Disruption This Week—–21/6/2024

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2024年6月17日から2024年6月21日まで。

Is the news industry ready for another pivot to video?
ロイタージャーナリズム研究所のDigital News Report 2024の中心的な研究者Nic Newman氏は、2024年、プラットフォーム上でのニュース消費が増加したのは、YouTube、TikTok、Instagramなどの若者に人気のプラットフォームによる動画への注力がけん引していると指摘する。
パブリッシャーの「 AI ライセンス契約」に対する賛否両論 Vol.2 | DIGIDAY[日本版]
【有料購読者向け記事】:
「LLMがすでにパブリッシャーの数十年分のコンテンツアーカイブにアクセスし、そのデータでトレーニングされていたとしたら、パブリッシャーは新しいコンテンツにしか権限を持たないかもしれない。新しいコンテンツに価値はあるが、その価値はどれほどのものだろうか」。

——LLMを運用するAI企業と提携するメディア各社。その取引のネガティブ要素を扱うDigidayの記事。「Vol.1」ではポジティブ要素を扱った。

ChatGPT - 2024 Digital News Reporter
Reuters Digital News Report 2024は貴重な調査年鑑だが、170ページ近くのPDF(もちろん、英語)で読み通すのが困難。そこでThe Guardiaの記者がさまざまにQ&Aが可能な専用GPTを作ってくれた(もちろん、非公式)。
米AI検索・PerplexityCEO「メディアと広告収入分配」 日本でも意欲 - 日本経済新聞
【有料購読者向け記事】:
「人工知能(AI)を使う検索サービスを手がける米新興企業のパープレキシティは、広告収入をメディア企業と分配する仕組みを始める。アラビンド・スリニバス最高経営責任者(CEO)が17日に明らかにした」。

——直前にWIREDの検証を紹介したが、Perplexity CEOへのインタビュー。

Perplexity Is a Bullshit Machine
【有料購読者向け記事】:
日本上陸を果たしたAI検索エンジンのPerplexity。米WIREDとエンジニアの分析では、Perplexityは、Robots.txtの指定を無視してコンテンツをクロールしていることがわかったという。この記事は、どのようにPerplexityが挙動しているかを試したフローを詳しく解説している。
パブリッシャーの「 AI ライセンス契約」に対する賛否両論 Vol.1 | DIGIDAY[日本版]
「(AI企業がコンテンツに対価を支払うことは良いことだが)ただし、パートナーシップの長期的な実行可能性を考慮することが重要だ。AI企業は、アーカイブのライセンスを取得して初期モデルトレーニングを完了すれば、データアクセス契約を更新する動機がほとんどなくなる」。

——「コンピュータージャーナリストのフランチェスコ・マルコーニ氏」のコメント。直接接していないがOpenAIは、日本のメディア企業各社にもオファを広げている。側聞するところによる、1回限りの“ショット”払いのようだ。

How generative AI can help local newspapers survive
適切な方法で導入されれば、編集部門が縮小し、リソースが不足する現在、AIが新聞社(ローカルニュース)らの生き残りを助けることができると、AIベースのニュース発信プラットフォームInformedのCEOが主張。一般的なLLM依存ではなくカスタム化LLMの導入がポイントだとする。

Digital News Report 2024

Reuters Institute for the Study of Journalism

Digital News Report 2024
恒例の世界のメディア動向調査「Reuters Digital News Report」の2024年版が公開。ニュースへの信頼、誤報、プラットフォームの変化、ニュース回避、AIの影響といった重要なテーマを取り上げ、世界47か国、約9万5000人を対象としたYouGovによる調査を基に考察したもの。
How Jeff Bezos Is Trying to Fix The Washington Post
【有料購読者向け記事】:
「Jeff Bezos氏はWashington Post紙をどうやって立て直そうとしているのか?」——デジタル世代向けに特化した第3のメディア設立を打ち出した新任の同紙発行人兼最高経営責任者Will Lewis氏の施策で大揺れの状況をBezos氏はどう考えているかを探る記事。
Bezos氏は、今回の騒動で退任を決めた編集長Sally Buzbee氏に「大胆なデジタル施策を」と強く求めていたとする関係者の証言がある。
メディアとAI(下) 「フェイク」時代の切り札か 本物と証明、技術で対抗 生み出す課題を自ら克服 - 日本経済新聞
【有料購読者向け記事】:
「東京大学発スタートアップのNABLAS(東京・文京)は、生成AI製の情報の正誤を判定するサービスを始めた。
東大の坂村健名誉教授は『情報があふれる中で、逆に真実の重要性は際立っている』と指摘する。『メディア存立の基盤はコンテンツの真正性だ』と話す」。

——記事は前・後編の「後」部分。生成AIなどがもたらす負の影響に対して、その克服もまた、AIによって補助、加速できるという“光”の部分を述べている。とはいえ、その上で国際的な動きが一覧表になって紹介されているものの、まだまだの手薄感がある。

「ニュースリテラシー」を身につけ、ニュースを日常生活の中で活用しよう〜鍛治本正人 - スマートニュース メディア研究所 SmartNews Media Research Institute
【ご紹介】:
香港大ジャーナリズム・メディア研究センター教授の鍛治本正人氏が、スマートニュース メディア研究所に「ニュースリテラシー」について寄稿。ご一読を。

Disruption This Week—–2/2/2024

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2024年1月29日から2024年2月2日まで。

A.I. Fuels a New Era of Product Placement
【有料購読者向け記事】:
AIが古くからある宣伝手法プロダクトプレイスメント(現在、米国ではこのタイプの広告市場が230億ドル近いとされる)を甦らせる。TikTok動画で踊るクリエイターの背後にスポンサー飲料のポスターが合成されている。クリエイターは広告でないと言うのだが。
‘A moment for the ages’ as Mark Zuckerberg apologizes to families of abuse victims - Poynter
米Missouri州選出の上院議員Josh Hawley氏に促され、公聴会に立ったMark Zuckerberg氏は、振り返って家族の遺影を掲げる遺族に向かい、「あなた方のご家族が苦しんだようなことは、誰も経験すべきではない。だからこそ、私たちはこれほど投資したのです」と述べた。
Media startup The Messenger disintegrates, leaving staff nothing | TechCrunch
米メディアのThe Hollywood ReporterやThe Hillを保有してきた業界著名人Jimmy Finkelstein氏が昨5月に創業したThe Messengerが閉鎖。
「昨年末までに創業資金約3800万ドルを失い、300万ドルしか生み出せなかった」とする記事。同氏は「創業1年で1億ドルの収益を生む」と豪語していたのだが。記事はやはり「今はBuzzFeedブームの時代ではない」とも論評。
Publickeyは今月で15周年を迎えます。読者の皆様、スポンサーや広告代理店の皆様、いつもありがとうございます
「僕自身は2006年頃、まだ@ITの事業部長をしていた頃に、米国でTechCrunchやEngadgetなどのブログメディアが盛り上がっているのを見て、ブログを基に個人や少人数でもちゃんとメディアが作れるのだ、ということに大きく刺激を受けました」。

——“稼げる”個人ブロガー/個人メディアの草分け、「Publickey」が開設15周年! おめでとう。
その新野氏と組んで「@IT」を開設したのは2000年だから、お互いなんとも遠くまで歩んできたものだ。私の場合は、組織を前提にした取り組みだったが、新野氏は一人旅、その偉さはよくわかる。

YouTube and Google Subscription Services Hit $15 Billion in 2023 Revenue
【有料購読者向け記事】:
AlphabetのCEO、Sundar Pichai氏、12月期の業績において、YouTube Premium、YouTube Music、YouTube TV、(ストレージサービスの)Google Oneなど、購読サービス売上が2023年に150億ドルに達するとし、同氏はYouTubeが「購読収益の源泉」と形容。
Our Redesigned Byline Pages | The New York Times Company
「調査によれば、読者が記者についてより深く知れば知るほど、私たちのジャーナリズムのプロセスの厳しさを理解し、その結果を信頼する可能性が高まる」。
米New York Times、記事を執筆した記者情報をよりリッチにした「エンハンスト・バイオ(強化した略歴)」フォーマットを運用開始。
出版状況クロニクル189(2024年1月1日~1月31日) - 出版・読書メモランダム
「23年はかろうじて1兆円を上回ったものの、24年の出版物推定販売金額の困難さを予兆させる数字となってしまった。
ピーク時の1996年の2兆6564億円とくらべれば、実質的に3分の1の売り上げになってしまったのである。
そうした出版物売上状況において、出版社はともかく、流通と販売を担う取次と書店は本当に深刻な事態に追いやられている。それは流通と販売自体が恒常的な赤字となっているのではないかと考えられるからだ」。

——記事中に、出版科学研究所による1996年から2023年にかけての出版物推定販売金額の一覧が示されている。1997以降、04年のたった一度を除き、販売(書籍+雑誌)の売上は前年をつねに下回ってきている。

Journalism, media, and technology trends and predictions 2024

Reuters Institute for the Study of Journalism

Journalism, media, and technology trends and predictions 2024
例年、年初に公開されるReuters Instituteによる「ジャーナリズム、メディア、テクノロジートレンドと各種予測」2024年版が公開。ニュース忌避など例年のテーマに加え、「7. ジェネレーティブAIと編集部への影響」が新たに加わった。深い懸念と同時に利点も強調する。
On The Record with Will Lewis | Semafor
米Semafor、今年、Washington PostのCEOに就任したWill Lewis氏にインタビュー。同氏はペイウォールの“次”について、「月額購読の意思がない、多くの若年層を惹きつけるには、彼らがジャーナリズムにアクセスできる新しい方法をデザインするのが、業界の責務となる」と述べる。
例として、「1日パス」「週間パス」、あるいはThe Guardianのような寄付モデルなどをあげる。「まったく新しい世代の有料ユーザーコンセプトがある」と。
Apple announces changes to iOS, Safari, and the App Store in the European Union
Apple、EU域内におけるiOS、Safari、そしてApp Storeの変更を発表:
「代替の支払い方法を使用しているアプリについては、Appleは返金を行うことができず、問題や詐欺、詐欺に遭遇したお客様をサポートする能力も低下する。問題の報告、ファミリー共有、購入依頼など、App Storeの便利な機能も、これらの取引には反映されない。ユーザーは、支払い情報をさらに多くの相手と共有しなければならなくなる可能性があり、悪質な業者が機密性の高い金融情報を盗む機会が増えることになる」。

Disruption This Week—–28/5/2021

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2021年5月24日から2021年5月28日まで。

「これらの活動は、オンラインの公共の場を多様化させ、『Me Too』や『Black Lives Matter』といった重要な議論に活力を与えたデジタルツールと同じものを悪用し、市民組織の信用を損ない、開かれた議論を腐敗させようとしている」。

——ロシア由来の組織的偽情報工作が多数を占めるというのは、もはや常識のレベルだが、この引用箇所にあるように、多くのリベラル系の人々とって喜ばしく受け止められている市民活動のスタイルや手法が、欺瞞工作に用いられており、これが国内の言論の対立激化を促しているという分析は、深く理解しておく必要がありそうだ。

【有料購読者向け記事】:
「重要なのは、メディア事業を、広告や購読料でマネタイズしようとは考えていないことです。読者のごく一部を、利益率の高いソフトウェアのサブスクリプションでマネタイズするのです。
これは素晴らしいモデルです。そうすれば、メディアとして(サブスクや広告に頼らずとも)素晴らしいコンテンツを無料で提供できてしまうのですから」。

——「インバウンド・マーケティング」を標榜するHubSpot社がニューズレター企業The Hustleを買収したことから論じる、新しい段階に入ったオウンドメディア戦略を語るインタビュー記事。実際、ビジネス系のメディアであれば、適切なスポンサーを得ることで安定的に情報発信を続けられるだろう。ただし、どこまで独立性が維持できるのかという古くて新しいテーマがそこにあるのだが。

根強い購読者層を擁する英The Economist、新たなビジネス基盤として中堅ビジネスパーソン向けのオンラインコースを開発。6週間コースで20万円を超えるが、同社編集者らがゼロベースで開発し、著名経済人らが講師となる。最初の講座は、米中対立を軸に世界の政治・経済・テクノロジーの新秩序を学ぶ。
米Axios、米国内各州の州都レベルのニュースを報じるニューズレター「Axios Local」を強化中。昨年末6都市からスタートし、現在は8都市をカバー。年末には14都市にまで広げる。現在すでに購読者が35万人で開封率35%を誇る。今年は400〜500万ドルを目指しており順調だという。
世界的広告大手のPublics Group、同社が提供するプログラマティック広告売買システムと、コンテンツ品質や真偽性からサイトをランキング評価するNewsGuardと提携したと発表。売買リストから評価の低いメディアの枠をプログラマティックに除外する仕組みだという。
「自然言語をPower Fxに変換するAIには、OpenAIが開発した自然言語モデルの『GPT-3』が採用されています。GPT-3は与えられたキーワードによる文章の生成や、英語の指示により適切なHTMLによる画面生成などのデモンストレーションが公開され、大きな話題になりました」。

——開催中のMicrosoftの開発者向けイベントBuildでの発表。同社がGPT-3の開発元OpenAIと独占的な契約を持ったことから、想像された動き。自然言語で指示するとプログラムが生成されるというのは、長年の夢だった。

数週間前、New York TimesとThe AthleticがSPAC手法での合併交渉が報じられた。交渉は立ち消えと見られたが、今度は、NYTがAthleticを買収する可能性をAxiosが報道。Athleticは購読制のスポーツ専門メディア。NYTのハードニュース外のポートフォリオ強化という文脈だ。
2018年、Salesforce CEOであるMarc Benioff氏が買収して以降、TIME Inc. の変身が続く。パンデミックはバネになったようだ。今回、編集部門の重要職を大がかりに再編。現在200万人の有料購読者を30年までに1,000万人とすべく、DXの加速と商品改革を進めるとすると宣言。
「メディア総接触時間は昨年から39.2分伸びて450.9分(1日あたり/週平均)と過去最高。メディア定点調査開始以来、最大の伸びとなった。『携帯電話/スマートフォン』 (昨年から18.0分増)を始めとして、『タブレット端末』(同9.7分増)、『パソコン』(同8.4分増)の接触時間が伸びた」。

——例年、年初に行われる調査。したがって、新型コロナウイルスから生じた影響が、強くは出にくい(とはいえ、影響を及ぼしているのは当然だが)タイミングなので、結果的に良い調査になっていると思う。15年前には全メディア接触の半分強を占めていたTVは、いまでは3割強に縮減した。

「平日に『見た』人は、10~15歳56%(前回2015年は78%、22ポイント減)▽16~19歳47%(同71%、24ポイント減)▽20代51%(同69%、18ポイント減)。いずれも5年で20ポイント前後減った」。

——NHK放送文化研究所が5年おきに行っている「国民生活時間調査」から。メディア接触だけでない生活全般の変化を浮き彫りにして興味深いが、やはりTVの凋落が目につく。ちなみに、TV以外の「マスメディア」は、特に十代にとって無に等しい状態。「誰でも接触するメディアがマスコミ」というような概念は、消失している。

【ご紹介】:
私が編集に携わっている「Media×Tech」から新着記事です。長いので上下に分割しましたが、ご存知古田大輔氏が、デジタルジャーナリズム時代のキャリア・スキル形成について持論を語ってくれました。
【ご紹介】:
昨日もご紹介した古田大輔氏へインタビュー記事。後編を掲載しました。ぜひ一読下さい。

Disruption This Week—–14/5/2021

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2021年5月3日から2021年5月14日まで。

誰が米国メディアを所有しているのか?
米Harvard大の「未来のメディア研究プロジェクト」が、数多くの米国メディアの所有者を調査。詳細なリストを整備。メディアの資金調達は宗教団体に始まり、政治家や起業家、そして「信じられないほど美しい目的」を謳うGoogleやFacebookなど多様だとし、その目的を問う|
【有料購読者向け記事】:
「ミリアドのアルゴリズムは、たとえば、何も置かれていないテーブルやキッチンカウンター、バスルームの空き空間などを検知し、美容やヘルスケア関連商品を宣伝できるスペースだと認識する。それが映画やテレビ番組の朝食シーンであれば、おそらくシリアルのブランドが挿入されるだろう」。

——“プロダクト・プレイスメント”のAI版とでもいうべきアプローチ。そのうち、AIに任せておけば人々が行き交うありとあらゆる場所から“効果的な”広告可能なポイントを導き出すソリューションに行き着くことだろう。

メディア経営、特にジャーナリズム関連の支援を行ってきた米Knight財団が、ローカルニュース企業のAI活用を支援する新たな基金を設立。300万ドル規模。読者をめぐるデータ分析、特に購読者獲得や調査報道などへの応用分野への研究を支援する取り組みだ。
読者が抱くメディアへの“信頼感”はどこから生じているのか? Reuters Instituteが定性的な調査を実施。それによると、信頼感は、メディアが自身で宣言するような編集方針などからは得られず、読者の過去の経験、記憶、ブランドイメージなどからもたらされるものだと指摘。
広告主団体のIAB(Interactive Advertising Bureau)、PwCとの調査で2020年のポッドキャスト市場と今後数年間の予測を公開。その広告市場規模は前年比で約20%成長、8億4,000万ドルに。21年には10億ドルに達し、23年までに20億ドルとなると見る。
Bloomberg Mediaで8年間、金融・暗号通貨を担当してきたCamila Russo氏が、暗号通貨をめぐる情報専門メディア「The Defiant」を創業。専門記者職からフリーランサ、そしてメディア起業家となる経緯をインタビューで答える。後半では分散型メディアへのビジョンを語る。
クリエイターエコノミーについて取り組む際に参考になる記事。Axiosが、大手プラットフォームがクリエイターをリクルートするためにどのような機能(サービス)を実装しているかを総覧できる。やはり「投げ銭」と「寄付(ファンディング)」にハイライトが当たっている。
米コンサル企業Mather Economics、四半期単位刊行の「Subscription Benchmarking Report」を公表。米新聞市場では、早ければ2024年、遅くとも2027年には電子版購読が印刷版購読を上回ると予測。問題点は、多くの新聞社で印刷版より電子版が安価に設定していることだとも指摘。
久々に「広告ブロック」の話題。Blockthroughが発表した調査リポート「2021 PageFair Adblock Report」では、モバイルでは6億弱、PCでは2億6,000万ユーザが広告ブロックを利用。しかし、ユーザからは、軽めのめざわりでない広告に対しては寛容の姿勢が見えてきている。
【ご紹介】:
私も編集に携わる「Media×Tech」から新着記事です。今回はGoogle News Labで「ティーチング・フェロー」を務める古田大輔氏に、その活動を解説してもらいました。
【全文閲読には要登録】:
「ただ、この画面のWebサイト名をよく見ると、訪れたことのあるところ以外にも、全く知らないWebサイト(ドメイン名)が見つかるはずだ。…実は、この知らないWebサイト名のクッキーが、『サードパーティークッキー』である」。

——今話題のクッキー問題。その理解から始めて、サードパーティクッキーをていねいに解説。Googleが代替技術として業界に広げようとしている「FLoC」まで詳細かつていねいに解説した決定版的記事。

「デジタル広告にはもっと人間的要素を。テクノロジー要素はもっと少なく」と、全米広告主協会がブログ投稿。アドサーバが優れていれば、キャンペーンが成功するわけではない。ともに努力することで成功するのだと述べる。
「米Twitterは5月6日(現地時間)、応援したいアカウントに直接送金できる“投げ銭”(チップ)機能『Tip Jar』(チップを入れる瓶のこと)の提供を開始したと発表した。まずは英語版の公式モバイルアプリで開始した」。

——Twitterの新機能・新サービスの発表ラッシュ。今度は投稿者への“投げ銭”機能だ。まだ、米国版でしか利用できないが。日本でもYouTubeの“スパチャ”が、使われているということなので、いずれ使えるようになるだろう。優れた(となればいいのだが)投稿者に、金銭的対価というモチベーションの提供をめざす。

サブスクリプション(購読)サービスをメディアに提供するPianoが初の総合的な調査データ「Subscription Performance Benchmark Report」を公開。何が最もコンバージョンに影響したかなど興味深い情報が多い。
【有料購読者向け記事】:
「当時、紙の新聞はまだ稼ぎ頭だった。その事業に従事している人たちの負担を増やすのは本意ではなかった。DXという新しい取り組みで必要になる人材は、コスト増になっても新たに専門知識を持った人材を雇うべきだというのが私の考えだ」。

——退任したマーク・トンプソンCEOに対するインタビューから。

「Flurryの調査は世界の約530万台のモバイル端末を対象に行なっているもの。過去13日間で、トラッキングを許可するユーザーの率は11~13%の範囲で推移している。
米国に限る(約250万台が対象)と、トラッキング許可率は初日は2%だったが、その後は4~5%で推移している」。

——Appleが実装したATTによって、iPhoneユーザは、アプリやその広告にユーザの追跡を許すか否かを選択できるようになった。この機能の正式な実装に対するユーザの反応が見えてきた。やはり相当数が“拒否”を選択している。

「私はこれらを通貫する工程として『データ編集』と呼んでいる作業が最も重要だと考えています。データ編集とは、簡潔に言うと『データの意味や社会的なニーズを踏まえて、具体的な仕様やデザインに落とし込むこと』です」。

——すごく納得感のある論。「読者が見たい(=知りたい)ものを見せるのがメディア」とだけ開き直ってしまってはできない、正確さや客観化の視点がそこに含まれている。

ニュース(話題)が少なくなったBiden大統領時代。米New York Timesは、案の定、電子版購読者の獲得をスローダウンさせたが、同時に、料理、ゲーム、オーディオなどの非中核分野が、新規購読者の4割以上を占めるなど、新アプローチで成果を見せている。
【全文閲読には要登録】:
「今後の事業展開にアクセルを踏むためにも、2020年度にはじめて大規模なリニューアルをすることになりました。実はこの時、MarkeZineを運営する翔泳社では、大規模なサイトリニューアルに取り組むのが初めて。予算感の共通認識を社内に構築するところからスタートしました」。

——これはオンラインメディアを運営している人々にとって必読記事になりそう。様々な点で参考になる。

Twitterがオーディオチャット機能「Spaces」をサービスインしたことは周知の通りだが、この記事は、Twitterはオーディオチャットのホストがそのチケットを販売できることを発表したこと、さらに、正式発表ではないが、ティップ機能の実装を進めているらしいことを発見したと報道する。
【ご紹介】:
月一連載が日経新聞電子版に掲載されました。Clubhouseの人気が急落していますが、大手の参入や新たな趣向は広がりそうな勢いです。
「雑誌も週刊誌以外は返品率の改善と『呪術廻戦』や『怪獣8号』などのヒットが続き、『鬼滅の刃』による激増ほどではないにしても、プラスとなっている。
だが店頭売上はコミックを除くと、書籍も定期誌もムックもマイナスである」。

——書籍も雑誌も、前年同月を上回る動き。ただし、特定のヒット作に恵まれてという状況に変化はない。自分の視点では、電子化とその先にある新たなスキームで、“小ロット”の書籍が広く読まれるトレンドが生み出されるないかに興味が向く。

Disruption This Week—–23/4/2021

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2021年4月19日から2021年4月23日まで。

「情報衛生の状態が『良い』とされた日本人回答者は19%にとどまり、27カ国平均の26%を下回った。
一方で、4つのうち1つしか実施していない、もしくは何も実施していない、情報衛生の状態が『悪い』とされた日本人は56%で、27カ国平均の39%を大幅に上回ったという」。

——世界的な大手PR企業エデルマンによる例年の調査結果が発表。今回は「情報衛生」という観点の各国比較が加わった。
「情報衛生」とは、1)ニュースの積極的収集、2)エコーチェンバー現象を避ける、3)情報の真偽確認、4)不確かな情報の拡散抑止、の総合値。面白いアプローチ。

英Guardianが20年度の業績および財務を開示。総収入は2億2500万ポンドとほぼ横ばいだったが、その内訳には大幅な変化があった。印刷出版物や広告からの収入は引き続き減少しているが、デジタル購読費や同じく1回限りの寄付収入は、61%増の6900万ポンドに達したとする。
米FTC長官に指名されたLina Khan氏への議会公聴会が実施。「ローカルジャーナリズムが危機に瀕しているのは明らか」とし、「広告市場の集中化が進んでいることや、(巨大IT企業が)アルゴリズムの変更などを恣意的に行い、業界全体に広範な影響を与えている」と明快に述べる。
「はてなと集英社は4月21日、Web漫画を投稿・閲覧できるサービス『マンガノ』を始めた。漫画を有料配信する、広告を設定して公開するなど、作者がさまざまな方法で作品をマネタイズできる点が特徴という」。

——大変に興味深い。利用者(読者や作家)にとってのユーザビリティが練られていることに期待。

The Guardian、BBC、The Financial Times、The New York Times、The Wall Street Journalなどにおけるメディアの革新事例を紹介する記事。例えばBBCのテキストや写真など用意すると、InstagramなどのStories形式を自動生成してくれるGraphical Story Editorが興味深い。
元BuzzFeed News編集長のBen Smith氏のNYTimesへのコラム。先端的なメディアではサブスクリプションが喧伝されているが、実は20年〜21年は広告が改めて急成長を見せているという。問題はメディアへとその収益がどれほど還元されるかだが。
皮肉な事実を指摘する声も。「ATTNの共同設立者であるマシュー・シーガルは、『サブスクリプションの販売にはかなりの費用がかかり、ストリーミングエンターテインメント企業は』マーケティングに莫大な資金を費やす必要がある』」ともコラムは書いている。
【有料購読者向け記事】:
「グーグルで働く中で、『広告モデルでは、ユーザーに利する検索エンジンを作れないのでは』という思いが徐々に強まっていきました。
広告で稼いでいる以上、『より多くの広告を見せなければいけない』というプレッシャーが常にあります」。

——購読型の新たな検索サービス「Neeva」を創業した元Google幹部への取材記事。購読料という対価を引き換えにしてでも使いたい検索結果は、たとえば「ショッピング」分野。レビュー記事は重要な分野だと自分も考える。

「5つのジャーナリズム的価値のうち、過半数の支持が得られたのは『ファクト重視』の67%のみ。最も支持が低かったのは、調査報道などで社会の問題点を明らかにする『社会批判』の29%だった」。

——過去には7割を超えるマスメディアへの信頼度。なぜ、嫌われるのか、調査結果が興味深い。重要な「誰に顔を向けているのか」という問い。

「2006年4月23日にストックホルムで設立されたSpotifyは、海賊版問題解決のために、『特定のアルバムや曲を買う気がない消費者も、大量の音楽ライブラリに簡単にアクセスできるならお金を払ってもいい』という考えに基づいて作られた」。

——15年でSpotifyが変革した15のポイント。2015年には最盛期のビジネスの半分にまで激減した音楽業界を再興させたSopitfyの功と罪(自分は、功がもちろん大きいと見るが)を、テクノロジーとアイデアの面で整理した重要な論。

GoogleがサードパーティCookie代替技術として推進を図る「FLoC」(Federated Learning of Cohorts)に対し、EdgeやMozilla、Braveら多くのブラウザメーカーが採用を拒否。その1社Braveは、「FLoCの最悪の側面は、プライバシーに配慮していると見せかけて、ユーザーのプライバシーを著しく侵害していることだ」と批判の声をあげる。
【ご紹介】:
米TechCrunchが、SmartNews(日本語版)のワクチンアラート利用者が、サービス提供開始から1週間で100万人を超えたとの発表を紹介。