Disruption This Week—–10/1/2025

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2025年1月6日から2025年1月10日まで。

Google's Daily Listen AI feature generates a podcast based on your Discover feed | TechCrunch
Google、Discover(ユーザー向けに最適化されたコンテンツ配信システム)コンテンツを、5分程度に要約した音声コンテンツ「Daily Listen」をテスト中。AndroidおよびiOSアプリとして、利用登録した一部ユーザーに配信をしているという。興味深い動きだ。

Journalism, media, and technology trends and predictions 2025

Reuters Institute for the Study of Journalism

Journalism, media, and technology trends and predictions 2025
毎年初に発表されるReuters Institute(ロイター・ジャーナリズム研究所)の「ジャーナリズム、メディア、テクノロジーのトレンドと予測」2025年版が公開。
51か国と地域65人の編集長、63人のCEO、または経営責任者を含む326人のデジタルリーダーのサンプルを対象に調査を実施。情報は多岐にわたるので、今後、何回かに分けて紹介していこう。
「ミラーフェイス」によるサイバー攻撃、中国の関与が疑われる-警察庁
「2019年ごろから国内の組織や事業者などを対象に行われたサイバー攻撃を巡り、警察庁などが8日、『MirrorFace』(ミラーフェイス)と呼ばれるグループが実行し、中国の関与が疑われる組織的な活動であると発表した」。

——言い換えれば、中国から3年もの間、ハッキングされっぱなしだったということ。記事には警察庁からの詳細な発表文がリンクされている。

Thousands of documentaries are fueling AI models built by Apple, Meta, and Nvidia
「何千本ものドキュメンタリー映像作品が、Apple、Meta、Nvidiaらが構築するLLMなどAIモデルの学習データとして用いられている」。ドキュメンタリー映像作品にお広く使われる字幕情報を抽出してAI学習に利用されていると、米The Atlanticが調査結果を11月に公表していたことを解説する記事。
メタ、第三者のファクトチェックを米国で廃止-検閲「行き過ぎ」
「フェイスブックやインスタグラムなどを傘下に持つ米メタ・プラットフォームズは、同社が米国で運営するソーシャルメディア上では第三者によるファクトチェックを終了すると明らかにした。今後はユーザーが投稿の正確性についてコメントできるコミュニティーノート方式に切り替え、表現の自由を促進するとしている」。

——米Trump大統領政権への最適化をめざすMeta。すでに紹介したように政策担当を、共和党寄りの人物へと切り替え、さっそくその姿勢を、ファクトチェック分野の方針で示した。今後は、投稿をめぐる意思決定のためのボードメンバーの変更にも手をつけるだろう。

日本語LLMの「実力」は? AI Model Score
【有料購読者向け記事】:
日本語対応LLMをベンチマーク。総合力評価では、1位 OpenAI o1およびpreview、2位Claude 3.5 Sonnet、3位Gemini 2.0 Flashというところ。NIKKEI Digital Governanceの購読者向けサービス。
Google sends funds to journalism collective in exchange for Online News Act exemption
Googleは、カナダで施行されたオンライン・ニュース法の免除と引き換えにカナダの報道機関に支払うことに合意。1億ドルを、その資金を分配するために設立されたジャーナリズム団体へ送金。これにより法の強制課金を5年間免れることができる。
Advertisers Keep Avoiding News Sites, and Publishers Have Had Enough of It
【有料購読者向け記事】:
プログラマティックな広告掲出システムに染まった広告業界。広告主(ブランド)側はキーワード指定の掲出禁止を多様しており、結果、一流メディアでも掲出が自動的に拒否される流れに、Washington Postでは4割の記事が禁止対象だとの証言が紹介されている記事。
日経グループ2025年の主な事業 - 日本経済新聞
「今春以降、日経電子版の有料会員向けに主要なニュース記事で提供します。対象記事に関連して『ニュースの背景には何が?』『今後の影響について教えてください』といった読者が知りたくなる質問を、生成AIが記事下の部分にあらかじめ用意します」。

——単に質問されそうなテーマを用意するだけでなく、「に追加で聞きたいことについてご自身で質問内容を入力して尋ねることもできます」ということだ。AIを積極的に利用して、より“情報(提供)サービス”化の姿勢を強めるのは、新聞に求められる発展の方向性のひとつだろう。

年頭のご挨拶:2025年のPublickeyも、読者が安心して記事を読めるように適切な広告だけを掲載します
「2025年の最初の記事として、Publickeyは今年もこの広告掲載の方針を変えることなく、不快な画像の広告や誤クリックを誘うような邪魔な広告、さらには詐欺サイトへ誘導するような広告などが掲載されないように運営していくことをご報告させていただきます」。

——明けましておめでとうございます。本日から、投稿を再開します。
まず最初に紹介するのが、Publickeyの広告掲載ポリシー。
メディアには、「コンテンツを見れば(読めば)、その質はわかるはず」とするだけではなく、その姿勢や取り組みを明文化して、信頼を得る努力が求められる。そうすることで高い評価を印象づけられる。

Disruption This Week—–4/8/2023

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2023年7月31日から2023年8月4日まで。

Briefing: Warner Bros. Discovery Loses Streaming Subscribers, TV Ad Revenue
【有料購読者向け記事】:
Warner Bros. Discovery、第2四半期に、傘下ストリーミング事業MaxとDiscovery+(などを含むコンシューマダイレクト系事業)の購読者が180万人減少。開示された決算報告で明らかに。同分野で300万ドルの損失。同社は広告収入も大きく減らしている。下半期でも、俳優・作家らのストライキも影響し悪い見通しを示す。
打倒「MFA」に向け、 アドテク 業界が臨戦体制。求められるマーケターとの共闘 | DIGIDAY[日本版]
「広告配信という目的のためだけにつくられたサイト(=MFA)が、どれだけの損害を実際に与え得るのか。実際のところ、その損害はかなりのものだ。MFAはユーザー体験を阻害し、コンテンツの価値を毀損し、セキュリティリスクを呼び込む」。

——ジェネレーティブAIが手軽に利用できる段階となり、いまではコンテンツ単体でも、その集合であるサイト単位でも、2000年代初頭に現れた「コンテンツファーム」が効率的に運用できるようになっている。ジェネレーティブAIの商業メディア事業の毀損が語られるようになったが、実は検索狙いのコンテンツファームは20年近い歴史がある。

AIが書いたテキストに“電子透かし”を入れる技術 人に見えない形式で埋め込み 米国チームが開発
「電子透かしは、テキストの品質にほとんど影響を与えず、人間には見えない形式で埋め込める。さらに、言語モデルのAPIやパラメータにアクセスせずにも、効率的なオープンソースのアルゴリズムを使って検出できる」。

——あえて引用しないが(ぜひ一読を)、この研究、読む限りにおいて良いところだらけ。テキスト系に電子透かしの実装は難しいと思っていたのだが。

高まる「GAFA解体論」
その論点と解決策
【有料購読者向け記事】:
「グーグルは検索結果で自社製品を宣伝できるし、アマゾンはアマゾンマーケットプレイスで自社が販売する商品を宣伝できる。アップルはアプリ開発者から30%の手数料を徴収したうえ、アップストア(App Store)以外でのアプリ販売を阻止できる」。

——顕著な寡占化が進んだITサービス。寡占化の原動力は小規模事業者(スタートアップ)の買収に尽きるとする記事。さらに、これら超大手が“無料”でサービスを提供することから、反競争法的視点で「価格の上昇や高止まり」という古典的な現象を生まないからブレーキがかからなかったという。

FacebookのAIアルゴリズムを止めても「政治的分断」は変わらず、そのわけとは?
「同意したユーザーのサンプルを、デフォルトのアルゴリズムではなく、逆時系列のフィードに割り当てた。アルゴリズムによるフィードからユーザーを離脱させると、プラットフォームでの滞在時間と活動が大幅に減少した。時系列フィードは、コンテンツへの接触にも影響を与えた」。

——興味深い研究成果を平和博さんが解説している。今回の検証にはFacebook内部の人間も関わっている(アルゴリズムの悪影響説を払しょくできるかもしれないので、当然だろう)。実験は、アルゴリズムによる「オススメ」フィードと、単純な時系列フィードを(タイムライン)を比較するもの。政治的には有意な差異が生じなかったという。でも、二極化だけが論点ではないのだが。

News copyright theft 'through the roof' as 700,000 articles taken down in six months
英国のコンテンツライセンスおよび著作権保護に関する団体NLA Media Access、2023年の半年間で70万件もの盗用記事を摘発(削除)と報告。22年の3万件から急増。団体は、コンテンツファーム(意図的盗用を行う組織)が活動を活性化している指摘。
出版状況クロニクル183(2023年7月1日~7月31日) - 出版・読書メモランダム
「上半期の出版物推定販売金額は5481億円、前年比8.0%減、書籍は3284億円、同6.9%減、雑誌は2197億円、同9.7%減。
これに高返品率を重ねれば、下半期は最悪の出版状況を招来しかねないところまできているように思われる」。

——真摯な読書人でもない自分が、出版の衰退を嘆くのはスジ違いなので、電子化(読書形態の変化)に興味を持つようにしているのだが、今夏はその方面でも話題が乏しくなっている。他方で、一部の大手出版ではIPビジネスの成果で業績は底堅い。クリエイターとその周辺が持ちこたえることを願う。

How Netflix’s Algorithms and Tech Feed Its Success
【有料購読者向け記事】:
「たまたまエンターテインメントを配信する」テクノロジー企業のNetflix。同社はデータ分析とアルゴリズムに依存したテクノロジー企業という中心的価値をますます磨き上げている。データはストを行う労働者への優位も作り上げるとする詳しい記事。
Art On The Wall - AVC
壁掛け型のフラットディスプレイのTVにNFTアートを表示する仕掛け。米投資家のFred Wilson氏が自宅で試みている。TVを観ていない間は、購入したアートを表示する。ここではソニー製のTVだが、NFTを表示する仕組みを標準装備すべき時期だと同氏は語る。
処理水「偽情報」、AIで防ぐ ネットで検知し反論 - 日本経済新聞
【有料購読者向け記事】:
「外務省は2022年に部局横断の偽情報対策の体制をつくり対応している。インターネットやSNSで処理水の偽情報とみられる書き込みをAIが自動検索できるシステムを構築した。関連する単語を学習し、ヒットする語彙を増やしている」。

——「単語を学習」「語彙を増やす」というような点が、あまりインテリジェントな感じがするのは、紹介する記者の理解の問題なのか? それとも“AI”といいつつも、単語集を持って検索をしているシステムに過ぎないのか。

動画配信、ネット接続型テレビの市場広げる - 日本経済新聞
【ご紹介】:
月一連載の記事が日経電子版で公開されました。よろしければどうぞ。➡ 動画配信、ネット接続型テレビの市場広げる

Disruption This Week—–27/1/2023

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2023年1月23日から2023年1月27日まで。

CNET Is Testing an AI Engine. Here's What We've Learned, Mistakes and All
すでに紹介済みだが、米CNETが誤りだらけのAI生成コンテンツを複数掲載、非難を浴びた件。編集長Connie Guglielmo氏が「我々が学んだこと、間違いなどを紹介する」との記事公開。CNETが運用しているチェック体制を説明。“一握り”の記事でその運営が守られていなかったとする。
米バズフィード、コンテンツ作成でオープンAIの技術活用へ
【有料購読者向け記事】:
「米新興ニュースメディアのバズフィードは、提供コンテンツの個別化などに向け、チャットボット(自動応答システム)『チャットGPT』の開発元である米オープンAIの技術を活用していく方針だ」。

——米CNETがAI生成による誤りだらけの記事を掲出していたことで物議を醸しているの対し、米BuzzFeedは(おもにエンタメ分野で)積極的にChatGPTを活用していく戦略を発表。ポイントはインタラクティブ、パーソナライズということだろう。読者一人ひとりに向けてコンテンツを生成する時代がやってくる。

Exclusive: AP goes after ads with website redesign
AP通信、他メディアへのコンテンツライセンスが主事業(売上の82%)だが、10年前「ダイレクトオーディエンス部門」を設置。読者との直接的な接点強化を推進中だ。記事は、同メディアへのトラフィック力増大により広告収入増をめざすべくBBCより幹部人材を招聘したとするもの。
The rise of the registered web
“登録型Web世界の高まり”。メディア関連コンサルティングの英FT Strategiesが世界450以上のニュースメディアを対象に行った調査で、ログインユーザー数が多いメディアは、そうでないメディアに比し、高いビジネスの収益性が高いことがわかってきたという。登録情報がますます重要になってきているというわけだ。
ユーザにとっては、より安全で負担の少ない登録制が求められる。
Washington Post lays off 20 newsroom employees, shuts down gaming section | CNN Business
米Washington Postは火曜日、レイオフの実施を公表。発行人Fred Ryan氏が2023年初頭に実施としていた20の編集ポジションを削減した。また、欠員だった30のポジションの補充を行わないことも明らかに。レイオフは同社の複数の部門に及ぶと広報部門は述べている。
Where did all the new podcasts go?
ポッドキャスト検索エンジン「Listen Notes」によれば、2020年には110万の新しいポッドキャストが開始された。だが、21年にその数は73万に減少。そして22年には、わずか21万9000にまで激減。ポッドキャスト市場に何が生まれ、何が死のうとしているのかを論じた重要な記事。
米司法省がグーグル提訴、デジタル広告市場の支配巡り
「米司法省と8つの州はアルファベット傘下のグーグルを提訴した。デジタル広告市場において違法な独占の疑いがあるとし、同社の広告テクノロジー(アドテク)事業の分割を求めている。
司法省はバージニア州の連邦地裁に提出した訴状で、グーグルは独占力を乱用してウェブサイトのパブリッシャーや広告主に不利益を与えていると主張した」。

——バイデン政権は、ようやくIT超大手に対する規制の動きに。同政権としては初の動きだろう。

Informed app attracts big-name publishers to join curated subscription bundle
「世の中のすべての記事を読むには十分な時間がない。NYTimesが毎日公開するものすべてを読む時間はないと言う人が多い。これが主流のニュースユーザーなのだ。時間が足りない、それほど多くの記事は読まない、膨大な情報量に圧倒されている」と新ニュースアプリ「Informed」が発進。高額なペイウォール系メディアのFT、Bloomberg、NYTimes……などと提携。

Netflix writes a new chapter as co-founder Hastings steps down
「Netflixは次の章へ」。
10年以上一貫して成長軌道を歩んできた動画配信サービスの米Netflixは、業績からも成長面からも大きな壁に突き当たっている。共同創業者Reed Hastingは共同CEOの座を譲り執行役会長に。新たな成長源泉を見いだす歩みに向かうことになる。
Google Calls In Help From Larry Page and Sergey Brin for A.I. Fight
【有料購読者向け記事】:
Google、ChatGPTを検索事業の本質的な脅威と認識、“コード・レッド”を宣言。現CEOは、創業者のLarry PageおよびSergey Brin両氏に助けを求めた。現在同社内では両創業者も関わる約20ものAI関連プロジェクトが稼働しているとする詳細なNew York Timesの報道。

Disruption This Week—–23/12/2022

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2022年12月20日から2022年12月23日まで。

ネトフリ広告付きプラン、普及まだ先
【有料購読者向け記事】:
「今回のデータが公表される数日前、ネットフリックスは広告付きプランの保証視聴回数を達成できず、その結果出稿されなかった広告分について、返金に応じていると業界誌ディジデイが報じていた」。

——すでにAntennaの調査などについて紹介したが、WSJも、Netflixの広告表示付き廉価版の試みに、否定的な報道。ただし、記事中にもあるが、まだ、滑り出し1か月の段階。今後の展開に引き続き注目すべき。

Porn, Piracy, Fraud: What Lurks Inside Google’s Black Box Ad Empire
「Googleは、広告販売パートナーの大方を秘匿する唯一の主要広告プラットフォームだ。つまり、Googleは広告を掲載するサイトやアプリ、その背後の人々や企業をすべて非公開としている」。
それにより驚くべき偽情報で荒稼ぎするサイトでの広告収入を、匿名のサイトオーナーと折半しているとする詳細な米ProPublicaの調査報道。
米Axios、記事「箇条書き」に活路 ネット系停滞と一線
【有料購読者向け記事】:
「アクシオスは、立ち上げ前に既存メディアの欠点を徹底的に分析し、記事が長すぎるとの結論に至ったという。忙しい読者が短時間で要点をつかめるように、記事は『スマート・ブレビティー(賢く、短く)』と呼ばれる箇条書き方式で提供する」。

——傾く老舗メディアに挑む新興メディア……という図式が揺らいだここ数年。新たな挑戦者はAxiosと見なす記事。ビジネスの仕方、稼ぎ方などに目が行き届いた新興メディアへ注目が集まる。

ByteDance Inquiry Finds Employees Obtained User Data of 2 Journalists
【有料購読者向け記事】:
TikTokおよびその親会社であるByteDanceの従業員らが、米ユーザのデータに不適切にアクセス、監視活動を行っていることはすでに報道されてきたが、今回、新たなに米ジャーナリストの個人データをTikTok従業員が漁っていた事案も内部調査から判明した。
メタバース・ビジネス新展開
25年前に亡くなった
伝説のラッパーが復活ライブ
【有料購読者向け記事】:
「(早逝したラップ・アーティストの)スモールズの超リアルなアバターは、見事な技術的偉業というだけのものではない。メタバース・プラットフォームが普及すればすぐに直面することになる、2つの大きな疑問に対する重要なテストでもある。その疑問とは、亡くなったアーティストのアバターのパフォーマンスを人々がお金を払って見るか、そして、そのビジネスは倫理的か、ということだ」。

——非在の人物をテクノロジーで甦らせる試みは、映画やこの種の芸術ステージ、そして親族と触れあっていたい私的な欲求などに応える産業となっていく可能性がある。この記事ではVRによる見た目の再現と新たな創造が軸だが、ChatGPTのような会話力の人工的な創造がここに組み合わされていくことになることは間違いない。その亡くなった人物の考えや声をAIが学習できれば、応用は広がっていく。

ワシントン・ポスト、SaaSで稼ぐ 2000媒体に基盤提供
【有料購読者向け記事】:
「会社は異なるがArc XPとアマゾンのクラウド部門、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)には共通点が多い。例えば顧客の声に耳を傾け、矢継ぎ早に機能を追加することだ。最近は記者がスマートフォンで撮影した動画をサイトで生中継できる機能など『21年は機能追加数が過去最多だった』(広報担当者)」。

——米Washington Postが自ら内製開発したCMS「arcXP」をめぐる奥平和行記者による充実した取材記事。ただし、同氏が知ってか知らずか、arcXPをめぐる同社の経営は揺らぎ、その戦略は転換を遂げているのだが。メディア企業がテクノロジー事業(企業)を胚胎し育て上げることの難しさが伝わる。期せずしてVox MediaもCMS「Chorus」のディスコンを決めたと報道されている。

Slow fade for Google and Meta's ad dominance
“デジタル広告複占時代”の衰退?
米調査会社Insider Intelligence、2022年の米デジタル広告収入の48.4%をGoogleとMetaの合計が占めると予測(Google28.8%、Meta19.6%)。2014年以来初めて5割を下回る。2017年のピーク時には、54.7%だった(Googleは34.7%、Metaは20.0%)。
5 themes that governed the news industry in 2022 | What’s New in Publishing | Digital Publishing News
2022年、報道メディアをめぐる5つのトレンド。1) ジェネレーティブAI出現で制作自動化の動き、2) 印刷コスト増大でデジタル化進展、3) Web3、NFTが本格化、4) 改めて広告に頼るメディアも、5) “音声(ポッドキャスト)トレンド”加速
Finding new ways to reach news avoiders
ニュースをめぐるエコシステムは、“ニュース・ジャンキー(中毒者)”に向けて作り出されている。ニュースをよく読む人より、ニュースを大量摂取する人向けにビジネスが最適化されており、それがまたニュースメディアの首を絞め、“ニュース忌避”を呼んでいるとする貴重な論。
最近までCNNでアンカーをしていた筆者が、抜け出す方向性を示唆する。
2023年に最も注目すべきテクノロジーは、世界を変えうる技術革命「生成型AI」だ | スコット・ギャロウェイ「デジタル経済の先にあるもの」
【有料購読者向け記事】:
「AIは計算負荷が高く、高価なデータセンターを必要とするため、政府や超大企業しか利用する余裕がない。しかし、AIにはストーリーがあり、実用性がある。それこそ、2021年と2022年に登場した技術(Web 3.0とメタバース)が提供しなかったものだ」。

——スコット・ギャロウェイ氏のお馴染みの論説。今年1年の間にも歴史に残るようなAI研究の成果が生み出されている状況を、的確に論じている。Web3トレンドより実用性が高く、その分、日社会に良い影響も悪い影響ももたらすだろうことを示唆している。
で、最大の難点は、大規模言語モデルの駆使は、ブロックチェーンのマイニング同様、設備集約、高エネルギー消費型の産業であること。むしろGAFAを生き延びさせる可能性が高いことかもしれない。

Disruption This Week—–11/11/2022

目に止まったメディアとテクノロジーに関する“トピックス”。2022年11月7日から2022年11月11日まで。

GPT-3活用で10日で開発 アイデアとスピード勝負の有料AIライティングサービスはどうやって生まれたのか?
「10回の文章生成ができる無償プランのほか、月間100回利用できる3000円のプラン、使い放題の9800円のプランなども用意している。すでに数百アカウントが有料プランに移行した。サービスの中では、大量に文章を考えなくてはならない運用広告向けのツールが継続的に利用されている」。

——そのクオリティは記事の中の実例である程度見て取れる。未来はこうなっていくのかという感想を持つ。AIによる創作機能ではもっと壮大なアイデアも出てくるだろう。興味深い。

電子漫画サービス「ピッコマ」営業利益が過去最大 日本アプリ市場で売上1位
「・日本国内のアプリ全体(ゲームカテゴリ含む)の売上第1位
・グローバルマンガアプリの売上第1位
・グローバルアプリ全体(非ゲームカテゴリ)の売上第7位
・グローバルアプリ全体(ゲームカテゴリ含む)の売上第20位」

——「ピッコマ」の累計ダウンロード数は、2016年4月のサービスインから3,600万に“過ぎない”が、売上をともなう有料課金アプリとしては、多大な影響力をアプリ界にもたらしているといえる。そのエコシステムの広げ方に興味をもつ。

Meta、社員1万1000人解雇を正式発表 CEO「世界のオンライン移行、期待通りにならず」
「Metaが10月に発表した第3四半期(7~9月)の決算では、売上高は前年同期比4%減の277億1400万ドル、純利益は52%減の43億9500万ドル(1株当たり1ドル64セント)に。前四半期に続く減益となり、さらにその幅を広げていた」。

——問題はその要因なのだが、記事では「主力の広告事業が減速した他、Questシリーズのヘッドセットやメタバースを担う『Reality Labs』の売上高がほぼ半減していた」としている。同社が未来に期待を賭けるVR関連が伸び悩んで(?)いることは数字以上のインパクトのはずだ。

ロシア軍に監禁されたウクライナの子どもたちが書いた「落書き」の意味 | 東洋経済education×ICT
「フォトグラメトリ」という手法を用いて戦争のデジタルアーカイブに取り組む東京大学大学院 情報学環 教授の渡邉英徳教授。動画を観て、自分は、戦争報道に止まらないジャーナリズムへの広がりと深まりという可能性を受け止めた。
ロシア大統領に近い実業家プリゴジン氏、米選挙への介入認める
「プリゴジン氏の事務所によると、ロシアが米中間選挙に介入しているとするブルームバーグ(Bloomberg)の報道についてコメントを求められた同氏は『われわれは介入したし、介入しているし、今後も介入するだろう』と発言した」。

——“大統領の料理人”と呼ばれて有名なプリゴジン氏。同氏はレストラン運営や給食事業などでプーチン大統領に近い関係を築いてきた。同時に、現下のウクライナで戦闘行為を続ける民間軍事会社ワグネルを設立運営するなど十分にグレーな事業に携わるが、2016年大統領選などでも顕在化したロシアのトロール工場(偽情報製造組織)を運営してきた疑いも指摘されていた。
今回の発言で、そのトロール工場の運営や、他国への介入の疑いも確定したことになる。

Recession fears shake newspaper industry
「不況は、ローカルニュース(紙)にとり、ほとんど“パーフェクト・ストーム”だ」と、米Northwestern大のTim Franklin教授は述べる。不況は人件費と用紙の流通の高騰をもたらすとする記事。劇減する広告収入に対し、購読料収入は逓増に止まる。ここにコスト増が加わるというわけだ。
Bloomberg EIC to staff: Be careful using Twitter as a source - Talking Biz News
米Bloomberg News編集長、編集スタッフに向け、「最近のTwitter社の変化によって、ニュースソースとしてTwitterを利用する際のリスクが高まっている。誤報やデマを見極めるための警戒を怠らないようにしなければならない」と社内メールで注意喚起。
メタとGoogleの決算から垣間見える、 プラットフォーム 時代の終焉 | DIGIDAY[日本版]
【有料購読者向け記事】:
「JPモルガン(J.P. Morgan)によると、前回の金融危機時にデジタルメディアが広告費全体に占める割合は12%だった。2021年の割合は67%だ。広告予算が大きくなればなるほど、その金額と、ひいてはそれを資金源とするメディアオーナーたちも、マクロなトレンドの影響を受けやすくなる」。

——種々の視点から、プラットフォーム+広告+(背後のデータ寡占化)による進撃の低迷を指摘する記事。社会的な視点からの抑制も利いてきているとするが、最も説得的な箇所が引用部分。

Silicon Valley's pivot to paid
米シリコンバレー(テック企業群)が、広告離れを模索し始めた。もちろん、景気後退局面に差し掛かっているという側面もあるが、文化として広告主による支配を嫌うという点もあると指摘する論。Elon Musk氏がTwitter収益源をめぐり転換をめざすこともその文脈から理解できそうだ。
[更新]Netflixの「広告つき」新料金、一部のNHK作品等が広告なしの理由…月額790円、国内でも開始
「広告の頻度としてはテレビCMとほぼ同じはずだが、作品を視聴している最中にブツ切りで広告が割り込んでくるため、体験としてはあまり良くない。YouTubeと同じだと言えばその通りだが、体験の悪化が200円の差額に見合うかは、議論がありそうだ」。

——日本でも始まった「広告表示付き廉価版」のNetflix。従来990円だった「ベーシック」プランがベースに、ダウンロード不可などの制約と広告が表示。体験したBusiness Insider Japan編集長の伊藤氏がリポート。