Disruption This Week—–18/8/2023

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2023年8月9日から2023年8月18日まで。

後藤達也さん「ニュースはすし屋のネタ」最強インフルエンサーの法則:朝日新聞デジタル
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「反応が見えることは、やはり大事なんですよ。新聞記事をつくるときって、読者の存在はゼロじゃないけど、意識は取材先や上司に向きがち。取材先とはじかに接するし、社内調整もこなさないと記事が出せないから。一方で読者は何百万人いても直接は話せない。目にも見えにくいから、うっかりするとないがしろになる」。

——後藤氏が言われていることはいちいちもっともだが、それより聞き手が真剣であることが伝わってくる。変わることへの希求がそこにはあるのではないか。

How short-form video is helping The Economist gain young users - WAN-IFRA
厳格なペイウォール制を敷く英老舗経済メディアのEconomist、TikTokなど短尺動画を運用するSNSに積極的に関与。同社コンテンツを「消化しやすく、魅力的で、風変わりで、興味深いフォーマットに変え、ペイウォールの向こう側にあるものを視聴者に見せる」とし、若者にリーチしている。同社の620万人のインスタグラム・フォロワーの3分の2は18歳から34歳である。
'New York Times' considers legal action against OpenAI as copyright tensions swirl
「米New York Times、OpenAIに対して法的措置を検討か」との記事。数週間前から、OpenAIとNYT間でライセンス契約の締結をめぐる緊迫した交渉が続けられてきたが、これがあまりに紛糾したため、同紙は法的措置を検討する段階となったと記事は指摘する。
ダイヤモンドオンライン「独自スクープのつくり方」有料会員3万超え:朝日新聞デジタル
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「広告と編集のファイアウォール(報道のための編集記事と企業からお金をもらって書く広告記事を分ける姿勢)は厳密に守りつつ、例えば、データ分析やユーザーエクスペリエンス(ユーザーが得られる体験)の向上につながるテクノロジーの部分については、ビジネスと編集部門とが協業して、読者に伝わりやすい最適な形で届ける努力は重ねていく必要がある。それができない限り、メディア企業の持続可能性はなくなるんじゃないかと感じます」。

——至言。ダイヤモンド・オンラインはここまでは十分に出来ているということだろう。「オーディエンス開発部」を独自の組織として持っているのはその流れからだろう。次は、デジタル基盤の完全な刷新だろう。それは道半ばだと見ている。

Streamflation Is Here and Media Companies Are Betting You’ll Pay Up
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映像ストリーミング各社の戦略について詳細なリポート。タイトルが端的なので紹介する。さすがのWall Street Journalの記事だ。
「“ストリーミングフレーション”の到来とメディア各社の賭け——ディズニーなどによる価格引き上げは、損失を削減し、より有利な広告付きプランにユーザーを誘導する努力の一環である」
Telegraph Media Group hits one million subscriptions
英Telegraph Media Group(TMG)、2023年内としていた有料購読者100万人を突破と発表。同社はその70%が電子版とする。英国での100万人突破は、The Guardian(21年)およびFinancial Times(22年)に次ぎ3番目だという。
Associated Press cements the AI era with newsroom guidance - Poynter
OpenAIと提携したAP通信、ジェネレーティブAI利用を念頭に「APスタイルブック」を改訂。同社幹部は「私たちが利用できるツールではあるが、ジャーナリズムの賢明さ、経験、専門知、そして読者とつながる仕事をする能力に取って代わるものではないと強調したい」と述べる。
Linear TV Falls Below 50 Percent of Viewing for First Time
「米リニアTV、初めて視聴の50%を下回る」。
Nielsenのプラットフォーム別視聴の月間調査によると、7月の「TV視聴」は前月比増だったものの、増分はストリーミングおよびゲーム、光学ディスクの再生などで占められた。調査が始まって2年間で初めての現象。
Can ChatGPT become a content moderator?  | Semafor
OpenAIの「安全(対策)システム」担当責任者Lilian Weng氏が、米Semaforの取材に応え、同社ではコンテンツのモデレーション(監視)をGPT-4自体が行っているとした。従来、これは発展途上国などで動員された低賃金労働者が担う「危険でトラウマ」を生みかねない作業だった。
人間が作成したポリシーに沿ってGPT-4が、実際の監視を行うプロセスにも記事は言及しているので、要参照だ。
LINE、日本語の大規模言語モデル公開 オープンソースで 商用利用もOK
「LINEは8月14日、日本語に特化した大規模言語モデル(LLM)『japanese-large-lm』を発表した。オープンソース(OSS)として公開し、商用利用も可能(Apache License 2.0)としている」。

——待たれていたLINEによる日本LLMのOSSでの供与開始。日本語対象で36億パラメータはそれなりに大きい。記事では、「最終学習は約650GBのコーパスで実施」とあるが、どのように素材を集めたのかに関心がある。

Bundled: Inside The New York Times’ revenue growth strategy
米New York Times CEOのMeredith Kopit Levien氏は、先日の第2四半期投資家向け説明で、「バンドル」という用語を15回も使ったという。同社の単体製品をバラ売りではなく、「全部入り」で販売することが同社の好調な業績の原動力だと示唆する。その戦略を子細に分析した記事。
The case for and against open-source large language models for use in newsrooms
「メディアはオープンソースLLM(大規模言語モデル)を採用すべきなのか?」
ChatGPTやBardは私的・商用目的のLLM。対するMetaのLlama 2はオープンソースで、“無料”が原則でカスタマイズが可能。となれば後者を選択すべきか? その課題を論じた記事。
ニュース対価支払い法制化「非常に成功」 元オーストラリア政府高官:朝日新聞デジタル
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「(豪州で成立した大手ITとメディア企業の取引ルール化の結果)各メディア企業への聞き取りによれば、これらの取引による収入の総額は、年間2億豪ドル(約190億円)をはるかに超えています。ジャーナリストの雇用も大幅に増えました」。

——記事中でも触れられているが、「大手メディア」との交渉に選別されることが、各種の副作用を生むのではないかという視点は、いまも払しょくされていないと思う。この問題は、「公益性」にかなうメディアに公金を充当しようという、将来あり得る政治的施策にも影響を及ぼすかもしれない。

2013年、良質なニュース記事をマイクロペイメント(記事単位の小額課金)で提供するコンセプトにオランダで創業したBlendle、その利用ベースの小ささを理由に小額課金事業を独・米両国でのサービスを終了。定額読み放題サービスへと舵を切る。途中、身売りも経た上だが、10年間よく頑張った。
生成AIによるフェイクコンテンツとの戦いは、ウォーターマークが導入されても終わらない
「現時点ではウォーターマークについて統一された基準はなく、それぞれの企業が異なったものを使っている。例えばDALL•E(ダリー)は目に見えるウォーターマークを画像に載せているが、Googleで検索すれば、それを消す方法もすぐに見つけられる」。

——ウォーターマーク(電子透かし)といった対策を付与することを業界側は、米政府に約束…が話題になっているが、記事はいまのところ堅固な電子透かし技術は存在していないと、専門家らのコメントを紹介する。

Disruption This Week—–4/8/2023

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2023年7月31日から2023年8月4日まで。

Briefing: Warner Bros. Discovery Loses Streaming Subscribers, TV Ad Revenue
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Warner Bros. Discovery、第2四半期に、傘下ストリーミング事業MaxとDiscovery+(などを含むコンシューマダイレクト系事業)の購読者が180万人減少。開示された決算報告で明らかに。同分野で300万ドルの損失。同社は広告収入も大きく減らしている。下半期でも、俳優・作家らのストライキも影響し悪い見通しを示す。
打倒「MFA」に向け、 アドテク 業界が臨戦体制。求められるマーケターとの共闘 | DIGIDAY[日本版]
「広告配信という目的のためだけにつくられたサイト(=MFA)が、どれだけの損害を実際に与え得るのか。実際のところ、その損害はかなりのものだ。MFAはユーザー体験を阻害し、コンテンツの価値を毀損し、セキュリティリスクを呼び込む」。

——ジェネレーティブAIが手軽に利用できる段階となり、いまではコンテンツ単体でも、その集合であるサイト単位でも、2000年代初頭に現れた「コンテンツファーム」が効率的に運用できるようになっている。ジェネレーティブAIの商業メディア事業の毀損が語られるようになったが、実は検索狙いのコンテンツファームは20年近い歴史がある。

AIが書いたテキストに“電子透かし”を入れる技術 人に見えない形式で埋め込み 米国チームが開発
「電子透かしは、テキストの品質にほとんど影響を与えず、人間には見えない形式で埋め込める。さらに、言語モデルのAPIやパラメータにアクセスせずにも、効率的なオープンソースのアルゴリズムを使って検出できる」。

——あえて引用しないが(ぜひ一読を)、この研究、読む限りにおいて良いところだらけ。テキスト系に電子透かしの実装は難しいと思っていたのだが。

高まる「GAFA解体論」
その論点と解決策
【有料購読者向け記事】:
「グーグルは検索結果で自社製品を宣伝できるし、アマゾンはアマゾンマーケットプレイスで自社が販売する商品を宣伝できる。アップルはアプリ開発者から30%の手数料を徴収したうえ、アップストア(App Store)以外でのアプリ販売を阻止できる」。

——顕著な寡占化が進んだITサービス。寡占化の原動力は小規模事業者(スタートアップ)の買収に尽きるとする記事。さらに、これら超大手が“無料”でサービスを提供することから、反競争法的視点で「価格の上昇や高止まり」という古典的な現象を生まないからブレーキがかからなかったという。

FacebookのAIアルゴリズムを止めても「政治的分断」は変わらず、そのわけとは?
「同意したユーザーのサンプルを、デフォルトのアルゴリズムではなく、逆時系列のフィードに割り当てた。アルゴリズムによるフィードからユーザーを離脱させると、プラットフォームでの滞在時間と活動が大幅に減少した。時系列フィードは、コンテンツへの接触にも影響を与えた」。

——興味深い研究成果を平和博さんが解説している。今回の検証にはFacebook内部の人間も関わっている(アルゴリズムの悪影響説を払しょくできるかもしれないので、当然だろう)。実験は、アルゴリズムによる「オススメ」フィードと、単純な時系列フィードを(タイムライン)を比較するもの。政治的には有意な差異が生じなかったという。でも、二極化だけが論点ではないのだが。

News copyright theft 'through the roof' as 700,000 articles taken down in six months
英国のコンテンツライセンスおよび著作権保護に関する団体NLA Media Access、2023年の半年間で70万件もの盗用記事を摘発(削除)と報告。22年の3万件から急増。団体は、コンテンツファーム(意図的盗用を行う組織)が活動を活性化している指摘。
出版状況クロニクル183(2023年7月1日~7月31日) - 出版・読書メモランダム
「上半期の出版物推定販売金額は5481億円、前年比8.0%減、書籍は3284億円、同6.9%減、雑誌は2197億円、同9.7%減。
これに高返品率を重ねれば、下半期は最悪の出版状況を招来しかねないところまできているように思われる」。

——真摯な読書人でもない自分が、出版の衰退を嘆くのはスジ違いなので、電子化(読書形態の変化)に興味を持つようにしているのだが、今夏はその方面でも話題が乏しくなっている。他方で、一部の大手出版ではIPビジネスの成果で業績は底堅い。クリエイターとその周辺が持ちこたえることを願う。

How Netflix’s Algorithms and Tech Feed Its Success
【有料購読者向け記事】:
「たまたまエンターテインメントを配信する」テクノロジー企業のNetflix。同社はデータ分析とアルゴリズムに依存したテクノロジー企業という中心的価値をますます磨き上げている。データはストを行う労働者への優位も作り上げるとする詳しい記事。
Art On The Wall - AVC
壁掛け型のフラットディスプレイのTVにNFTアートを表示する仕掛け。米投資家のFred Wilson氏が自宅で試みている。TVを観ていない間は、購入したアートを表示する。ここではソニー製のTVだが、NFTを表示する仕組みを標準装備すべき時期だと同氏は語る。
処理水「偽情報」、AIで防ぐ ネットで検知し反論 - 日本経済新聞
【有料購読者向け記事】:
「外務省は2022年に部局横断の偽情報対策の体制をつくり対応している。インターネットやSNSで処理水の偽情報とみられる書き込みをAIが自動検索できるシステムを構築した。関連する単語を学習し、ヒットする語彙を増やしている」。

——「単語を学習」「語彙を増やす」というような点が、あまりインテリジェントな感じがするのは、紹介する記者の理解の問題なのか? それとも“AI”といいつつも、単語集を持って検索をしているシステムに過ぎないのか。

動画配信、ネット接続型テレビの市場広げる - 日本経済新聞
【ご紹介】:
月一連載の記事が日経電子版で公開されました。よろしければどうぞ。➡ 動画配信、ネット接続型テレビの市場広げる

Disruption This Week—–21/7/2023

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2023年7月18日から2023年7月21日まで。

Most popular news sources in the UK: Tiktok overtakes BBC Radio 1 and Channel 5
英国成人(16歳以上)に利用されるニュース源として、TikTokが2年連続で急成長。いまや10人に1人のニュース源に。BBCが依然トップだが、マイナス成長。TikTokの利用はセレブや著名ジャーナリストのフォローが中心。もちろんBBC発などの商業メディアの動画も含まれるのだが。
Google Tests A.I. Tool That Is Able to Write News Articles
【有料購読者向け記事】:
Google、報道メディア向けAI「ジェネシス(Genesis)」をプレゼン。同社から説明を受けたメディアは、NY Times、Washington Post、Wall Street journal(News Corp)など。G社広報は「ジャーナリストの本質的な役割を代替することはない」と述べる。
記事中は、NY市立大の起業家ジャーナリズム教授のJeff Jarvis氏によるGenesisへの2項対立的なコメントを掲げており興味深い。
「ChatGPT」も活用してウェブサイトを丸ごと生成する新AIツール、Wixが発表
「(イスラエルの)Wixは現地時間7月18日、『AI Site Generator』を発表した。近くリリースされるこの新ツールは、『ChatGPT』とWix独自のAIモデルを活用し、利用者がプロンプト(指示)を入力するだけで、個別のニーズに合わせた独自のウェブサイトをデザインしてくれる」。

——プログラミング(コーディング)などもそうだが、これから(私のような)初学者には、HTMLやJavaScriptなどから勉強しなければならないというハードルが下がるのだろうか。大いに期待。

OpenAI partners with American Journalism Project to support local news
OpenAI、米ローカルメディア(ジャーナリズム)を支援するプロジェクトに500万ドルを拠出と発表。American Journalism Project (AJP)のCEOは、このパートナーシップで、AIがジャーナリズムを脅かすのではなく、むしろ強化する方法を促進することを目指すと述べた。
Semafor CEO Justin B Smith says start-up heading for profitable month in year one
ほぼ1年前、Justin B SmithとBen Smithの両氏が創業した米メディアSemafor。かつてのQuartzやAxiosなどをよりモダンにしたような高級誌志向のWebメディアだ。CEOのJustin Smith氏は、単月黒字が現実になると述べる。
AI生成「ごみ記事」に汚染されるウェブ空間
【有料購読者向け記事】:
「ユーチューブでは『チャットGPT』のゴールドラッシュが本格化している。これを使ってお金を稼ぐ方法を助言する動画が数十本あり、何十万回も視聴されている。その多くはごみのようなコンテンツを作る疑わしいスキームを紹介している」。

——私は約1年前に共同執筆した書籍の原稿で、「近い将来、Web上のコンテンツの9割がAIに生成されたものとなる」との専門家の予測を書いた。着実にその実現に向かって世界は歩んでいるようだ。AIが用いた安価な記事生成手法が広がろうとしている。
記事が触れるように、AIが生成した低品質コンテンツをAIがさらに学習してしまうという「モデル崩壊」も近々生じることだろう。

The story of Europe’s hottest TikTok news account: Ac2ality | What’s New in Publishing | Digital Publishing News
欧州でTikTokを用いたニュースメディアとして2022年に創業した「Ac2ality(アクチュアリティ)」。0人のフォロワーから、現在は70万人近いところまで成長。何より、若者をユーザーにターゲットにニュースを1分の動画で語るメディアの創業者2人に取材した記事。
FEATURE: Disinformation on TikTok worries Taiwan - Taipei Times
台湾では、TikTokが来年に迫る総統選をめぐる熾烈なキャンペーン・プラットフォームになろうとしている(台湾では、TikTokのDAUはYouTube、Facebookに劣後しているが)。同地のファクトチェック団体CofactsはTikTok人気の高まりから、ニセ情報拡散の危険度も高まると警戒する。
Generative AI and journalism: All we know as AP and Shutterstock sign deals with OpenAI
「AP通信は、知的財産が確実に保護され、コンテンツ制作者がその仕事に対して公正に補償される枠組みを断固として支持する。大小の報道組織がAI技術を活用してジャーナリズムに利益をもたらすことができるよう、報道機関は協議をしていく必要がある」。

——AP通信とShutterstockがOpenAIと正式なコンテンツ供与契約を結んだことはすでに紹介した。この記事では、関連する情報と、他の報道メディアがどのようなスタンスをとっているか概観する。

ハリウッド、エキストラをAIスキャンして永遠に無料で使う案を思いついてしまう
「AMPTP(=映画製作者協会)は、SAG-AFTRA(=映画俳優組合)に対して『エキストラの顔や姿をスキャンし1日分の報酬を支払う。そのスキャンしたデータは企業が同意や保証なしに使用できるようにする』という”画期的な提案”をしていました」。

——記事にあるように、ハリウッド制作映画では、エキストラは日本のようにボランティアではなく、職業である場合が多いという。AI制作において再利用権を売買することは「報酬を得られず生活の基盤が緩むだけでなく、スターになるチャンスまで失うことになる」のだという。

Disruption This Week—–7/7/2023

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2023年7月3日から2023年7月7日まで。

AI Is Tearing Wikipedia Apart
「懸念されるのは、機械が生成したコンテンツは多くの人間のレビューとバランスを取らなければならず、あまり知られていないWikiを悪いコンテンツで圧倒してしまうことだ。AI生成は、信憑性のある人間のような文章を書くのに便利な反面、誤った情報を含んでしまったり、存在しないソースや学術論文を引用してしまったりすることもある」。

——WikiはジェネレーティブAIの誕生で岐路に立たされているように見える。一つは、AIは自由に使える貴重なトレーニング教材としてWikiをクロールし尽くしている。他方、AIが生成する情報(知識)がWikiにどんどん書き加わっていく。実際、記事によれば、Wiki財団はこれへの対策ツールの開発などに取り組んでいるという。

MetaのTwitterっぽい新SNS「Threads」使ってみた かなり近いが投稿検索・ハッシュタグなく性格は別物
「では実際に投稿してみよう。Twitterでいう『ツイート』のことは『スレッド』と呼ぶようだ。機能はシンプルで、文字を書いて投稿ボタンを押すだけ。写真は10枚まで添付できる。1スレッド当たりの文字数制限は500文字」。

——話題のThreads。実際にどう使うのか(使えるのか)? 試用記事。ポイントはInstagram(Metaは相互運用性を追求するので、Facebookもか)の目的別アプリということで、アカウントを共有する。言い換えれば、InstaやFacebookのフォロワーをインポートできるというのが魅力(言い換えれば、危険性)ということのようだ。つまり、ゼロからフォロワーを築いていく必要はない。

ITmedia NEWSは記事執筆フローにChatGPTなどAIを導入します
「分かりやすいように要約を先に示しておきます。

– 『取材・執筆・編集』のアシスト全般にAIを利用
– ChatGPT利用は『情報漏えいの懸念がないもの』に当面は限る
– 『AIを使ったから間違えた』は言い訳にならない
– 記事を作る主体はあくまで人」

——ジェネレーティブAIの利用の是非を、倫理的に騒ぎ立てるような時代ではないと思う。ITmedia NEWSがChatGPTの業務的な利用を明言。引用したような「ポリシー」の明言が重要なんだと思う。

How (and should?) we stop the infinite scroll
「ネズミがレバーを押すと、おやつがもらえる。たとえレバーを押してもいつもおやつがもらえるわけではなくても、たまにおやつがもらえることがある……だからレバーを押し続けるのだ。私たちはフィードをスクロールし、興味をそそる楽しい投稿を探している。すべての投稿が面白いとは限らないが、私たちはドーパミンの素早いヒットを求めてスクロールし続ける」。
近年のスマホUIの方程式である「無限スクロール」。「ビジネスに優しく、健康に悪い」仕組みを掘り下げ批判する論。
Fake journalist profiles used to launch Bournemouth Observer - Journalism News from HoldtheFrontPage
英ローカルメディアの体をなした非常に巧妙な偽造サイトが出現したという話題。最近立ち上がった「Bournemouth Observer」は、英国のローカル報道メディアだが、11名の記者らのプロフィールはすべて非実在の人物。掲載された事件報道も地元警察が確認できないという謎のサイトだ。
Gen Z and AI: The Publishers' Guide | What’s New in Publishing | Digital Publishing News
インターネットのない世界を知らない最初の世代、同時にソーシャルメディア必須の時代(幼少期にはYouTubeが存在)を生きてきた“Z世代”。1990年代半ばから2010年代前半に生まれたこれら若者をオーディエンスとするメディアをどう開発していくかを論じるガイドライン。
“The single greatest threat and the single greatest opportunity”: Insights on AI and publishing, from FIPP World Media Congress 2023 | What’s New in Publishing | Digital Publishing News
「AI、それは単一の最大の脅威であり、単一の最大の機会」だと述べる、最近行われたFIPP世界メディア会議での講演概要。
「1. 物語のために来訪、コミュニティのために滞在、2. 伝統的な記事の解体、3. AI:単一にして最大の脅威、最大の機会」という魅力的な構成。
「マスメディアは作れる」元テレ東高橋弘樹Pが目指すゲームチェンジ:朝日新聞デジタル
【有料購読者向け記事】:
「仮に(朝日新聞の販売部数が)400万部だとして、ユーチューブでも400万回再生とかいくわけです。400万人が目にしたコンテンツを『マス』と言うとすると、『マスメディア』とは輪転機を持っていることや地上波の権利を持っていることではなくなる」。

——ひろゆき氏や成田悠輔氏の起用で人気コンテンツをYouTubeに提供し続けた高橋P氏。自らの媒体社をたちあげてやりたいことを述べた。正論が多く、納得感がある。

「退屈な仕事が減った」 米地方メディア、ChatGPTの活用進む:朝日新聞デジタル
【有料購読者向け記事】:
「アウトポストの取材地域は、地元ハンボルト郡のほかユーリカなどの自治体。山形県ほどの面積を6人の記者でカバーしている。シムさんのソフトは、それぞれの議会で取り上げる議題に関する公開データを集める。そのデータを『平易な文章で要約して』とチャットGPTに自動的に送り、サマリーを書かせるというものだ」。

——一方で、ジェネレーティブAI利用の浸透に対して猛反対する新聞事業社がある一方で、このような零細事業者がAIを活用。事態への多面的な視点、のみならず新聞メディアのなくしてはならない使命を思い起こさせる点でも、意義の高い記事。

出版状況クロニクル182(2023年6月1日~6月30日) - 出版・読書メモランダム
「とりわけ『出版社がボロ儲け 狂乱のIP(漫画の知的財産)パブル』は、コミックスとアニメのメディアミックスによる版権収入が集英社、小学館、講談社の業績を支えていることを明らかにしている。それが現在の大手出版社のトレンドなのだ」。

——引用箇所は、「アニメ熱狂のカラクリ」を特集した東洋経済誌から。その突出した大手の一角である小学館の決算に触れて、このブログでは、出版やIPをめぐる業績停滞を迎えるなか、増収を支えたのが広告とデジタル収入であることを伝えている。出版とその流通産業の姿は、かつてに比べ決定的に変わってしまっている。

Disruption This Week—–30/6/2023

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2023年6月26日から2023年6月30日まで。

WSJ News Exclusive | Big News Publishers Look to Team Up to Address Impact of AI
【有料購読者向け記事】:
米Wall Street Journal、複数の大手ニュース・雑誌出版社が、AIが業界に与える影響に対処するために圧力団体の結成を協議中とスクープ。大手メディアには、News Corp、New York Times、Axel Springerその他が含まれる。協議は、ジェネレーティブAI技術台頭が業界と社会の両方にとり存亡の危機であることを示している。
「AIは古いWebを殺し、新しいWebが生まれようとしている」。米The Vergeの論考。
ジェネレーティブAIが引き起こす懸念を整理しつつ、「本質的にこれは情報をめぐる戦いであり、誰が情報を作り、どのようにアクセスし、誰が報酬を得るかをめぐる戦いだ」とする。つまり、Web上でつねに起きてきたことでもあるというわけだ。
Bloomberg to Publish More Audio on YouTube
【有料購読者向け記事】:
Bloomberg、音声コンテンツ(ポッドキャスト)を強化中。従来はBloomberg専用端末や同社アプリ中心路線だったが、聴取者拡大のために、YouTube Shorts、InstagramそしてTikTokへの配信を強化し、成功裡に進める動画コンテンツと融合させていくという。
WSJスクープ | グーグル、広告掲載の自社基準に違反=調査
【有料購読者向け記事】:
「アダリティクスはグーグルが、収益化基準を満たさないサイト上で、ページのメインコンテンツの脇に小さくミュートの状態で自動再生動画に広告を掲載するなど、違反行為を行っていると非難した」。

——この間、注目されているGoogleの“自主的基準緩和”の動き。コンテンツファーム的動きが再来。広告主にもブランド毀損に向かう悪いスパイラルとなるはずなのだが。

‘TikTok is age-agnostic’: how Kylie and Fleetwood Mac found new young fans
かつてはティーンエイジャーのダンスブームと見なされていたTikTok。だが、音楽業界における重要なプレイヤーのひとつへと進化した。Kate BushからFleetwood Mac、そしてKylie Minogue氏ら古典的なスーパースターたちも、彼らの時代から数十年後に生まれたファンとつながることができることから積極的に利用することとなったのだ。
生成AIで広告収入目的のゴミサイトが急増、1日1200本更新も
【有料購読者向け記事】:
「140社を超える大手ブランドが、おそらく知らず知らずのうちに、AIで作成された信頼性の低いサイトの広告費用を支払っているとみられる。こうしたAI生成ニュースサイトで見つかった大手ブランドの広告の90%はグーグルが配信したもので、グーグル自身のポリシーに違反している」。

——昨日も取り上げた話題。自動生成したコンテンツをサイトによっては1200本/日も掲載して、これまた配信型広告で荒稼ぎという、懲りないコンテンツファームが急増中。なぜこんな商売が成立するかと言えば、Googleなどがせっせと大手ブランドの広告を送り込んでいるからだ。

CBS News effort shows the growth in solutions journalism to combat bad news fatigue
「記者は悪いニュースの運び屋以上の存在でなければならない」。
米CBS News、さまざまな事例を通じて“問題解決型ジャーナリズム”を模索。問題に取り組もうとする人々や組織を見つけることを重視。ジョージア州では、学校での子ども逮捕を抑止する教育者を養成しているとする。
Funding the Next Generation of Content Farms - Misinformation Monitor: June 2023 - NewsGuard
「誤報モニター」を毎月発信する、メディアの品質監視ビジネスの米NewsGuard。ジェネレーティブAIが生成する低品質コンテンツで運営するメディアが、過去1か月で49から217へ急増中と警鐘。Googleらアドテクが、一流ブランドの広告を配信し、これらの事業化を助けているとも。相変わらずの構図。
The “passive news consumer” is on the rise
Reuters Instituteによる定期調査「Digital News Report2023」は、世界46市場の平均的動向として、ニュースの「受動的消費者」(利用はするが、「いいね」など積極的な参加はしない)の比率が増えていると報告。「積極的参加者」は全体の4分の1以下(22%)で減少中だとする記事。
Facebook、Instagram「ニュース停止」の衝撃、生成AIで複雑化する攻防とは?
「これまでの『ニュース使用料』をめぐる議論は、検索サービスやソーシャルメディアにおけるニュースの見出し、文章の抜粋(スニペット)、写真、記事へのリンクなどの掲載、すなわち『引用』が焦点となってきた。
だが生成AIにおけるニュースの扱いは、いったん言葉の単位に分解され、改めて文章として再構成される『生成』だ」。

——実際、ジェネレーティブAIによって咀嚼された情報に対して権利を主張できるのかどうか。多くの人びとがさまざまな情報源から得た知識を、あたかも自身の知性であるかのように吹聴しているはずだ。期待の「情報源としての透かし(ウォーターマーク)」も、現実的なものとして実装できるのかどうか。実現が危ぶまれている。

スマートニュースが個別に最適化「クーポン」開始。ニュース配信の“機械学習”を活用
【ご紹介】:
「クーポンを提供する企業からも『商品ニーズにあったユーザーにクーポンを配信してほしい』というニーズがあったという。
そこで、これまでニュース配信に活用してきたマシンラーニング技術をクーポンでも活用し、ユーザーの興味関心に最適化したクーポンを配信することにした」。

——SmartNewsが配信するオンラインクーポンが進化。記事配信に用いていた技術を利用とのこと。