に署名し、同法が成立した。
TikTokの周受資・最高経営責任者(CEO)はこれを受け、『われわれはどこにも行かない』と言明。『事実および憲法はわれわれの味方であり、われわれが再び勝利すると期待している』とし、法廷闘争する構えを鮮明にした」。

——一方の、米国では既定の動きではあるが、大統領が署名まで進んだ。記事にあるように、これからは法廷闘争が長く続くことになりそうだ。

日本のTikToK利用率が大幅増、主要SNSでは過去1年で最大の伸び
「NTTドコモ・モバイル社会研究所が22日に公表した調査では、スマホなどの所有者のTikTok利用率は18%で、前年比8ポイント増となった。特に10代の伸びが目立った。その他主要SNSの伸び率は限定的で、最大のInstagramも2.2ポイントの伸びにとどまった」。

——これから原典に当たってみたいというところだが、そろそろSNS全盛期から、ある種の転換が起きている感触もある。

「ABEMA」含むメディア事業、初の四半期黒字に サイバーエージェント、24年9月期2Q決算は増収増益
「『ABEMA単体での黒字はまだ』(同社代表取締役社長の藤田晋氏)としているが、ABEMA関連では、広告と周辺事業が伸長。2022 FIFAワールドカップの生配信以降、『DAZN』『WOWSPO』などの外部パートナー連携も手伝い、スポーツ関連コンテンツが伸びているという」。

——「ABEMA単体での黒字化はまだ」という注釈はあるが、初期数年は、巨額投資を危ぶむ声が高かったことを思えば、“ついに!”との思いは外野でさえある。わが国の映像ビジネスの歴史に画期が訪れている。

The Washington Post is developing an AI-powered answer tool informed by its coverage
米Washington Post、米バージニア工科大のAI研究者と組み、ジェネレーティブAIとRAGを用いて、読者の質問に回答するシステムを開発中。テキストに限定せず、音声や動画も扱うという。興味深いのは、「読者はテキストの記事で理解はせず、質問により理解する」という関係者の見解だ。
そのヘビーユーザーは利益をもたらしているか? 一休が売上10倍、営業利益率5割超を達成できた理由
「この手のクーポンは様々な企業のプロモーションで見られますが、当社では『このお客様がこの宿を予約する確率が約◯%で、そのときの購入金額は◯円だと想定されるから、◯円オフクーポンを発行するべき』という計算を一人ひとりに対して行った上でクーポンを発行しています」。

——「http://xn--4gqvz.com/」を運営する一休。同社の代表を務める榊淳氏が語る“データドリブン”経営。命名はともかくとしてダイナミックなオファリングには学ぶべきものがある。
https://markezine.jp/article/detail/44470

公取委衝撃「なめられている」 グーグルに「心臓部」握られたヤフー:朝日新聞デジタル
「公取委は、定期的にグーグルとヤフーに契約状況などを確認していたが、説明はなく、全く察知できなかった。
『完全になめられている』
契約変更を把握した公取委内部には衝撃が走ったという」。

——すでに各メディアで報道している件。この記事では、公正取引委員会が行政処分を行うに至った経緯が比較的詳細に述べられている。20210年ごろまでに立ち返ったもの。

ジャーナリズムとは何かを再考する(4の前編) 「『エモい』だけの記事」の原因とは?(奥村信幸) - エキスパート - Yahoo!ニュース
「『エモい』だけでなく、ニュースの中で感情を刺激することは、あながち悪いことではありません。その記事に関心を持ってもらい、途中で離脱しないで全部読み終えてもらう仕掛けは、記事で伝える内容が過度に誇張されたり、誤解を招いたりしなければ許されるはずです」。

——一部で話題になっている“新聞報道のなかに“エモい”記事が増えている”現象について、奥村信幸氏が建設的な批判。私も一概によくないこととは思わない。エモーショナルに訴える記事は、読者体験の度合い高いことは想像できる。ポイントはそれをどう生かして、次のステージへと読者を誘うかだ。奥村氏はその点、「普遍化」というプロセスをあげる。