Disruption This Week—–10/3/2023

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2023年3月6日から2023年3月10日まで。

RadioGPT brings AI to the airwaves
放送メディア向け技術開発と製品を提供するFururi Media、AI搭載のラジオプラットフォームである「RadioGPT」を発表。AIがパーソナリティを務め、地域(ローカル)の情報を集め、それを原稿として読み上げ放送するまでを提供する。放送業界を変革するかもしれない動きだ。
Spotify is revamping its podcaster tools, including Anchor, and is partnering with Patreon
Spotify、SpotifyアプリのUX刷新の発表と同時に、プライベートイベントを開催。ポッドキャスター向け管理ツールの刷新を発表すると同時に、クリエイター支援のPatreonとの事業提携も発表。依然としてポッドキャスト市場に邁進の様子。
Gen Z and Millennials who pay for or donate to email or video content from independent news creators
16歳から40歳までのアメリカ人は、年齢層を問わず、デジタル新聞や紙媒体の新聞よりも、独立したクリエイターによるニュースコンテンツにお金を払ったり寄付をしたりする傾向が強い。年齢層によって均等に分布しているという。AMI(アメリカメディア協会)による調査から。
News Corp encourages staff to try ChatGPT, forms AI taskforce
【有料購読者向け記事】:
Rupert Murdoch氏率いるNews Corp。そのお膝元News Corpオーストラリアでは、最高責任者Michael Miller氏が、社員宛てメールで「各部門のスタッフはChatGPTを試用すべき」と奨励。「人工知能が我々の業界を変える」と述べる。同社は人員削減中だ。
News Revenue Hub offers free donation software for newsrooms worldwide | What’s New in Publishing | Digital Publishing News
米国のローカルニュースを技術基盤やコンサルティング提供で支援する非営利団体News Revenue Hub。さまざまなニュースメディア、コミュニティが、自社サイトに組み込んで読者ら支援者から寄付金を募ることができる寄付金管理プラットフォーム「RevEngine」を無償で提供開始。
Senator's TikTok whistleblower alleges data abuses
TikTok排除の動きが加速する米議会で、同社にさらに不利な内部証言が飛び出した。元ByteDance社員が上院議員に、同社が米国ユーザデータを容易に操作でき、バックドアリスクのある独自のソフトウェアを操作していると証言。Janet Yellen米財務長官に書類が提出されたという。
How does a news organization succeed in 2023? One word: Retention. - Poynter
「2023年、報道機関はどう成功するか? 一言で言えばリテンションだ」。獲得した新規の購読者数より、継続購読を選択した購読者数の維持(リテンション)が価値があるというロジックを解説。それは“パーソナライズし、価値を高める”との考え方に帰着するものと指摘する。
Retail, search and Amazon’s $40bn ‘advertising’ business — Benedict Evans
「Amazonは2022年、400億ドル近い広告を販売。それはAmazon Primeより大きく、世界の新聞業界全体よりも大きい。だが、これは本当に広告なのだろうか、家賃なのだろうか、それとも別の何かだろうか?そして、それはGoogleにとって何を意味するのだろうか?」。

——Amazonの事業ポートフォリオ上「その他」に属していた「広告」が数年前から急増していた。PrimeやAWS以上の収益力を生み出す部門が急速に立ち上がった。その現象の意味に着目した投資家Benedict Evans氏の論考。

Tech platforms struggle to verify their users' age
特に米国で、大手SNSとその未成年ユーザに関する懸念が高まっている。InstagramやTikTokの濫用が十代のウェルビーイングを損ねているとの声が日に日に増す。一方で、ユーザ情報の取得には制約があるなか、ユーザ年齢をどう厳格に確認するのかという技術課題に注目が集まる。
Spilled ink: How to prevent AI from vacuuming your business model
「ニュースメディア、特にそのトレーニングや運用における大規模言語モデルの役割から、生成型AIに対する同様のレベルの関心、知性、インパクトが生まれ、それに答えることになることを疑う人はいないはずだ。
では、もしニュースルームやライター、アーティスト、メディア企業のアウトプットがスクレイピングできなくなったら、2023年に注目される生成型AIの質はどうなるのだろうか」。
AIにメディアのビジネスモデル(の源泉)を吸引されてしまわないようにするには? 業界団体が論説した。
German publisher Axel Springer says journalists could be replaced by AI
「Bild」や「Die Welt」などを傘下にもつ独メディア企業Axel SpringerのCEO、Mathias Doepfner氏は社員宛てメールで「ジャーナリズムの仕事はAIに取って代わられる可能性が高い」「人員削減が待ち構えている」と警告。「最高のオリジナルコンテンツを作ること」が重要とも述べる。
子供たちがアルゴリズムを“批判する力”を養う米国の「AIリテラシー教育」の現場を訪ねて | MIT研究者も推奨
【有料購読者向け記事】:
「(女子校でコンピュータサイエンスを教える教師の)シューマンが生徒に呼びかける。
『今日は、ChatGPTをみんなで評価しましょう! ChatGPTが準備した授業が有益かそうでないか、それを判断するのが今日の目標です』」。

——オリジナル記事は米New York Times。メディアリテラシー教育の現場に近いが、ChatGPTなどAIが生成するロジックをどう批判的に吟味できるかを教える。興味深い試みだ。

マイクロソフト、ChatGPT本格活用(写真=ロイター) - 日本経済新聞
【ご紹介】:
日経MJ紙への連載が、日経電子版に掲載されました。よろしければご一読を。➡ マイクロソフト、ChatGPT本格活用

Disruption This Week—–23/12/2022

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2022年12月20日から2022年12月23日まで。

ネトフリ広告付きプラン、普及まだ先
【有料購読者向け記事】:
「今回のデータが公表される数日前、ネットフリックスは広告付きプランの保証視聴回数を達成できず、その結果出稿されなかった広告分について、返金に応じていると業界誌ディジデイが報じていた」。

——すでにAntennaの調査などについて紹介したが、WSJも、Netflixの広告表示付き廉価版の試みに、否定的な報道。ただし、記事中にもあるが、まだ、滑り出し1か月の段階。今後の展開に引き続き注目すべき。

Porn, Piracy, Fraud: What Lurks Inside Google’s Black Box Ad Empire
「Googleは、広告販売パートナーの大方を秘匿する唯一の主要広告プラットフォームだ。つまり、Googleは広告を掲載するサイトやアプリ、その背後の人々や企業をすべて非公開としている」。
それにより驚くべき偽情報で荒稼ぎするサイトでの広告収入を、匿名のサイトオーナーと折半しているとする詳細な米ProPublicaの調査報道。
米Axios、記事「箇条書き」に活路 ネット系停滞と一線
【有料購読者向け記事】:
「アクシオスは、立ち上げ前に既存メディアの欠点を徹底的に分析し、記事が長すぎるとの結論に至ったという。忙しい読者が短時間で要点をつかめるように、記事は『スマート・ブレビティー(賢く、短く)』と呼ばれる箇条書き方式で提供する」。

——傾く老舗メディアに挑む新興メディア……という図式が揺らいだここ数年。新たな挑戦者はAxiosと見なす記事。ビジネスの仕方、稼ぎ方などに目が行き届いた新興メディアへ注目が集まる。

ByteDance Inquiry Finds Employees Obtained User Data of 2 Journalists
【有料購読者向け記事】:
TikTokおよびその親会社であるByteDanceの従業員らが、米ユーザのデータに不適切にアクセス、監視活動を行っていることはすでに報道されてきたが、今回、新たなに米ジャーナリストの個人データをTikTok従業員が漁っていた事案も内部調査から判明した。
メタバース・ビジネス新展開
25年前に亡くなった
伝説のラッパーが復活ライブ
【有料購読者向け記事】:
「(早逝したラップ・アーティストの)スモールズの超リアルなアバターは、見事な技術的偉業というだけのものではない。メタバース・プラットフォームが普及すればすぐに直面することになる、2つの大きな疑問に対する重要なテストでもある。その疑問とは、亡くなったアーティストのアバターのパフォーマンスを人々がお金を払って見るか、そして、そのビジネスは倫理的か、ということだ」。

——非在の人物をテクノロジーで甦らせる試みは、映画やこの種の芸術ステージ、そして親族と触れあっていたい私的な欲求などに応える産業となっていく可能性がある。この記事ではVRによる見た目の再現と新たな創造が軸だが、ChatGPTのような会話力の人工的な創造がここに組み合わされていくことになることは間違いない。その亡くなった人物の考えや声をAIが学習できれば、応用は広がっていく。

ワシントン・ポスト、SaaSで稼ぐ 2000媒体に基盤提供
【有料購読者向け記事】:
「会社は異なるがArc XPとアマゾンのクラウド部門、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)には共通点が多い。例えば顧客の声に耳を傾け、矢継ぎ早に機能を追加することだ。最近は記者がスマートフォンで撮影した動画をサイトで生中継できる機能など『21年は機能追加数が過去最多だった』(広報担当者)」。

——米Washington Postが自ら内製開発したCMS「arcXP」をめぐる奥平和行記者による充実した取材記事。ただし、同氏が知ってか知らずか、arcXPをめぐる同社の経営は揺らぎ、その戦略は転換を遂げているのだが。メディア企業がテクノロジー事業(企業)を胚胎し育て上げることの難しさが伝わる。期せずしてVox MediaもCMS「Chorus」のディスコンを決めたと報道されている。

Slow fade for Google and Meta's ad dominance
“デジタル広告複占時代”の衰退?
米調査会社Insider Intelligence、2022年の米デジタル広告収入の48.4%をGoogleとMetaの合計が占めると予測(Google28.8%、Meta19.6%)。2014年以来初めて5割を下回る。2017年のピーク時には、54.7%だった(Googleは34.7%、Metaは20.0%)。
5 themes that governed the news industry in 2022 | What’s New in Publishing | Digital Publishing News
2022年、報道メディアをめぐる5つのトレンド。1) ジェネレーティブAI出現で制作自動化の動き、2) 印刷コスト増大でデジタル化進展、3) Web3、NFTが本格化、4) 改めて広告に頼るメディアも、5) “音声(ポッドキャスト)トレンド”加速
Finding new ways to reach news avoiders
ニュースをめぐるエコシステムは、“ニュース・ジャンキー(中毒者)”に向けて作り出されている。ニュースをよく読む人より、ニュースを大量摂取する人向けにビジネスが最適化されており、それがまたニュースメディアの首を絞め、“ニュース忌避”を呼んでいるとする貴重な論。
最近までCNNでアンカーをしていた筆者が、抜け出す方向性を示唆する。
2023年に最も注目すべきテクノロジーは、世界を変えうる技術革命「生成型AI」だ | スコット・ギャロウェイ「デジタル経済の先にあるもの」
【有料購読者向け記事】:
「AIは計算負荷が高く、高価なデータセンターを必要とするため、政府や超大企業しか利用する余裕がない。しかし、AIにはストーリーがあり、実用性がある。それこそ、2021年と2022年に登場した技術(Web 3.0とメタバース)が提供しなかったものだ」。

——スコット・ギャロウェイ氏のお馴染みの論説。今年1年の間にも歴史に残るようなAI研究の成果が生み出されている状況を、的確に論じている。Web3トレンドより実用性が高く、その分、日社会に良い影響も悪い影響ももたらすだろうことを示唆している。
で、最大の難点は、大規模言語モデルの駆使は、ブロックチェーンのマイニング同様、設備集約、高エネルギー消費型の産業であること。むしろGAFAを生き延びさせる可能性が高いことかもしれない。

Disruption This Week—–28/10/2022

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2022年10月24日から2022年10月28日まで。

Tech giants go to war with Apple
こちらもAppleをめぐる動き。Spotify、Meta、その他の大手IT企業ら、自分たちビジネスを痛めつけ、Apple自身のビジネスを強化することになる不公平かつ反競争的なガイドライン変更などへの反発を強めており、Apple包囲網的な動きとなろうとしているとする記事。
シャッターストック、画像生成AIツールを提供へ。アーティストにも報酬を支払う考え
「提携する研究機関のオープンAI(Open AI)が開発した画像生成技術を統合することで、利用者は入力した文章に基づいた画像を瞬時に作成することができる。提供は数カ月後を予定する」。

——画像などAIによる創作サービスが急浮上していることは、なんども言及してきた。記事が伝える提携は、撮影した写真のライセンスにより生計を立てるクリエイターにとり、AIによる創作サービスが敵対的でない融合への道を拓くものにもなりそうだ。

Web 3 ID Forum
「Web3 IDフォーラムは、すべての人のためのデジタルID所有権の追求を信じるテクノロジーと業界のリーダーによって支えられています。
私たちは、個人が自分のデジタル・アイデンティティを管理し、どの個人データを共有し、収益化し、非公開にし、どこにでも持ち出すかを決定できる未来を思い描いています」。

——先日も 川崎 裕一さんとも話したが、これから最も重要な業界の動きは、プラットフォーム・フリーなデジタルIDではないかということに。来月、米国では政府、議員らとWeb3勢が大規模なカンファレンスを開催する。

“News publishers expect revenues to more than double this year”: World Press Trends 2022-23 Preview | What’s New in Publishing | Digital Publishing News
開催されたWAN-IFRA(世界新聞協会)会議で、2022〜23年の報道メディアをめぐるトレンドが公開。それによれば、21年に比し22年の報道メディアをめぐる経営環境(収益)は昨年比倍増と改善。だが23年の見通しとなると、半数以上(55%)のメディアが悲観的な見方をしている。また、広告と購読費以外の「収益多様化」の項では、22年にはイベントが突出した動きを見せた。
YouTube Ad Revenue Drops 1.9% in Q3, Alphabet Misses Wall Street Expectations
米超大手IT企業の第3四半期業績が開示されつつある。予想はされていたが広告市況が悪い。なかでも衝撃なのはYouTubeだ。2年ぶりの前年同期比純減の70億7000万ドル(1.9%減)となった。前年はコロナ禍反動による伸びもあったのだが。
米国で進む「TikTok」でのニュース視聴、29歳以下では4分の1まで増加と米調査 | DIAMOND SIGNAL
「米シンクタンク・ピュー研究所が実施した最新の調査では、米国の18歳以上の成人の10%が日常的にTikTokでニュースを見ていると答えた。
年代別に見ると18~29歳の若者では、4分の1以上の26%がTikTokをニュースの情報源として利用していると回答」。

——欧米では、TikTokに取り組む報道機関が増えっている。一応念のために言えば、それでも「TwitterやFacebookのユーザーと比較すると、サービス上でニュースを入手する確率がはるかに低い」のだが、この先はわからない。

今、最も話題の画像生成AIサービス 1位は?
「記事数では『Midjourney』がトップ、想定PVでもMidjourneyがトップ、記事ツイート数では『Stable Diffusion』がトップだった。両サービスが2強だが、そのほかにも国産の『mimic』もそれぞれ3位に入った」。

——サービス乱立気味でそろそろどのサービスを利用したら良いのか迷うような状況に。単純にサービス名を扱った記事を追ったものだが、参考になる。

The Remote Control Killers Behind Russia’s Cruise Missile Strikes on Ukraine - bellingcat
ロシアが巡航ミサイルを用いて、ウクライナの非軍事目標を攻撃している。OSINT活動を行うBellingcat、米Insider、独Spiegelらと協力し、このミサイル兵器の運用を行う「参謀本部主要計算センター」内のチームメンバーの将校らを特定し詳細を暴露。彼らにコンタクトまで試みた。
ウクライナ 戦時下の復興 キーウ近郊からの報告
本日の朝刊紙面でも、2ページ見開き(全段打ち抜き)で展開したビュジュアルリポート。
出色なのは、同時公開のWebでもその迫力をうまく活かしていること。OSINT渡邉教授がデータビジュアル面で協力とのこと。素晴らしい。
A large portion of the Americans who will pay for news are rich
米GallupとKnight基金による調査では、米成人の1/4がニュースに「対価」を払った経験を持つ(言い換えれば、3/4が払ったことがない)。さらに、年収15万ドル以上の層では、その5割近くが支払った経験があると分かった。“高収入”層が有料ニュースに親和的というわけだ。ニュース(報道)メディアにとり、良い話題か否か。
「ファンコミュニティ」をメディアビジネスに生かす ——「ポストCookie時代」のメディア③ - Media × Tech
【ご紹介】:
Media×Techから新着記事です。「ポストCookie時代」のメディアシリーズ第3弾です。読者コミュニティを生かす2つのオンラインメディアに聞きました。よろしければどうぞ。

Disruption This Week—–5/8/2022

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2022年8月1日から2022年8月5日まで。

「パブリッシャーは、スリーパー購読者や購読者ベースの幅広いエンゲージメント率を正確に把握するために、すべての関連チャネルとタッチポイントでのエンゲージメントを考慮する必要があります」。

——すでに紹介しているが、購読基盤提供事業のPianoが発表したリポートで、“休眠購読者”(活動していないが購読料を払い続けている人々)の比率が4割を超えるという問題。その実態の正確な把握から、対策を施していくべきとする実践的な記事。“寝た子を起こすな”的姿勢は、長期的に見てメディアの利益にならないという前提の議論だ。

Mobile users now spend 4-5 hours per day in apps – TechCrunch
各国のスマートフォン利用、新型コロナ禍を経てもアプリ利用時間は依然として(ゆるやかに)成長中。日本を含む世界13か国で、1日当たりアプリ利用が4時間以上。アプリ関連情報分析のdata.ai(旧App Annie)調べによる。
In tough conditions, business at The New York Times continues to thrive - Poynter
米New York Timesの第2四半期業績が公開。同期にデジタル(のみの)購読者を18万人追加。だが、デジタル広告収入は減少。注目は買収したThe Athleticの業績寄与だが、同部門の赤字により全社利益は減少。この期から同社はニュースとその他の購読とマージしてのみの発表へと変更。要するに、ニュース購読意欲の減少を上回るその他(スポーツ、料理、ゲームなど)購読意欲を重視する業績向上をめざす路線を明瞭にした。
Two new Hollywood newsletters are betting they've got the town covered
米ハリウッドのお手盛りメディア生態系を打ち破る? 批判的なリポータらが、投資資金も得てニューズレターを舞台に新興メディアとして活動。さまざまな偏見文化が浸透しているこの業界に2017年開設の「Ankler」で切り込むRichard Rushfield氏らを取材した記事。
IPアドレスに依存する CTV 広告、規制強化のリスクに直面:「IPアドレスは次のサードパーティCookieだ」 | DIGIDAY[日本版]
「良いニュースと悪いニュースがある。前者は、事実上の識別子としてIPアドレスにいつまでも依存してはいられないという認識が、CTVの広告業界に浸透しつつあること。後者は、業界の趨勢がいまだIPアドレスに依存していることだ」。

——TVのような固定設置型機器であれば、IPアドレスは追跡の精度をある程度確保できるということか。視聴“調査”に使われているらしい。もちろん、CMのパーソナライズも可能だろう。だが、このような識別子を断り亡く収集し、利用することへの圧力は高まっている。IPアドレスの利用もCookie相当のものとなっていくのだろう。

オープンAI、文章から画像を描く「DALL-E2」を100万人に提供
「オープンAIは、DALL-E 2でジェンダーと人種のバイアスに対処したことが、本格的な公開に踏み切る自信につながったと述べている。しかし、これが最終結論ではない。AIにおけるバイアスは悪質かつ解決が難しい問題であり、同社は新しい事例が発生するたびにモグラ叩きのように修正を続けなければならないだろう」。

——GPT-3から発展した自動画像生成システム「DALL-E(ダリー) 2」がいよいよ商用テストに。ちょっと使ってみたい気も。問題は、“ハンドラの匣”を開けるように、さまざまな問題を引き起こすだろうということ。

Bad Algorithm! How to Retrain Your  Social Media Feed
【有料購読者向け記事】:
「アルゴリズムには挙動不審な点がある。SNS界のあちこちで、最近レコメンデーションエンジンが紡ぎ出すコンテンツに不満の声が上がっている」。
アルゴリズムの劣化が進んでいるらしい。対する利用者がどうアルゴリズムを調教するか(それは小犬のトレーニングのようなものだという)実践的手法のあれこれを解説する面白い記事。手間(と時間)をかけただけ賢くなるが、悪くなるのもあっという間だとする。
Facebookがついにニュースを見限った、その3つの理由とは?
「フェイスブックは2022年2月、『ニュースフィード』から『ニュース』という文言を削除し、ただの『フィード』へと名称変更をした。
さらに7月には、その『フィード』もメインのタブを『ホーム』に譲る」。

——平和博さんが、Facebookにおける“ニュース離れ”の経緯をていねいに整理している。自分は「ニュースフィード」という名称から「フィード」に変更されたというのは認識していなかった。なるほど象徴的だ。

出版状況クロニクル171(2022年7月1日~7月31日) - 出版・読書メモランダム
「(出版科学研究所による22年上半期の出版物推定販売金額から)21年上半期がコロナ禍とコミック需要でトリプルプラスだったことに対して、22年上半期はトリプルマイナスに陥り、そのマイナス幅は19、20年に比べて最も大きい。
再び『鬼滅の刃』のような神風的ベストセラーが現われないかぎり、下半期も同様に推移していくだろう。
それは取次と書店の体力の限界へと誘っていくことになると推測される」。

——「トリプルプラス」から「トリプルマイナス」へ。出版界でも、厳しいリバウンド症状が現れているらしい。

Facebookの変化は「これまでのSNS」の終わり…すべてがTikTokになる?
「Facebookは友人や知人と繋がる第一の場所ではなくなるだろう。これからは、TikTokと似た中毒性のある動画のスクロール機能が搭載される。アルゴリズムによってユーザーが好きそうな動画、写真、投稿が流れるのだ。つまり、困惑するような叔母の投稿を目にするのではなく、ペットの動画を見たり、料理インフルエンサーのレシピを手に入れたりする可能性が高い」。

——何度かこのFacebook(そして、Instagram)の大改修の意味を追って投稿しているが、その整理となるような記事。
ポイントは、ここに書かれているように、自分と接点の高い人々(通常は、仲の良い知人や身内)の投稿を重視してきたFacebookのソーシャルなアルゴリズムが、特に若者にとってひどくイケてないものと受け止められているらしいことと、どうやら関連がありそうだ。

スマホの「フィード」が、私たちの認知に影響を与えていく | 永井孝尚オフィシャルサイト
【ご紹介】:
先日、古くからの知人の永井孝尚さんに招かれて私的におしゃべりをしてきました。永井さんがそこでの話題を題材にブログを書かれています。

Disruption This Week—–17/6/2022

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2022年6月12日から2022年6月17日まで。

Facebook looks ready to divorce the news industry, and I doubt couples counseling will help
「Facebookはニュース業界との離婚の準備ができている」。
同社が業界に大金を払い続け大手メディアとの関係を保つ意思はないだろうとするオピニオン。2022年第1四半期、閲覧された投稿コンテンツでニュースへリンクを持つは0.4%に過ぎないという。愛情が冷めるのは明瞭だ。
「大変です」食べログ点数、突然の急落 評価の秘密に自力で迫った:朝日新聞デジタル
【有料購読者向け記事】:
「実際に点数を算出しているのは、独自の『アルゴリズム』だ。
大量のデータを処理するのに使う計算手順のことで、検索サイトや買い物サイトなどはアルゴリズムを使って表示順位を決めたり、点数をつけたりする。
例えば検索サイトはこれを使い、膨大なウェブページの中から、利用者に関連が高いと思われる結果を表示している。
任さんは、ネットに残る記録をもとに点数の変化を独自に調べた。
すると、食べログ内で『チェーン店』とカテゴリー分けされている店ばかり、点数が下がっていた。
『チェーン店の点数を一律に下げるアルゴリズム変更があった』との仮説が立った」。

——アルゴリズムとその影響をめぐって明瞭な判例が出たのは珍しいのではないか。それだけプラットフォーム的パワーを持つサービスに対する世の中の視線が厳しくなっている。この判決では、訴訟の提起者が自らの労力でアルゴリズムのロジックを解析した。今後、そのような提起者側の能力が努力が求められるのか否かも重要なポイントだろう。

How Facebook plans to become more like TikTok
米メディアThe Verge、Meta社幹部の社員宛てメールを公開。それによれば、TikTokの優勢に抗して同社はFacebookのフィードアルゴリズムを改修する。TikTokがソーシャルグラフに依らない投稿の推奨を行っていることに倣う仕組みを採用。また、メッセージング機能も改変する。
Spotify、コンテンツ管理に関する安全諮問委員会を設立--偽情報対策の一環で
「Spotifyは米国時間6月13日、オンラインの安全性に注力する専門家と組織からなる安全諮問委員会を新設したと発表した。この委員会のミッションは、クリエイターの表現を尊重しつつ、『Spotifyが安全な方法で自社のポリシーと製品を進化させるのを支援すること』だ」。

——Facebookでも社外の有識者らを招いた最高レベルのボードによるコンテンツモデレーションに臨んだ経緯があるが、社内からの声も関与するなど、機能不全が指摘されている。Spotifyではどうか。このような対応が動き出したことを率直に評価し、注意を払っていく。

Overview and key findings of the 2022 Digital News Report

Reuters Institute for the Study of Journalism

Overview and key findings of the 2022 Digital News Report
例年行われる注目のオンラインメディアとジャーナリズムをめぐる調査「Digital News Report」2022年版が公開。各国において、ニュース接触における主たる経路にスマートフォンが位置し、TikTokやInstagramなどのビジュアルフォーマットのニュースへの利用が進む。同時に、ポスト・コロナで退潮するニュース需要と、ウクライナ侵攻という大事件がありながらも、各国で「ニュースの選択的忌避」現象が生じていることを特筆する。
Spotify is acquiring AI voice platform Sonantic – TechCrunch
つい先日、音楽、ポッドキャストに続き、オーディオブック市場への挑戦を宣明したばかりのSpotify、映画「トップガンマーヴェリック」ヴァル・キルマー氏の合成音声にも使われているAI合成技術を有する英Sonantic社を買収。いかにものタイミングだ。
A Chart of People on the Move at Creator Startups
【有料購読者向け記事】:
“クリエイターエコノミー”分野におけるスタートアップ企業各社間でのシニア人材の移動。Twitter、Meta、Cameo、Clubhouseなど有名どころからの流出が目立ち、TikTokはじめ新興系への流入が増。今年1月以降の動きをThe Informationが整理した。
偽情報の拡散はIT企業の責任--研究機関の専門家らが指摘
「アスペン研究所で情報の無秩序に関する委員会の共同議長を務める3人の専門家は、ニュースを得るためにソーシャルメディアに目を向ける人が増えていると述べた。TwitterやFacebookなどのプラットフォームは正当なニュースソースを提供しているが、その一方で嘘や陰謀論が確認されないまま拡散し、多くは無意識のうちにそうした情報に触れる人々の意見を形成する事態を許してしまっている」。

——「Commission on Information Disorder Final Report」で公表された勧告に基づくスピーチ。大手企業の責任と地域のメディアへの支援という2つの義務を明瞭に表現したもの。

5 tech giants own over half the global ad market
世界的な広告代理店GroupM、恒例の広告市場予測を発表。それによると、世界の広告市場はトップ5社により市場の半分(53%)が占められ、かつ、昨年比でその度合いを高める。広告主のほうはトップ25社が7割強を占める。2022年の広告市場全体の成長はやや弱まるとも予測。
米Wall Street Journalが、今日(13日)にも製品レビューサイト「Buy Side」を開設とAxiosがスクープ。New York Times運営「Wirecutter」に対抗する試み。WSJサイト内に設けられるが、閲覧無料とビジネスモデルが異なる模様。編集チームは、WSJ本体と完全に分離するという。開設時には250製品、50本の記事を扱うと、詳しい報道。公式リークのようだ。
【ご紹介】:
Media×Techからちょっとした変化球的新着記事です。「出版業界ニュースまとめ」を平日、週末関係なく配信する 古幡 瑞穂 さんと、光栄にも「対談」をさせてもらいました(編集部スタッフの企画です!)。どうぞご一読下さい。
有料動画配信の成長に黄信号、Netflix会員数20万人純減(写真=ロイター)
【ご紹介】:
日経MJ紙での連載記事が日経電子版に転載されました。よろしければどうぞ。➡ 有料動画配信の成長に黄信号、Netflix会員数20万人純減